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その町は周りを草原で囲まれたのどかな場所に位置していた。国と国を繋ぐ街道のちょうど真ん中に位置しており、旅人の休息を担う場所として知られる自治体であった。今日も国をまたいで旅をしている者や馬車等が立ち寄り、かなりの賑わいを見せていた。
そこに現れた巨大な影。見たことのあるモンスターとは比較にならない大きさの影に人々は慌てふためく。また新たな魔物が現れたのか、と。しかし、そこにいたのはものすごく巨大なことを除けば普通の人間の女の子であった。人々はその影が自分たちと同じ種族であることを認識すると緊張がだんだんとほぐれていった。
その女の子は見た目はどこにでもいるような町娘のような格好をしており、自然と人々の心は少女に惹かれていった。女の子は町を覗きこむように見下ろし、口を開いた。
「こんにちは。今日もお仕事お疲れ様です!」
そう言葉を発してしばらくじーっと町を見つめる巨大な少女。その透き通るような声は彼女が普段通りの声量で発したとはいえ、町中の人間の耳に入っていた。
「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ、観光に来ただけですから。少し町を見させてくださいね。」
彼女はその大きすぎる身体でゆっくりとその町の外周を歩き始めた。その町はモンスターからの隔離のため、少し高めの塀で覆われており、町と外界を繋ぐ道は東西南北4つの門からしか出入りできないようになっていた。高めの塀と言っても、彼女が履いている靴の甲の高さと同じくらいであり、彼女にとっては普通に歩くだけで簡単に入れる程度であった。彼女はぐるりと回りながら町を観光・見学し、ちょうど一周したところで再び立ち止まった。
「あ、あの、よかったら私と同じ目線でこの辺一体の景色を見てみませんか?てのひらだったら100人くらいは乗れると思いますよ」
そういうとにっこり微笑みながらしゃがんで門の前に左手を差し伸べた。魔法を使うか、飛竜使いに頼むかくらいしか空をとぶ方法がないこの世界で、タダで空中散歩ができる機会はほとんどない。人々は我先にと門へ群がりはじめた。指の太さは直径20mほどであるため、近くのガケから飛び降りててのひらへ到着する。彼女のてのひらはやわらかく、少し湿っていて、ほんのりと暖かかった。目算で100人ほど乗ったことを確認すると彼女は"これ以上は・・・"と締め切り、立ち上がった。
広がる景色は広大だった。人々は彼女が常に見ている景色が自分たちのそれと異なることを認識させられた。彼女がゆっくりと町の周りを歩き始めると、彼らは自分たちが住んでいた町がどれだけ密集していて、どれだけ栄えていて、どれだけの人が生活していて・・・そしてどれだけちいさな存在なのかを実感した。
彼女はてのひらの上に人を乗せて町を1周すると、にっこりと微笑みながら再び口を開いた。
「じゃあ...最初の方々はこれで終わりです♡」
ぐしゃぁ...と突然不快な音が響いたかと思うと彼女の左手から赤く輝く液体が滲んでくる。その左手からその液体はぽたぽたと町の中へ滴りおち、建物や路地を赤く染める。上空を見上げた人々が見たものは、真っ赤に染まった巨大な左手と屈託のない笑顔を浮かべている巨大な少女の顔だった。
悲鳴をあげながら逃げ惑う人々に彼女は右手を差し伸べ、声をかける。
「次に私のてのひらの上に乗りたい方はどなたですか〜?」
当然、たった今100人超を惨殺した彼女に近づく者はいない。
「そっかぁ〜。私から逃げる気ですね。私の右手のてのひらに乗ってくれたら悪いようにはしなかったんだけどなぁ~・・・仕方ないですね。言うことを聞いてくれない愚かな人たちには痛い目にあってもらわないと♡」
