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過疎配信者えりの1/1000惑星排泄蹂躙アーカイブ
"はい、お会計。"
"はっ、はい!"
"ごちそうさまでした。また来るわね。"
"あの人、今日も荒れてたな……また残業かな……"
彼女の名前は絵里。25歳、身長165センチ、体重60キロ、彼氏なし。行きつけの中華料理チェーン店で、大盛りのラーメン+チャーハンセットにレバニラ炒め、追加で餃子2人前とビールを平らげたところだ。最近残業続きの上、便秘気味で肌の調子も悪く、ストレスが溜まっている。絵里のストレス解消法は食べることだった。そのせいか最近、ただでさえ大きかった胸とお尻がますます成長しており、スーツのスカートもジャケットも心なしかキツくなっている気がする。他の人に気づかれる前にダイエットしないと、と考えている絵里だが、内側からの圧力でグレーのスカートスーツの胸と尻をパツパツに張りつめさせながら、鬼気迫る勢いで皿を空にしていく様が店内の男性の視線を集めていたことには無自覚だった。
帰り道にコンビニに寄り、ロングのストロング缶を2本買って帰宅する。賃貸マンションの部屋の明かりを付けると、畳まれていない洗濯物の山や、インスタント食品の空容器が目に入る。その中で、部屋の一角だけが綺麗な状態に保たれていた。
"あ〜〜〜疲れたな〜〜〜。"
鞄を床に落とし、ぐぐぐっと伸びをする。窮屈そうなスーツの胸がはちきれそうだ。
"……ふー。さて、今日もいっちょやりますか!"
スーツとシャツをベッドに脱ぎ捨て、メイクを軽く整える。そしてクローゼットから服を取り出す。胸元に黒いリボンがついた、フリル付きの白いブラウスに、こちらもリボンがついた黒いミニスカート。丈は太ももの半ばまでしかない。髪はツインテールに結び直し、黒いマスクを付ける。
"みんな〜、今日もえりの配信を見に来てくれてありがと〜〜!"
"待ってた""今日もお疲れさま!""また残業?"
視聴者からのコメントがモニター上に流れる。絵里は動画配信プラットフォーム上で、配信者"えり"として配信活動を行っている。もちろんリアルの知り合いには秘密だ。
"そーなの。あのクソ上司がさ〜……"
ストロング缶を傾けながら、適当な雑談をするえり。視聴者の求めに応じてエッチなポーズをするだけで投げ銭が飛んでくる世界に初めは戸惑ったものの、今ではちょろい小遣い稼ぎと考えほぼ毎日配信を行っている。もっとも、えりの視聴者数は決して多くはなく、平均して十数人程度だ。いわゆる過疎配信者だった。
"それじゃ、今日もリスナー達のリクエストを聞いていくよ! えりにやってほしいことを教えて!"
えりの発言に、コメントの速度がわずかに上がる。
"ストレッチして""バランスボール""バナナ食べて""足のサイズ教えて"
"リクエストありがと〜。じゃあストレッチしちゃおっかな〜。最近肩こりがひどくて……胸が大きいからかな?"
そう言うとえりは腕をぐるぐると回し、ストレッチをする。その過程で胸元を強調するのを忘れない。その後も不必要に胸やお尻を強調しながら、いくつかの動きを行った。
適当にリクエストを広い、ストレッチをしてみせたりバランスボールに乗ってみせたりすると、色付きのコメント――投げ銭付きコメント――がいくつか流れてくる。ここまでで数千円分の投げ銭が入った。しかし、えりは不満そうだった。
"うーん、これだけ? しょっぱいな〜。何かもっと過激なことをやらないと……"
配信を始めた頃はじわじわと増えていた視聴者数も、ここしばらくは横ばいだ。飛んでくる投げ銭の額も下がってきている。ストロング缶を飲み干したえりは、より過激なリクエストを求めていた。
"他にリクエストはあるかな〜?"
"ASMRして"
"うーん、興味はあるけど機材が高いんだよなー。"
"オナニーして"
"BANされちゃうし、恥ずかしいから絶対駄目!"
"1000分の1サイズの惑星の街中で排泄行為をしてほしい"
"1000分の1サイズの惑星の街中で排泄行為ね、ふーん……。……え?"
1つのコメントにえりの目が留まる。投げ銭の上限である5万円とともに投稿されたそのコメントには、"1000分の1サイズの惑星の街中で排泄行為をしてほしい"と書かれている。その投げ銭の額と内容に、コメントもざわつき始める。
"変態がいて草""排泄見たくなってきた""やったら投げ銭する""俺からもお願いします!"
