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ロリ的彼女との縮小する日々
「また声かけられたね」
裸の背を向けながら小さな体が呟く。まるで幼女のような狭い肩、細い腕。シャワーをひねり、その水流を気持ち良さげに顔で受けている。
;
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「何度目だ? 四度目? 五度目?」
「正解。五度目よ。三ヶ月ぶり」
ユリが髪を洗いながらそう返す。まったく、と俺は湯船に体を浸けた。
「ヒロくんが大きすぎるのよ。何よその体。服が見つかんないじゃない」
「お前が小さすぎるんだよ。どんな男でもそんな幼児体形と歩いてりゃ捕まる」
「怒るよ?」
仔猫の体に虎のような怒気を孕ませる。この気の強さが好きだ。男らしい俺に寄りかかるばかりの女の中で、ユリの強さはとても輝く。
「背の話だ背の」
ふん、と鼻を鳴らし、ポツリと、
「まあ、私が小さいのは確かだわ。寄ってくるのはロリコンばっかり」
「俺はロリコンじゃねえよ」
「おっは星人でロリコンなんでしょ」
スポンジで体を洗いながらユリが言い放つ。生意気な小娘のようで、むしろ微笑ましい。
「体格のバランスが悪いのよ私たち」
ため息をつく。体を洗い終え、ユリが湯船に足をつけた。湯船はすでに俺でいっぱいで、ユリが俺に座る形になる。
「こればかりはいかんともしがたい」
;
;
「あなたが職質されるだけだから私はどうでもいいんだけどね」
「勘弁してくれ」
ユリが俺の胸に頭を預ける。上昇した水位で、俺の上でも少し顔が浸かってしまう。そのか細い肩を抱き寄せ、少し持ち上げてやる。
「気が効くね。ついでに股間も収めてくれたらいいのだけれど」
バレていたようだ。
「勃ってるだけだ。湯は汚してない」
「そういう問題じゃあないでしょう」
呆れ声だったが、はあ、と諦めて俺にもたれかかる。
肩越しにユリの胸やら脚やらを見下ろす構図。全体の大きさのせいで隠れがちだが、そのスタイル自体はしっかりしている。胸も大きく腹はすっとくびれて、尻も脚も肉付きが良い。これで勃つなというのは無理な相談だ。子供のような体の儚さ、軽さとその女性的な体つきが密着しているのだから、襲わないだけ褒めて欲しいくらいだった。
「サークルの連中にも散々からかわれたからな。知ってるか? 結構お前狙ってる奴多かったんだぞ? それで余計にな……」
「知ってる。けど興味ない」
退屈そうにユリが返す。
「それより、そろそろまた顔出さないとね。学園祭の出店とか、そろそろ動き始めるし」
「明日、かなあ」
ユリがちゃぷちゃぷと湯を肩にかけ、浮かんでいた乳房が揺れる。視線に気にもとめず、俺の胸に収まったままでユリは他愛ない会話を続けた。
「そろそろ出るか?」
「もうちょっと。重い荷物持って疲れたの」
「後でマッサージしてやるよ」
「じゃあ、ついでにボディケア手伝って」
「仰せのままに」
よほど骨が折れたのか、珍しく俺に甘えてくる。
「そうだ、映画借りといたよ。出たら見よ」
眠そうに湯に浸かりながら、ユリが言った。
「面白いくらいつまんないね」
ポツリとユリが呟いた。言わずに置いたのに。
「この手のアクションものってどうしてこうなのかな」
「展開が安直だし勢いしかないのよ」
スモークチーズを口に運びつつユリが言う。クッションを抱くと、ソファに背中を預けた。こくり、と喉を鳴らす。
投げ出した素足が、俺の脛のとなりに並ぶ。俺の鍛えた脚に比べて、細っそりと白く、曲線の帯びた形。一見子供の脚のようだから、却って女性的な太ももの膨らみがよく眼に映る。垣間見える肉感。これがストッキングの中でなお顕わになるのが、俺は好きだった。いや、その手も、胸も、腹も、尻も、全て。
本当に、本当に小さな体だ。ちょこんとした体は一瞥すると子供の頃に成長を止めてしまったかのようだった。美しく顔は幼く小さな肩幅の上から俺を見上げ、揺れる髪は絹糸のように細く煌めいている。小鳥のようにこちらを見つめるユリ。こんな風にとなりに座ると、俺の体に隠れてしまう。そんな可憐さに、年相応の色気が少し。ガタイの良い女には負けるもののその膨らみはたしかなものであり、母性的なその大きさと見た目のギャップに、倒錯さえ覚える。綺麗だ。何度も思う。もう、数えきれないくらい目にしているのに。
頬を撫でてやる。俺の手に収まってしまうような頬、それをほんのり赤くし、そして俺にもたれかかってきた。羽毛のように軽い。その細い体の、儚い柔らかさと暖かさだけがたしかだ。まるで幼女をたぶらかせているような背徳感を覚えながら、その肩を抱き寄せる。ユリが僅かに頭を動かし、くりくりと額を寄せるのが愛しい。そうだ。愛しい。俺が守らないと。強く、そう思う。
ユリは微笑みつつひそひそと、他愛ない言葉を囁いている。まるで内緒話をするように、指に髪を絡めながら。部屋を包む雨音の音、ユリの声音が耳に優しい。つまらない映画のシーン。ゆるい服の中の小さな姿。思わず、ユリを抱く手に力が入る。
そんな俺にユリは何も言わない。聡明な彼女は、そんな単純な俺のことなどお見通しだ。受け入れ、でもすこし窮屈そうなまま、されるに任せる。
華奢な背中を手が捉える。薄い背に、肩甲骨や背筋が起伏をなしている。そして乾きかけの髪の中に進み、その頭蓋骨を感じると、身を屈めて唇を重ねた。
;
;
「ん……」
柔らかな肉の突起。下唇をはむと、彼女もそれに応じる。その縁を舐めると、彼女もそれに従う。唇の間を滑りこみ、綺麗に並んだ歯を確かめ、開いた歯並びのその奥で、舌に舌をくっつけた。自分の舌が大きく感じる。入るだけで彼女の口内を圧迫しそうだ。舌の表面を舐めとり、唾液を交換すると、苦しげな息と共に彼女の口から互いの唾液が溢れてしまった。物足りなさに貪り続けると辛そうな喘ぎが漏れ始め、手を離すとくたりと体を横たえた。
「後で、また洗ってよ?」
蕩けた瞳に涙をたたえ、よだれをたらしながら頬を染めている。ぶっちゃけ、すごくエロい。ぜいぜいと荒く喘ぎ、髪を広げ、こちらを見上げている。更に俺が腕をソファに押し付けると、僅かにびくりと肩を震わせ、しかし抗うことは出来ない。指に指を絡めて馬乗りになる。不安そうだ。やはり男は怖いのだろう。とりわけ、この体格差。本能的にすこし震えている。別に拒絶している訳ではないらしい。顔を見れば明らかだ。彼女曰く、体が勝手に、とのこと。どちらにせよ、あどけない体を蹂躙している僅かな背徳感と、それにまさる嗜虐心とが喚起されるだけだ。
のしかかってキスを続け、水音を響かせる。敏感になるよう、俺の唇を練り込んだ。そしてその肌に指を這わせれば、恐怖の代わりに性感の震えが起き始める。
俺の手から抜け出し、その指がシャツのボタンを解く。そして俺の首に腕を回した。促されるままに、すっかり彼女を下敷きにしてしまう。きっと重かろう。早くしてやらないとかわいそうだ。内股をさすり、唇は彼女の口元から離れ、首へ吸い付き、鎖骨を、そして乳房を貪った。体の割に大きな胸。大きさそのものは特別巨乳というほどではないにせよ、ユリのロリ体型では大きく見える。左右に流れるそれを吸い、頂点から五合目あたりまでを何度も口に含んで、舐め上げた。首を抱く力が強くなり、息を強く吸い込む音が聞こえる。そして下が十分に濡れると、避妊具をつけ、腰の上に乗った。
俺の体の下、小さな体を見下ろす。綺麗な顔がこちらを見上げていた。俺が腰を降ろす。押しつぶされると共に悲鳴に似た喘ぎ声が絞り出される。ギュウッと目を閉じ、重さと快感を堪えるように指を噛む。腰を振る。もう一度、もう一度。声が響き渡る。まるで犯されているみたいな声。
夢中になる前に体位を入れ替えた。彼女を上に乗せる。俺に跨ると、ユリは自発的に腰を動かし始めた。俺を求めている。そう思うと嬉しくてたまらない。その軽い体を精一杯に動かし、俺のもので貫かれようと頑張る。耐えきれずに腰が引けてしまうのが、なお可愛い。ボルテージを貯めていくような甘い挿入。こらえきれずに彼女を抱き上げ立ち上がった。
「やっっ!?」
突然奥を突き上げられ悲鳴をあげるユリ。尻を鷲掴みにされ駅弁の格好だ。俺のペニスにから逃れようと、よじ昇るようにしがみつく。しかし、軽い彼女を振るとその手は容易にとかれ、ドンっと再び突かれてしまう。
「きゃっ! やめて! っ、うぐっ! ちょ、っ、あ゛うっっ!!」
