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文化祭と縮小男子
サイズ差お化け屋敷
高校1年生になって、初めての文化祭が訪れた。
俺がいる高校の文化祭はそこそこ規模が大きく、クラス単位の展示を生徒が主体となって1か月かけて準備していく。他の高校の生徒も訪れるような、有名な文化祭だ。
今日はその文化祭の、クラス展示の内容を決める話し合いの日。
「じゃあ、何か意見はありませんかー?」
教室の壇上に、男子の学級委員と女子の学級委員が一人ずつ。それぞれが男子たちと女子たちに呼びかけて、展示のアイデアを募り始める。
うちの高校では、男女それぞれで企画を行うのが定番となっていた。特に学校のルールとして決められているわけではないのだが、何となく男女で分かれる伝統が昔から続いているらしい。そんなわけで、俺たちのクラスでも男子と女子で分かれて話し合いを行っていた。
「食いもん系がいいんじゃないか?」
「脱出ゲームとかやってみたいなあ」
男子チームでは、たこ焼き屋、メイド喫茶、ゲームコーナーなど、文化祭としては比較的ベタな案が次々に挙げられた。高校初めての文化祭とあって、これぞ文化祭というような展示をやってみたいという雰囲気が強く。突飛な発想が出るわけではなかったが、無難な案に落ち着きそうではあった。
屋台系の展示をやってみたいな、と何となく思っていて、ふと。女子チームがクラスの反対側で盛り上がっているのが聞こえてきた。
「縮小スプレーとか上手く使ったら面白くないかな?」
「来た人に縮んでもらって、お化け屋敷するとか?」
「面白そう!」
聞こえてきたワードがあまりに文化祭という概念から遠すぎて、思わず聞き耳を立ててしまった。
…縮小スプレー。
犯罪対策のため数年前に開発されたそのスプレーは、今や女子高生や女子大生、OLたちの必須アイテムとなっていた。スプレーは男性のみに効く仕様で、どんな屈強な男でもスプレーを吹きかけられたらたちまち身体が縮んでしまう。吹きかければ吹きかけるほど縮小が進む仕様はなかなかに過激で、しかし痴漢や暴漢を退治する重要なアイテムとして、規制されることは一度もなかった。
「縮んだ人になら、めっちゃ広いお化け屋敷作れるんじゃない?」
「でもお客さんに男の人しかこないんじゃ…」
「私は面白いと思うー!」
クラスの女子たちは、お化け屋敷に招くお客さんを男性に絞り、縮んだお客さんに対するお化け屋敷を作ろうと言っているのだ。
…危なくないのかなあ。
女子たちの盛り上がりを小耳にはさみながら、何となく心配してしまう。縮小スプレーが開発されてから、スプレーを乱用した遊びが全国の女子中高生の間で見られ、ちょっとした社会問題になっていたりするのだ。
縮小した人間と普通の人間の力の差は、もう圧倒的で。一度遊び半分で縮小されたら、復帰スプレーを大きな人間にかけてもらうか、1時間経過しないと元に戻らない。それまでの間、大きな人間に生き死にを握られているといっても過言ではないのだ。…いくら文化祭の企画とは言え、女子たちに対して全く抵抗できない体格まで縮められるというのは、ちょっと怖すぎるのではないか。
…まあ、俺は行かないからいいか。
そんなことを思っていると、
「じゃあお化け屋敷で決定ね!」
どうやら本当に決まってしまったらしい。
女子側でそんな縮小スプレー関連の企画が行われようとしていることに怖さを感じつつも。…もし縮められたらいつも見ている女子たちはどれくらい巨大に見えるのだろう、と変に妄想してしまう。
黒板の前に立って意見を集めていた委員長の橋野が、ビルのように巨大になった姿を想像する。身長は160cmも無くて、ほとんどの男子よりも背が小さい。そんな橋野がどの男子よりも巨大になり、ふくらはぎの太さよりも俺たちの身体が小さくなってしまったら。…何故か、胸がざわつくような、ドキドキするような、そんな気持ちが心の中に芽生えていた。
「女子側は決まったようだな。男子側はどうだ?」
「こっちはたこ焼き屋でーす」
「そうか。じゃあどちらも決まりだな」
女子たちが縮小スプレーを使うことに対して、先生からのお咎めは特になく。女子側の企画はお化け屋敷で決定したようだった。
------
そして、女子と男子で分かれた文化祭の準備はどんどん進んでいき。
気づけば、当日まであと1週間となった。
「看板大きすぎないか?」
「今日中に終わるかなあ」
一通りレシピの検討とたこ焼きの試作が終わった男子チームは、今は教室の一角で大きなたこ焼き屋の看板を作っていた。
ガラガラッ…
「あ、男子たちいた」
「………?」
突然開けられた教室のドアの方を見ると、同じクラスの女子の冬野が顔を出していた。女子たちは隣の空き教室でお化け屋敷の内装を作っているはずだが、何の用だろうか。
「お化け屋敷、とりあえず完成したんだけどさ。誰か試しに入ってくれない?」
ケロッとした顔でそう頼んでくる、冬野。言われた男子たちは互いに顔を見合わせる。
「俺、ちょうど絵具塗ってる途中だから無理かも」「この後すぐ部活だからなー」
周りの男子が色々理由を付けて辞退していく。…あれ、少し嫌な予感がする。
「そっかー。…城永くんは?」
残念そうな表情の冬野が、俺の方に視線を向ける。
「あー、…看板、塗らないといけないし」
「別に一人抜けるくらいいいんじゃないの?」
一人の男子が余計なことを言う。いや、俺は行きたくないんだけど…。
「城永くん、来てくれない?そんなにかからないからさ」
「う、うん…。スプレー、かけるってことだよね?」
「そうだよー」
正直、縮小させられることに気が進まない、というかちょっと怖い。しかし思い切り直接頼まれた状況で断っては、空気が悪くなってしまうだろう。そうなるのも少し怖かった。
「…分かったよ」
「お、ありがとー」
冬野は安心したような表情を見せると、
「じゃ、こっちね」
隣の空き教室に向かって、俺を誘導する。…すぐに、窓が黒幕で隠された空き教室が見えてくる。おかげで中のお化け屋敷の構造は一切見えない。
俺は空き教室のドアの前に立たされた。
「じゃあ、この中に入ってね」
冬野はガラガラッ、と空き教室のドアを開く。そこには、段ボールで作られた電話ボックスのような空間が待ち受けていた。段ボールで塞がれていることで、教室の中の方の様子は全く見えないようになっている。
「今からドアを閉めるから、しばらくそこで立ってて」
冬野は俺を段ボールのボックスの中に誘導すると、自分は入らず、教室のドアを再び締め切った。狭い空間に閉じ込められた俺は、やや不安な気持ちを残したまま待機する。
(大丈夫なのかな…うわっ…!)
パチンッ…
いきなり教室の電気がオフにされたかと思うと、次の瞬間、
プシュゥゥゥゥ…!!!