"小人の街の中で排泄って……。何食べてたらこんなこと思いつくのよ。でもコメント盛り上がっちゃってるな……。"
先ほどのコメントに対する賛同の投げ銭が飛び始める。もはやこのコメントを見なかったことにはできない。
"投稿者は……〇〇〇〇さん、初めて見る名前だなぁ……。まだリクエストに答えてもないのにこんなに投げ銭くれるってことは、実際にやったらもっとくれるのかなぁ。うーん、流石に恥ずかしいけど……投げ銭は欲しいし……。それに……。"
そう思いながらえりは、へその上に手のひらを重ねる。実は配信を始めた頃から、久々のお通じが来そうな気配があるのだ。トイレに流してしまえばそれでおしまいだが、もしかしたら私を苦しめてきたこのうんちでお金を稼げるかもしれない。
えりは嫌々ながらも、心の中で覚悟を決めた。小人の惑星はめちゃくちゃになってしまうだろうけど、それは私のせいというよりはコメントのせいだし、珍しい配信内容は視聴者数増加のきっかけになるかもしれない。
"わかった、わかったわよ! 小人の星でうんちすればいいんでしょ! ちょうどお腹の具合も悪くないし……。やってあげるから投げ銭しなさいよ!"
えりはブラウザを立ち上げ、惑星の販売サイトにアクセスする。えりの星では、宇宙開発の際に無数に見つかる小さな惑星――そこには姿形はえりたちとあまり変わらないが、サイズは惑星によって数百分の一から数億分の一まで、とにかく小さい生物が生息している――の所有権が売買されていた。超惑星間構造物を建造する上で邪魔な惑星は処分されるが、今の所邪魔になっていない惑星はその座標や文明のレベルが記録され、様々な業者に売却される。なお、それらの惑星の住民は、自分たちが惑星ごとすでに他の誰かの所有物になっていることには気づいていない。
えりが見ているサイトは、個人向けのプライベート惑星を販売するサイトだ。一般に、美しい色をしていたり特徴的な地形があったりするなど見どころの多い惑星や、文明レベルが高い惑星ほど値段が高い。そのような惑星を最近トップレベルの配信者が別荘として購入したことが話題になっていた。そういう惑星は普通のOL兼過疎配信者のえりには手が出せない。しかし、文明レベルが低かったり、大した見どころのない惑星であれば、非常に安い価格で手に入れることができる。
コメントからの指示を受けながら、サイトのボタンをぽちぽちとクリックしていく。実はえりは、惑星発見時の住民がそのまま生息している"生"の惑星に降り立ったことはなかった。1000分の1サイズの惑星の一覧は……っと。え、ワープ代もかかるの? それだとあんまり遠くの星はお金かかるから行きたくないな……。これでいっか。えりは適当に青色の星を選んだ。お値段は数千円とお手頃だ。
"惑星はこれに決定! ちょっとお出かけの準備するから待ってて!"
席を外し、クローゼットから白い靴下を取ってきて履く。ふくらはぎ下の長さのクルーソックスだ。ポーチを肩にかけ、玄関から黒い靴を取ってくる。まるで濡れているかのように光を反射する合成皮革製のストラップシューズに、5センチほどのボリューミーな厚底ソールがくっついたようなデザインだ。冷蔵庫に入っているもう1本のストロング缶も忘れない。片腕で靴とストロング缶を支える。そして、モニターに取り付けられている丸みを帯びた直方体型のカメラを、部屋の片付けられていないエリアが映らないように慎重に取り外す。配信を行うためのスマートフォンを持ったら、映像の出力先を目の前のモニターから、コンタクトレンズ型デバイスに切り替える。これで自分の部屋から移動しても動画を配信できるし、コメントも拾うことができる。
"お待たせ。それじゃあワープするね。"
"わくわく""星レポ期待""小人は災難だなww"
えりはスマートフォンからワープアプリを起動し、目を閉じた。
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"ワープ終わったよ""夜だ""こっちと時差ないのか"
コンタクトレンズ型デバイスにコメントが流れる。ゆっくりと目を開くと、夜の空と平野が見えた。少し目線を下げていくと海が現れる。湾のような形状の地形なのだろう。海の上には直線的な形状をした島が見える。島の地面は平らで、水面との高さの差はほとんどないことからも、人工的に作られたものだと感じる。更に目線を下げると、高さ15センチ程度のビルがいくつか密集している様子が目に入る。その近くには複数の線路をもつ大きな駅が見える。そして暗くて見えづらいが、その周辺には高くても5センチ程度の高さの建物が、道路の直線によっていろいろな形に切り取られたスペースにびっしりと並んでいる。どうやら1000分の1サイズの小人の惑星の、それなりに栄えている街にワープアウトしたようだ。
"これが"生"の惑星……。当たり前だけど、私たちのサイズに合わせたものは何もないのね。"
もともと1000分の1サイズの生物が住んでいた惑星でも、別荘用に購入された惑星などではもともとの住民の痕跡は完全に消し去られており、えりの惑星の人々のサイズに合わせた建物が立てられるのが一般的だ。ここにはそれがない。
"足元に広がってるのが街なの? 本当にちっちゃいのね……。夜だし、細かすぎてよく見えないわ。"
えりはカメラの飛行モードをオンにする。このカメラは飛行モードにすると持ち主の周囲を飛び回って適切なアングルから動画を撮影してくれる優れもので、アウトドア系の配信者もよく使っているものだ。音声を認識するバーチャルアシスタント機能も搭載されており、何をどのように撮影するかをえりの言葉でコントロールできる。
"街に近づいて、街の様子を映してみて。"
えりはカメラに向けて話しかける。カメラはえりの手を離れ、街の方に向かって落ちていき、地上から30センチくらいのところで静止した。
"結構栄えてる""あの光ってる粒って車?"