高い悲鳴を上げ何度も奥を叩かれる。唯一すがれる俺に抱きつき、胸板に乳房を押し付けている。それがたまらない。俺も心臓をバクバクにし息を荒げながら、彼女を揺さぶるのをやめられなくなる。ひんひん叫ぶ小躯を強く抱きしめると、愛しさのあまりもっといじめたくなる。彼女も求めている、けれど重すぎた。泣きそうな声に変わっていく。
;
「あ゛ぐっ! ひろく、ん゛っ! はげし、ひぎゃっ!!?」
必死に俺を止めようとして、その度俺に裏切られた。小さいのが悪いんだ。可愛いから、俺もやめられなくなる。そんな無我夢中の俺により、ユリの体が跳ね回った。だんだん言葉が支離滅裂になる。叫びが長くなる。
そして。
「やあああっっっ!!」
つんざく歓声をあげる。俺もイってしまって、腰砕けにソファに倒れこんだ。
ぜいぜいと息をする俺たち。
俺の胸にへたり込んでいたユリが力なく拳で俺を叩き、
;
「ばかぁ……」
涙目で笑った。
そんな俺にバチが当たったのだろうか。
事態は雪崩を打って変わり始めた。
まさに、一瞬で。
§
「おっ?」
かすかに慌て、足を止める。
「どうしたの?」
「いや、靴が脱げただけ」
なんだ、と彼女はすたすた行ってしまう。
「つれないな」
「昨日のあなたよりは気遣ってるつもりよ?」
ちょっと棘を忍ばせるユリ。やりすぎたのは反省している。
「ふふん」
とはいえ機嫌がいい。久しぶりにサークル棟に顔を出す、それが嬉しいらしかった。
……妬けないでもない。
「待ってくれよ」
靴を履き直して後を追う。紐が緩んでるのかパカパカして気持ち悪い。その上ユリの足取りが軽いせいで、半ば小走りだ。楽しみなのか、いつもより気持ち足が速い。
結局靴がしっくりきた頃には部室についてしまっていた。
ドアに手をかけ、彼女が呆れるようにこっちを見る。そして爽やかに挨拶をすると、するりと中に入ってしまっていた。猫みたいな奴だ。そんなそぶりを見せるたびに不安になる。ユリとはもう安定期だし相性もいいけれど、するりといなくなってしまいそうな恐れを抱かせるところがあった。その小柄さと相まって、その危うさは夢に出るほどだ。ユリの芯の強さならきっとどこへでもいける。繋ぎとめられる自信が俺にはなかった。こうして、すぐ和気藹々と会話に打ち解ける姿を見るたび、不安を感じる。
とはいえ、俺も久々に友人と会うのは気分が良かった。
懐いてくる後輩、ユリの後釜を狙っている女どもを適当に相手する。
そうして二時間もしただろうか。
「それより、痩せた?」
不意に話題を振られ頭が置いていかれた。
「えっ?」
「いやほら、なんか背中、薄くなった気がする」
たしかに痩せてはいた。が、微々たるものだ。指摘されるほどではない。
「トレーニングサボったんじゃないの?」
ユリがいじる。いや激しい運動が……などと意味深なことを言う周りを遮ろうとした途端、
「いやそんなことは……って、あれ?」
ふらっとした時にはもう倒れていた。
あまりに唐突なことに、あたりは俺を見つめることしかできなかったと言う。
§
「ルイス=スウィフトですかねぇ」
「はぁ……」
医者の言葉に曖昧な返事で説明を促す。彼は頷いて、
「ルイス=スウィフト症候群と言ってですね。まあLSSと訳されたりしますが。奇病として結構もてはやされてますけど、ご存じない? 初期症状は風邪様症状、下痢、食欲不振。痩せて、体力が落ちてと続きます」
それで? との言葉に、白衣は変なことを言う。
「縮むんですね、ゆっくり。体が。奇病ですよ、奇病。子供に戻るように見えるものだから若返り病なんて言われますが、当然そんなうまい話があるわけでなく。中身はそのまま、体だけがちっちゃくなっていくんですな。対症療法で他は抑えられるんですが、これがね、曲者で。ええ、はっきり言いますと、難病指定されてます。お気を落とさずに、と言うのは無責任ですが、皆さんそれぞれ乗り越えて立派に暮らしていらっしゃいますから、あまり悲観なさらないよう。もちろん、やはり不便は不便ですがね」
ベラベラと話し続ける。無造作な語り口と裏腹に興奮を隠せていない。たらい回しにされて行き着いた大学病院、それだけでこの医者の性質は知れていた。
続く白衣の言葉に、俺とユリだけが取り残されていった。
§
白衣の忌々しい予言は当たった。冗談みたいだが、本当に体というのは縮むのだ。食べたものは素通りして、血肉が削れていく。アポトーシスが止まらない。そして同時に起こる再組織化。伴う痛みも目眩も薬で抑えられたが、この症状ばっかりは止められない。
初めのうちは、変化など微々たるものだった。1ミリ減るかどうかの誤差範囲。なんだこんなものかと侮った。しかし、それは元の大きさの貯金があったからだ。淡々と同じ量減っていけば、その影響は加速度的に現れる。七十キロから一キロ減ろうと大差ないが、五十、三十となれば話は変わる。そして、そのことに気づいた時からが地獄だった。
最初は、靴や手袋がうまくはまらなくなる形で変化が現れた。パツパツに張っていたズボンの太ももが余ってしまう。そしてつり革の位置が高くなり、階段が妙に重くなった時、自分の病気というものを生々しく感じ始めた。
「なんか、顔が近くなったね」
なんてユリは言う。
「キスしやすくていいわ。あなたに合わせると、爪先立ちが辛いのよ」
特に恥ずかしがるでなく、あっけらかんと言い放つ。内心不安なことには変わらないが、鷹揚に俺は笑ってその頭を撫でた。繊細な髪が掌で踊った。
そして一か月。体は人並みになる。男どもの存在感が妙に増す。そろそろ裾上げせねばなるまい、シャツは買い直すかと、出費が少々手痛くなった。
そして、また一ヶ月。一般的な女性と変わらなくなる。ユリとはなお若干の体格差があったものの、もはや兄妹、あるいは姉弟と言って差し支えない差だ。やっと等身大ね、と彼女は言うのだが、俺にとってはたまったものじゃなかった。なにかが崩れていくような感覚だったのだ。
俺は焦り始めた。不安は膨れ上がり、心の余裕がなくなっていく。急速に精神状態は悪化した。本当に、俺は病気だった。
体力は維持したい。強烈なトレーニングを繰り返し、なんとか威厳とプライドを保とうとした。余裕のなさで性格はマッチョ的になり、そして見苦しい努力を隠れて続けた。なんでもないというそぶりを崩さないことだけが誇りだった。しかし、これまで培ってきた実績と自信が、かえって重荷になってしまう。ユリが時折気遣わしげな目をする、それが気にくわない。他のものの態度も変わってくる。大人の男として構えるも、その実苛立ちと焦りは隠しきれなくなっていた。見下ろされる度になにかが胃の底に落ちてくる。瓶の蓋がキツくて二人で途方にくれた時の悲哀感。酒を飲んでいる時だけ辛うじて安らいだが、口を突いて出た不安や愚痴を後悔し、ユリが忘れることを願う日々。これが俺か、これが俺なのか。前と同じ距離を走ろうと無理をして、悲鳴をあげる。苦痛にうずくまる俺をユリがさする、その手を払い、自分の余裕のなさに愕然とした。
そして、その一か月後。ユリより小さくなってしまった。
ユリはその時、しっかり俺を抱きしめた。子供のように細い肩、それが今では驚くほどしっかりと感じられる。その起伏が存外に大きく、そこに魅惑する女性的な体つきを発見した。ユリをしっかり感じられたのは嬉しかった、が同時に惨めにも思った。腕を押しのけ抜け出す。その手を振り払えたことに僅かばかりの安堵を覚えた後、猛烈に自己嫌悪に陥った。俺は、自分に収まるユリの小躯にどこか優越感を抱いていたのだ。か弱い女を圧倒する喜び、それが消え、緩やかに衰え行く予感に脅かされる。老人でさえ衰えを受け入れるのは難しい。俺は若すぎた。自分の衰微を受け入れるのが人間の完成だというのはわかっていたが、悟るための奥行きなどデカいだけの体のどこにもなかった。
目に見えて縮んでいくようになった俺には、ユリがきわめて長身の少女に見えた。ちんまりとした佇まいは変わらない。儚さの漂う細い線、白魚のような指、百合の花弁に似てほっそりした手。けれどそのもみじの葉のような手が俺の手を包み込まれた時、自分がいかほどに小さいかを思い知らされた。想像してみてほしい。戯れに負ぶわれた際の、なんの苦労も感じさせないその背中、俺をすっぽり乗せる、その肩幅。子供のようなユリが姉に見えるし母に見える。いや、それ以上のなにか、ひとりの女巨人になりつつあった。
「正直、小さいあなたも好きだわ」
そんなことを言う。そして頭を撫でるのだ。