暗闇の中で、スプレーが四方から吹きかけられているのが分かった。何だか殺虫剤を巻かれているような感覚で、いい気分ではない。…縮小スプレーをかけられる人生初の体験に、緊張して鼓動が早くなる。
…と。少しづつ、自分の意識が遠くなっていくのを感じる。
縮小が、始まっているのか…?でも周りが真っ暗で、自分のサイズも分からない。…訳も分からないまま、どんどん意識が薄くなる。
「「成功したかなー?」」
完全に意識が落ちる前、冬野の声がどこか遠い所から響いてくるのだけが聞こえていた。
------
目が、覚める。…俺は仰向けの状態で、何か固い地面に寝かされていた。
「っ………」
先ほどまでの記憶は鮮明だ。意識が落ちたと言っても、ほんの数十秒くらいかもしれない。目を開けても辺りは真っ暗で、目が慣れていない状態ではほとんど何も見えない。
「よっ…と……」
俺はゆっくりと立ち上がる。その直後、自分の身体が制服を未だ纏っている感触に気づいた。自分の服もそのまま縮小されている。…事前に聞いていたことだが、やっぱり不思議だ。人の身体と同時に、身に着けていた服まで縮小されるなんて。
(…………)
きょろきょろと辺りを確認する。まず自分が立っているこの地面。暗くてよく見えないが、木目調で表面がすこしツルツルしている。それでいて、だだっ広い。直感的に、生徒が使う机だと思った。俺は、いつも使っているあの机に対してここまで小さくされたのか。
そして、周りは何か黒いもので覆われていて。半円状のトンネルが、向こうの方までずっと続いている。段ボールで作ったトンネルを黒いビニールシートで覆っているのか、ところどころビニールがたわんでいるのが手作り感を思わせる。段ボールで簡単に作ったトンネルがこんなに広く大きくなるなんて。確かに、普通の大きさの人向けに教室でお化け屋敷をやると広さに限界があるが、縮小した状態ならかなり長いお化け屋敷コースを作ることができる。その点は企画として面白いかもしれない、と素直に思った。
しかし。心がざわざわする。…このトンネルの外側に、巨大な女子たちが存在しているかと思うと、どうも落ち着かない。しかも、今自分がどれくらい縮んでいるかも分からないのだ。ビルのように巨大な女子たちが、トンネルの外から俺を驚かせるために機会を伺っているかと思うと。…底知れない恐怖を感じる。気味の悪いことに外からの音が何も聞こえないのが、それを物語っていた。
普通サイズの人間に驚かされるお化け屋敷では体験できない、何か異形の物に怯える感覚。この怖さは、文化祭レベルのものではないかもしれなかった。
「……進もう」
とにかく、ちゃっちゃと進んで終わらせよう。そしてすぐに身体を元に戻してもらおう。…恥ずかしながら少しだけ怖くなってきた俺は、足早に段ボールトンネルの奥の方へ進み始めた。
…と、その瞬間。
バンッッ!!!!
「ぎやあっっっ!!???」
突如上方から鳴り響いた爆音に、たまらず大絶叫してしまう。
「な………」
天井部分の段ボールが、こちら側に大きく凹んでいる。…外にいる巨大な女子が、手のひらで段ボールを思い切り叩いたことは明白だった。結果、縮小された人間には大きすぎる爆音がトンネル内に鳴り響いたのだ。
こんなの、怖すぎるに決まっている。
「やりすぎだろ…こんなの…!」
見えてはいないが、俺を容易に圧し潰せるような巨大な手のひらで段ボールを叩いたのだ。いくら脅かしているだけとはいえ、女子の手のひらに絶対に勝てない状況を見せつけられたような気分だった。
俺は耳を塞ぎながら、震える足でトンネルを進んでいく。…また段ボールを叩かれたらたまったもんじゃない。あんな単純なことで怖がらせられるなんて…。
「………?」
びくびくしながら十数メートルほど進むと。段ボールの右側から、少しだけ光が漏れている箇所があるのに気づいた。半径一メートルほどの光の輪が、うっすらと壁に映し出されている。
(ここだけ、素材が違うような…)
その円形の部分だけ、周りの段ボールの素材とは違って見える。なんかざらざらしてて、真ん中に線みたいなものが入っている…?
「「…………」」
ギロッ……!!
「うわあっっっ!!!!」
突然見開かれた、大きな大きな瞳。完全に不意を突かれた俺は、あえなく尻餅をついてしまった。そんな俺を、こちらの身体よりも大きな目がじっ…と見つめている。
(こ…わ………あ……)
巨大な人間に見つめられ、何故か身体が動かせなくなる。誰かは分からないが、クラスの女子の瞳がじっとこちらを射抜いてくるのだ。圧倒的な質量の視線にさらされる、あまりにも初めての感覚。何か得体の知れない、歯向かえない途方もない存在に見張られているようで、息が詰まって呼吸が浅くなる。
「はあっ…はあっ……」
腰を抜かしたまま動けない俺を、ただただじっと見つめる瞳。これは作り物でもなんでもなく、クラスの女子の目でしかないのだ。…そう考えると、これほどまでにねっとりと視線を送られ続けていることが何だか恥ずかしくなってくる。みっともなく腰を抜かした俺の様子を、この女子だけが間近で観察し続けていたのだから。
ぱちっ……
その瞳がまばたきをするだけで、トンネル内に音が響き渡る。人間のまばたきの音なんて、まともに聞いたことすらない。信じられない体格差がそんなか細い音を果てしなく増幅させ、小人の耳を響かせるのだ。
(い、行こう……)
いつまでもこちらを見つめる瞳から逃げるように、俺はなんとか立ち上がって再び歩き始める。…あの瞳の持ち主は誰なんだろう、と考えながら。
「はあっ…はあっ……」
そこから十数メートルは進んだだろうか。これまでの仕掛けで疲弊していた俺は、怖さも手伝って歩みの速度が著しく下がっていた。数分くらいかけてトンネルを進んだのに、まだまだお化け屋敷は終わる気配が無い。…ここが一つの教室の、しかも机の上に作られただけの空間であるなんて、全く想像がつかない。
(…暑い……)
それにしても。残暑の季節とはいえ、トンネルを歩いていくごとにどんどん暑さが増している。気づけば汗だくになっていて、俺はカッターシャツの袖をまくりながらふらふらと歩く。どちらかと言えば、湿度が高すぎるのだ。むわっとした熱気が段ボールのトンネルの中に満ちていて、それがどんどん濃くなっているように感じる。
それだけではなく…今までは段ボールの匂いがしていたのに、だんだんと生々しい、濃い何かの匂いに変わっているのだ。何の匂いかはよく分からなかったが、有機的な、生きているものが発する特有の匂いに感じていた。…正直、ずっと嗅いでいて気分の良いものではなかった。
そんな熱気と匂いに気を取られ、漫然と前を見ながら歩いていた俺は。
「「ふうぅぅぅぅーー……」」
「んぐあっっ!!???」
突然横から吹き付けられた突風に、おかしな声を上げながら飛び上がってしまった。
「「ふうぅぅぅぅーー……♪」」
「なっ………」
風が吹いてきた方を見ると。段ボールの壁の一部分が楕円状に切り取られ、そこに…巨大な人間の唇が顔を出していた。
(く……くちびる……)
その異常なデカさに唖然とする。唇の横幅だけで、俺の身長より大きいなんて。ふっくらと綺麗な形をした唇がすぼめられ、細かいシワが寄っていて。その中から、
「「ふぅぅー……♪」」
女子高生の生の吐息が放出されているのだ。
(あ………)
熱気で火照った体に、やや涼しい吐息が浴びせられ。気持ちいい、と感じてしまう。女子の唇から放たれたとは思えない大量の風が俺の身体を包み込み、ほんのりと香る唾液の甘酸っぱい匂いに包まれる。その匂いがクラスの女子のものだと気づいた瞬間、いよいよおかしな気分になってくる。
にちっ……♡
涼やかな吐息を放出した唇は、そのぽってりとした上唇を下唇に合わせ、ぴっとりと閉じてしまう。すこしだけ唾液に濡れた唇同士が密着し、みちっ…♡ぬちっ…♡というリアルなリップ音が、普段では絶対に聞こえないような小さい音が、はっきりとトンネル内に鳴り響く。
俺は無意識に、その大きすぎる唇から目が離せなかった。巨大な人間の唇という見たこともない光景に驚いているのもある。ただそれよりも、見知ったクラスの女子の唇がこんなに巨大になって目の前に鎮座していることが、激しいドキドキ感を与えていた。
(女子のくちが…こんなにでっかく……)
クラスに明確に好きな女子がいるわけではないが、可愛い女子や多少気になる女子がいないわけでもない。ただ、目の前の唇は、間違いなくクラスの女子の誰かのもので。男子たちが気になっている女子の、誰にも触ることができないぷにぷにの唇かもしれない。そんな唇が今、目の前にある。手を伸ばせば触れてしまえる距離。この張りのある上唇に手をうずめたら、どんな柔らかさなのだろうか。…こんな巨大な唇にキスされたら、どうなってしまうのだろうか。
にちゃっ…♡
「え……?」
脳がぐるぐる回って考えていた俺は、目の前の唇がいやらしい音を立てて開け放たれたことに、一瞬気づかなかった。
「「はぁぁぁーーー……♡♡」」
むわあっっ♡♡
「っっっ……!!!」
今度は、容赦ないほどに蒸れ蒸れの、生暖かい吐息が容易に浴びせかけられる。先ほどの涼しい吐息とは打って変わって、ごまかしようもないよだれの濃い匂いがふんだんに混じった空気がトンネル中に充満する。クラスメートの女子の口内の匂いを思い切り嗅いでしまい、何かいけないものを嗅いでしまっているような、一種の罪悪感すら覚えてしまう。
この女子は、俺に吐息を嗅がれることを何とも思っていないのだろうか。
「「はぁっ…♡♡」」
追撃のように熱々の吐息を吐き出す唇。あまりの湿度に一歩、二歩下がってしまうが、足元の机も吐息の蒸気でじっとりと濡れてしまい、思うように歩けない。もはや段ボールの壁は、大質量のよだれの水滴でびしょびしょに濡れてしまっていた。それも全て、
みちっ…♡
目の前で閉じられたむっちり唇が全て吐き出したものなのだ。女子の口一つで、小さい人間の世界はこうもめちゃくちゃに支配されてしまう。こんなにも広いトンネルの空気を塗り替えられ、女の子の匂いに染め上げられる。
俺が感じたのは恐怖ではなく、クラスメートの女子に支配される興奮だった。
「はあっ……はあっ……!」
知らぬ間にギンギンに固くなった股間を抑えながら、俺はトンネル内を走り始める。こんな所にいたら、頭がおかしくなる…!クラスの女子がみんないる教室の中で、こんなにも興奮させられて。もし女子たちにこの気持ちを気づかれたら、クラスの中での俺の居場所は無くなってしまうかもしれない。
早く脱出しないと。そう思い、焦りながら、果てしない段ボールのトンネルを走っていく。
ずぼっ!!