カメラから送られてくる映像は、えりのコンタクトレンズ型デバイスにも送信されている。曲線状の高架や建物と建物の間の道は、えりの高さから見るとなんとなく光っているようにしか見えないが、カメラの視点から見るとそこでは白や赤の点の連なりが動いていることがわかる。さっきよく見えなかった高さの低い建物群は、近くから見ると高さも形も不揃いで、雑然とした印象を受ける。
"もうちょっと近づけられる?"
えりの声に、カメラじわじわと地上に近づいていく。
"小人発見!""めっちゃ撮影されてる""お、逃げ始めた"
カメラがたくさんの小人を捉えた。その大半が、ビルの谷間の道を走っている。一部の小人は立ち止まってえりやえりのカメラを撮影していたが、えりのカメラがどんどんその高度を下げていくとようやく危険に気づいたのか駆け出し始めた。
"これが小人……ちっちゃ。逃げてる逃げてる。おもしろ〜い。どこに行くのかな?"
身長1650メートルのえりの高さからでは、小人の姿は全く見えない。カメラ越しの映像を眺めるのに夢中になっていると、持ってきたストロング缶が腕から滑り落ちてしまう。
"あ"
ひゅるるるる……ずどーん
167メートル、50万トンの缶が垂直に地面に突き刺さる。数センチほどの低い建物が密集する、道路で囲まれた複数の区画が、直径約70メートルの缶の底によって圧縮され、地中深くまで押し込まれてしまった。
"うわっ、落としちゃった。小人さんごめんねー。"
小人の街ごと地面に突き刺さった缶は、それでもその周辺の建物よりも遥かに背が高かった。カメラが缶の周辺の様子を映すが、小人たちは突如としてそれまでそこにあったものに置き換わった水しぶきとレモンの断面、そして9%という度数が書かれた派手な缶の表面を呆然とした様子で見つめていた。
"思ったより缶でっかくて草""地面に刺さってるw""何人分あるんだw"
落とした缶を眺めるえり。その目線は自分の足元に向かっていく。靴下のまま地面に立つえりの足もまた、地面にめり込んでいた。見えないのでわからないが、足の下にはいくつもの建物が下敷きになっているのだろう。えりの長さ24センチ、幅10センチの足は、この世界では240メートル×100メートルのサイズに相当する。小人の小さな建物一棟の水平面の縦横一辺の長さはせいぜい20メートルくらいしかないので、単純に計算するとえりの片足に60軒の小人の建物が収まることになる。
手に持っていた厚底のストラップシューズをぽい、と地面に落とす。ソールは5センチだから、この世界では50メートル。運悪く靴底の下に位置していたいくつもの建物がぺったんこに圧縮され、地面に埋没する。えりは靴下についた建物の瓦礫を払い、ストラップシューズに足を差し込んでいく。そしてぐっ、と体重をかけると、ストラップシューズの片方50万トンの重量に、えりの6千万トンの重量が加わり、えりの片足を中心とした辺り一帯が陥没する。高速道路や線路も巻き込まれ、えりの足の方向に向かって沈み込むように傾いている。いくつも事故が起こっているようだ。
"靴履いただけでこれって……弱すぎね。まるで私が重いみたいじゃない。"
"地面割れてるw""1000倍だから体重は1000×1000×1000で1000000000倍"
"うっさいわね! あんたたちがリクエストしたんでしょ!"
などと言いながらも、えりは内心、自分の些細な動きが小人の惑星に対して与える被害の大きさを感じ、少し興奮していた。
せっかく小人の惑星に来たので記念に写真でも撮ろうとスマートフォンの内カメラを起動し、面白いアングルがないか手を動かしていると、画面の中にひときわ高い建物が映った。海を正面とするとその左側の方向、だいたい10メートル位のところに青白く輝くタワーが見える。足の近くにもえりのソックスくらいの高さの赤く光るタワーがあるのだが、これよりも高そうだ。
"高い建物発見! ちょっとあっちの方行ってみるね。"
もう片方の靴に左足をねじこみ、タワーに向けて歩き出す。地面にめり込んでいる右足が、次の足の置き場を目指して上昇していく。靴底の溝に挟まっていた数メートルサイズの瓦礫がぱらぱらと落下していく。同時に、地面に着いている左足に体重がかかり、地上の構造物を無視して地面に放射状の亀裂が走る。左足の周囲にあるビルが地盤ごと傾く。小さな建物はえりの左足に向かって、坂を滑り落ちていく。えりは足元の様子は気に求めず、右足をビル街に向けて下ろしていく。15センチくらいの、その周辺では最も高いビルの屋上にえりの靴のかかとが触れると、ビルはまるでウエハースでできているかのように崩れだす。しかし、えりの右足が降りるスピードは、はビルが崩れるよりも早かった。高層ビルも低層の建物も関係なく粉々に砕かれていく。地面はえりの靴が接地する前に、えりの膨大な体重と建物の残骸により圧迫され、大きくへこむ。この辺りの地下には、地下鉄のトンネルや地下街が縦横に広がっているのだ。そのような脆弱な地面で、えりの6千万トンの体重を支えられるはずがなかった。えりの靴のソールはビルだろうが地下街だろうがお構いなしに、その下にあるものを圧縮していく。えりの右足を中心に地割れが起こり、むき出しになった地下トンネルや地下街に建物の瓦礫が流れ込んでいく。これがえりが一歩歩くことによって起こったことだった。
"あー……これ、感触が気持ちいいかも。"
タワーまでは数十歩くらいだろう。ざく、ざく、と街を踏みしめながらタワーの方に向う。
"歩くだけでこんなに街を壊しちゃってるのに、何の抵抗もしてこないのね。っていうか、できないか。"
カメラはえりの後方を映しているが、初めは建物の窓や車のランプの明かりできらきらと輝いていた街が、えりが歩いたルートを中心に真っ暗になっていることがわかる。えりのストラップシューズが作り出した足跡の中は夜の闇でひときわ暗く染まっており、足跡の周辺も火災を除いては何の明かりも見えなかった。
"うわ、えっぐ……""災害じゃん""音がいい"
光る街の上に膨大な体重で黒い帯を描きながら、えりはタワーの近くに到着した。
"はい、とうちゃーく!"