子供好きのユリにとって、俺はどんな風に見えたのだろう。「可愛いっ!」と叫んで胸に抱きしめるその様は、とてもかつてのユリとは思えなかった。いや、俺を見上げていたユリに、こんな風に遇されたことがなかっただけだ。これまでも、ユリはこうして子供を可愛がっていたし、それは見ていて猫同士のじゃれ合いのようだった。それが今、子供の立場になった時、いかにユリが母性を持って接していたかに気づかされる。俺は大きく、逞しかった。しかし今はこの小ささが、ユリの母性本能をくすぐってしかたないらしい。豊満になったその胸に抱かれ、くしゃくしゃに髪を撫でられ、振り回される。そんな熱烈な抱擁が嫌なわけがない。惚れた女の心からのスキンシップだ。しかし、だからこそ複雑だった。なんて包容力を持つようになったんだろう。細さで気づかなかったその肉付きが、小人の肌ではよく感じられた。その包容力にダメにされてしまいそうな気がして怖かった。
色々なものが小人には怖い。もちろん人間は皆怖い。目前を行き来する巨大な足の爆撃が怖い。見おろす顔の遠さが怖い。自然に上から与えられる優しさが怖い。もう元には戻れないという事実が怖くて、ユリに依存してしまうのがとても怖く、何より、ユリが離れていってしまうのが一番怖かった。寝ていると、時にその巨体にしがみついている自分に気づく。そんな時は必ず抱き枕にされてしまい、出られなくなっているのだ。そして、しかたないと存分にその胸に沈み込んでしまう、子供のような甘えに落ちていった。
「可愛い……好き、大好きよ。私、ヒロくんが不安がってるの知ってる。口では威勢がいいけれど本当は将来が心配で、弱くなったら私が離れていくんじゃないかって思ってる。そうでしょ?」
並んで寝ている俺を、胸に抱いて頭を撫でる。ここで逃れようとすれば認めることになる。俺は違うよと一言言うが、そんな嘘で騙される女じゃない。
「安心して、私、こんな可愛いヒロくん絶対離さない。私、あなたの後見人になるわ。ダメよ、拒否権なんてないわ。どうせ決めなくちゃいけないんだから、従いなさい。……絶対離さない。こんな子、他人の好きにはさせないわ」
耳元で囁かれる。抵抗するそぶりを見せるや甘噛みし、頰を撫で、俺のスイッチを入れてしまう。俺が欲望に忠実なのを知っているのだ。気をそらすようにいくつか他愛のない言葉を交わし、じっと見つめてから唇を重ねた。そして、互いに服を脱がしあい、求め始めるのだ。もはや顔いっぱいに広がるユリの乳房に窒素しながら。
そんな日々。俺はある意味未来を見据えていた。
実のところ、死ぬ準備はとうに出来ていたのだ。あとはユリに知られず消えるだけ。が、そう思うと俄然ユリが愛しくなった。しかし、ダメだ。手酷く彼女を傷つけ、別れてからひっそりと消えねば、俺は間違いなくユリの人生を歪めてしまう。彼女を幻滅させる、それが優しさだ。そして、最後、これを最後の優しさにして、それ以降は彼女を傷つけようと思い、思い、その度に失敗した。愛しすぎたのだ。最後の一歩が諦められない。次こそはユリの手を払おうとし、その度に強く握ってしまう。それが続いた。
そんなことを続けていた。
ユリにバレているとも知らずに。
「遺書はね、きちんと隠さなきゃダメよ」
ユリがそれを見つけた時、自分の計画がハナから破綻していたことに俺は気づいた。
四の五のと押し問答を続けた後、俺はもう耐えられなかった。
「……ふざけんなよ。なあ、お前も、お、俺を馬鹿にするのか? 俺だって、本当はこんなことしたくないんだよ。だけどな……」
しまったと思った時にはもう遅い。俺を見おろすユリにカッとなり、俺は大声でまくしたて始めた。震える声でみっともなく騒ぎ始め、ユリのびくともしない脚を蹴り飛ばし、胸元に掴みかかった。ユリは動じない。それが一番腹立たしかった。ものを投げつけようとする。そしてその手を掴まれ、激情に火が注がれ、尚俺は罵る。
「どいつもこいつも馬鹿にしやがって!! だいたいお前が俺を見下すからおかっ……ツッ」
喚く俺の口をユリの唇が無理やり塞ぐ。弾力の増した唇に言葉は飲み込まれ、舌は力強い舌にのしかかられて動けない。
「ん゛ん゛っ、ん゛!!」
息苦しさと抗議の念から唸り声をあげる、が、その脳髄をかき回すようなキスに次第に頭は真っ白になって、やがてくたりと力が抜けた。
「ふぅ」
離した口同士をつなぐ唾液が切れ、ユリは腕でそれを拭った。
「落ち着こうよ。でないと、この先もっと辛くなるよ?」
「無茶言うなよ。全部おじゃんなんだぞ? この先何があるってんだ。なあ、俺を愛してるよな? ならもう一思いにさ、ハハッ、この体格差なら楽だろ?」
今度ばかりは本当に馬鹿にしたような眼差しで俺を射る。
「そんな愛のないことを言われてもね。自分に自信がないの? もうおしまいだと思ってる? 悪いけどね、ここで手放す程度の心構えじゃないの。他の女と一緒にしないでちょうだい。簡単に逝かせやしないわよ。あなたのプライドへし折って、いつまでも私に付き合わせるんだから」
ユリは強い。さらに強くなった。その眼は俺の全てを見通している。LSSは致命的な病ではない。探せば道はあるのだ。それが俺の自尊心によって邪魔をされているならば、そんなものユリは容易に砕き捨てるだろう。俺のために、俺を去勢しようとしているのだ。甘えろと。私がいるだろうと。それは心底嬉しかった。悪いが、こんなに純粋な奴とは思っていなかったのだ。しかし。守らねばと思い、離すまいとした女に守られ、包み込まれることなど、俺が許さなかった。無論、表に高く掲げられたこれ見よがしの自尊心が、愛校心が、郷土愛、愛国心、己を誇る全ての愛情表現が、結局は追い詰められた負け犬の遠吠えに過ぎないことなど、ユリはとっくのとうに見抜いていたのだ。ユリは強い。だからユリが怖い。一層俺は頑強になっていた。
「俺は、もうたくさんだ」
「そう」
多くは語らずに、ユリは膝を折って俺を抱きとめた。先程のキスで抗う気力もない。なすがままに胸元へ沈められる。大きいなと思った。柔らかかった。
「疲れてるってことにしてあげる。大丈夫よ、すでに十分情けないから。もう、私に寄りかかっちゃえばいいのよ」
こっちの苦労など知らないかのように軽く言い放つ。けれど俺は抗弁しない。まるで母親のような包容力に気持ちが緩められていた。そうかな、と呟く。
「そうよ。ほら、鏡を見て。こんなに小さな男の子なのよ? 膝をついた私よりも小さいの。何ができるって言うの。ヒロくんは非力だわ。認めなさい。辛いのはあなたよ」
「俺は非力じゃない。ここで挫けるわけにはいかない」
「へえ?」
ユリが俺の腕を掴んで持ち上げる。いとも軽々とぶら下げられる俺。かつてはたやすく持ち上げていた女に、しかもとびきり小柄なユリに、俺は逆らうことができない。
「ほら、振りほどいてみてよ。私のこと、抱き上げてたもんね、簡単でしょ? 散々幼女だってからかったじゃない。ヒロくんは非力じゃなくて、挫けるわけにもいかない、逞しい男なんでしょ? いつまでも言ってたらいいじゃない。私には幼稚園児よりちっちゃい男の子にしか見えないけど、ね。悔しかったら逆らってみなさい。カノジョに負ける男じゃないって証明してみなさいな」
ユリが挑発する。いつもの軽口。今までなら難なく小突いて、意趣返ししてやった。小さな舌をペロッと出すのが愛しかった。しかし、今はその顔に触れることさえできそうにない。足は浮かされ、腕は完全に拘束されているのだ。何ができるだろう。大きな鏡には、ぬいぐるみのように手を掴まれた俺がいた。それをすっかり飲み込むユリの体。おかしい。こんなことってない。ユリは、俺の肩にも届かなかった。ユリは、大抵の女にも見下ろされていた。ユリは、肉付きや体つきこそ女性的だったが、それでも子供のような背丈だった筈だ。それが今となってはその胸さえ手の届かないところにある。俺を人形のように扱っている。前なら、俺は無理やりユリを犯すことだってできた。それがいまは腕さえ振りほどけないのだ。
俺はムキになって体を揺すった。微かに足がユリの腹を蹴る。けれど痛くないらしい。ユリは「ええ、それだけ?」と言って笑う。
「抵抗しないなら”合意の上”ってことになっちゃうよ? ヒロくんは口だけの男なのかな? ほら、私の握力なら抜け出せるって! がんばれがんばれ!」
恋人の手の中で必死にもがく俺を、ユリは微笑みながら揺さぶる。前ならどんなダンベルだって持ち上げられたのに、ユリの手の届かないものも持てないものも全てとってやれたのに、今はユリの手にさえ敵わない。
でも、ユリは俺の女だ。
絶対に負けたくない!
