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奈央と真美が「箱庭」の「街作り」を完成させた日の夜遅くに、
司は、四泊五日の一人旅から帰ってきた。
「おかえり~、お兄ちゃん」
パジャマ姿で奈央は、帰ってきた司を出迎えた。
「ん、奈央か。ただいま~。
あ~~、めっちゃくちゃ疲れた。风吕だ。
晩メシよりもまず、风吕。とにかく风吕に入りてー」
「もうお母さんも私もお风吕に入ったから、お风吕は大丈夫だよ。
でも、その前に、溜まった洗濯物を洗濯机に入れて、
残りの荷物を二阶に持って上がっていってね」
「あいよ。ったくー、奈央も母さんみたいに口やかましくなったな...」
司がボヤいているそばから、
「ほらほら、お兄ちゃん、早く来てよー」と奈央が急かしている。
「はいはいはい~~」
司は、奈央に言われるがまま洗濯机が置いてある洗面所へと廊下を进んでいった。
「ふぅ~、これでお兄ちゃんに知られずにすんだかな?」と奈央は、溜め息を吐いていた。
とりあえずさっきは、司が「箱庭」に入ってくることを阻止するために、
さっさと、风吕に入るように诱导したのだ。
明日を待たずに、司が「箱庭」に入って中を见てしまったらおもしろみが半减する。
もうこれで今日のところは、「箱庭」に行くことはないだろう。
まぁ、へとへとに疲れて帰ってきた日に、わざわざ行くとは元々考えにくかったのが。
司を风吕に押し込んでから数分后、奈央は「箱庭」に足を踏み入れていた。
真美と二人で协力して作り上げた「街」をもう一度、自分の目で见てみたくなったのだ。
奈央も今回の出来ばえには、少し自信を持っていた。
これならきっと、司も褒めてくれるだろう。
奈央の膝下にも及ばないほどの小さな模型の建物が、
ひしめき合う中にある「巨人用歩道」をのっしのっしと歩いていく。
今まで何度、この「箱庭」に足を踏み入れて「巨人」となって、
この小さな世界を阔歩したのかは、奈央自身でもわからない。
「巨人」になってこの小さな世界を见下ろす度に、
彼女の胸の辺りがキュンとなることは昔から変わらない。
奈央は、自分はいつ顷から「巨人」になるとうれしく感じるんだろうとふと思った。
                                      *
物心付いた时から、「不思议の国のアリス」や「ガリバー旅行纪」などの海外の童话がお気に入りの本で、子どもなりに深く兴味を持っていた、奈央。
最も、幼い子どもなら一度は触れるであろうこれらの著名な海外の童话に、一度くらい兴味を持つのは极々普通の话ではある。
ただ、奈央は他の子とは少しだけ変わっていた。
ある日、両亲が「奈央は、大きくなったら何になりたいのかな?
お花屋さん?それとも、お菓子屋さん?」
と奈央に将来の梦について闻いてみた。
「んとね~、なおはね~、おっきくなったらっね
がりば~さんみたいにこびとさんのくににいきたいの~」
と天使のようにかわいらしい笑颜でこのように答えたという。
初めのところ、両亲は奈央が「大きくなったら」の部分を「大人になったら」ではなくて、
文本通り「巨大化」 の意味で捉らえたのだと考えて、
改めて「大人になったら」と言叶を変えて奈央に质问してみた。
それでも、奈央の答えは同じだった。
奈央の将来の梦に、少し困惑した両亲は质问の内容を変えて、再び奈央に闻いてみた。
「あ、あのね、なお。ガリバーさんは小人さんの国にも行ったけど、
他にも、ものすごく怖くて大きな巨人がいっぱいいるところにも、ガリバーさんは行ったんだよ?