細い鉄の棒を編み込んだようなデザインのそのタワーの高さは、えりのミニスカートの裾にも満たなかった。それでもこの辺りの建物の中では他に並ぶものがない高さのようだ。先端に向かうほど細くなるその形状は、えりのむっちりとした下半身と並ぶと輪をかけて頼りなさげに見える。
"小人さんのタワーちっちゃ〜い。目線合わせてあげるね。"
と言うとえりは、タワーの前にどっかりと腰を下ろし、タワーを自らのふくらはぎと太ももが作るひし形の領域の中に閉じ込めた。こうするとえりの目線とタワーのてっぺんが並ぶ。えりの太ももの直径は辺りの建物の高さを軽く凌駕している。
"へー、この中は人が入れるんだ。今は誰もいないのかな?"
タワーに集中するえりに、報道ヘリがゆっくりと近づく。えりの視界に入らないように、顔の側面からゆっくりと近づいていく。えりの歩行速度は時速4000kmだ。動いている間はとても追いつけない。それにしても何という大きさだ。まだ顔から数キロメートル離れているにも関わらず、ヘリの搭乗員の視野は巨人の血色がよく、皮脂でぎらぎらとした頬で占められている。ヘリが捉えた映像はテレビやインターネットで生中継されており、この国のみならず、世界中の人々が巨人の様子を固唾をのんで伺っていた。次の瞬間、中継の映像が真っ暗になる。えりの周囲を旋回し、動画を撮影しているえりのカメラがヘリに衝突したのだ。えりのカメラはヘリを粉砕しても小揺るぎもせず、重力の影響を受けていないかのような軌道でえりの周囲を飛び回っていた。
自分の顔の横にヘリがいたことなど全く気づいていないえりは、スマートフォンを高く掲げて反対側の手でピースを作り、えりと、えりの脚に囲まれたタワーと、更にそのタワーの下に広がる数センチ程度の高さの町並みを写真に収めた。うん、結構かわいいな。
"よいしょっと"
立ち上がり、スカートのお尻をぽんぽんとはたく。
"ケツでかすぎw""尻拓いただきました"
"……?"
コメントを眺め、カメラから送られている映像を眺めると、先ほどまでえりのお尻が置かれていた場所が映されている。えりが座っていたところは、幅500メートル近くの楕円形の領域がお尻の形に陥没していた。スカート越しに押し付けられた股間の複雑な形も綺麗に写し取られている。辺りの様子から見ると、そこにはびっしりと数センチの住宅が並んでいたようだが、尻の跡の表面はぎゅうぎゅうに押し固められており、そこに何が合ったのか判別したり、そこにあったものを分離するのはもはや不可能だろう。
"こら! 見るな!"