「ふうん。諦めちゃうんだ。じゃあ、あっち行こっか」
なお抵抗する俺、しかしそんな徒労をあざ笑うかのようにユリは俺を連れ去る。そしてベッドに押し倒された。無理やりにだ。思わず肩が震える。
押さえつけられるのって、こんなに怖いんだな。初めて知った。
「ふふ、弱っちい」
ずいっとユリの顔が近づく。美しい童顔に影が差して、俺の視界を圧迫する。そして顔同士がくっついた。唇を押し付けられる。はまれる。太い舌が侵入してくる。やばい。ユリの舌で口の中がいっぱいで、ユリの唾液がなだれ込んできて、すごく苦しい。そんなの御構い無しに、ユリは舌を絡めたり口内を舐めましたり、好き勝手に暴れていた。頭の中で水音とユリの漏らした声が響く。息苦しくて情けなくて、顔がとても赤くなっているのがわかる。涙さえ滲んできた。小さな女にのしかかられて、強引にキスされているのだ。筋骨隆々とはいかずとも屈強だった俺には、耐えられないことだった。
「っぷはっ! ふふ、顔ぐしゃぐしゃにしたヒロくんも可愛いよ。……ホントはね、このまま無理矢理シてもいいの。いつかのヒロくんみたいにね。きっと私、するのもされるのも好きなんだわ。結構Sだってヒロくん見てて気づいたの。でも、それはまた今度ね。もっとちびっちゃくなったらやったげる。今日は、私をお姉さんとして認めさせる方が先よ。優しくしてあげる。きっと気にいるわ」
そして俺の両手を頭の上で交差させられると、ユリは片手で俺の両手首を掴んでしまう。びくともしない。血管の浮き出るほど腕を動かしても、ユリはそんな俺の顎を撫でるだけだ。諦めちゃえ、諦めちゃえと囁く。そしていたずらっぽく一度指を口に含むと、俺の唇に押し当てて黙らせた。ユリの匂いがする。そう思った途端力が抜けてしまった。そしてその隙に、ユリはプチプチと服を脱がしていった。もう俺は抵抗できない。なすがままに上を脱がされ、下を脱がされ、反応している股間を見てユリに笑われる。組み敷かれ自由を奪われた上に、無意識まで支配されていたのだ。俺は密かに興奮していた。ユリは大きかった。ユリが大きかったのだ。あんなに可憐で、まるで小学生のようだったユリが、今では数メートルもある巨人に見える。俺を支配し、何をするかわからない女神となって俺を見下ろしているのだ。男の沽券の裏で、もっと惨めにしてくれという気持ちが沸き立っているのに俺は気づいた。そんなはずがない。しかしクスクス笑うユリの音や振動が伝わるたびに、何かが切なく胸を掴んだ。
そして、ユリも服に手をかける。ゆったりしたタートルネック。ふわふわとやらかく可愛らしいそれをたくし上げると、存外に豊満な胸が現れ心が飛び跳ねる。少女的な服装と対照的に艶やかな裸体。そしてスカートを脱ぐと、その体でもって俺の上に覆いかぶさる。
重い。でも、柔らかい、暖かい。そうだ、これが、この感触がユリの体だ。細い骨格が感じられるのに何故だかふんわりしていて、若い柔らかさに満ちている。子供の柔らかさに似ているのだ。いい香りがする。華奢な体のずっしりとした圧迫感にのされる。それなのに、優しく俺を包むユリの肉付き。よくわからない。でも、気持ちいい。顔におっぱいが当たって、谷間で俺を挟み込む。腹と腹が触れ合う。脚はユリの股からようやく出る程度で、膝に届きそうで届かない。完全にユリの体で隠され、その影の中でぬいぐるみにされていた。
ギュウッとユリが俺を胸に抱きしめる。それだけでユリの感じている愛しさが俺に伝わってきた。裸のユリに裸で抱き合う。ユリが俺を巻き込みながら身をよじらせ、そのショーツを脱ぎ捨てると、本当の意味で俺たちは抱き合った。もぞもぞと身を寄せ合う。もう俺から抵抗心は抜けていた。
「ヒロくんはちっちゃい男だよ。ちっちゃくてちっちゃくてちっちゃくて、私の中に入っちゃう。それをわからせてあげる。私のものにしてあげる。ヒロくんはもう一人じゃ何もできないの。私に寄りかかりなさい。私の助けを乞いなさい。それができなきゃ本当にあなたは人以下だよ。あなたのチンケなプライドをほぐせばさ、まだ出来ることいっぱいあるじゃない。ほら、私の体よりちっちゃいのはだれ? 子供と間違える私にも圧倒されてるのはだれ? 私の下敷きになって、でもまあいいかって思ってる小人はだれ? ヒロくんだよね。私の胸に敷かれて息も絶え絶え、私の太ももで足は挟まれて動けない。ぬいぐるみでももっと大きいわ。ちっちゃい子。あなたはちっちゃい子よ。こんなにこんなにちっちゃい……」
ユリの囁き声が肌から直接なだれ込む。脳に擦り込むように頭の中で響く。か細い声。儚い声。それが力強く俺を犯す。
そうか、俺は小さいのか。ユリは俺の体に収まるほど小さかった。まるで子供を抱えているみたいに軽かった。そんなユリに抱かれているなら、それは本当に小さい体だ。元の体からは想像できない矮躯だ。そうだ、俺は小さくて、ユリが体いっぱいに抱えてた小さなテディベアなど目ではないほど小さくて、そして弱いのだ。当たり前だ。俺は小人だ。小人になった。小人になりつつある。まだまだ小さくなる。ユリに負けた。これからも負け続けるだろう。それは客観的な事実だった。誰より小さな女性に負けるなら、俺は誰より小さく弱い体だ。現に、ユリの体の下で俺は指一つ動かせないじゃないか。瑞々しい肌は吸い付いて、柔らかさは俺を蹂躙している。芯のところを抑えられているから、抜け出すなんてとんでもない。前なら小脇に抱えられたユリの体に、俺は簡単に幽閉されている。
「ふふ、くすぐったい。まだ抜け出そうって頑張ってるのね。可愛くて哀れ。そんなところが好きだわ。張り合いのない男は嫌い。でも余分なところは切っちゃわないと、ね」
いつも通りのユリの軽い声音。こまいくせに大人びた声で俺を撫でくすぐる。ベッドはユリによって温められ、じわじわ俺の周囲が溶けて行く。そしてなくなる。ユリの裸に張り付いている感覚、それだけになる。
「ヒロくん弱っちくなったね。前はあんなに大きかったのにね。かわいそうだね、でもかわいい。このままずっと下敷きにしてようかしら。怖い? そうよね、私は大きいものね。大きいお姉さんにずっと乗られてたら、きっと怖くて泣いてしまうわ。手にヒロくんの背中が収まってる。谷間で息遣いを感じてる。今にも消えそうなくらい弱々しい。私は大きいから、きっと苦しいのね。それってすごく素敵だわ。ヒロくんを支配してる……」
はぁっ、とユリの熱っぽい吐息。そしてゆっくりと、体を転がした。仰向けになって、俺を体の上に乗せる。左右に流れた乳房の向こうで、こちらを見下ろすユリの顔。かわいい。その体はどんなベッドよりも大きく、俺など腹の上に簡単に乗せられてしまう。体はユリの股に張り付いている。ユリの太ももの間に垂らした俺の脚は、膝をついてしまっている。ユリの体の厚みが腿の長さとさほど変わらないのだ。すべらかな腹に体を埋め、胸の間に顔を埋める。彼女の背が高ければ、もっと顔は遠かったに違いない。それを思うと、その小柄さが嬉しかった。
女性にへばりつく、なんとも情けない構図。恥ずかしさに抜け出そうともがく。しかしユリは頭と背中を自分に押し付け、小人の逃亡を許さない。
「離せよ、こんなみっともない格好で、馬鹿にしてるのか? 俺は一人でできる。今だって俺なら……」
「ダメよ、ジッとして。私から逃げようなんてバカなことしちゃダメ。それに、ベッドから降りるのも大変でしょう? 私がいないとヒロくんは何もできないの。なんにも、なんにもよ。賢い子だからわかるよね? ちっぽけなヒロくんは私に依存しなきゃいけない。ヒロくんは弱いの。弱さを受け入れられないくらい弱い。弱くてちっちゃい。いい? あと数時間もすれば、ヒロくんはそれを受け入れてるはずよ? イヤなら行ってしまってもいいの。私は追いかけるけどね」
「何をするつもりだ? 体がでかいからってこんなことしていいと思ってるのか? 急に強気になりやがって。俺は、……うぐっ」
顔をユリのバストに埋められる。よしよしと子供にするようにさすられる。一瞬怒りがこみ上げてきて顔が熱くなった、が、その愛しげな手つきに気をおさめられる。
「好き、大好きだよヒロくん。余裕がなくなって必死なところも悪くない。けどあんまり情けないことしてると、もっといじめるよ? これはあなたのため。じゃなきゃ辛いばっかり。ほら、私の鼓動を聞きなさいな。落ち着く勇気を持って。こんな、百四十センチあるかないかのちっちゃい私に抱えられて、安らいでしまいなさい。ちっちゃい事実を受け入れなさい。これは命令。ヒロくんは私に跨ぎ超えられるし、私に簡単に持ち上げられるし、それを認められない小人なの。……やっとジッとしてくれた。いい子。さ、裸で抱き合いましょ? 寒いなら毛布をかけてあげる。ふふ、すっぽり」
なんだか気が抜けてしまう。いつもそうだった。ユリの落ち着いた声は俺を落ち着かせてしまう。噛んで含めるように繰り返し繰り返し同じことを言って、それが意に反していてもどこかで納得させられてしまう。小さな魔女だ。二人で毛布にくるまって、互いの体を確認している。そしてユリの大きさに気づく時、それと自分の体を比べる時、俺はユリの言葉が正しいと悟ってしまった。
それからユリは長い時間、本当に長い時間俺を抱き続けた。単に添えられた手がずっしり重く、俺を乗せてなおその胸は安らかな呼吸で俺を持ち上げる。その一体感。ユリはこうするのが好きだった。俺たちなりのポリネシアンセックス。二人で同じ布団に入り、抱き合ったまま休日を過ごす。俺の胸に収まったユリは、本当に可愛らしかった。儚くて、それ故に美しいその体。彼女に比べて大きすぎる俺のペニスを受け入れると、お腹いっぱい、という風に苦しげな一息ついて、俺にしがみつき、それから徐々に馴染む挿入感を楽しんでいた。そのスローセックスのまま終わることもある。安らかな気持ちの後、突如俺がユリを貪ることもあった。ユリがそれを望んでいたかはわからない。ただ、ユリは可憐すぎたのだ。汚したくてたまらなくなる瞬間が、必ず訪れてきた。