そんな怖いところにも、奈央は行きたいのかな?」
「ううん、いや!なおは、こびとさんのくににしかいきたくないの!!!」
奈央には、本当に「巨人」になりたいという愿望があることをようやく、両亲は悟った。
もちろん现実の世界でガリバーが行った「小人の国」などあるはずがなく、
奈央がガリバーのような「巨人」になれる场所などないと両亲は思っていた。
そして、そのことを理解するにはまだ幼い奈央には无理だとも考えた。
ただ、両亲はまだ幼い娘の梦を壊すようなことはしたくないとも
また、人様から娘があまりにも変な子だと思われたくないとも考えた末に、
ちょっとした嘘を吹き込むことにした。
「奈央、あのね他の子のいる前で『ガリバー』みたいになりたいって言っちゃだめだよ」
「え~、なんでなんで?なんでいっちゃだめなの?」
「実はね、みんなもね奈央と同じように『小人さんの国』に行きたいと思ってるの。
でも、行くことの出来る子は限られてて、みんなが行きたい行きたいって思うようになったら
奈央が行けなくなっちゃうでしょ?
だからみんなには黙ってた方がいいの。
お利口さんの奈央なら、ガリバーみたいにいつか小人の国にいけるよ」と言ってごまかした。
すると、両亲の言っていることの意味を知ってか知らぬかはわからないものの、
奈央の方も「うん」と素直に返事をした。
実のところ、両亲はこのことをそこまで深く心配したわけではなかった。
同世代の男の子が「おおきくなったら、ウルトラマンになりたい」
と将来の梦を语るのと同じような物だと考えたからだ。
ただ、それとは少し方向性が违って、加えて奈央が女の子だということを踏まえても、
奈央がこんなことを言い出すのも、遅くても小学校低学年までだと结论づけた。
何年か経てば奈央だって、世の中を知って成长するだろうし、
他に女の子らしい将来の梦が见つかるかもしれないと。
まぁ、端的に言えば时が解决するのを楽観的に待とうというのが、奈央の両亲が出した答えだった。
最も、この顷の记忆は奈央にしてみれば暧昧なもので、
详しいことは両亲から后になって闻かされたものだ。
それから、奈央が小学校に入ってすぐにあの『新急グローバルペンタゴン』の存在を知ると
すぐに行きたい行きたいと駄々をこねて、その年のゴールデンウイークに连れて行ってもらって...
园内で大はしゃぎして、游び疲れて帰りの车中は、ずっと寝っぱなしだったことまで自然と思い出されてきた。
それから、お父さんがこの地下室に「箱庭」作りを始めて...
少しずつ、それでも着実にこの小さな世界は広がっていった。
结局、奈央が「大きくなったら」行きたいと思ってた
「小人の国」は自宅の地下にあっていつでも好きなときに行ける
近くてやっぱりどう考えてみても近い存在になったのだ。
なにせ「箱庭」には、専用海水浴场からハイキングコースまで、
简単なアウトドア活动が出来そうな场所が一通り揃ってあるのである。
仕事が多忙な父亲にとっても、「箱庭」で家族サービスが出来る点は実に都合がよかった。
こうして「箱庭」は中条家の生活にすっかり溶け込んでいった。
今までを振り返ってみると、毎回毎回「箱庭」にやってきて楽しいと思ってしまうあたり、
奈央は、まだまだ子供っぽいなと自分自身で感じる。
亲戚などの周りの大人たちからは、
「奈央ちゃんは年齢に比べて大人っぽく见えるね」
などと、しばしば言われるが、そう见えるのはただ単に身长と外见が大人っぽく见えるだけだとしか自分では考えていない。
本当の精神年齢は、実际の年齢とそう変わらないはずだ。
そんなこんなで目的地の「街」に到着して、何か异常がないかをチェックする。
明日、せっかくお披露目する以上は、一応、万全な状态でありたい。
とは言っても相手は司なのでそこまで気にしすぎることはないのだが.....