恥ずかしそうに顔を赤らめるえり。しかし、自分のお尻が引き起こした破壊を見ると、股間が濡れてくるのを感じる。お腹の中でも、溜まっていたものがゆっくりと降りてきているのを感じた。
********
この街には、数センチ程度の高さの建物が密集しているエリアを海だとすると、高い建物がいくつか集まっている島のようなエリアがところどころにあるようだ。タワーから内陸の方、少し大きなビルが複数集まっている地帯に向かう。さくさくする地面が心地よい。気まぐれに地面を軽く蹴ったりすると、えりのストラップシューズのつま先の方の靴底で、小さな建物たちが爆発するように吹き飛んで面白い。あっという間に狙いのビル街に到着した。
ポーチをそのへんにぽいっと投げ、ブラウスのボタンを外し、袖を抜き取る。むせ返るような甘い香りのにわずかに汗臭さが混じったような体臭がむわっと立ち上る。小人たちの脆弱さに興奮して熱を帯びた肉体に、夜風があたって気持ちいい。ブラウスを畳んで、足元にある20センチくらいの高さのビルにそっと乗せる。
畳んだブラウスの面積はビルの屋上の面積よりも遥かに大きく、ビルの外壁の半分辺りにまで覆いかぶさる。えりの体臭が染み込んだ10万トンの布に、高層ビルの鉄とガラスが悲鳴を上げているようだが、何とか耐えているようだ。続いてスカートのホックを外して脚を抜き取り、スカートをブラウスの上に重ねる。えりが手を放すと、30万トンの厚い布の重量が加わり、ビルは低階層から潰れていった。
ブラジャーとショーツにストラップシューズという姿になったえりは、近くにある大きな駅のような建物に股間を見せつけるようにして座り込む。
えりの尻は駅の片方の側の出入り口の前、広い道の向こう側にあるビルを地下街まで押し潰した。駅ビルは線路に沿う方向に長い形状をしており、えりのお尻の幅くらいの長さがある。百貨店か何かが入っているのか広告の垂れ幕のようなものがいくつか垂れ下がっている。三角座りのように曲げられた両足は駅ビルと線路を軽くまたぎ越し、両足は駅の反対側の街を踏みしめている。そちら側には比較的背の低い建物が多く、かかとが地面に突き刺さり斜めになったえりの靴のつま先よりも高い建物はなかった。
初めはちょっと恥ずかしかったが、今はこの弱い生き物が住む弱い街をもっとめちゃくちゃにしてやりたい、という嗜虐心がそれを上回っていた。そのえりの気持ちに連動するように増えていく視聴者数。現在接続している人数は3桁と、えりの普段の配信ではまずありえない数の視聴者がえりが小人の街を破壊する様子を眺めていた。せっかく小人の街に来たのだから、何か別のこともやってみようとコメントを募ったのが数分前。これからやることを考えると、えりの体が再び熱を帯びてくる。
"はーっ♡ はーっ♡ ねぇ、こびとさん、えりちょっと疲れちゃったから休憩するね。"
そしてえりは、ショーツに包まれた自らの股間を指差す。
"こびとさん、ここに攻撃したら私を倒せるかもしれないよ? 今がチャンスだよ〜?"
"チャンス来た!""これは小人勝てるかも""舐プw"
駅ビルの前に200メートルの高さのクロッチがそびえ立つ。両脚の結合部分が駅ビルに正対するように角度が付けられている。更にその上は広大な恥丘が広がっているが、地上からは見ることはできない。
最初にえりが現れた沿岸部から離れようとする人々は、辺りでも大きいこの駅に集まり、電車でえりから逃れようとしていたのだが、えりが座り込んだ衝撃で線路が切断され、住民を逃がすためにこの駅に集まっていた車両もすべて脱線してしまっていた。希望を一瞬にして失った小人たちのうち1割程度はもはや電車が通る可能性のない駅から逃げていったが、残る数千人の人々は駅の中で身をかがめ、震えながらえりが去ってくれるのを待つことを選んだ。
巨人は動かなかった。そんな中小人たちに吉報が入る。巨人が弱っているのではないか、という情報がSMSを中心に広がっていたのだ。この位置からでは、たとえ駅の外に出たとしても、はるか上空にある巨人の顔をとらえることはできないが、どうやらテレビ局のヘリによる中継によると、巨人はとろんとした表情で顔を赤らめているように見える。まるで熱でもあるかのようだ。
いまならあの巨人を倒せるのではないか? 小人たちのなかで、同時多発的にそのような意見が出始めた。幸いこのビルには百貨店が入っており、武器になるものはいくらでも手に入る。最終的に、数十人の小人がバットやゴルフクラブで武装し、俺達の手であの巨人を倒すんだ、と駅ビルの外へと駆け出していった。
あの巨人の姿形は俺達と似ている。ということは、弱点も似ているはずだ。あのクロッチに包まれた股間を総攻撃すれば、倒せなかったとしてもそれなりのダメージを与えることができるだろう。
数百メートル先にあるはずの200メートルのクロッチは、まるで眼前にあるかのようにそびえ立っている。あまりの大きさに一歩も動けなくなり崩れ落ちる人々も現れる中、勇気のある人々はひるむな、進め、と自分たちに言い聞かせながら向かっていき、ショーツの繊維に手をかけてよじ登り始める。
えりの肉眼では、夜間に2ミリ程度の小人を捉えるのは難しい。その代わりにカメラが小人の奮闘を捉える。
"頑張れ!""今ちょっと感動してる""怪獣をやっつけろ!"
"やっと出てきたわね……。我慢するのも大変なんだから。"
最終的に、えりのショーツには十数人の小人がとりつき、駅ビルからえりの股間までの道路には100人程度の小人が出てきているようだ。えりの黒いマスクの下で、その口元がにやり、と動く。
カメラがえりのクロッチの様子を斜め上から映し出す。すると突然、
ブボボッ! ブブブブブッスウゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ♡
と爆音が鳴り響いた。えりのクロッチに登っていた小人は、ゼロ距離でえりのおならの音圧と風圧にもみ潰され、血煙となり跡形も残らなかった。道路に立っていた小人はえりのおならを直接浴び、全身がバラバラに千切れ飛んだ。周囲の建物が音圧で崩れる。小さな建物は基盤から根こそぎになり吹き飛ぶ。重い空気の塊が直撃した駅ビルは、窓ガラスがすべて砕け散り、外壁は紙のように破れ、鉄骨は飴細工のように90度曲がってしまう。駅ビルの中にいた小人はガラスや外壁ごと駅ビルの反対側に向かって吹き飛ばされ、そのほとんどが全身を強く打ち絶命した。また、えりのおならによりもともとあった空気が吹き飛ばされ、真空状態となったえりのおならの爆心地に向かう暴風が、おならを直接浴びていない市街地の建物を巻き込んで吹き荒れた。さらに、えりの股間の前方数キロメートルに渡ってえりの濃厚なガスがゆっくりとふりかかり、えりのおならの直撃を免れ生き残った人々も喉をかきむしって死んでいった。
"あー出たでた♡ あんたたちの建物、ちょっと脆すぎじゃない?"