そう言うと彼女は塀を軽々と超えて、町の中に侵入し始める。建物には触れないように、大通りをゆっくりと歩いて行く。足元に投げ捨てられた樽やビンは彼女の重みで一瞬にして粉砕され、レンガでできた道も泥のように沈んでいく。
「そういえば、さっき小人を握りつぶしちゃったから左手汚れてるんだった!なにかないかな・・・」
目をつけたのは町のいたるところにある監視塔。敵襲の際に防御、避難誘導目的で作られた建物だが、彼女にとってはおもちゃの一つでしかなかった。塔の中から視察していた兵士たちはこちらに向かってくる少女に向かって大砲を向ける。彼女は自らに向けられた砲口に向かって、楽しげな笑みを浮かべた。
「兵士さんたち、さっきの私を見ていなかったんですかぁ?あんなに大勢の人たちをぎゅー♡って握ってあげただけで殺しちゃったんですよ♡ そんな私に攻撃しちゃうんですかぁ?」
煽られてカッとなってしまった兵士たちはそのまま大砲を連続して撃つ。なるべく彼女の心臓、頭部、足など、戦闘に有利になる場所を狙う。これだけ大きな標的のためか、卓越した腕の兵士たちがその箇所に全弾命中させる。激しい爆発音と広がる黒煙は、その砲弾の攻撃力を如実に表していた。しかし、煙が晴れて彼らが目にしたのは、傷一つない少女の姿だった。
「女の子の身体を傷つけようとするなんて、ほんといけない小人さん・・・♡」
彼女は必死に抵抗している兵士たちを見て少し興奮しているようで、頬を少し赤らめながら監視塔に近づいていく。これ以上近づくなと言わんばかりに砲弾を放ち続ける彼らだが、彼女は向かってくる物体に目もくれず自らの身体で受ける。
「もう終わりですか?抵抗しないとこの町もあなた方もどうなるか・・・分かりますよね?」
砲弾が効かないと判断した彼らは、地上に逃げるために大砲を向けたまま階段をおりはじめた。少女は兵士が監視塔から消えたことに気づくと、彼女はにやりと笑った。その瞬間彼女の姿が消え、監視塔のすぐ脇に現れた。そして右手で監視塔を握ると垂直上側に力をかけ、地面から引き抜いた。引きぬかれた監視塔という絶対的な監獄の中に兵士たちを入れたまま。困惑する兵士たちをよそに彼女は笑う。
「くすくす・・・ あの距離だったら逃げられると思いました?ざーんねん。階段を降りるんだったら飛び降りたほうがマシでしたね」
塔をぷらぷらと揺らしながら少女は続ける。
「私はただ左手をキレイにしたいだけなんで、あなたたちが血にまみれた私の左手をお掃除してくれるなら生かしてあげますよ。」
「ほら、お掃除してくれるなら左手に乗ってください」
紅く染まった左手を差し伸べるも、兵士たちが出てくる気配はない。
「私、気が短い方なので、あと5秒したら握りつぶしちゃいますね♡ ごーぉ・・・よーん・・・さーん・・・」
ここで諦めたような表情をした兵士たちが現れ、次々に彼女の左手に飛び乗る。左手にあるものは今まで人だったもの。肉片、血、骨・・・戦闘に慣れた熟練の兵士たちさえも躊躇するような地獄絵図であった。視覚的な気持ち悪さより、嗅覚的なものの方がひどく、あまりの死臭に全員身体が動かなくなってしまっているようだった。彼女は動かなくなってしまった兵士たちを見て、
「ほんと、愚かな人間ですね♡」
と言うと彼女は右手に持った監視塔で左のてのひらを擦りつけ、汚れた左手を拭き取る。気絶した兵士たちをもお構いなしに拭き取り、拭きとった血で監視塔が真っ赤に染まる。結局のところ、一つの建物で汚れをきれいにすることはできないのであった。
「さっきよりも汚れちゃった気がするけど、まあいっか。」
満足気な顔をすると町の中心部へと向かっていった。