「うわあっっ!!」
走る俺のすぐ後ろに、段ボールの壁を突き抜けて巨大な手のひらが侵入してくる。俺は絶叫してもんどりうち、2回3回と床を転がってしまう。巨大で分厚い、それでいて柔らかそうで可愛らしい手のひらは、広いトンネルの中をぐねっ、ぐにっ、と指を開閉させながら暴れ回る。
そんな様子にさえ。俺は興奮していた。
(女子の手……でっかいっ……!)
誰の手かは分からない。でも、あの巨大で柔らかな女の子の手で優しく握られたら、きっと気持ちいいかもしれない。男子には絶対に力で勝てないはずの女子の手が、今圧倒的な体格差を持って俺に恐怖を与えようとしているのだ。…支配されたい。ぎゅっと握られたい。指や、手のひらに触れてみたい。
クラスメートの女子の手に興奮し始めた自分に気づき、俺はかぶりを振って再度走り始める。おかしい。何か、自分の性癖が歪められるような、そんな危険を感じる。ここにいてはいけない。
(早く、出口はっ…!)
焦って出口を探していた俺は、段ボールトンネルの壁の一部に、縦の切れ目が入っているのを視認した。光の筋が縦に伸びていて、外の様子までは見えないが明らかに段ボールの外側の世界に行けそうだった。
…明らかに、段ボールトンネルには続きがありそうだったのに。焦っていた俺は、そこが出口だと早合点し、狭い隙間から無理やりトンネルの外に出たのだった。
そこには。
肌色の巨大な壁が、目の前にそびえ立っていた。
「あ……え……」
一瞬、何が起こっているのか分からなかった。急に明るい場所に出たことにより、目が眩んでいたせいもあった。
しかし、目が慣れてきたタイミングで、その肌色の壁の正体を知ることとなった。
(これ……ふともも………)
明らかにそれは、人の肌の表面で。よく見れば、肌色の巨大な柱が2本、そびえ立っているのだ。俺が立っている机よりもさらに下の方から生えてきている、人間の脚。少し視線を上げれば紺色のミニスカートの裾がひらひらと肌色の柱を隠していて。それは明らかに、クラスメートの女子高生の巨大な太ももだったのだ。
普段思わずちらちら見ているような、女子の生太もも。スカートを短く折り曲げる女子もいて、そんな女子が椅子に座ったり脚を組んだりするのを、目のやり場に困りながらも盗み見たりしてしまうものだった。
そんな太ももが、今目の前いっぱいに広がっているのだ。想像を絶するほど柔らかそうな内ももは白く美しく、肌の表面は少しざらついていてリアルな質感を想像させる。こんな性的な太ももという部位が、自分の全身を簡単に挟み潰せるようなスケールで存在していることが、あまりにえっちだった。
思わず、上空に伸びるビルのような巨体を見上げれば。
「「…………」」
(っっ…!!冬野……)
先ほど俺を教室まで連れてきた、冬野の顔が見えたのだ。
「「そっちどうー?」」
上空から鳴り響く、冬野の声。その声は教室にいる別の女子に投げかけられたものらしく、冬野の視線は全くこちらには向いていない。まさか段ボールの隙間から出てきた俺が太ももの傍にいるとは思っていないらしく、こちらに目をやろうともしない。
冬野の顔と、目の前に鎮座するむちむちの太もも。圧倒的な光景に、興奮を抑えきれない。
特別、冬野のことが好きなわけではない。気になっていたわけでもない。今まで普通にクラスメートとして自然に接してきて、さっきも話していて特に何も感じなかったはずなのに。
神々しくそびえ立つ冬野の太ももに、あまりにも興奮している自分がいた。
「「………ふう」」
ズンッ…!!
みちぃ…♡
冬野が息をつきながら、わずかに身じろぎをすれば。スカートの布が白いカーディガンの裾と擦れたのか、太ももの肉が下着に擦れたのか、大きな音が股下の小人に襲い掛かる。巨体が奏でる音ですら、スケールが違いすぎる。常に制服同士が擦れる音が聞こえ、少し足を踏み直せばその地響きと音が低く反響して止まない。
さっきは同じ身長で、いや、俺の方が背が高くて、冬野の身体は細くて小さかったはずなのに。目の前の太ももはあまりに強く、神々しく、むちっ…♡と降臨しているだけで小人の戦意を喪失させてしまうほど。目の前に立たれているだけで、支配される。恐怖も、興奮も。こちらに気づいてもいないクラスメートの一つの部位に、骨抜きにされる。メロメロにされる。
「「あははっ…♪」」
ズンッ…!!
ふわっ……♡
他の女子の会話に何気なく笑った冬野。その身じろぎがスカートの裾を揺らし、甘い香りを階下の小人に降らしていく。先ほどの吐息の生々しい匂いとは違い、スカートから放たれた柔軟剤の爽やかな良い香り。そこに交じった、女の子特有の太ももの甘い匂い。普段絶対に嗅ぐことのない、冬野の脚の匂いを嗅いでいる。嗅がされている。そんな背徳感が、俺を狂わせる。
(だめだ…だめだ……)
思わず股間に手を伸ばしそうになった自分を、必死で律する。クラスメートの太ももをおかずに自慰行為をするなんて、ましてや教室でそれを行うなど、人として最低の行為だ。
…でも。
がさっ……
再び段ボールの隙間からトンネル内に入った俺は、隙間から顔だけを出し、外の様子を覗き込む。冬野の太ももがそこからでも強烈に見えていて。
「くっ……ああっ……!!」
耐えきれなくなった俺は、トンネルの中に身を隠しながら、冬野の巨体を見て自慰行為を始めたのだった。
「「………」」
ズンッ!!ズンッ!!
ぷるんっ…♡ぷるんっ…♡
「あああっ……!!ああっ……!!」
冬野が何気なく足を踏み下ろすたび、ぷにぷにの太ももの肉がえっちに揺れる。それが太ももの柔らかさをこれでもかというくらい強調し、目が離せなくなる。段ボールに隠れて自慰を行う俺の視点からは、冬野の顔は全く見えない。冬野の太ももとスカート、カーディガンの裾だけが見えている状態で、性の感覚を支配される。さっきまでただのクラスメートだった冬野に対する被支配感が、ありえないほど興奮する。
あの太ももに、挟まれてみたい。圧し潰されたい。柔らかくてあったかい、良い匂いのする冬野の裏ももにむにぃ…♡♡と抱きしめられたい。
「「あー、ちょっと疲れた」」
ガタンッ……
不意に、冬野の下半身が少しだけ浮き上がる。
「あ………」
ズンッ!!!