"怪獣強すぎw""ガスの威力やべぇw""めっちゃくさそう""うわ……何も残ってない""えぐすぎるw""小人全滅してて草"
えりの股間を中心に、扇形状の範囲の建物が粉々に崩れていた。唯一、駅ビルを構成していたと思われる基礎部分と曲がった鉄骨だけが、そこに何かがあったことを示す唯一のものだった。カメラはえりが破壊した領域を舐めるようなアングルで捉えていくが、どこまで行っても細かい瓦礫しか見えず、そこにさっきまで数千人近くの人々がいたとは到底信じられない。えりは自らのおならが巻き起こした大破壊を満足気に眺めながら、さっきレバニラ食べたのはちょっと悪かったかな、と思った。
********
歩いたり、立ったり座ったりして、どうやら腸の動きが活発になってきたみたいだ。さっきのおならは、えりの大腸の準備が万全になったことを示していた。数日ぶりに感じるこの感覚。来た来た、とえりは嬉しい気持ちになる。えりのお腹から、ごぎゅるるる、と何かが唸る音が聞こえる。
さて、余興は終わり。そろそろ本題に入ろう。えりは立ち上がり、先ほどのおならの被害を受けていない方に向けて話しかけた。
"小人さん、聞いてください! えりは皆さんの星にトイレを借りに来たんです。皆さんの街のトイレ貸してください!"
そう高らかに宣言し、コメントを眺める。
"今のサイズで使えるトイレなんてないだろwww""先に済ませてから来い""あっちにトイレがある""どう見てもトイレ"
"え? トイレがあるって? どれどれ?"
"そっちそっち!""小人の準備良すぎるの草"
あたりを見渡してみると、今いる場所から5、6メートルくらい離れたところ、森に囲まれた辺りにまるで便座のような形の建物が見える。ちょうどいい、あそこでやっちゃおう。
えりはブラジャーとショーツを脱いで、地面に落とす。住宅街が6万トンのブラジャーと2万トンのショーツの下敷きになり、いくつもの家が潰れる。
トイレのような建物の方向に直進するえり。足元は特に気にせず、進行方向にあるものすべてをざく、ざくと踏みしめていく。近づいてみると、便座のように見えたのは競技場のような建物の屋根だった。楕円形の白い屋根で、中央には穴が空いており芝生が見えている。大きさはえりの足を横に3つ並べたくらいの大きさで、便器としては小さい。高さは5センチくらいで、座るのも難しそうだ。しかし、あらためて見ても便座そっくりだ。
"トイレにしてはちょっと小さいけど、使ってあげるわ。"
そう言うとえりは、建物の横にゆっくりと足を下ろす。右足は2、3センチほどの高さの建物が並ぶ住宅街をぺっちゃんこに押し潰し、左足は野外の運動場のような場所を地の底に埋める。そして股間を建物に向かって下ろしていく。
"リクエストくれた〇〇〇〇さん見てる〜? 今から小人の街で排泄するね!"
えりの股間が建物の上空300メートルの辺りまで接近する。髪と同じ、黒々とした毛がもっさりと生えている。えりの陰毛の長さは平均して30メートルほど、太さは10センチほどもある。さっきから全裸で歩いているので何本か毛が落ちているかもしれないが、小人の力では切断するのも一苦労だろう。
んっ、とえりが顔を赤らめる。
ジョボボボボボホボボボボボホボボボボボホボ!
えりの股間から、膨大な量の黄金水が真下に向かって放たれた。えりの尿圧は競技場の地面をたやすく削り取る。泥と混じった尿は競技場のゲートに膨大な水圧をかけたやすく破壊した。すぐに競技場から尿が溢れ出す。
"わっ! ちょっと、靴が汚れるじゃん! あ〜〜もうこれ捨てていこうかな。"
競技場から溢れ出した尿は、轟音とともに十数メートルの高さの津波となり周辺の街に広がっていく。3階建て程度の大きさの家屋は、アンモニアとビールとチューハイの匂いが混じった濁流の壁に何の抵抗もできず粉々に粉砕され、瓦礫となって押し流されていく。車で逃げる小人の後にからえりの尿が凄まじい速度で襲いかかり、何台もの車が玉突きになって道路の先へ先へとえりの尿の速度で押しやられていく。えりの尿は競技場の地下深くを掘り進み、地下鉄の駅に到達したようだ。都市の排水能力を遥かに超える量の水は地下街を満たし、トンネル内を電車を巻き添えにして駆け巡る。いくつもの地下鉄の駅の入口から、小人や瓦礫を含んだえりの尿が吹き出している。股間に力を入れて尿の勢いを強めると、地下を駆け巡る尿の圧力も強まり、トンネルが内側からバキバキバキ! と押し広げられる。同時に、地下から吹き出す尿の勢いも強まるのが面白い。
"今日はお酒飲んだしめっちゃ出るな〜。"
"おしっこ出過ぎw""遊ぶなw""女のおしっこってこんなに量多いの?"