少女が町の中心部へ到着した頃には既にほとんどの人が避難しており、閑散としていた。物が煩雑に置かれており、人々が焦燥感にかられていたことは明白だった。中心部の広場に立つと独り言のようにつぶやいた。
「もうみんな逃げちゃったんですか?」
あたりを見渡すと彼女から最も離れた西門を超えたところに町民が集まっているのが見えた。巨大な彼女はくすくすと笑いながらその場にしゃがんで地面に手をかざすと、突然彼女の足元に人々が"現れた"。何がなんだか分からず混乱している人々にその少女は優しく笑いかける。
「なにがなんだかわからないって顔してますね。でも、それでいいんですよ。これから始まるのはただのゲームなんですから。そんなに怖がらなくて良いんですよ。」
先程まで門の外側まで逃げていたはずが、気づくと災厄の足元に自分がいる。かつてない非常識の連続に、人々の脳は追いついていないようで、恐怖ですくんで動けなくなってしまっている者もいれば、喚き散らしながら少女から走って逃げる者もいた。広場から逃げれば彼女の視界からは外れる。死角に入れば一時的にとはいえ恐怖の対象から逃れることができる。そう信じてやまない人々の真上にあるのは黒い何か。それが彼女が履いている靴の裏であることに気づいた時には、もう人としての形ではなくなっていた。靴の端で潰したことで、広場の方向に鮮血が飛び散り、まわりの雰囲気が一変する。
「私が小人の皆さんにおしゃべりしてあげてるのに、聞かずに逃げるなんて失礼じゃないですか?せっかくゲームの説明しようとしてるんですから、ちゃんと聞いてくださいよ~」
なんでもない少女の言葉。命令されているわけではないのに、従う以外の選択肢がないほどに圧倒的な力を有する目の前の少女。一瞬で赤い肉の塊にされてしまった仲間を見て、その場から離れるような人々は1人もいなかった。
「これから1分間だけ時間をあげます。その間は私は目をつむってこの場にしゃがんで一歩も動かないと約束します。時間になったら私が小人の皆さんを探しに歩きまわります。要するにかくれんぼです♡ 私に見つからないように注意してくださいね?見つかったら・・・」
少女はウインクしながら赤く染まった足元を指差す。
「どうなっても知りませんよ♡」
彼女が目をつむり始めてから人々は一目散に逃げ出す。目をつむってから、彼女はどのようにこの町を弄ぶか頭のなかで想像をふくらませていた。どうやって見つけ出して、追い詰めて・・・殺すか。自分の気分で人の生死を操れるなんて・・・そう思っていると、股間がだんだんと湿って来る。ぽたぽたと滴る少女の液体は、全てを絡めとる悪魔の液体となって地面に降り注ぐ。もしも真下に小人がいたらあまりの粘性の高さに圧死していたことだろう。
そろそろ1分が経った頃だろうか、彼女は目も開けることなくぽつりと呟く。
「あらあら、逃げなくて良いんですか?私の目を狙おうとしてるんでしょうけど、バレバレですよ?」
少女の目の前にいた青年の顔がサッと青ざめ、急いで逃げようとする。青年は全身に鎧を纏っているのにもかかわらず、かなりのスピードで移動をこなすあたり、相当な実力者であることが伺える。しかし、その速度をも上回る少女の白い腕が彼を一瞬で捉える。胴体を抑えられたため、手に持った矢で必死に彼女の指を刺すが、肌の弾力のせいか、傷一つつけることもできない。
「あれだけ忠告してあげたのに...。あなたのような戦士さんは牢屋行きですね...♡」
とろんとした目のままそう言った彼女は、捕まえたその戦士を湿っている股間に持って行き、自らの秘部を見せつける。彼も女性経験がないわけではないが、自分の身体をすっぽりと覆ってしまうような女性器が目の前に迫ってきたことにより、興奮より先に恐怖を感じ、彼女の指から逃れようと再び暴れ始める。