上からチラッと见る限りは异常はなし。
特に问题はなさそうなので、点検はこのくらいにして、自分の部屋に戻って寝ることにした。
どうやら最近の疲れが出てきたようで、さっきから急に睡魔が袭ってきているのだ。
「ふぁ~、なんだか急に眠くなってきちゃった...早く寝よっと」とあくびをしながら奈央は阶段を上がっていった。
                                      *
翌朝、司は午前9时を过ぎるまでグーグー大きないびきをかいてぐっすりと眠っていた。
司の部屋に、奈央が彼を起こしにやって来た。
「お兄ちゃん、もう9时过ぎちゃってるよ~早く起きて起きて~」
「ん、奈央か。ふぁああ、ってもう9时过ぎなのか」
大きなあくびをして、体を起こす司。
「朝ごはんは、もうできてるから早く食べちゃって、ってお母さんが言ってたよ」
「そうか、サンキュー。んじゃ、一阶に行ってくるな」
「それと真美お姉ちゃんがが、もうすぐしたら『箱庭』に游びに来るって、さっき私のケータイにメール着てたよ」
これを闻いて慌てて飞び起きた司は、自分のケータイを确认する。
やはり、司のところにも真美から同じ内容のメールが着ていた。
「げっ、俺が帰ってきた翌日に、早速お土产をせびりに来るとは…」
「それだけ、お兄ちゃんが帰ってくるのを楽しみにしてたってことだよ。仲いいもんね~二人とも。
ほらほら、早く支度しないとお姉ちゃんがやって来ちゃうよ~♪」
「んなこと、わっーてるって」
司は、ドタバタと阶段を降りていった。
「まったく~、手间が挂かる兄を持つと妹の苦労が増えちゃうんだから」
奈央はまた小さな溜め息を吐いた。
司が着替えたり、部屋を片付けたりと慌ただしくしてるうちにすぐに真美が来る约束の时间になった。
そして、约束の时间になると図ったかのように呼び铃がなった。
玄関のドアを开けると「久しぶり~、元気してた?」と真美が明るい笑颜で话し挂けてきた。
「元気かどうかはさておき、昨日までの一人旅の疲れはもう取れたぜ」
「そっかぁ~、で、今回のお土产は何かな?」
「あのな~、こういう场合、普通は『どこに行ってきたの?』とかを闻くのが筋じゃないのか?」
「いいじゃない~、そんなことを闻かなくてもお土产で大体の场所はわかるんだし♪」
「そうですか、そうですか。まぁ、こんな玄関で立ち话しをするのも何だし、家に上がってくれ」
「それじゃ、お邪魔します~」
司が阶段を上がっていき、真美も后に続こうとしたところで、
リビングに続く廊下の奥から奈央が手招きしているのを见つけた。
「ねぇ奈央ちゃん、まだ司にはバレてないよね?」
「うん、お兄ちゃんは家に帰ってきてからまだ一回も『箱庭』には入ってないはず...」
「なら、さっきメールした通りに実行するけど问题はないね?」
「うん、お兄ちゃんには悪いと思うけどこればかりは、仕方ないと思う」
「じゃ、隙を见计らってやっちゃってね」
「やっちゃいますよ?」
「大丈夫、大丈夫♪」
「じゃ、顷合いを见计らってやっちゃうね」
「うん、お愿いね」
真美は、急いで二阶に上がっていった。
                                *
「ほい、これがお土产の広岛名物もみじまんじゅう!カスタードクリーム味とチョコレート味もあるぜ」
「ありがとうね~♪」
「真美の场合、ご当地ストラップとかそんなのよりかは、
どっちかって言うと食べ物の方がいいかって思ったけど...」
「うん、ヘンなグッズよりもみじまんじゅうの方が好き(笑)」
「そうかそうか、それはよかった。ただし、まんじゅうの食べ过ぎには注意しろよ。
体重が増えても全くもって俺のせいではない。いわゆる自己责任って奴だ」
「あっ、ひっどーい。女の子が一番気にすることをズバリ言うなんて...无神経もいいとこだって、まった~く」
「だから、気をつけろって…」
とそこへ奈央が部屋に入ってきた。
奈央が入ってくるなり「お兄ちゃん、ごめんね」と言って、次の瞬间、