25メートルプールにして1600杯分、8億リットルの黄色い液体を競技場に流し込み、ようやくえりの尿は止まった。
それと同時に、えりの肛門がぴくりと動いた。
"んっ……"
えりの肛門が内側からの圧力によって隆起していく。そして、穴の奥から、えりの体の中に長い間居座っていた茶色い塊が顔を見せる。はじめはわずかに見えていたそれは、えりがいきむごとに目に見えてその直径を増していく。
"はーっ♡、はーっ♡"
えりの肛門から、黒に近い茶色をしたごつごつとした塊が姿を現し始める。その直径は70メートルは下らないだろう。えりの健康な消化器官が作り出した怪物だった。
"肛門すげー広がってる""ぶっとw""でかすぎて怖い"
"はあっ♡、はあっ♡、ふんっ!"
脂汗を滲ませながらえりが強くいきむと、それはみちちちっ! とその長大な体を地面に向けて伸ばしていく。えりのうんちは、10階建てのビルくらいはありそうな大きさの塊がいくつもくっついて構成されているように見える。荒々しい形をした先端が競技場の後方の屋根に触れるが、えりのうんちの方が強度も重量も遥かに上だった。競技場の屋根を巻き込み、えりのそのまま地面に突き刺さっていく。衝突の衝撃に大地が揺れる。えりはいきみながら少しずつ腰の位置を上げていくが、うんちはまだ途切れない。
"ふうっ、あー気持ちいい……5日ぶりのお通じすご……めっちゃ出る……"
"量やばいwどんだけ溜めたんだw""こんだけ出たら気持ちいいだろうなw""めちゃくちゃ固そう"
ぐんっ、ぐんっ、と長さを増すえりの排泄物。今やえりのお尻は上空300メートル近くにまで持ち上げられているにもかかわらず、地上とえりの肛門は茶色い塔によってつながっている。その塔は辺りにあるどんな建物よりも高かった。ようやく便の太さが細くなり始め、ずるん、とその全貌が姿を現す。ようやく生み出されたそれは、肛門の支えを失い、後方にぐらりと倒れる。
どずうぅぅぅぅぅん
えりの尻から途切れたうんちが、重力に従い、自らの体を横たえる場所を求めて街に倒れ込んでいく。競技場のすぐ後ろにあった5センチ程度の高さのビルは、便秘気味のえりの大腸の中で水分を搾り取られ鋼鉄の硬さとなったうんちに対して何の抵抗もできず押し潰されていった。5センチのビルで無理なら、その後ろに広がっている2、3センチほどの建物にできることは何もないだろう。えりのうんちは線路を切断し、ゴミのような大きさのビルを数十頭まとめて自らの100万トンの体の下に轢き潰した。
"ごめん、ずれちゃった。"
カメラが上空から住宅街を捉える。隙間なく並ぶ家。カメラが移動していくと、突如焦げ茶色の物体が画面に現れる。物体の太さはどんどん太くなっていく。地面にめり込んでいるにも関わらず、高さは周囲の家の10倍はある。その下にはいくつもの家が押しつぶされているだろう。更にカメラが進むと、住宅街が残骸と汚れた水たまりに変わる。茶色い物体は一定の太さを保っている。その光景がしばらく続く。カメラがこの物体を生み出した主に近づくにつれて、住宅街の損壊の度合いは激しくなっていく。カメラがゆっくりと止まり、その角度を真下から前方に起こしていく。その巨大な物体は、競技場の外壁を押し潰している。更にカメラの角度が上がっていくと、画面に収まらないほどの大きさのえりの尻が現れる。肛門はひくひくと蠢いており、排泄の快感を反芻しているようだ。カメラが少しずつ引いていき、最終的に、競技場の上に蹲踞の姿勢でしゃがみ込むえりの雄大な下半身と背中が全画面に収まる。下から見上げるえりの後ろ姿には、神々しさすら感じられた。
続いてカメラが、長さ350メートル、太さ70メートルの一本糞が、競技場の屋根を軽く押しつぶながらえりの後方に向かって横たわる様子を捉える。うんちの高さは競技場の屋根よりも数十メートル高く、小人にとって巨大なはずの競技場を矮小に見せていた。長さも競技場の長辺よりも余裕で長いので、そもそも競技場の中にえりのうんちを収めることは難しかっただろう。
"みんな見てる〜? ほら、小人の街の中でうんちしたよ。おら、小人の街を蹂躙するわたしの極太うんちに投げ銭しろ♡"
"流石にでかすぎるw""家がゴミみたいだ""山じゃん""うんち固すぎてビル粉々w""抜いた"
"リクエストした〇〇〇〇さん、これでよかった? 〇〇〇〇さんのリクエストで小人の街がえりのトイレになっちゃったよ。今どんな気持ち? 興奮してる?"
〇〇〇〇さんからの喜びのコメントが流れる。もちろん投げ銭付きだ。〇〇〇〇さんはえりが小人の惑星に来てからずっと上限額の投げ銭を投げ続けてくれていた。この配信でいったい何十万円使ってくれたんだろう?