「そんなに暴れても、私からは逃げられませんよ♡おとなしく閉じ込められててくださいな♡」
指につままれた彼の頭が巨大な膣口に触れると、さらに彼女の愛液が溢れ出し、彼の顔は簡単に液体に埋もれてしまう。そして時間が経つにつれてゆっくりだが確実に女性器に身体が飲み込まれていく。少女は彼の全身が膣内に飲み込まれるのを確認したあと、んっ♡と小さく喘いだ。その瞬間、中の圧力が急激に増し、彼の全身鎧が粉々に砕け散る。鎧の欠片は女性器の外へとバラバラと落ちていき、戦士はそのまま奥へ奥へと押し込まれてしまった。
「そこで私に対する行為を反省していてくださいね。女の子の目を狙うなんて、いけないことだぞ☆」
お茶目なポーズをした彼女を見たものは誰一人いなかった。
戦士の青年を弄んだ彼女は他の人間たちを探しに街を歩く。小人たちには「探す」と説明をしておいたが、彼女にとっては小人を直接視認する必要はない。自らの足で崩した建物の中に潰れた小人がいる・・・自らの手で落とした瓦礫の下敷きになった小人がいる・・・自分がこの街を完全に支配している。それが彼女の興奮の素であり、彼女の楽しみでもあるからだ。
今度は建物がある部分を中心に歩く。街の中心地には出店や背の高い建物が目立つ。その建物を10積み重ねても少女の脚の長さになるかどうか。彼女は普段通りに歩き、建造物を呼吸をするように破壊していく。建物のプレスと同時に、地面も深く沈んでおり、彼女の歩いたあとに残る足跡の深さはこの街の外壁と同じくらいの高さになっていた。
彼女がゆっくりと街を歩いていると、逃げている人間がすぐ足元にいるのが見えた。彼らが1分間に全速力で走った距離は少女がたった5歩歩いた距離と等しかった。
「みぃつけた♡」
大きな影が十数人の人々を覆ったかと思うと彼らが逃げている方向に巨大な柱が落ちてきた。そのどこまでも空に続くような柱を見上げると、意地の悪そうな少女の笑顔がそこにあった。人々は少女の右足が地面についた時の衝撃で吹き飛ばされ、体のところどころが痛んでいたが、なんとか立ち上がって少女とは逆の方角に走り出す。
「ふふ、逃げられると思っているんですか?」
どすん...と今度は左足が人々を挟んで広場側へそびえたつ。少女の股下でまたもや吹き飛ばされる人々。前後は少女の足が、左右は建物に阻まれ、完全に少女の牢獄に捕らえられてしまう。
「あなたたちの無価値な生命はここで終わっちゃうんです♡」
突如下がってくる天井。彼女の大きすぎるお尻は建物の間を抵抗なく落ちていき、レンガで敷かれた路地をすべて身体で埋めた。一息ついた後に立ち上がってみると2,3箇所の赤黒いしみしかなかった。彼女はあまりに少なすぎるしみの量と、建物の割れた窓を見てくすくすと笑うと、その建物に近づく。
「さっきのヒップドロップから逃げられたのはびっくりしましたけど・・・おうちの中に逃げ込むなんて、自分から捕まりに行ってるのと同じですよ?」
彼女はその家の屋根に手をつくと地面に向かって少しだけ力を加える。すると建物の一室に隠れ潜んでいた残りの人々は、上下の圧力によりすべてのドアが開かなくなり、閉じ込められてしまった。人々の絶望の悲鳴が聞こえるが、それは彼女の興奮の材料にしかならない・・・。今度は煙突をまたがり、肛門の位置を煙の噴出口に合わせる。むっちりとしたお尻は煙突に合わせて形を変え、煙突と肛門以外に空気が拡散することを妨げていた。少女はお尻の穴から噴出するもので人々を臭殺する想像をするだけで頬が紅潮していく。
「んっ・・・じゃあ私の中身を存分に味わってくださいね♡」
肛門が大きく開く。
ぶっぼおおおおおおおおおおおおおぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!!!!!!!!!!!!