それが今はどうだ。
往時のユリより小さく、ユリの胸に収まっている。手を乗せて、逃がさないように体に乗せられている。かつてない一体感。エロティックな相互作用。困った。ユリの思惑にはめられつつある。
「じゃあ、いれる、ね?」
そう言って少し脚を開くと、ゆっくり、ゆっくり俺を受け入れる。それも、生で。
避妊はしっかりしてきたから、俺は思わず不安になってしまった。そんな気持ちを見透かすように、ユリは囁く。
「ヒロくんのはもう、巨人の奥にはなかなか届かないんだよ? 私の卵子も、ちっちゃいヒロくんのには、気づきにくいみたい。子供が欲しかったら、もっと中に入って、うんと、うーんと出さなきゃダメ。そしたら、ヒロくんよりずっと大きな赤ちゃんが生まれるけどね。だから安心して? 巨人の私に全部飲み込まれなさいね?」
そうして、ヌプリと音を立てて挿入していく。柔いヒダを掻き分けていく感触。しまりのよく小さかったユリのあそこが、今はトロトロと俺を飲み込んでいた。きちんと俺を締め付ける、が、小さなモノにキツくまとわりつきつつ、そのヒダの柔らかさがなんとも言えない感触をもたらしていた。
溶けてしまう。とろけてしまう。もっと欲しくなり腰を振ろうとする俺を、しかしユリは脚で挟んで動かさない。完全にホールドされてしまう。まるで抱き枕に脚を回して挟んでいるような、軽い体勢。それで俺は、ユリの中にうずめられた。
それは、無力感を誘う拘束力だった。俺には一切体の自由がきかず、ただ優しく愛撫されるに任せるほかない。頭を撫でられ、背中をくすぐられ、太ももで体をなでられる。しかしあまりの幸福感に、それも悪くないかもしれないと思えてしまう。ユリの体から発散される香りと熱が毛布の中にこもり、ユリの鼓動と呼吸が響き、ゆりのすべすべの肌で全身包まれて、とろける膣内を感じている。これを幸福と言わずになんと言おう。その深い抱擁とユリの力強さがなければ、俺はそのしまりの良い膣圧で体が浮いてしまうかもしれず、ただユリにのっているに過ぎなかっただろう。少なくとも、巨人の助けがなければこんな深い挿入感はなかった。こんなに巨体を感じられなかった。ユリの力は偉大で、無限の奥行きに俺を飲み込む。それがずっと続くのだ。段々ユリが神々しくなり、愛しくなり、その服従感を手放したくないと強く思い始めた。離さないでくれと思った。押し潰されてもいい、また俺に乗ってくれ。そうすれば、俺はその柔肌にめり込んで、すっかりその一部にしてもらえるだろう。辛うじて動く手で、ユリの乳房や腹を愛撫する。ユリがそれに応えてくれる。ああ、こんなことがなんて嬉しいんだろう。まるで体が収縮して、猫のように小さく、そしてさらに小さく、乳房大に、指の大きさに、米粒、微生物、原子よりもなお小さくなって、ユリの体に落ちていく感覚。それでもユリは俺を見つけてくれるだろう。それほどに、安心感を与えられていた。
ユリの言ってることが身に染みてわかった。俺は、こんなに小さいのだ。
それからさらに何時間かをかけて、ユリは俺を屈服させ、取り込み、虜にした。
「少しは自分の小ささがわかったかな? ヒロくんは私のものよ。私の小人。私に頼りきりで、全部私次第。そうよね?」
考えるより先に頷いてしまう。赤面して、その谷間に顔を隠す。
そして一度背を撫でると、
「じゃあ、もっと叩き込んであげる」
「え?」
くるりと身を転がし、俺の上に覆いかぶさる。手をついて俺を見下ろしていた。腕の間の小さな小人をクスクス笑う。重力に引っ張られた乳房が愉快そうに震え、ユリの背にかけられた毛布がとばりのようにゆらゆら揺れた。完全にユリの影の中にいる。そしてその華奢な体が起き上がると、ユリは無理矢理挿入して俺を押し潰した。
腰を打ち付け始める。
「ユリっ、潰れるっからっ……!」
とんでもない重量が繰り返し繰り返し降ってきた。布団に蒸されて既に汗ばんでいたユリは、その運動でピシャピシャと俺に汗をふりかける。その乳房が揺れる。眩い太ももが小人を叩いて湿った音を響かせる。舌舐めずりするユリ。苦悶と快感に混濁する俺の顔。涙が滲みよだれさえ垂れ始める。生娘のようにシーツを掴み、しかしそんな手をユリは掴んで押し付けた。犯されている。巨人に無理矢理レイプされている。しかも恋人に。そう思うと屈辱的で、しかも扇情的だった。肉棒が疼き、それをユリの膣が絞るように締め上げる。
「うっ、ユリっ、ユリっ……!!」
「重いでしょ? でもね、40キロもないのよ? みんなそれを聞いてびっくりするの。悔しかった。ずっと他の人に見下ろされて、ちょっと当たっただけでよろけて、でも今はそれもいいかなって思うの。だって、あんなに大きかったヒロくんをめちゃくちゃにできるんだよ? ふふ、気持ちよくて重たくって、混乱してる。小学生みたいな私にのしかかられてるってわかってないよね? こんなに重たいはずないって、大きいはずないって思ってる。辱められてるって感じてて、でももっとしてほしいって顔してる。気持ちいいね? 怖いね? 惨めだね? でももっと惨めになりたい、そうでしょ? 大丈夫、焦らないで。これからヒロくんはもっと小さくなるよ。そしてもっと惨めになって、私に頼りっきりで、なすがままになるの。想像してみて? まるでビルみたいな私に無理矢理犯される。自分より大きなコップの陰に隠れて、私の食事を見守って、時々指で食べさせられるの。そして私のエッチなところに飲み込まれて、叩いても叫んでも私に気づいてもらえないまま、閉じ込められちゃう。そんな毎日がこれから一生、一生続くの。ふふ、惨めな自分想像して興奮してるの、隠しきれてないよ? いいの? 認めちゃうよ? 支配されて惨めにされたいんだってバレちゃうよ? 出しちゃったら一生私のものだよ? いいの? いやだよね。でも抗えないよね。ほら、出しちゃお? ね、出しちゃおうよ、ほら、出しちゃえ!」
ギュウウっと思いっきり体重をかけられる。その巨人の全質量、それが俺を襲い、軋むほど俺を飲み込んで貪り尽くす。そしてユリに乳首を無理矢理咥えさせられ、その子供みたいな体でひき潰された。
「出しちゃえ! 出しちゃえ! 出しちゃえ!」
追い詰めるように腰を振られる。するとひときわ大きな波が襲ってきて、俺は金切り声を挙げてユリの乳房にしがみつき、思わずその乳首に歯を立ててしまう。
「やっ!?」
巨人は思わぬ快感に小人のペニスを叱りつけ、その締め付けで俺はそのナカへ全てを出させられた。
「ッッ!!!」
愛液が噴き出して俺の体をびしょ濡れにする。荒く息をするユリと俺。
「あーあ。もう戻れないね、小人さん♪」
朦朧とする意識に、ユリの声が響いた。
§
言うまでもなく、俺の生活能力は下がっていった。もはやどうしようもない。万事ユリに頼る他なかった。食事も、トイレも、風呂も服の着替えさえ。ユリに声をかける。ユリにたのむ。よく言えたねとでも言うかのように頭を撫でられ、持ち上げられ、そしてなすがままに世話をしてもらうのだ。
トイレは、ユリがするときに一緒に連れ出されることが多かった。まずユリが用を足す。その足元で、俺は巨人が排泄するのを見上げている。ずり降ろされたショーツを見る。そしてそれが再び履かれ、流す音が轟くと、上から愛しい手が降りてくるのだ。支えられて便座に乗る。或いは、座ったユリの太ももの間で座らせられる事もあった。これは背をユリに預けられる分、楽ではある。が、当然排泄の一部始終をユリに挟まれ、ユリに見下ろされて済ますことになる。それはなんとも恥ずかしく、またどこか高揚する体験だった。
食事も同じだ。はじめのうちは椅子にものを積み上げて座っていたが、それも次第に難しくなってくるはずだった。器用なユリによってナイフなどは手頃なものを作ってもらえた。お手製の木匙や箸は本当に使いやすかった。しかし、やがてくる日を考えたユリは、俺を膝に乗せ食べさせることを好んだ。嬉しそうにして、膝にちょこんと乗る俺に食事を持っていくのだ。これは、ユリがそうしたいから、という理由が大きかった。抗えはできなかった。
引きこもりがちだった俺をユリはあれこれ連れ出す。後ろから走って追いかける俺を、ユリは何度も振り返って確認した。手を繋いで、周囲の好奇の視線に耐える。巨人達の闊歩が恐ろしくてたまらず、同じ巨人であるユリから何としてでもはぐれまいと、俺はぴったり寄り添った。
しかし限度というものはやはりあって、特に長い距離を歩く際には抱き上げられる他ない。進行する縮小に、ベビーカーやおんぶ紐を使うことさえ考えていたが、それは諦めた。無論俺の抗議によってではなく、主に実用の面で、だ。連れ去られるように俺はユリに抱かれる。それに甘んじる以外に道はなかった。
サークルの連中は、最初こそ驚いたが次第に慣れていった。聳え立つ何本もの足の間で不安げにユリを見上げる俺を、部員は面白がるように見下ろすだけだ。……ユリが他の者の肩にも届かないのを見るたび、俺は絶望感にも似た恐怖に囚われた。ユリが小さい? あの大きなユリが? その体は本当に子供のようだった。他の者は驚くほどに巨大で、脚も体も長く、過剰なほどに成熟して見える。それが怖かった。威圧されてしまった。チビだと、ガキだとコケにしていた連中が今では恐ろしい。
「こうしてみるとかわいいじゃん?」