むにぃぃ……♡♡
(っっっ……!!!!)
突然机に半分腰かけた冬野の太ももが、いきなり俺の眼前に迫りくる。そのまま机の表面に押し当てられた太ももは、むにぃぃ……♡♡と変形して机に密着する。急激に接近した太ももの可憐な匂いが段ボールトンネル内にも容易に充満し、お化け屋敷の中は冬野の甘い香りで満たされる。
女神の太ももがみちぃぃっ…♡♡と机に密着する、果てしなくえっちな光景に。
「ああああっっっ……!!」
愚かな男子高校生は、耐えられるはずもなかった。
------
「はい、出てきていいよー」
「う、うん……」
あれから、身体をふらふらさせつつも何とかお化け屋敷の最後までたどり着いた俺は。再び電話ボックスのような空間で不意にスプレーを吹きかけられ、気づけば元の身体のサイズに戻っていた。
ドアの外からの呼びかけに応じて、空き教室から脱出する。
「あ、出てきた。どうだった?」
「っ……!あ、えっと……」
俺を出迎えるのは、元のサイズに戻ったいつもの冬野だった。…しかし、先ほどあんな行為をこっそりやってしまっていた俺は、まともに顔も見れない。それどころか、
「んー?」
(っっ……)
冬野の太ももをちらと視界に入れるだけで、心臓のバクバクが止まらない。この太ももが、あんなに大きかったんだ。今見ると華奢で可愛らしい太ももが、女神のように太く美しくて。
もう、冬野のことを以前のように見れない自分がいた。
「あ、いや、怖かったよ…」
「ほんと?良かった~。また本番でも来てねー!」
「う、うん」
男子チームの方へ戻る俺を、ひらひらと手を振って見送る冬野。
(本番、も……)
俺は既に、文化祭当日にこのお化け屋敷を訪れることしか考えていなかった。
---続く---
サイズ差お化け屋敷2週目
1か月以上かかった文化祭の準備がついに終わり、本番当日となった。
うちの文化祭は外からのお客さんが多く、今年も例年に漏れず大盛況となっていた。…俺のクラスの男子企画であるたこ焼き屋も、文化祭の屋台とは思えないくらいの盛況ぶりだった。
「普通のたこ焼き一つください」
「ありがとうございまーす!」
朝からシフトに入っていた俺は、たこ焼き屋の店番をしながら、しかし女子の方の企画であるお化け屋敷のことしか考えていなかった。
…1週間前、お化け屋敷のテストということで身体を縮められ、お手製の段ボールトンネルの中で散々巨大な女子に驚かされた。そして最後には、冬野のあまりに巨大な上半身と太ももに圧倒され、気持ちを抑えきれなかった。
あれから俺は、この1週間で何回も同じような夢を見た。暗闇の中で、巨大なクラスメートの女子たちの大きすぎるパーツが襲ってくるのだ。大きな手のひらから逃げ惑い、見つめられるだけで恐ろしい巨大な瞳に相対し、ダンプカーのような大きさのすべすべ素足にすんでの所で踏みつぶされずに済んで。
夢に登場するクラスメートは、どの女子も前から気になっていたわけではなかった。冬野や、バスケ部でうるさい性格の上村、大人しい山吹さん。色んな女子の巨大な姿が登場してきて。
…一度夢の中で巨大な姿を見せつけられてしまっては、それはもう強烈な印象が脳に刻み込まれてしまうのだ。
「………」
また一人、たこ焼き屋の前をクラスの女子が通っていった。今のは橋川だ。バレー部に入っている活発な女子の一人。黒髪のショートカットをなびかせながら、なにやら急ぎ足で歩いている。
昨日、橋川も夢に出てきたところだった。制服姿の少し背が高い橋川が、箱に入った俺を真上から見下ろしていた。その顔はあまりに巨大で、俺は橋川のおもちゃ箱に入れられた人形のような気分だったのを覚えている。
「………」
思わず橋川が歩いていく先を目で追ってしまう。と、橋川はとなりの空き教室でやっているお化け屋敷に入っていった。シフトの交代の時間だったのだろうか。…これから橋川も、縮められた男性客を何らかの方法で驚かせるのだろうか。
「おい、お客さんだぞ」
「…あっ、ごめん、いらっしゃいませー」
ぼーっとしていたら、目の前にお客さんが来ていたことにも気づかなかった。隣のクラスメートに促されて、慌ててたこ焼きをプラスチックのトレーに詰め始める。
あと10分で、シフトが終わる。そうなったら自由時間だ。…俺は、完全に隣の空き教室の方に心を奪われていた。
------
「………っ」
たこ焼き屋のシフトが終わった俺は、一目散に隣の空き教室の前まで歩いて行った。おどろおどろしいフォントで「新感覚 縮小お化け屋敷」と書かれた看板が、教室の上の窓の所に固定されている。
…どうしても俺は、空き教室の中の様子が見たくなった。その理由は、明白で。誰が段ボールトンネルのどこで何をしているのか、気になって仕方がなかったのだ。
ガラガラッ…
周囲に人がいなかったので、空き教室の窓をほんの少しだけ開けて、中を覗いてみる。
ドンッ、ドンッ……
いきなり、女子の姿が目に入る。あれは、バレー部の橋川だ。段ボールトンネルの最初の方の天井を、手のひらでバンバンと叩いている。…1週間前に入った時も同じことをされたような気がする。こうやって見ると、ひとりの女子がただ段ボールを叩いているだけなのだ。しかし、縮小した状態であれをやられると異常な恐怖を感じることを、俺は身に染みて学んでいた。
あの中で、橋川の手のひらに怯えている人間がいるのだ。ただの女子高生である橋川の柔らかな手に、さっきまで橋川より大きかった男が為す術もなく驚かされているという事実。それだけで、興奮させられる。
「ふぅぅー……」
「っ……」
今度は、バスケ部の上村が段ボールに開いた穴に唇を当て、空気を送り込んでいる姿が目に入った。その姿に思わずドキッとして、鼓動が早くなる。上村の唇が、吐息が、トンネルの中に送り込まれて。
(今入ったら、上村の息が……)
そう思ったら、勝手に足が動いていた。俺はそっと空き教室の窓を閉め、正規の入り口の方に向かう。
「あ、遊びに来たのー?」
「う、うん」
冬野が受付をやっていたようで、快活な笑顔を向けられた俺はしどろもどろになる。…あれから、冬野の顔をまともに見れていないのだ。罪悪感も少なからずあるが、何より冬野の姿を見るだけで、あのときの圧倒的なむちむち太ももの光景を思い出してしまう。それだけで股間がみっともなく大きくなってしまうので、俺は何となく冬野のことを避けていたくらいだった。
「ちょうど空いたから、どうぞー」
ガラガラッ……
そして俺はまた、魔境となるお化け屋敷に足を踏み入れてしまった。
------
(やっぱり暗い……)
1週間ぶりに縮小スプレーをかけられ、気づけばまた巨大な段ボールトンネルの中で目を覚ました。周りを見渡すと、段ボールに貼り付けられた黒いビニールシートの上に、柳の木やお墓の絵が貼り付けられている。この1週間で、お化け屋敷らしい装飾を増やしたみたいだった。
(そういえば、女子たちが集まってずっと絵を書いてたな……)
俺の身長と同じくらいの、等身大のガイコツの絵を見ながら思い出す。この絵を見て「怖い」とか「よくできてるな」とか、普通の人は思うのだろうけど。…既に思い切り毒されていた俺は、この大きな絵を片手で軽々書いてしまう女子たちのたくましい指を想像してしまうのだった。
(早く進まないと……)
今は文化祭当日だ。あまりに進むのが遅いと、後ろから他の人が来てしまうかもしれない。
と、少し焦りながら歩き始めた俺は、1週前とつい先ほど学習したはずのトラップを完全に忘れていた。
バンッ!!!バンッ!!!
「ぎゃああっっ!!!??」
異常な激しさでトンネルの天井が叩かれ、凹み、爆音を響かせる。さっきも見ていたはずなのに、俺はまんまと引っかかって絶叫してしまった。
バンッ!!!バンッ!!!