すさまじい轟音が響いたかと思うとあまりの風圧で室内のドアが壊れ始める。バコンバコン・・・と獣のように扉を開けていく彼女のおならはついに残りの人々が潜んでいた部屋まで到達する。その部屋では扉が開いた瞬間に風圧で人々が互いにぶつかり、壁、床、天井にぶつかり、部屋から投げ出されたりまた戻されたりと、悲惨な状態となった。ガスの噴射が終わった後は、嵐の後の静けさといわんばかりに全身の痛みで動けない人々が建物内に横たわっていた。
また、あまりの風圧で建物内のいわゆる"普通"の空気はすべて室外へ押し出され、室内は少女のおならが充満した、ガス拷問室と化していた。まだ息がある人々は生命維持に必要な呼吸という行為で、自分の意志に関係なく少女の毒ガスで肺を満たしていく。
「はぁ・・・♡もう一発でそう・・・・・・♡」
ふすかぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少女の一言で追い討ちをかけるように噴出されたガスは音もなく、ねっとりとした空気をさらに充満させる。先ほどの爆音っ屁よりさらに強烈な悪臭を持つガスに身体をすべて乗っ取られた人々は、一呼吸すると体が動かなくなっていた。彼女は放屁後の快感を感じながら自らの秘部を手で刺激する。たった今おならガスで人間数十人を殺したという事実でオーガズムに達し、煙突から建物内にゆっくりと、しかし大量の愛液が注がれていく。
「ふぅ...♡」
彼女は膣内に幽閉した戦士のことは完全に忘れ、膣圧で身体ごと粉砕してしまっていた。
小人殺戮に時間をかけすぎた彼女は、次の小人を探しに街を練り歩く。といっても、彼女の場合は小人を残さず殺すために道無き道──建物の上だが──を歩いていた。ときどき飽きたように建造物を蹴り飛ばしたり、しゃがんで手を伸ばして指で握りすりつぶすこともあった。普通の大きさの少女なら何も問題が起きなかったことも、200倍ともなれば、少女の行動一つ一つ全てが殺戮行為となり得るのだった。
ふと顔をあげると町から離れる方向に飛行物体がいくつか飛んでいるのが見えた。よく見るとそれは飛竜に乗った飛竜使いと魔女であった。偶然この町で休憩していた彼らは、巨大な少女が見ていない隙に空から逃げ出したのだった。
「そんな高いところを飛んでいたら、すぐに見つかってしまいますよ♡」
そう言うと彼女は右手の人差し指を垂直上方にピンと立てる。指の先に魔力を溜めると指の先にエネルギー球が出現した。すでに少女の指ほどの大きさになっているので、半径10mはあるだろうか。
飛竜使いと魔女たちは彼女が気づいたことを察して、すぐに低空飛行に切り替え、さらに進行方向を何度も切り替えて少女を翻弄しようとする。
「くすくす...無駄なのに...♡」
彼女が逃げている彼らに指を向けると、エネルギー球が崩壊し、直径100m超の光線となって彼らに一直線で向かう。彼らが気づいた時にはすでに高エネルギーのビームが彼らを焼き尽くした後だった。低空飛行していたため、その周辺の草原も一瞬にして焼け野原に変わる。残っているのは真っ黒になってしまった竜と人間だけだった。
町を蹂躙しながら北門に到着した彼女は、北門から逃げようとして足踏みしている人々を見つけてくすくすと笑う。
「西門からも北門からも出られなくて残念でしたね、ふふっ」
門の外部自体は出られるのだが、そのすぐ外側に深さ20mほどの巨大な溝が町全体を囲っており、出られないようになっていた。まだ生きのびる希望を捨てていない青年が大声を出す。
「これもお前の仕業かっ!!」
「そんなに怒らないでくださいよ〜。そうだ、もう一度私の手の上に登りたい方いませんか?」
「いるわけないだろ!」
「そうですかぁ...残念ですねぇ...じゃあ今度は私が誰を乗せるか決めちゃいまーす♡」
ぐわぁっと少女がしゃがむと同時に両手を人々の間に置く。そのまま小人たちをすくうように持ち上げる。手の手の間に挟まれて肉塊ミンチにされてしまった者もいたが、彼女の興味はすくわれた人々の方にあった。
「しゃがんだままでもだいぶ高いですよね?ここから落ちても弱い人間さんたちは即死ですよ♪」
そのままゆっくりと立ち上がる少女。水をすくうように手に乗せられた人々は立っていることもままならず、人間ドミノ倒しが起こり、地獄絵図と化す。