「缩小机」を司と真美の方に向けてスイッチを押した。
すると、ベットの上に座っていた二人が、150分の1の大きさにまで小さくなっていた。
一応、奈央はあらかじめ谢っていたが、当然のごとく、
司は突然のことに「こらー、奈央!いきなり、何すんだよ」と激怒していた。
「はいはい、ストップストップ。ここで、早くも种明かし~♪」
と一绪に小さくなった真美が止めに入る。
「种明かし?何のことだ?」
司が何のことか分からず、戸惑っていた。
「実は、司にね、见せたいものがあるの」
「わざわざ小さくしたってことは、『箱庭』の中にあるのか?」
「ふふ~ん、そうだよ♪普通に『箱庭』の中に入っていったらツマラナイでしょ?」
「でもさ、なにもいきなり何の说明もなくこうすることはないんじゃね?」
「もしかして怒ってる?」
「别に...奈央に突然小さくされるなんて昔から惯れてるし....まぁ、いいけどさ...」
「そっか、なら全然问题ないね。
じゃ、奈央ちゃん、私と司をそこの『司専用駅』まで运んでね」
というわけで真美は、上を见上げて「巨大妹:奈央」を召唤した。
実の兄である司より、真美はうまく奈央を手なずけているような気がする。
お互い、女の子同士だからいろいろと都合がいいのかと、司はずっと思っている。
奈央が、その巨体を二人がいる方に近付けたので、空気が押されて発生した强い风が二人に吹き付けた。
こういうことがある度に、自分がどれだけ小さくなったかを思い知らされる。
しかも、马鹿でかい奈央の手に足を挂けてよじ登らなければならない。
余计に、自分の小ささを思い知らされる。
二人が登るとすぐに、奈央の手がゆっくりと动き出して、二人を『司専用駅』まで运ぶ。
动きが止まったところで、奈央の手から飞び降りてプラットホームに着いた。
「で、ここから『箱庭』までは、电车で行けってことだな?」
「そうだよ、さすがは司。わかってるじゃん」
「わざわざ奈央とグルにまでなって、俺に奇袭攻撃を仕挂けてまでしたんだから、
期待を抱かせるそれなりのものを用意してくれているんだろうな?」
「まぁね。多分、司の期待には応えられる出来だとは思っているんだけど.....」
「真美がそこまで言うのなら俺も期待する。早く行こうぜ」
二人は、駅に止まっていた列车に乗り込んだ。
司が、运転席に座って、ブレーキを解除して、列车を始动させる。
出発するとすぐにトンネルに入って、ここからしばらくの间は、真っ暗な下り坂のトンネルを走っていく。
「で、さっき言ってた见せたいものって何なんだ?
俺は焦らされるのがすごく嫌だから早く教えてくれ」
「そんなにも、早く知りたいの~?」
真美がわざと司の神経を逆なでることを言うものの、
逆に司にギロッと睨まれた。
「わ、わかったわよ。教えてあげるからもうそんな风に睨まないでよ」
ふぅーっと一呼吸置いてから、真美は続けて话した。
「あ、あのね、司から贳った场所にね、私の『街』を完成させたの...」
「か、完成って、俺が旅行に行っているたった五日间の间に!?おいおい、マジかよそれ...」
「司が贷してくれた鉄道模型の本见てたら、あっという间にイメージが涌いてきて...その势いで完成させちゃったんだ♪
それでも、奈央ちゃんがずっと一绪に手伝ってくれたからこそ、こんなにも早く完成させることが出来たんだけどね...
でも、正直言って、びっくりしたでしょ?」
「びっくりしないわけがない。
真美のことだから、旅行から帰ってきた俺に何かわからない点を相谈してから、作り始めると予想していたんだけど...
まさか、完成させてくるとは...想定外だな。
一応、闻いておくが『箱庭』にそぐわないようなものになってないよな?
例えば、変なモニュメントみたいなのを胜手にドカッと街中に置いたり...」
「うん、そんなことはしてないよ。
あの模型の本を参考にして作ったから、変な感じにはなってないと思うの」
「じゃ、出来具合いの自信のほどは?」
「自信のほどは?って言われても、学校のテストじゃないんだし...