一人がしゃがみこんで俺を見下ろす。俺には突然現れた膝にとびのき、彼女の圧倒的な体に虚勢の言葉を投げかけるだけだ。立ち上がって彼女がユリと話し始めると、巨人達の脚の間に挟まれ、遠くなった部員の顔を見回す他ない。コントロールを渡されても扱えないからゲームには参加できない。活動はユリの胸で眺めるだけだ。世界は巨人達のもので、彼らが標準で、俺が異常に小さいのだと、何度も何度も痛感させられた。男にからかわれるのは本当に屈辱だった。嫌がる俺をゴツゴツした膝に乗せ、馬鹿力で俺を弄ぶ。これまでの意趣返しに後輩に突かれ、女には保護欲を押し付けられる。ユリが助けに入るも、力では勝てないものだからその度に俺はすがる思いで趨勢を見守る他なかった。ユリに依存するしかない。それを先んじて叩き込んでくれたユリは、聡明としか言いようがなかった。
ざまあみろという視線もあった。が、そんな気を抱くのもバカらしくなったのだろう、次第に彼らは微笑ましげな顔を向けるようになりつつある。相手にもされていないのだ。よく来たね、頑張ってね、と、そう言われていた。講義を理解する頭などは、ハナから期待されていないようだ。思考力は衰えていない。が、レポートなどを出せば彼らは瞠目してこれを見た。まるで人間が書いたみたいじゃないか。そんな風なそぶり。文字は小さすぎるために、特別にネットを介するようにしてもらった。パソコンがあってよかったと、つくづく思う。
毎日が疲労困憊だ。そしていつか、ついていけなくなる。その時俺は本当に落伍するだろう。それまでどうすればいいか、俺には分からなかった。
なにもかも怖かった。その分、ユリが慈母に思えて仕方なくなる。
当の慈母さまはそんなことつゆ知らず、
「悪戦苦闘って感じで、見てて飽きないよ」
などと言う。風呂場でマットの上にぺたんと座り込み、生脚に乗せた俺の髪を洗っているところだった。
「ったく、他人事だと思いやがって」
「生意気言うと放り投げるよ?」
そう言われ、素直に引き下がる。それに、今はユリの膝の上だ。こんな状態でどんな虚勢を張ったところで仕方がなかった。剰えシャンプーをしてもらっている状況だ。人形のように腿の上に乗せられ、裸の巨体の上から降りることさえままならない。滑って落ちれば怪我をしかねないのだ。髪を洗われながらただじっと、太ももに散った泡が垂れているのを見ているしかなかった。濡れて煌めく太ももは、一本でも俺の全身よりなお大きい。腕を回しきることもできない。負んぶに抱っこ。俺はユリに逆らえない。ほとんどなにもしてあげられない。生かされていて、その掌上、ひたすら慈悲にあずかるだけだ。
捨てられれば生きていけない。捨てられたくない。どうすればいいかわからない不安感だけが募る。
「……まさか人間扱いさえされないなんて思わなかったよ」
「……どう言って欲しいのかな? でも、私たちからしたらペットみたいに見えるのは本当のことだもの。それに、もうヒロくん自身慣れ始めてるんでしょ?」
「……ああ。幼児体型のお前がでかいことに違和感はなくなったよ。巨人は巨人だからな」
「へえ?」
減らず口を叩く小人の上に、ユリは手桶のお湯を浴びせかける。
「わっ?!」
鉄砲水に俺は太ももの谷間を流され、マットの上まで弾け出された。寝転んだ視界の奥で、山のようなユリが椅子に腰を降ろそうとしていた。安産型の尻をそこに落ち着け、足を俺の方に投げ出す。
「私も髪洗ってるから、よろしくね?」
ポイと小さなスポンジを投げてよこす。
「大口叩く小人さんには当然できるよねえ?」
湯気の奥で悠然と聳え立つユリの裸体。小生意気な少女のような顔で、ユリは俺を見下した。怒ってる時の癖だ。
ブツブツ言いながらも俺はユリの足に近寄った。その細い足が、今では俺の半身と変わらない大きさなのだから妙な話だ。スポンジを足指におしつけ、擦り始める。
「そうそう、偉いねーヒロくん? ヒロくんはこんな幼児体型な私の足をなんとか洗える、働きアリな小人さんだよ。ほら、たかいたかーい」
指を磨いていた俺を、ユリは両足で掴んで持ち上げる。突然全身を挟む石鹸まみれの巨人の足に、俺は悲鳴をあげてしがみついた。
「おいっ、やめ、やめろって! 人を足で挟むなバカっ! わ、落ちるから早く降ろしてくれ!!」
「必死にならなくてもほんの少ししか持ち上げてないよ? ふふ、子供向けの靴しか入んない足なのにさ、そんなにしがみついちゃって、大変そうね」
哀願にやっと足を降ろしてくれたユリは、俺が甲斐甲斐しく足を洗っているのを見ると、満足そうに笑った。そして髪を洗い始める。クシャクシャと髪を揉む音が聞こえてくる。以前は洗ってやっていた長い髪も、一人で洗うのはさぞ大変だろう。それを思うと、すこし申し訳ない。せめてもと足裏を丁寧に洗う。くすぐったそうに時々震えるのが愛らしかった。
座るユリの脚の下に入り込む。頭上にはむにっと肉のはみ出た太ももがあり、そこからふくらはぎが二つ伸びていた。くるぶしから下腿をなぞり、ふくらはぎをせっせと磨き上げる。乳白色にほんのり赤みが差して、その弾力に震えるのが良い。そしてひかがみのどことなく扇情的なくぼみを撫でていると、
「動くから潰されないでね?」
マットと足を擦らせるキュッと音を立てながらユリが腰を浮かした。両膝をついて、コンディショナーを取ろうとしているようだ。俺に水を滴らせながら巨大な臀部が頭上をかすめ、その膨らみで俺を見下ろす。
「……」
からかってやろうか。
そう思い巨尻の下へ入り込む。尻たぶにスポンジを叩きつけ、割れ目へ手を滑らせると、尻の谷間をなぞりあげる。
「ひゃんっ?!」
驚き俺の手を挟み込むと、巨大娘の尻が落下してきた。ドシンと重々しい音を立てると、冗談みたいにでかいその豊満な尻は俺を圧し潰し、マットと尻でサンドしている。
「ばっ、ばっかじゃないの!? 踏み潰されたいの!?」
慌ててユリが叫ぶ。悪童を叱りつけるような声音で、文字通り尻に敷かれた俺を罵倒した。が、物も言えない小人を見て気が抜けたのか、追求の声がない。すこしモジモジと俺を踏みにじった後、ハァとため息をついて腰を浮かせた。尻にへばりつく俺を剥がし、膝の上に乗せる。
「……小ちゃくなって、やることまでくだらなくなったわね。すぐ洗うからそこで待ってなさい」
巨人様はたいそうお怒りでそうおっしゃる。綺麗に並ぶまばゆい太ももに再度乗せられ、ユリがコンディショナーを髪に絡ませるのを見上げた。その仕草に揺れる乳房がこちらを向いている。その先からポタリと、雫が垂れた。
素知らぬそぶりで手をつき、足元の生脚を洗い始める。ユリの脚はくすみ一つない見事な美脚だ。肉付きよくぴっちりと閉じていて、その隙間に手を滑らせるとすっかり咥え込まれてしまう。確かな弾力は俺の力をはねのけてしまって洗うのが難しい。
ユリが俺を見下ろしクスッと笑った。不意の妖艶な表情にどきりとしてしまう。
小人の乗る脚をそっと開いた。脚の間に落とされる。
「可愛い子。そこも全部、ちゃんと洗いなさいね、見てるから」
そこ。露わになった危うい場所。良いのだろうか? 不安に思い見上げると、彼女はゆっくり頷いた。
内股を撫でながら、すこしずつそこへ近づく。
「……んっ、ちょっとくすぐったいね」
ユリが面白がる。それはそうだろう。内股の間、僅かに膨らんだそこをせっせと磨いているのだ。見せつけるように股を開き、ショーツに隠されているべき場所を触らせている。
……あれ、これは股間を洗って奉仕している形になるんじゃないか? 今更気づくももう遅い。ユリは俺の甲斐甲斐しい奉仕をじっくり見つめていて、その裸で俺を囲んでいる。それに、それは悪くないように思えた。それは、これまで互いに洗いあってきたためか、それとも……。
俺が洗い終わるまでたっぷり時間を取ってから、ユリは片手で俺を抱きかかえ、洗い残しのないよう体を撫でた。石鹸だらけになって、ぬちゃぬちゃと体同士が触れ合う。ユリのふよふよとした柔らかさと暖かさに抱きしめられ、たまらなく肌が気持ちいい。僅かに乗った脂肪。頭を撫でる乳房の重み。密着する裸、そして共に湯を被れば、ユリの手で生まれ変わらせられたような気さえした。
「お待たせ。あったまろうね」
俺を持ち上げ、片足を湯船につける。そしてザブンと入り込む。ユリの体積の分、膨大な水が溢れ出し、かき混ぜられた湯で体が持っていかれそうになる。しかし力強い腕は俺を逃がさない。流されないように胸に縛り付けると腕の上に座らせる。そして自分の方に向けさせると、俺を胸にもたれ掛けさせた。頰を谷間に押し付け胸に寄りかかればまさに極楽で、気持ち良さにため息が漏れる。
「私の座り心地は良さそうね」
「……洗わせられた報酬としては、充分かな」
「ふふ、素直じゃないんだから。もしかして、浮いてるおっぱいでちょっと狭いかな? 本当は膝の上に座らせたかったんだけど、私が動いたら溺れちゃいそうで怖くて。ヒロくん、私の足よりちっちゃいんだもん」
「どデカイ足は洗い甲斐があったよ」
「ふん、デカい口叩く前に、さ、せめて股間はもう少し大人しく、ね?」
バッと股間を隠すが遅すぎる。その肌に擦られ、恥ずかしいくらいに怒張していた。
「……頼むよ」
「今はだーめ。お湯汚したら今度から別々だよ?」
「ご無体な」
「このエロザル」
ブクブクと湯の中に沈む。そうでもしないとどうかなりそうだった。
湯の底には肌色の塊が地形のように広がっていて、見上げれば水に沈んだバストの裏側が揺れていた。よく見れば、ユリも乳首が僅かに充血している。ユリだってチビな俺に興奮している。お互い様のようだった。
しかし風呂ではしない約束だった。昔俺に付き合わされて、ユリが湯あたりしたからだ。今俺がユリに襲われれば湯あたりでは済まない。
ユリが脚を伸ばしたせいで、たゆたっていた俺は揺さぶられる。慌てて浮上して、唯一すがれるユリの谷間へ入り込んだ。
「……」
じっと胸元の俺を見つめる。
無言で胸を寄せた。
「やめっ……!」