「あ、両手ですくっちゃった。さっきみたいに片手に乗せたいんで、右手に乗ってる人は...残念でした♡」
ぱっと突然上下反転する少女の右手。右手半分に乗っていた人々は重力に逆らうことなく地面に吸い込まれて行く。少女にすくわれずに済んだ人々は突然空から降ってくる生きた人間の雨に、逃げるべきか助けるべきか悩む間も無く、降ってくる人に潰されて息を引き取っていく。
「仲間割れですかぁ?自分たちの仲間が空から落とされてるのに助けもしないで逃げ出したり、仲間を下敷きにして殺しちゃったり… ほんと甲斐性なし♡」
200m超から落とされて生身の人間が無事であるはずもなく、すごい角度で身体がねじ曲がって動かなくなった。生き残った人間が悲鳴を上げながら逃げ始めるが、口端を歪めながら一歩、また一歩と小人を踏み潰し、あっさりと滅ぼしてしまった。
左手に乗せられた数百人に向けて少女は声をかける。
「そういえば、先程の質問ですが・・・このふっか~い溝は私がやりました♡最初にこの町を訪れた時に外周2周もしましたからね♪怪しまれずに外堀を掘ることができましたぁ♡」
周囲がざわめく。彼女は初めからこの町を壊滅させる目的でやってきた。まず逃げ道を塞ぐのは当然のこと・・・
「あなたたちは私がここに来てからずーっと私の手のひらで転がされていた、ということです♡今も実際、私の手のひらで転がされていましたけどね♪」
少女が余裕たっぷりに、お茶目に冗談を言っても、誰も笑おうとしない。それほど絶望的な今の状況。
「生き残ったあなたたちにはご褒美に、私の身体のナカに入れて差し上げまーす♡嬉しいですよね?特に男性の皆さん♪」
少女の手のひらの上では、女性は恐怖ですくみあがっている者がほとんどで、巨大な少女に向かって降ろせだのどっか行けだの怒鳴っている者が少数。男性は半分が好戦的で今の状況を打破しようとしており、もう半分はあまりにも支配的で暴力的に巨大な少女に見とれてしまっていた。
巨大な少女は手のひらを自分の顔より上空にあげ、大きく口を開ける。人々が何をされるか悟った瞬間にはすでに手のひらの角度は少女の口へと向かう地獄のすべり台と化していた。口内に入ってからもなんとかして外部に出ようと必死に抵抗するが、唾液の分泌によりほとんどの場所に掴みどころがなく、そのまま滑り落ちていく・・・
・・・ごくん
「ナカって言っても胃の中ですけどね♡」
数百人を嚥下した彼女の頬は、再び紅く染まっていた。
南門へと向かおうとした少女が振り返ると、今までにはいなかった人々が姿を表した。宙に浮いている者が10人ほど、少し離れた建物の上に30人ほど、さらに離れた地面の上に50人ほど、計90人程度の人々がこちらを向いている。よく見ると彼らは隣国の王国魔道士団のようであり、少女が町の外側へ出るのを待っていたようだった。
「王国の精鋭魔道士さんたちが私を討伐しに来てくれたんですか?ふふっ、嬉しいです。楽しませてくださいね♪」
その言葉を宣戦布告と見たのか、魔道士たちは一斉に魔法を放ってきた。地面からは火の玉、屋根からは稲妻、空中からは竜巻やかまいたちが容赦なく飛んでくる。彼女は全身でその魔法攻撃を受ける。彼女の全身で爆発が起き、かなりの威力で魔法が放たれたと思われる。
「きゃっ・・・ちょっと、やめ・・・!」
少女の苦しそうな声が聞こえ、魔道士たちはほくそ笑む。いくら図体が大きいとはいえ、物理耐性はともかく、魔法耐性はないんだ・・・と。彼らはこのまま魔力の出力を上昇させ、一気に畳み掛けようとする。
「・・・なーんて♡」
少女の周りの爆発の間を縫って地面に向かう光線が放たれる。ビームは地面をえぐり、建物を崩壊させながら地面から火球を放っていた魔道士たちを包み込み、一瞬にして50人を皆殺しにしてしまった。
「くすくす・・・それで本気ですか?」
全くダメージを受けていない彼女は不敵な笑みを浮かべて魔道士たちを煽る。思わぬ攻撃により半分もの魔道士が減ってしまった討伐隊は誇りにかけて、最大魔力を出すことに決める。どんなモンスターも確実に葬り去れる魔力の塊、魔導結晶を出歩くときには必ず持ち運んでいる王国魔道士たち。残り全員で魔導結晶の力をすべて使って倒す・・・それが彼らの誇りと意地。彼らは結晶から魔力を引き出すと、自分の前方に魔力を集め始める。淡く水色に輝くエネルギー球。巨大な少女の顔にも匹敵するであろう大きさにまで大きくなり、さすがの少女も驚いた様子を見せる。