はっきり言ってわからないよ。
でも、私と奈央ちゃんが二人とも満足するくらいの出来だったから、
司にもきっと気に入ってもらえると思ってる...」
「それなら、大丈夫そうだな」
进行方向のずっと先に、小さな明るい点のようなものが见えてきた。
ようやく长い长いトンネルの出口に达しそうだ。
とは言え、真美に提供した场所は、街を通り过ぎ、海岸を越えた先にあるので、到着まではまだまだ时间が挂かる。
その间、司は旅行中に见かけた変なおばあさんの话をして、逆に真美は奈央と一绪に游んだ时の话をしていた。
列车は段々と目的地に向かっている。
トンネルを抜けて「海水浴」をした海岸付近を通り过ぎて、すぐさま再びトンネルに入る。
そして、二つ目のトンネルを抜けると何もなかったはずの场所に大きなビルがそびえたっていた。
かなり大きい...200メートルは余裕であるだろう。
「おいおい、アレはなんだよ...」
「私の『街』の一部だよ。でも、详しい说明はあそこに着いてから♪」
                             *
実际に、司が駅に到着して、街中に入ってみると先程以上の惊きの连続だった。
何もなかったあの场所がわずか5日间で作り上げたとは、
とても考えられないレベルに仕上がっていたからだ。
キレイに整备された駅前ロータリー。
両侧に背の高い木が植えられた大通り。
そして、通りに沿ってあるのは、20阶くらいは优にあるビル。それも一つだけではない。
动く人や车がない以外は、どこかの大きな都市に来たのかと错覚するぐらいだ。
「それでね、さっきから司が気にしてたあのビルは、この街のシンボルなの」
こう言って、真美はビルがひしめき合う街中でも、圧倒的な高さを夸ってそびえ立っているビルを指差した。
ここに到着する前に、电车から见えていたあのノッポビルだ。
「确かに、あのビルだけダントツに高いな。かなり远くからでも见えてたし。
近くで见るともっとすごいな。この街のシンボルタワーか...なるほど」
「あれだけは新しく买ってきて组み立てたんだよ、奈央ちゃんと二人でお金出し合って。
少しばかりお财布にダメージがあったけどね(笑。
そうそうちなみに、あのビルの高さは本当の私の身长より少しだけ低くしてあってね、なんでかって言うと....」
「つまり、真美より背の高い建物はこの街にはないから、ここに『巨人』でやってくると少しばかり优越感があると...」
「あ~、私より先に言うなんて、ヒドイ。せっかく司に自慢しようと思ってたのに...」
「残念でした~っと」
それはともかくとして、駅を中心に整备された街のこれら全てが、どうやったらこうもうまくいくのかわからなかったが、
とにかく、奈央と真美の二人のみの手によって、この街は作り上げられていた。
司は、心の底から出来ばえに素直に感心してしまった。
この「街」にケチをつけることなんて无理だった。
「真美がこういうことに向いているのなら任せよっかな~。
俺は、线路以外の构造物を并べるのは不器用であまり得意じゃないし、ぶっちゃけ手抜きになってるところもある。
こういうことにも向き不向きってあるからな。
当たり前だけど、真美がこの5日间レイアウトを作っていて楽しかったらの话だけどな。
ここ最近は、自分が作った线路ばっかり走ってるもんだから、新鲜味がないと言うか、面白みがないというか。
まぁ、いわゆる『マンネリ』気味だったから、たまには、外部の风を『箱庭』の中に入れてみたりしたかったし。
とにかく、うまいこといってよかった」
司が、うんうんと颔いてみせる。
「でもね、そんなに毎日のようにここに通って迷惑にならない?」
「今まで今日を含めて六日间も连続して、ここに通っている人间が今さら何を言ってるんだか...
真美が毎日ここに来たぐらいじゃ迷惑になるわけないし、
それに『箱庭』には家の中を玄関だけ通れば行けるからラクだろ?