確かな弾力に俺の体が挟まれる。ムニッと広がってきた時には顔まで飲み込まれるのではないかと焦ったが、頭と足先だけは容赦してもらえた。そのままユリが体を沈めるものだから、おっぱいに挟まれたまま水面下に引きずりこまれる。
そして手を離すと、乳房と共に浮かび上がる俺。
それを見て一言、
「おっぱいで死ねたら、本望かもね」
そう呟いた。
風呂から上がるとユリは俺に仕事を与えた。
「これ塗ってよ。ご褒美でしょ?」
ユリは意地悪にも、俺を使役する喜びを覚えたようだ。ボディミルクを渡して言い放った。
「俺にやらせたら湯冷めするぞ」
「あなたが急げばいいのよ」
「……御意のままに」
タオルを敷いて寝転ぶ巨大娘。その幼い頭身の裸体が山脈となる。
「こういうの、結構好きでしょ?」
ニヤニヤわらいながら振り返ってくる。腹にむっちりとできたシワが生々しい。
「そんなこと言っておいて、これから俺にあれこれさせるつもりだろ?」
「ふふん、どうだろうねえ?」
巨大娘にからかわれる。
「じゃあ始めるぞ」
「ひんっ?!」
ピトッと腋に手をつけた途端巨体が跳ね上がる。手が冷たかったらしい。
「……次やったら腋で挟むよ?」
ごめんごめんと笑って、手にボディミルクをたっぷり乗せる。二の腕になすりつけ、そのまま左右に伸ばしていった。腋の丸い窪みをさする。すると大きな体をピクピク揺すってユリがくすぐったがる。押し広げられた乳房がムニムニ動くのが良い。こき使われるのも悪くないように思えた。前なら極限まで顔を近づけても見れなかったユリの細部を、今なら見ることができる。
ユリの傍からよじ登り、背の上に立つ。大きな尻の丘の先には足が小さく伸びていき、反対では肩甲骨の向こうでうなじがのぞいている。ここが、とびきり小柄なあのユリの上だと思うと不思議だ。そのすべすべとした背に触れ、伸ばすミルクは肌を照り輝かせていく。そのツヤが女の背中のラインを際立たせ、なまめかしくなる。そんなユリの背中に溺れる。その体熱でふんわり広がるラベンダーの香りが、ユリの香りとともに立ち上っていた。
小さな体でも駆使すればなんとかなるものだ。一面の背中はしっとりと潤って、俺は徐々にその尻の上へ登っていった。
「ヒロくん、熱心にお尻触ってる。楽しいのかな? お尻の上に乗ってボディケアさせられてるのって、どんな気分か知りたいわ。前は鷲掴みにしてたのにね、本当、ちっちゃくなったね」
クスクス笑いながら脚を揺らす。それに伴って尻の筋肉が俺を持ち上げるものだから、滑りそうでヒヤヒヤだ。さっきのように割れ目に手を突っ込んで懲らしめてやろうかとも思ったが、それは後が怖い。お姫様のいいなりになることにした。
「俺の性癖知ってるだろ? もともと安産型の尻がこう大きいと、な、この迫力を見せてやりたいよ」
「……怒るよ?」
若干の殺意を孕ませお姫様。とはいえ内心堪らないのは確かであり、できれば今すぐにでもその尻肉をかき分け突っ込みたかった。山のような尻に包まれる快感はどれほどだろう。罵られながらでも良い。そして上体を起こしたユリの尻に敷かれ、叱られながら射精してしまうのだ。それがどれほど惨めな想像であろうと、興奮を禁じ得なかった。
しかしそうすれば二度とボディケアを手伝わせてはもらえないかもしれない。それは惜しい。そう思い太ももに進む。これもまた心が踊るのは確かだったから。
むっちりと性的にせめぎ合う太もも、その上を虫のように這い回っていく。くっつき合った裏腿の間から僅かに陰部が盛り上がっていた。触れば大目玉だろう。周囲を保湿していくと、水に濡れたように輝くのが美しい。ただでさえ美脚なのだから、本当に匂い立つような色気だ。ひかがみもフェティッシュで、それに奉仕させられている自分の無様さにどこか酔わされてしまう。
ふくらはぎにまたがり塗っていく。が、
「うわっ?!」
ボディミルクに滑って転げ落ちた。よじ登ろうとする、が、ぬめり滑ってなかなかうまくいかない。仕方なく足裏を塗る。握られすこしシワの寄った足裏をくすぐり、足指の間まで塗り込んでいたところで、くすぐったさに耐えかねたユリに無意識に蹴飛ばされてしまった。
「あ、ご、ごめん! でもなんで足ばっかり触ってるの?」
「滑るんだよ。勘弁してくれ」
「あーヒロくんには荷が重かったかな? いいよいいよ、どうせできないって思ってたもん。こっちの方やってちょうだい」
足の間の俺をつまみ上げ、仰向けになった腹に乗せられる。
「ちょっと寒くなってきたから、もう少ししたら私が済ますよ」
「初めからそうしてくれよ」
「嬉々として私の体這い回ってたの、誰かなー?」
簡単にやり込められてしまう。むう、と言葉に詰まる。
「サービスよサービス。ちっちゃくなって参ってばかりだといやになるでしょ? 単純なヒロくんの好きにさせてあげてるんだから感謝してほしいわ。ほんと、私ってなんてできた恋人なのかしら」
それにこんなチビ助に触られたって恥ずかしくないもの、と腹の小人をせせら笑う。口先だけ、とも言い難いのが複雑だ。実際、小人へのご褒美とでも思ってなければこんなことしないだろう。ユリは、簡単に自分の体をおもちゃにさせるような女ではない。なんだか本格的にユリに奉仕させられている気がしてきた。
考えても仕方ない。とにかく、と思って胸元に向かった。……どちらにせよ、左右にどっしりと流れるこの山を前に、「待て」ができる俺じゃない。吸い寄せられるようにバストにすがりついた。谷間に身を沈ませる。
「わっ、もうプライドなんてかけらも残ってないね」
「どうせこうするってわかってたんだろ? カッコつけても見透かされるんだ。こんな小人がユリに敵うはずない」
「ふふ、いい子ね」
指で俺の頭を撫でる。
「でもね」
そして突然、指に巻きつかれた。ユリが起き上がって、
「ちょっとノロマすぎよ」
そう言うと俺の上にボディミルクのチューブを持ってくる。
「ま、待てって。すぐ、すぐやるからっ、わ、うわっ!」
容赦なくそれをかけられる。ぬちゃぬちゃと手のひらの上で転がされ揉まれると、一瞬でミルクまみれだ。巨人の手の中から逃れようとするが、その細い指はがっしり俺を縛ってとてもじゃないが太刀打ちできない。
「じゃ、スポンジ役よろしくね」
クスクス笑って俺を肌に押し付ける。とんでもない重圧で生肌に挟まれた。
「やめてくれっ、やめ、ってわああっ!!」
俺ごと塗りこめるように手を滑らせる。その肌にめり込んだまま俺はユリの中を泳ぎまわる。
俺の形に合わせてムニムニとうねる柔肌。腹や脇、首筋がのしかかってきて無力な小人を蹂躙する。乳房の表面をゴシゴシと擦られ、嫌という程その柔らかさ、乳腺の弾力を思い知らされる。きっと体を洗うように肌をなぞっているだけなのだろう、しかし巨大なお姫様の巨体は俺にはスケールが違いすぎた。振り回されクラクラと目が回る。そしてユリが手を止めた時。
「あ、失神しちゃった」
俺は惨めにユリの体で嬲り尽くされていた。
ハッと起き上がると、もうユリは寝ているようだった。その胸を上下させて、くうくう寝息を立てている。
流石にキレそうになったが、それを見て気がそがれてしまった。
まさか失神させられるなんて。
そう思うと怒りより情けなさが勝る。そんな気の緩みのせいか、くしゃみを一つ。
「……」
ユリの山脈を前に立ち尽くす。心なしかもっと大きくなっている気がした。自分の大きさがわからない。縮んだ体は冷えやすく、寒い、すぐに布団に潜り込みたい。が、あまり近づくと寝返りを打ったユリに潰されるかもしれなかった。特段寝相が悪いわけではない。が、その綺麗な寝姿でも、小さな俺がそばにいれば身じろぎ一つで小人をひき潰すには十分だった。もう何度も下敷きにされて、その尻の底で朝を迎えている。こうなるとペットとしても落第だ。無意識にユリに潰されて、朝からユリに嘲笑される日々を送っていた。
別々に寝たらいいのだが、それは嫌だった。これは俺の駄々だ。一緒に過ごすこともできなくなってしまったら、もう何もできない気がした。
脚の間で寝たりすることもあるが、ユリに見つかると叱られる。腹の上というのも安定しないもので、欲をいえばその胸に挟んで欲しかったが、これはご褒美としてでもないと許してもらえなかった。そうするとユリに抱かれて寝るか、肩の上、首のとなりに丸まることになる。枕の上でその頰に寄り添ったり、その寝返りに起こされちょこまかとユリの周りを動き回ることで手を打つこともあった。が、やはりユリの体は大きすぎる。その重みを骨身に叩き込まれる日々は終わらない。小さくなればなるだけ隙間に入り込み易くなってはいたが、安全性は大いに疑問だ。それでも近くにいたい。それくらい、ユリが好きだった。
その細い手を見る。その肌を転がされた先ほどの記憶が蘇り、何故だか落ち着かない。こちらに顔を向け、胎児のように体を丸めるユリ。その肉厚な唇に口づけをして、枕にされた腕の中に潜り込んだ。
顔とユリの腕に囲まれた狭い空間。その寝息とむせ返るようなユリの香り、鼓動に支配され、酩酊に似た眠気に誘われる。ユリに包まれる安心感はこの体には過大なほどだ。その圧倒感が大好きだった。俺は完全にユリの所有物だ。身も心もユリに掌握されていた。そう作り変えられてしまったのだ。
もっとユリが欲しくなり、シャツのはだけた首元に入り込む。ゆったりとした服の中、腕の上に乗った。尻に二の腕が柔らかい。目の前では腕に乗った乳房がせり出していた。その上半分にしなだれ掛かる。
布団の中の蒸し暑さ。ユリの香り、ユリの熱、柔らかさ。湯気の立つほどのユリのフェロモンに包まれる。至福。主人の中にいる光栄が嬉しくてたまらない。食べられたかった。そのナカに飲み込まれたかった。そうすれば俺はユリになれるだろう。