「やめっ、やめてっ……」
それでもなお、手のひらで天井を叩く音は止まない。あまりにもその音が大きすぎるので、分かっていても怖すぎる。自分の生命が脅かされるような、そんな感覚を植え付けられるのだ。
バンッ!!!バンッ!!!
これはバレー部の橋川がやっていることなのだ。ついさっき窓から覗いたからそれが分かる。トンネルの中からでは橋川の巨体は全く見えないが、俺の身体など容易に包み込めるような橋川の手が、何度も何度も天井に叩きつけられているのだ。こちらに容赦なく温かな手のひらを叩きつける橋川のローアングルな姿を想像してしまう。
それだけで、恐怖が一瞬で興奮に塗り替えられる。
バンッ!!!バンッ!!!
「はあっ、はあっ……」
なかなか止めてくれない橋川の攻撃が、どんどん興奮を増長させる。巨大なクラスメートに抵抗もできず、驚かされ続ける屈辱が気持ち良くて。巨大な音で反射的に身体をビクつかせながらも、俺は捻じれた自分の癖で頭がぼーっとしてきていた。
バンッ!!……シン………
しばらくして、ようやく橋川の手の動きが止まった。俺はほっと胸を撫でおろすと共に、もう終わってしまうのかという残念な気持ちを矛盾して抱えるのだった。
その後も、巨大女子たちのトラップは続く。1週間前と同じように、巨大な瞳に見つめられたり、暴れ回る手のひらに恐怖したり。…しかし途中から、俺はこの先にあるはずのとあるトラップが気になって仕方がなかった。
ついさっき、バスケ部の上村が段ボールの穴に唇を当てているのを見た。それが、もうすぐやってくるのだ。いつもクラスで喋り続けている活発な上村は、女子と言うよりも友達的な印象が強くて。…でも、その上村がこの先で待ち受けていると分かっているだけで、どんどん上村のことが気になってしまう。笑った表情を思い出して、よくよく考えると結構可愛い方だよな、とまで思い出す始末。
そんなドギマギした気持ちの中、俺がトンネルの角を曲がったら。
「「………」」
「っっ……!!」
右の壁に開いた、楕円状の穴に。
やはり巨大な女子の唇が、こちら側に押し当てられていたのだった。
(上村のっ……くちびるがっ……)
この桃色のふくよかな巨大な唇の持ち主が誰か分かっているだけで、こんなにも興奮するものなのか。1週間前は誰の唇が分かっていなかったが、今回は違う。いつも見ている上村の、決して身長はそこまで高くない上村の、良く喋る上村の綺麗な唇。それが今、目の前にある。
にちぃ……♡
唾液の音をトンネル中に響かせながら、上村の唇が少しだけ開け放たれる。その瞬間、むはぁっ…♡と無意識に放たれた生暖かい吐息が、俺の身体を一瞬にして包み込む。意識して吐きかけられたわけでもない無意識な蹂躙に、心を奪われる。
今にも熱々の吐息を放ちそうな巨大唇に、俺は思わず近寄っていく。この前は数メートルは距離が開いていたが、今度は手を伸ばせば唇の表面に触れられる距離まで近づく。…俺がこんなにも近づいていることを、上村は分かっていないのだ。
そして、
「「……はぁぁぁぁーー♡♡」」
「っっっ…!!!!♡♡」
ゼロ距離で、甘くて熱い吐息が大量に浴びせられる。大型の扇風機で風を受けたかのように、髪も服も全てが激しくなびいて転びそうになってしまう。上村の可愛らしい唇から放たれた凶悪な質量の吐息が、簡単に男子の身体をなぎ倒そうとする。何とか踏みとどまるも、
「「はぁぁぁぁっっ…♡♡」」
「ああっっ!!♡♡」どさっ!!
それを分かっているかのように、追撃の吐息が襲い来る。あまりの風量に、俺の身体は容易に倒されてしまう。
(ものすごい…匂い……)
何とも言えない、甘ったるいような、生々しいような、とにかく濃くて強烈な吐息の香り。いつも面と向かって話している上村の吐息の匂いを思い切り嗅いでいることに、既にもの凄い罪悪感を覚える。女子の吐息の匂いなんて、嗅いだらセクハラと思われるくらいなのに。今の俺は、一方的に大量の吐息の匂いを嗅がされて虐められているようなものだ。それが、その事実が、たまらなく嬉しい。気持ちいい。
「「はむっ…♡♡」」
散々吐息を浴びせ切った上村の上唇と下唇が、むにゅぅ…♡と合わさって閉じられる。閉じられたことでむにぃ…♡と表面が柔らかく変形し、それが余計に唇の柔らかさを際立たせている。
興奮しきっていた俺は、どこか我を忘れていて。
この唇に、どうしても触れたい。
うだるような吐息の熱気の中、俺はそんなことを思いながら、さらに唇に近づいていく。…段ボールの中だから、誰が触れたかなんて分からない。いや、そもそも、この大きさでは触れられたことすら上村に気づかれないかもしれない。
そんな言い訳を脳内で反芻し、俺はついに。
ふにぃ…♡♡
巨大な上村の上唇に、手を触れてしまったのだった。
(あ、ああ、ああっ……!!)
女子の唇に手を触れる、初めての体験。軽く触れただけなのに、手のひらは容易に上唇の表面に沈み込んで。今までの人生で触れたものの中で、一番柔らかいと感じた。そしてそれが、見知った顔のクラスメートの女子の唇であるという倒錯的な状況。湿っていた上唇の水分が手のひらに移り、クラスメートの唾液が身体に染み込んでいく感覚。
心臓がはち切れそうで、俺はもう、完全に上村に心を奪われていた。
しかし、それでは終わらなかった。
「「んはぁっ……♡」」
にちぃっ…♡
「っっ…!!!」
上唇に何かが触れた感触に気づいたのか、突然巨大な唇が開け放たれる。
そして、
ぬちょぉ…♡♡
(な………)
唇の間から出現した、真っ赤なざらざらの巨大な物体に、言葉を失くす。明らかにそれは、上村の巨大な舌、だった。
「「んむ……♡」」
れろぉ…♡♡
(あ………やば…………)
うねうねと蠢く巨大な舌が、ねちぃ…♡とえっちな音を響かせながら、上唇を舐め取っていく。俺に触れられたところが痒くなったのか、化け物のような大きさのベロがぬちっ、ぬちっ♡と唇を往復して唾液を塗りたくる。
えっちすぎる光景が眼前で繰り広げられ、絶句してしまう。唾液でコーティングされた唇は綺麗に光り、俺の身体を捻り潰せそうなほど大きなベロが、唇に仕舞われていく。こんな巨大な舌にイジメられたら、どうなってしまうんだろう。こんな体格差で上村にキスされたら、どうなってしまうんだろう。無事でいられるだろうか。そんなありえない妄想が頭を巡っているうちに、
「「んっ……」」
巨大な舌は口内の奥に戻っていき、再び柔らかな唇同士が密着し合ったのだった。
「「…………」」
一仕事終えたつもりなのか、そのまま動きを止める上村の唇。…しかし俺は、巨大な唇と舌が絡まるえっちな残像が脳に焼き付いたまま、たっぷり1分程そこに突っ立っていた。
(……行かないと)
早くトンネルを進んでいかないと、後続のお客さんに追いつかれてしまうかもしれない。
「「………」」うねっ…
にちっ…♡
無意識に蠢く上村の唇を尻目に、俺は何とか前に歩みを進めていく。痛いほど膨れ上がった股間を抑えながら俺は、これからずっと巨大な上村の唇と舌を思い出して行為をしてしまいそうな、そんな予感がしていたのだった。
------
(うわ、進路が変わってる…)
上村のトラップから数分かけて進んだ所で、1週間前のトンネルとレイアウトが変わっていることに気づいた。あの時は高低差が無かったのだが、今俺の前に続いている道は、やや急な坂道になっていた。
(今いる場所は机の上のはずだから…教室の床の方に下っていく感じか……)
床の方に進路が続けば、さらにトンネルが続いている予感がする。1週間前よりもボリュームがパワーアップしすぎではないか。…もうかれこれ、30分はお化け屋敷の中にいる気がする。
若干歩くのも疲れてきている中、また数分かけて坂道を下っていく。ようやく下り坂が終わったかと思えば、段ボールのトンネルはさらに先へと続いていた。
(次は何が……)
恐ろしいような、期待してしまうような。どんな脅かしが待ち受けているか分からない中、さらに一歩一歩進んでいく。
と、その時。トンネルの横の壁から、光の筋が見えているのを見つけた。
(……また……)
1週間前も同じような光景を見た。段ボールのつなぎ目なのか、細い割れ目が出来てしまっているのだ。…巨大な女子からしたら目にも見えないような隙間かもしれないが、縮小した人間にとっては人一人通れるくらいの隙間に見えた。
この隙間を通れば。また、巨大な教室の世界に取り込まれる。あの時見た、巨大でむちむちな冬野の太ももを思い出す。柔らかエッチなでか太ももがそびえ立ち、冬野が身じろぎする度にぷるんっ♡と肉を波立たせて。あんな衝撃的な光景を見せられたら、どんな男子でも心を奪われるに決まっている。
「………」
好奇心を抑えられなかった。
(ちょっと、だけ……)
俺は段ボールの隙間に身体をねじ込ませ。光まばゆい教室の世界へ、足を踏み出したのだった。
(………。……うわっ……!!)