ウチの母さんは、迷惑が挂かるとかそういうことは、あまり気にしないから大丈夫だって。
それと、これはここだけの话。
この前な、ウチの従姉がウチにやって来て、『箱庭』に小さくならずに入ってきたんだけど、
线路にデカい足载せて塞ぐやら、车はそのデカい足で蹴飞ばすやら、ビルに服の裾を引っ挂けて倒すやら。
で、とどめにミニチュアのビルが沢山密集している地域でこけやがってさ。
従姉がこけた时、俺は『小人』で少し离れたところにいたんだけど、结构足元が揺れたからな。
震度で言うと3か4くらい。それに、音も结构すごかった。あんなすっげ~轰音闻いたのは、2回だけだよ」
「2回ってことは、前にもあったの?」
「昔、奈央が、同じようなことやらかしたがあってな。その时は、不可抗力だったからしょうがなかったけど。
でもな、人间がこけた瞬间がスローモーションで见れるって、中々面白いんだぜ」
「へぇ~、确かにそんな瞬间は见たことないな~」
「んで、结果的に従姉がこけた周辺は、もうまさに大怪獣が暴れて壊灭した迹のような状况になって。
というか、実际巨大怪獣みたいなもんだったな、アイツは」
「年上のお姉さんなのに、そんな言い方していいの?」
「ただ自分の方が年上と言うだけで、オレを散々弄缲り回してきた人间だから、これくらい言っても大丈夫だって。
で、さっきも言ったけどその后片付けというか『箱庭』の复兴作业が大変だったわけですよ。
わかるだろ?あの大変さ。経験者にしかわからないんだよな、アレは。
夏姉ぇ...じゃなくてその従姉が一回やって来て挂ける迷惑なんかと比べたら、
毎日真美がやって来て挂かる迷惑なんて微々たるものだから、うん。
愚痴混じりになって悪いけど、コレが本音だ」
「司も大変なんだね、アハハ」
真美が苦笑する。
「そうやって今、笑ってる真美も『巨人』の状态でこけたら同じような大惨事になるんだけど、わかってる?」
「ん~、そういうこと言わないでよ~、ちゃんとわかってるってば~」
「さて、どうするんだ?この后は」
「どうしよっか、ハハハ」
少しばかりの沈黙が二人の间に漂った。
「えーっと、特に何もこの后のことについては、考えていないということか?」
「うん、だってここ数日间は、この『街』を完成させることだけに集中してたから、后のことは何も考えてないの...
あーでも、久しぶりに何かこう、やり遂げた感じがする~。
后しばらくは、『箱庭』とはサヨナラしてもいいかな?ずっとここに居たから少し饱きちゃった♪
私はね、『箱庭』には、たまに来るのがちょうどいい感じがするの。
あんまりここに居るのに惯れると新鲜味が薄れてきちゃう気がするし...
でも、また一周间かそれぐらいしたらまたここに来たくなると思うから」
「なるほど、オレとか奈央は小さい顷から『箱庭』に惯れているから、
もう今更、そういう小さくなったり大きくなったりすることに新鲜味を感じることはないけど、
真美は、ここにくる度に何か普段の生活とは违う感じを楽しんでいたわけか...」
「ん~そうね、私からすればここは『テーマパーク』みたいなものかな...
楽しいけど、毎日来るとちょっと疲れちゃう。けど、やっぱりまたここに来たくなっちゃう。
小さくなっておっきな奈央ちゃんを见上げたり、逆に、小さな模型の街の中に入って巨人みたいに上から见下ろしてみたりなんかしてね、
『非日常的』な体験をして楽しいときを过ごすっていう点でよく似てると思うよ」
「なら今日はこの后普通にさ、せっかく来たんだし、少なくとも昼ぐらいまで、奈央も含めて俺の部屋で游んでいかね?
外は出挂けるのもうんざりするぐらい暑そうだから、クーラーガンガン挂けてインドアな一日を过ごすというのはどうだ?」
「うん、そうするよ♪ねぇ、なんか私でも出来るゲームあるの?」
「それは、オレの部屋の押入れにあるソフト类と相谈しなければならないな...
でも、确かパーティーゲーム系ならいくつかあったし、多分。これくらいなら大丈夫...だよな?」
「うん、それ系のゲームならなんとかなる」
「じゃ、一旦帰るかオレの部屋にな。駅まで戻ろうぜ」
「あっ、ちょっと待って、司。
もうすぐ奈央ちゃんが迎えにきてくれる手筈になってるから、じっとしていた方が危なくないよ...」
「そうだな、妹に踏み溃されそうになるのはゴメンだからな。
そういやさ、さっき、奈央がお前のこと『真美お姉ちゃん』って呼んでた気がするけど、この五日间でなんかあったのか?」
「あれれ、钝感な司君にしては変化に気付くなんて上出来ね」
「二人だけで话が进んでるとあれこれ疑わざるを得ないな」
「いいじゃない、女の子同士で秘密を共有するくらい♪」
「むぅ~、そう言われてしまうとうまく言い返せないな...」
すると、ドーンドーンと大きな音がしだして、地面が震えだした。
「どうやら...」
「约束通り、奈央ちゃんがやって来たみたいだね♪」
毎度毎度、巨大な奈央が登场する际のお驯染みの前触れである。
こうして、夏休みの间という长いようで短い期间で、三人の関系は急速に変化していったのだった。