自身にさえ隠していた被虐欲をぶちまける。その快哉。そうか、俺はユリに支配して欲しかったのだ。
「ユリ、大好きだ、本当に、本当に」
そう呟いて、感謝の言葉をそれに続ける。瞑目したまま、寝言のように、うわ言のように囁き続ける。この女神がいなければ、俺はとうに自殺していたかもしれない。俺はユリに生かされていた。いくら強がってもそれは本当だ。そのせいでふざけた態度を取ってしまうが、感謝せずにはいられなかった。ユリがいる。嬉しい。愛しい。愛ばかりが募る。
その乳房に頰を擦り付ける。たぷたぷとした柔らかさはウォーターベッドのようだ。思わず舌を這わしてしまう。その甘さ、そして僅かな塩っ気。もう止められない。もぞもぞと脇の方へ伝っていき、乳房の奥の方へと入り込んでいく。乳房がシャツにのしかかり、パツパツに帆を張っていた。シャツと乳房の間に挟まる。
圧迫感に否応無く欲情してしまう。壁ずりするようにその柔肌に体を擦り付け、全身でユリを感じた。頰に乳首が当たる。もう構うことはない。そこにグリグリ額を寄せた後、むしゃぶりついた。
プリプリとした母性の核、凝集したユリの肌。刺激に反応して少しずつかたくなり、舌触りのよい凹凸と、乳腺から滲み出るミルクのような香りが滲み出てきた。その甘みが鼻腔を通り抜け、陰茎が痺れ出す。乳房の下敷きになりながらユリに授乳される。圧倒的な質量の母性に腰をすり寄せ、腕を目一杯広げてその大きさを堪能した。汗ばむほど暑い。ユリの血が通っている。それに肌一枚隔てて抱き合っていた。多幸感に気を失いそうだった。
「何してんの?」
ビクッ、と硬直する。巨大娘は乳房に張り付く不逞の小虫をつまみ上げた。
「ご、ごめん」
「何してんのって聞いてるの」
指先に吊り下げられたまま、眼下に広がるユリの顔に怯える。これは答えないともっと怒るパターンだ。言葉を探し、
「胸を触ってた。謝るよ」
「謝ります、でしょ? 触っただけじゃないよね?」
「……舐めてもいました」
「それだけで股間はそんなことならないよ? あと、なにか言ってたよねえ?」
聞かれていたのだ。カァッと顔から火が吹く。
「……俺は、ユリのおっぱいに触って、舐めて、好きだと言いながら、一人で気持ちよくなってました」
「ふふ、よくできました」
わーパチパチとユリが茶化す。穴があったら入りたい。が、俺はユリの上空で宙ぶらりんだ。
「ま、今日は特別に許してあげる」
「ほ、本当に?」
「ふふ、でもそっかあ。『ユリ、殺されたいくらい愛してる、ありがとう、大好きだ』、だっけ? アハッ! はっずかしいよねえ、虫みたいに這い回ってオナニーしながらこんなこと叫んで、しかも見られちゃってるんだもん」
顔を覆う俺を容赦なく囃し立てる。
「で、さ」
ポトっと俺を放り投げる。
「こんな惨めなチビ助見てたら、なんか疼いちゃって。手伝ってよ」
クスクス笑いながら、ユリがそんなことを言う。見上げれば股の山の向こう、ほんのり頰を上気させたユリがいた。
「ま、嫌でも無理やり付き合わせるけどね。拒否権なんてヒロくんにあるわけないじゃん。こんなにチビ助なんだもん。さ、おいで?」
そういって脚を高々と伸ばし、両手で太ももを胸に引き寄せた。恥部が丸出しになる。所謂まんぐり返しの体勢。重量感のある尻と太い裏腿、綺麗な下着が一挙に目前に広がった。
「ご褒美じゃないか」
恍惚として俺は近づいた。指が太ももの柔肌に食い込んでいる。
「そのかわりこれからあなたは私のおもちゃよ? いいの?」
俺は答えを口にすることなく、その下着に唇を重ねる。その感触にユリが息を飲む。
「あーあ、ヒロくん舐めちゃった。そんなに私に弄ばれたい? 私のこと無理やり押し倒してたのに? でもそれがいいんだよね、だってこんなにちっちゃいもん。いじめられたいんだよね?」
ケラケラ俺を嘲笑しながら性的に奉仕させる。愉しいに違いない。すでに濡れていた下着は、すでにぐっしょり重たくなっていた。
「脱ぐからちょっと離れてて。私のパンツに巻き込まれちゃうから」
その腰に手をかけ、ショーツを脱ぎ出す。丸い尻を包んでいたそれは糸を引きながら立体感を失っていき、変わって美しい陰部が現れた。
「お舐めなさいな」
冗談めかしながら、優越感を滲ませてユリが言う。俺は上半身をびしょ濡れにしながらそこに抱きついた。
「わっ! もうヒロくんがっつき過ぎ……ひゃんっ! ねえ、もっと上の方がいいなあ」
ねだるような声。背伸びして上の方を撫で上げる。嬉しいことに、ユリはちゃんと感じてくれた。
「いい子いい子。ちっちゃい体で頑張ってるの、とっても可愛いよ。私の子供みたいな体もきっと山みたいに見えてるんだよね。舐めさせられて、遊ばれて、でもそれが嬉しいなんて、ヒロくんはホントに困った小人さんね」
本当に山のような体でユリは囁く。汗が白い肌に滴り、同じく頰に汗を垂らしたユリが体を丸めて俺を見下ろしていた。発情しエロい顔で小人を見つめ、舌舐めずりする。俺は居ても立っても居られず、体をそこへめり込ませペニスを押し付ける。
上半身をまるごとキスできてしまうようなユリのクチビル、そんな肉厚な秘部に俺のものはささやかすぎた。同じ人間の性器、そのはずなのに、ユリの美しい窪みは俺の体さえ飲み込めそうだ。懸命にその中をこする、けれど大きなお姫様を満足はさせられない。
「ほらがんばれがんばれ! 私の体おっきすぎるけどヒロくんならできるって。ね、十センチくらいしかない小人さん♫ 必死に私のお股に張り付いて快楽に耐えながら必死に私に気に入られようとして、でもまだまだなの、本当に可愛いっ! 可愛すぎて踏んづけちゃいたい、飲み込みちゃいたい! ……んっ、今のは良かったよ。おいでおいで!」
ユリに煽られ俺は必死にユリを求める。その体の厚み、股の高ささえ俺の目線より高いところにあったから、上半身はユリの股に舐められきって濡れ鼠、足にも蜜が垂れて温かい。幅でさえ俺を凌駕する太もも達に見下ろされ、からかうユリの美貌に見守られ、俺は腰を打ち付けた。
「もっともっと! 大変かな? 大変だよね、だって私はこんなに巨大でヒロくんはこんなにちっぽけで……。なら巨人のお姉さんが手伝ってあげる。怖かったら言ってね? ヒロくんちっちゃすぎて力加減間違っちゃうかもだから……っ!」
ズダンッと左右に足が降ってくる。完全なM字開脚だ。ニコニコ見下ろすユリが俺に手を伸ばし、背を包み込む。そして、
「むぐっ!?」
一気に股間に押し付けた。
「わっこれ気持ちいい! やったねヒロくん、こんなにサイズが違う私たちでもセックスできるよ! ふふ、でも私の一人遊びみたい。完全に私の体で隠れて、頑張ってるヒロくんが見えないね? 手の中でもがいてるのがよくわかる。ね、私のそこあったかいかな。おっきい? 怖い? 入りたい? 全部だよね。ほらゴシゴシ♫」
興奮したユリから無限に蜜が溢れてきて、もう手の中は海のようだった。ローションプールのように水音をたて、ぬちぬちとユリの女性器は俺を凌辱し、その全体を俺に擦り付ける。俺は半ばユリの中にはまり込み、茹だるようなその熱に浸されていた。キツキツのその割れ目が俺の腕や首、男根を咥え込む。ユリの奥に入り込める喜びに、俺はユリの名を叫びながら全身で頬ずりした。
「あぅっ……、ふふ、頑張ってるねヒロくんっ。じゃあ、もっとご褒美っ……やっ!」
俺の体をユリが押し込む。肉の洞窟にめり込む体。そしてヌプッと音を立てると、俺はすっかりその中にはまり込んでしまう。
「んんっ、ヒロくんっ、ディルドになっちゃったねっ! わかるかな? 私の指でかき回されたり、何度も奥に突っ込まれたりされてるんだよ? ねっ、バタバタしてるのとっても可愛いのっ!」
ギュウッと周囲の肉が俺を挟み込む。吸い付くようなそのヒダは、俺の体が引かれると陰圧で俺にまとわりつき、押し付けられればその圧倒的な肉感で俺を圧倒した。粘膜のシワにペニスが擦れて気持ちいい。足を摘まれジュポジュポと膣の中に擦り付けられ、指で俺ごと秘部をかき回すたびに頭が飛びそうな痺れが襲ってきた。
ユリの喘ぎ声が膣内に響き始める。キュウキュウと肉の波が俺を締め付けてくる。その奥に頭を打ち付けるとユリの巨体が跳ね上がりそうになって、フウフウと必死にこらえているようだった。やっぱりユリだ。俺に押し倒されていた時と変わらない。瞳を潤ませ苦しげに息をして、涎の垂れるのも気にせず嬌声をさえずる。小さな体を必死に押しとどめ、快感で普段のクールさが飛んで行くのだ。それはとても可憐でエロティックで、愛しさがこみ上げてくる。
俺はヒダにしがみつき粘膜にペニスを打ち付けた。ギュウギュウの膣の締め付けで陰茎はめり込み、驚くユリの悲鳴が響く。
「ひゃあっ!? ちょっとヒロくんいきなりはダメっだってっ、……ゃあっ!!」
キツい膣の中でなんとか腰を振り続ける。そしてユリもスイッチが入ってしまったようだった。騎乗位の体勢になって、手のひらに乗せた俺の上に何度も尻を振り下ろす。先ほどとは比べ物にならないほどの激しいストローク。上下する膣の壁に舐めまわされ抱きしめられ、子宮口が何度も俺にキスをしてくる。もうお互い限界だった。ひときわ大きな衝撃が走る。そしてユリが悲鳴に似た絶頂の声を上げると、俺たちは共にエクスタシーを迎えた。
快感に痙攣して、ベッドに身を沈めるユリ。俺を膣から引き抜くと、
「おつかれさま」
そう言ってまとわりつく愛液をなめとった。ザラザラとした舌が巻きつく。
「あーあ、朝になっちゃった」
そう言って息も絶え絶えの俺を胸の上に寝そべらせる。汗で湿った肌は適度にひんやりとして気持ちいい。
「どうする? もう一眠りする?」
俺はユリの顔を見上げた。額に濡れた髪が張り付いていて、色っぽい。
「それとも……」
ニヤリと笑って、ユリは俺に手を伸ばした。