そこは、1週間前に見た巨大な教室とはまた別の世界だった。強烈なローアングル。俺が降り立った床はそのまま教室の床で、地平線の彼方でだだっ広く茶色の地面が広がっている。遠くの方には鉄の棒のようなものがビルのように大量にそびえ立っており、それが机の脚であることに少し遅れて気づいた。
そして、
「「今、新しい人入ったよー」」
「「りょうかーい」」
遠くの方に見える、制服スカート姿の大巨人たち。その姿は紛れもなくクラスメートの女子たちで、ぶっとい太ももの塔を何本もそびえさせながら、遥か上空で笑って話し合っていた。
こんなにも遠いのに、こんなにも近く見える。視界いっぱいに広がるその大巨人たちが、途方もない存在に見えてくる。…机の上に立っていた1週間前とは違う。同じ床に降り立ってしまうと、こうも巨大で、圧倒的で、恐ろしいものなのか。あの女神たちと普段同じ空間で勉強していることが、信じられなくなってくる。
「「そろそろ床ゾーンのとこに人くるんじゃない?」」
「「あ、じゃあ私行くね」」
ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!
「ひぃぃぃっっ……!!」
今まで生きてきた中で感じたことのない激しい揺れが、教室の床を襲う。遥か遠方にいた一人の巨人が、こちらに向かって歩いているのだ。女神の脚が一歩踏み出される度、縦揺れた床に翻弄された俺は手をついて這いつくばるしかない。巨大な上履きがぎゅむぅっ…!!と音を立てて床を踏みしめるたび、床にひれ伏す惨めな縮小男子。その巨大な上履きも、巨大な脚にぴっちりみっちゃくした紺色のソックスも、たくましい膝も、ぷるぷる震える白い太ももさえ、まだまだ女神の身体の一部でしかなくて。その先の上半身など高すぎてよく見えなくて、巨大すぎるJK美脚が2本、こちらにとてつもないスピードで歩いてくる光景しか認識できない。
そんな光景に圧倒された、ものの数秒後。
ズドンッ!!!ドンッ!!!
「っっっ……!!!!」
俺がいる場所の10メートルくらい先の場所に、2tトラックのようなデカさの上履きが激しく踏み下ろされた。
「「このへんかな」」
「あ……ああ……」
足を踏み下ろして圧倒的にそびえ立つJK女神。異常なほどローアングルで見上げるその姿は、もはやスカートの裾で上半身が全く見えなかった。俺から見えるのは、上履き、ソックス、太もも、そして逆光で全く見えないスカートの中だけ。顔すら合わせられないこの状態が、クラスの女子たちとは生きている世界が違うことを教えてくれる。まるで、教室に迷い込んだ虫になった気分だった。
あまりに一瞬の出来事に、この下半身の持ち主が誰なのか認識できなかった。誰のかも分からないむっちり美しい脚ににわかに心を奪われながらも、逆光で見えないスカートの中見が気になってしまう。
ぎゅむっ…!!
「ひっ……あ……にげ…」
至近距離で恐ろしい音で摩擦する巨大な上履き。その音で、今自分がどれだけ危ない場所に立っているかを理解した。ビルのように巨大な女子の、足の間にいる状態なのだ。しかも、巨人から俺の姿は見えていない。この女子が何気なく一歩踏み出すだけで、俺は上履きの底のシミになって一生こびりついたままとなるだろう。
そう認識した瞬間、恐怖で身体が動かなくなる。
「「よいしょっと」」
ぐんっ!!!
「ひああっっっ!!!???」
突然、目の前の下半身が急降下してくる。まるで空が降ってきたかのように、俺の視界を支配していたものが一気に降りかかってくる恐怖。このまま誰のかも分からない健康的な下半身に潰されて、短い人生を終えるのか。そこまで一瞬で想像してしまう。
「………?」
しかし、女神の下半身に圧し潰されることはなく。思わずしゃがみ込んで顔を覆っていた俺は、恐る恐る上の方を見上げると。
「……っっ!!……あ……」
みちぃぃ……♡♡
そこには、しゃがみ込んだ女神の下半身がこれでもかというくらい露わになって広がっていた。純白の生地が圧倒的に視界に飛び込んできて、こちらの意識を捕えて離さない。これが、一人の女子高生が股に身に着けている下着だとは到底思えなかった。天を埋め尽くすほどのパンチラはもはや暴力的なえっちさで、こちらの興奮を支配して離さない。意識しないことなんてできない。どこに視線を向けても、巨大な下着がみちぃぃ…♡♡と股間に密着している光景が降ってくるのだから。
巨大な下着の端から、太ももの付け根の肌が食い込んではみ出している。一切人目に出ないはずのその部位は全く日焼けておらず、真っ白で神々しさすら覚える。美しい脚の付け根からむちむちの迫力満点の太ももが上に向かって伸びており、膝を経由してふくらはぎが下に伸びていき。しゃがみ込んだ状態のふくらはぎが太ももに密着してむちむちっ…♡と肉を変形させていて、それがまた性的な興奮を煽ってくる。
「「ん………」」
バンッ!!バンッ!!
後ろで大きな音が鳴り響き、ビクッとなる。今俺の前でしゃがんでいる女子が、段ボールトンネルの天井を叩いているのだ。…ここでもまた、同じトラップがあったらしい。あのまま順路に沿って進んでいたら、この巨人の手のひらに容易に驚かされていたのだろう。
「「ん……咲ちゃん、そのガムテープ取ってー」」
ぎゅむっ…ぎゅむっ……!!
「ひっ……あっ……」
目の前の下半身が予告もなく動き、上履きが踏み直される。巨大な下着が上下に揺れたかと思えば、そこから伸びる太ももがむにむにと形を変えて伸びたり、ぎゅっと圧縮されたり。あまりにも大きな女子の股間部が有機的に動く光景は、年頃の男子にとって刺激が強すぎる。
(っ………)
抑えきれない気持ちを我慢する。未だクラスメートのどの女子か分からないまま、その巨大な股間部に見下ろされて監禁される。ただの一人の女子高生の下半身が怖くて、下着が怖くて、身体を動かせもしない。それなのに、恐れ多くも女神様のスカートの中の光景に興奮してしまうみっともない縮小男子。
「「はい、ガムテープ」」
「「ありがと。ここ、ちょっと空いてるんだよねー」」
頭上で繰り広げられる大音量の会話は、あまりに音が大きすぎて明確に耳に入ってこない。あんな音量で巨人に話しかけられたら、一発で鼓膜が破れてしまうかもしれない。ただのクラスメートの女子の会話が、凶器にもなり得る体格差。
「「よっと……」」
べりべりっ…ぺたっ……
未だ股間から目が離せない俺は、上下左右に伸び縮みする下着のシワが気になって仕方がない。同い年の女子の下着すら見たことがないのに、それが股間部の動きに合わせて微細なシワを作っている様子まで見せつけられているのだ。あのシワの向こうに、何が広がっているのか。想像してしまう。
「「よし、これでおっけー」」
ぎゅむっ!!