〇〇〇〇さん以外からの投げ銭も止まらない。これまでの自分の配信では見たことのない光景だ。自分が排泄行為でもたらした破壊の大きさと、コメントからの称賛で、えりの承認欲求が満たされていった。
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"ティッシュ、ティッシュ……。"
おしっこがかかってしまった靴から足を抜き取り、靴下のままで大股でポーチを取りに行く。靴下越しだと建物が崩れる感触がよりダイレクトに伝わってきて気持ちいい。たとえ靴を履いていなくても、えりの脚は小人の建物よりも遥かに強靭だった。ポーチからポケットティッシュを取り出し、股間を丁寧に拭き取って、ティッシュは丸めてそのへんに捨てておく。ビル街が直径50メートルの汚れたティッシュの山に埋まった。
"ふぁぁ……ねっむ……。"
気持ちよく排泄して、なんだか眠くなってきた。そのままえりは、最初にここに来た時に落として地面に突き刺さったままのストロング缶を取りに行く。地面から缶を軽々と抜き取り、プルタブを起こす。
流石に自分の排泄物の近くで眠るのは嫌だった。このあたりの地形は西に行くほど標高が上がるようなので、西の方に向かって歩いていく。マスクをずらし、ごぶり、ごぶりとストロングな酒を喉に流し込みながら、コメントを眺める。
"みんな、今日は見てくれてありがと〜。初見さんもいっぱい来てくれてえり嬉しい! 小人の星、とっても楽しかったね。最近はほぼ毎日配信してるし、またリクエストも募集するから、次も見に来てね〜。チャンネル登録と高評価も忘れずお願いします!"
挨拶をして配信を終了する。今日の投げ銭の総額は普段とは桁違いの額で、満足だ。コンタクトレンズ型ディスプレイの電源もオフにする。改めて辺りを見渡すと、明るかった街は随分と暗くなっている。えりが歩いたルートはまるで光の中に浮かぶ道のように真っ暗になっているのだが、送電網も破壊されているようで、えりが通っていないエリアでも大規模な停電が発生していた。
遮るものがないため、えりの排泄物は遠くからでもはっきりと見える。その近くには、えりがおならで跡形もなく消し飛ばした街。さらにその向こうには、この惑星に来た記念に写真を取ったタワーが傾いたまま立っている。どうやらえりの体重で地盤が傾いてしまったようだ。
自らの行為の結果に満足したえりは大きく伸びをした。ストロング缶をその辺りに置き、地面に倒れ込む。中身が残ったストロング缶の下で小さな建物が弾ける。頭が地面に近づくと、ゴマ粒のような大きさの緊急車両が鳴らすサイレンの音がよく聞こえる。えりは少しのあいだもぞもぞと体を動かしたあと、突然ごろごろごろ! と横たわった体を回転させ、付近の住宅街を轢き潰し、そしていびきをかきながら眠り始めた。
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えりが眠りについたあと、小人の政府は夜間にようやく非難命令を発令し、えりを中心とする半径数十キロの住民は移動を強制された。しかし、小人の国の中でも膨大な人工をもつこのエリアの住民の移動は滞っていた。
やっと軍隊の出動も許可されたようで、その無防備な寝相な寝相の下に何千戸もの家々を押し潰しながら眠るえりに対して戦闘機から断続的にミサイルが発射されるが、それはえりに痒みすら与えることができない。接近しすぎた戦闘機はえりの寝返りやもぞもぞと動く手足に巻き込まれて揉み潰されていった。
街に日が昇ってくる。この街に住んでおり運良く生き延びることができた者全員が、昨日の朝とは全く異なる行動を強いられていた。ほとんどの人が一睡もせず、必死にえりの近くから離れようとしている。
えりがそこら中に置いていったえりサイズの物体は、まるで自分たちこそがこの街の住民なのだと言わんばかりに、我が物顔でそこに居座っていた。汚れたティッシュでさえ、小人の力では動かすことすらできなかった。えりの排泄物には誰も目を向けようとしなかった。
住宅街の上に、えりのスマートフォンが転がっている。何棟もの建物が潰されている。建物の下敷きになった人は生きてはいないだろうが、意地になってそれをどかそうとしている一群の人々がいた。
時刻は7時になろうとしていた。突如、爆音と地震が発生する。えりのスマートフォンの目覚ましアラームだ。アラームは島国の全土で聞こえたという。爆音を鳴らしながら、バイブレーションに合わせて動く端末に轢き潰される小人たち。えりが目をつぶったまま、体をずりずりと動かし、スマートフォンを掴む。
"うう……ちょっと飲みすぎたかも。もう朝か……ってあれ?"
あ、そういえば小人の惑星で配信したあと、そのまま寝ちゃったんだ。えりは立ち上がると、ボーチにスマートフォンとカメラをしまい、ブラウス、スカートと下着を拾って元の惑星にワープした。小人の惑星には、えりの排泄物、その両サイドにそびえる巨大な靴、えりがお尻を拭いたティッシュ、飲み掛けのストロング缶、そして小人に復旧を諦めさせるのに十分な規模の破壊の跡が残された。