最大まで結晶の力を引き出すと同時に彼女に向かって解き放つ。彼女の身体にぶつかった瞬間、そのエネルギー級は爆散し、あたりは眩しい光と衝撃波に襲われる。あまりの衝撃に北門周辺の建物は崩壊していたが、少女を倒せればこの町は平和に戻るという理由で、やむを得ないと判断された。包まれた光が失われて最初に彼らが見たのは、笑顔のままの少女と、傷一つついていない服と少女の肌だった。
「ふふ、あなたたちの最高の攻撃でも、ぜんっぜんダメですね♡ちょっと感触感じるかな?くらいでした♪」
そう言うと彼女はゆっくりと魔道士たちに近づく。空中でふよふよと浮いている魔道士はまだ魔力が残っているようだが、建物の上にいる魔道士たちは魔力が尽きて身体もろくに動かせない。そんな彼らに追い打ちをかけるように、彼女はしゃがんで建物に開いた手を近づけると、そのまま屋上へ手をぺったりとつける。
ぐちゃっ・・・
建物と手のひらで完全にプレスされた30人は少女の手のひらで原型もわからないほどぐちゃぐちゃにされてしまった。少女はその場で立ち上がり、ぱんぱんと服についたゴミを払う仕草をすると、今度は残った浮遊している魔道士たちへ目を向ける。
「私のデコピン・・・避けられるかな?」
彼女が空中でデコピンを放つと空気が大きく揺れ、ソニックブームが出現して魔道士たちへ向かっていく。あまりの速度に飛行以外の魔力が尽きている魔道士たちは次々とデコピンの風圧に射止められ、地面へと転落していく。残ったたった一人の魔道士は他の魔道士と違って回避能力も高く、ソニックブームもすべて避けてみせた。彼女は感心してその魔道士へと近づき、ひょいっと指でつまむ。よく見るとその魔道士は女性で、つまんだ指から魔力の流れを感じた。
「魔導結晶をもう一つ持ってる・・・?ああ、だから私のデコピン、避けれたんですね」
じーっと魔道士を見つめる少女。
「じゃあ、結晶ごとあなたを食べたら私の地の魔力も上がるかな?」
そう言うやいなや、指を唇の近くまで持っていくと、魔道士の頭にキスをする。そして一旦唇から離したかと思うと、再びキス。それを10回程度繰り返す。女魔道士の顔は少女の唾液まみれになり、呼吸をしようにも彼女の唾液が体内に入るだけで空気が入ってこないようになってしまった。キスだけで体力が失われてしまった彼女を見て、唇で彼女の頭を挟む。そのまま指を放して口内へちゅるん、と吸引した。
ごきゅん・・・
女魔道士は食道を通り胃袋へ到達する前にせめてもの抵抗をと、最後の魔導結晶を使って喉へ向かって高エネルギーの光線を放つ。先程の威力の約1/30だったが、少し体内が揺れた気がした。
少女は自分ののどちんこに攻撃され、"うぇ・・・"と少しえずいた。巨大な少女といえど高威力の攻撃で喉を攻撃され耐えられることはできず、胃の中のものが逆流する気配がした。しかし、そんな気分に反して彼女は口端を歪めると、町全体が少女の口に収まるレベルにまで急速に成長した。その直後、
うおえええぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
と口から胃の中の内容物を吐き出した。吐き出した先はもちろん・・・町。彼女の吐瀉物は町の中心に着地したかと思うと、円心上に広がっていき、最終的に門外まで満たされていった。吐瀉物の中には先程溶かした数百人の人々の骨も含まれていた。建物も外壁も人間も植物もすべて彼女の吐き出された胃酸ですべてどろどろに溶け、たった一回のゲロで一つの自治体が完全に滅んでしまった。最後に生き延びた女魔道士も体外には出られたが、あまりに濃いゲロ臭でまともに魔法も使えず、浮遊できないままだんだんと落下していき吐瀉物の一部となってしまった。
「・・・。あの魔道士の最後の抵抗が、この町にとどめを刺すことになろうとは思わなかったでしょうね。くすくす、こんなに下品に町を破壊し尽くせるなんて思いませんでした。感謝しますね、魔道士さん♡」
そう言うと彼女は王国方面へ足を進めたのであった。