「うわあっ!!!」
女神様の股間に目を奪われていた俺は、突然それが空高く上がっていくまで、何が起こっているのかよく分かっていなかった。圧倒的な下半身を見せつけていた巨大クラスメイトは一瞬にして遥か上空へと消えていき、再びたくましい2本の脚と相対させられることとなる。
ドンッ!!ドンッ!!
「くっ……う……」
そのまま容赦なく教室の床を踏みにじり、巨体をすさまじいスピードで移動させていく。取り残された俺はしばし直立して動けなかったが、ふと我に返る。
(早く戻らないと…!!)
今俺は、とんでもなく危ない状況に晒されていたのだ。あの女子が一歩上履きを踏み直すだけで、全身くまなく圧し潰されていた。こんな危ない場所が学校の教室でしかないなんて信じられないが、今の俺にとっては危険すぎる空間。
しかし、踵を返して段ボールトンネルに戻ろうとした俺は。
「………え?」
僅かに開いていたはずの隙間がガムテープで塞がれていることに、ようやく気付いたのだった。
---続く---
お化け屋敷の外は恐怖の世界
「「今、お客さん2人入ったよー」」
「「おっけー」」
ドスンッ!!ドスンッ!!
(ひぃぃっっっ!!!)
果てしなく広い教室という空間で、むちむちのJK美脚が空を飛び交っていく。重機のような足が床に着地する度にドスンッ!!と恐ろしい音が響き渡り、次の瞬間には肌色の巨大な柱が遠くの方に去っていく。かと思えば、また別の巨人が足踏みを降らせてきて。
さっきまで対等なクラスメートだったはずの女子たちの歩行に、何度も命を刈り取られそうになった。
(にげっ、にげ、ないと…!!)
お化け屋敷の外に出た後に、段ボールのトンネル内に戻る穴をガムテープで塞がれてしまった俺は。段ボールの壁に必死でへばりつきながら、自由気ままに歩き回る女神たちの脚に恐怖しながら、その凶悪な重量の足がこちらに落ちてこないことを祈り続けるしかなかった。
「「あははっ!!」」
ズンッ!!ズリッ…ズリッ…!!
(っっ……)ビクッ…!ビクッ…!!
俺がいる場所から1タイルだけ離れた所に、また別の女子たちが脚を踏み下ろす。何気なく談笑しつつ、時折笑っては上履きを教室の床に無意識に擦り付ける。その音が恐ろしく、まるで自分のような小さい虫を擦り潰そうとしているように見えてしまって。
(ごめんなさい……ごめんなさいっ……!!)
クラスメートの巨体に、心の中で命乞いをする始末。ローアングルすぎて顔もよく分からない巨大女子にいくら祈り続けた所で、帰ってくるのはむっちり太ももが重力に合わせて揺れるえっちな光景だけ。当の巨人本人は足元の矮小なクラスメートに気づくわけもなく、いつも通り友達と駄弁っているだけなのだ。
ただ、体格差があるだけで。ただ縮小スプレーをかけられただけで、神様と虫レベルの関係性まで堕ちてしまうなんて。…もはや、意思疎通を図ろう、気づいてもらおう、という気にすらならなかった。
「はあっ…!!はあっ…!!」
そして、俺が取った行動は。とにかく、あの美脚が落ちてこない教室の隅まで逃げることだった。幸い俺がいた場所は教室の後ろ側にやや近かったため、そちらを目指して必死に手足を動かして走っていく。…本当に命がかかっているだけあって、あまりに必死だった。
そして1分後。教室の後ろでマス目状に並んでいる、扉のないロッカーの目の前までたどり着くことができた。ロッカーはクラスの人数分あり、ここは空き教室だがお化け屋敷のスタッフである女子たちの荷物置き場と化していた。一つ一つのロッカーがちょっとしたコンサートホールくらいの大きさで、その空間を容易に埋め尽くすほど大きなスクールバッグや水筒、脱ぎ捨てた上着などが押し込まれている。
(でか………)
女子たちの私物のあまりの大きさに気圧される。無造作にロッカーに詰め込まれたそれらは、その一つ一つがこちらを質量で威圧してくる。私物の大きさは、持ち主である女子たちの部位の巨大さを物語っていて、それを嫌でも想像させられる。あのバッグを持てる手の大きさ、あの水筒を飲める口の大きさ、あの上着を羽織ることが出来る上半身の圧倒さ。
しかし、そこに圧倒されている場合ではない。…幸いにも、一番下のロッカーは教室の床と段差がなく。俺は誰かの私物が詰め込まれたロッカーの空間に足を踏み入れた。ここなら、女子の足が直接降ってくることはないはずだ。
(…………)
ロッカーの空間の中は、甘く漂う思春期女子の香り。それがどの私物から出ているのかは分からない。上着やスクールバッグに僅かに染み込んでいた匂いは、虫のような人間にとっては強い強い香りとなって鼻腔を支配する。対等なサイズだったら、よっぽど近づかないとこれほどの匂いは感じないだろう。…本人さえ意識していなさそうな私物の香りを強制的に意識させられるという、倒錯的な被支配感。この匂いが誰のものなのかすら分かっていないのに、変な興奮が生まれてきてしまう。
「ここならしばらく大丈夫だろ…「「あっつ~」」
ドスンッ!!ズンッ!!
「ひっ……あ……」
突然ロッカーの外の景色に現れたのは、巨大な上履き。ロッカーの中に避難しているから大丈夫とは言え、本能を揺さぶるデカさの上履きが無造作に降ってくるのだから、いちいち怯えて絶句してしまう。
「「上履き履いてるの暑くなってきた~」」
「「脱いじゃえばー?」」
目の前に鎮座する上履きに突っ込まれているのは、肌色の巨大おみ足。他の女子のように紺色のソックスに包まれておらず、すべすべの素肌がむき出しになっている。素足をそのまま上履きに突っ込むという行儀の悪い履き方は、恐らく運動部の誰かだろう、と直感で思った。
ただの素足なのだが、何となくあまり見てはいけないような気がしていた素足履き。女子の素足に興味があったわけでもなかったのに、こうしてあまりにも巨大な景色でそれを見せつけられると、目が離せなくなってしまう。
「「よいしょっと」」
ぎゅむっ……ぎゅっ……!!
ズンッ…!!!
(あ…………)
足だけの巨人は、上履きに突っ込んでいた素足を無理やり外に開放する。くたくたになった上履きがドンッ!!ドンッ!!と教室の床に叩きつけられると、その後を追うようにズンッ!!ズンッ!!と生の素足が2つ、遅れて降ってくる。
初めて、女子の素足をこんなにまじまじと見たかもしれない。足の指一本一本だけで、俺の身体を容易に捻じ伏せてしまえる大きさ。その指を従えている足本体はすべすべの肌色で、美しい足の造形美を主張していた。ちょっとだけ骨の形が見えて、それでいて柔らかな肉付きもあり。運動部女子の何気ない素足は、美しさと健康的な柔らかさを兼ね備えていた。足の裏は見えてはいないが、巨体を受け止めるためのクッションとなる柔らかな肉が少しだけはみ出していて。
あの足裏に踏まれてしまったら、どうなるのだろう。
「「んっ」」
ドンッ!!ゴロゴロッ…!!
「うわあっっ!!??」
ぼーっとしていた所に、突然巨大な上履きがロッカー内に転がり込んでくる。JK素足が、行儀悪く上履きをロッカー内に蹴り込んだのだ。この女子にとっては足を纏うだけの取るに足らない大きさかもしれないが、小人にとっては凶器となり得る巨大なオブジェクトが無造作に転がってくるのだ。あまりに大きな質量が迫ってくる光景に、俺は逃げる判断すらつかず、頭を抱えてうずくまるしかなかった。
「「あー、涼しー♪」」
ダンプカーのような上履きが、一方は俺の右隣に着地し、もう一方は左隣に横向きになって着地する。左右の上履きに取り囲まれ、巨大な女子の足に直接挟まれているような気分に陥る。
「…っ、げほっ!!げほっ!!」
強烈に濃厚な足裏の匂いが、一瞬でロッカー内の空気を塗り替える。あまりの刺激臭に思わず咳き込んでしまう。左側の上履きは、足を入れる上側の部分がちょうどこちらに向く形で倒れており。汗にじっとりまみれた素足が押し込まれていた、上履きの内部がこちらに曝け出されていた。運動部女子の素足に散々踏みしだかれた中敷きは黒ずんでおり、その中にどれだけの汗が染み込んでいるのか想像するだけで途方もない。その中敷きから香り立つ匂いはあまりに過激で、目から涙が出てくるほど。
「「脱いだの?」」
「「うん、床ひんやりして気持ちいいよ~」」
ロッカーの外から聞こえてくるJKの声と、ロッカーの中を蹂躙する上履きの濃厚の匂いが、同一人物のものとは到底思えない。あまりのギャップに鳥肌が立ち、それが興奮によるものなのかよく分からなかった。…ただ、少なくとも、目の前に広がるくたびれた中敷きを見て、散々巨大素足に踏みしだかれて汗を染み込ませられた中敷きを見て、羨ましいという気持ちが僅かに心の隅にあったのは確かだった。
それでも、あまりの刺激臭に、ロッカー内に留まることはできなかった。
(は、早く、外へ…!)
俺はふらふらとよろめきながら、ロッカーの外へ一目散に逃げだす。とにかくこの空間には留まっていられない。外の危険性も顧みず、俺はロッカーの外へ飛び出した。
「「~~♪」」
ズンッ!!ズンッ!!
「ひああっっ!!??」
当然、まだロッカーの外には巨大素足が鎮座していて。上履きから解放された素足が、遥か上空でスマホでも弄っているように思われる巨人の気の向くままに、床にぽんぽんと叩きつけられている。素足の熱気は凄まじく、ズンッ…と教室の床に着地した足裏が数秒後に持ち上げられると、みちちっ…♡と汗が引きはがされるような音を響かせる。足裏が密着していた部分の床は一瞬で湿ってしまい、巨大素足の形が刹那的に教室の床にその造形を残していくのだ。
「はあっ、はあっ…!!」
JK素足が恐ろしくて、魅力的で、しかし凶悪で。一心不乱にその素足の領域から逃げ惑う。必死で走り、息が切れ、ふと後ろを振り返った時に、巨大な生脚のテリトリーから一向に抜け出せていない現実に絶望する。いくら走ろうと、この女神が一歩踏み出すだけで容易に跨ぎこされるスケール感。
それでも必死に歩みを進め、ついに段ボールトンネルの側面のところまで走った俺は。
(あ、開いてる…!)
トンネルの側面に、まだ女子が気づいていないであろう別の隙間が開いていることに運よく気づいたのだった。俺はその隙間に何とか身体を入り込ませた、その瞬間。
ドスンッッ…!!ドスンッ…!!!
「「シフト終わったしどっか行こー」」
数秒前まで俺がいた床の上に、先ほどの巨大素足が凶悪な音と振動を立てて着地したのだった。
「…………」
すんでの所で回避した俺は、段ボールトンネルの中に入ってからへたり込む。誇張でも何でもなく、あと一瞬遅れていたら死んでいた。誰のかもはっきり分からない素足の柔らかな足裏にむにぃぃっ♡と圧し潰され、人知れず息絶えていた。
リアルな命の危険を実感させられた俺は、もはや腰が抜け、足を進める勇気を失っていた。
(もういやだ…動きたくない……)
俺はトンネル内で座り込み、外から少しだけ聞こえてくる足音や振動に恐怖して震えながら、そのまま動くことができなかった。
------
キーンコーンカーンコーン……
"あと10分で、文化祭が終了します"
(……え?)
トンネル内で塞ぎこんでいた俺は、不意に外から聞こえてきたチャイムと放送の音を聞いてハッとした。もうそんな時間か。いや、俺がずっとここで震えてたから、時間が経ってしまったのか…。
「「あと10分だってー」」
「「お客さん、後何人トンネルに残ってる?」」
外から女子の声が聞こえてくる。ここはトンネルの壁の隙間に近い場所なので、外の声が聞こえてきやすい。
「「30分前から新しい人入れてないから、もう順路の最後の方にしかいないと思うよ」」
「「じゃあ、そこまでは片付けて大丈夫だね」」
女子たちの打ち合わせの声が聞こえてくる。が、ぼーっと聞いていた俺は、その内容が何を意味しているのかを頭で分かっていなかった。
「「よっと」」
バリバリバリッッ!!!
「ああああっっっ!!????」
突然の出来事だった。トンネルの天井に亀裂が入ったかと思うと、もの凄い音を立てながら巨大な手のひらが割って入ってくる。それは今までのようなお化け屋敷としての驚かせではなく、業務的な、このトンネルを破壊しようとする手の動きだった。
メリメリッ!!ビリッ!!!
「やめっ、いる、いるからっ!!!」
トンネルを繋いでいたガムテープが乱雑に剥がされ、俺がいた場所の5メートル後方からのトンネル部分が容易に切り離される。一瞬にして教室の明るい光が差し込み、トンネルを素手で破壊する巨大クラスメートの姿が見えてくる。その姿は、都市を破壊する怪獣にしか見えなかった。
「「なんかもったいないねー」」
「「でも使い道ないし(笑)」」
バリバリッッ!!!
JK巨人がしゃがみながら、巨大なトンネルを恐ろしい音を立てながら破壊していく。耳をつんざくような破壊音がひたすら恐ろしく、何か巨大な災害に遭っている感覚。しかし実際は災害ではなく、目の前で無意識にしゃがみ巨大パンツを見せつけている元クラスメートの片付け行為でしかない。むにぃ…♡と張り出した太ももの付け根は女の子の柔らかな肉付きを主張しているのに、その巨人は人間を破壊してしまえる怪力を持って俺の居場所を襲っているのだ。
(逃げないと死ぬっ…!!)
美脚を見せびらかしながら破壊の限りを尽くすJKたちから逃げようと、全力でトンネルの奥の方へ走っていく。早く順路の奥の方に行かなければ、この片付けという名の蹂躙に巻き込まれてしまう。
バンッッ!!!
「ぎゃあああっっっ!!??」
一瞬の出来事。走っていた俺の僅か2, 3メートル後方に、巨大重機のような上履きが着地した。
「「あははっ、気持ちー♪」」
「………」ビクッ…ビクッ……
トンネルの天井ごと突き破って出現した巨大上履き。その風圧で転ばされた俺は、腰を抜かしたまま身体を震わせる。見上げれば、天に向かってそびえ立つぶっといJK美脚。むちむちのたくましい太ももとふくらはぎが、格の違いを見せつけるかのように見下ろしてくる。
後少しでも逃げ遅れていたら。誰かも分からないただのクラスメートに、虫のように踏み殺されていた。
「「足で壊した方が早いかもね」」
「「おっけー」」
バンッ!!ドンッ!!!
メリメリメリッッ!!!
(いやだっ、いやだっ…!!)
女神たちのむっちり滑らかな脚が、天から雷を落としまくる。段ボールの天井を容易に踏み抜き、破壊し、感じたことのないようなレベルの地響きをそこら中に響かせる。もう何が起こっているか分からない。無数の上履きが、まるで俺という虫を踏みつぶそうとよってたかっているように被害妄想する。巨大な上履きが、女子たちの履物でしかないことも忘れていく。ただただ、圧倒的な上位存在に蹂躙される感覚だけが残っていた。
バンッ!!ドンッ!!!
ドンッ!!!バリバリッ!!
「「早く終わらせて遊びたいね」」
「「そうだね~」」
世間話をする女神たち。命を懸けて逃げる小人。その差はあまりに残酷で、俺に一生治らない被虐心を刻みつけようとしていた。
------
「はあっ、はあっ、はあっ!!!」
たっぷり5分間。俺は女神たちに踏み抜かれていくトンネルをひたすら走り、お化け屋敷の順路の奥へ奥へと進んでいった。
…そして、最後の部屋らしき空間にたどり着いた。立方体のような真四角の段ボール空間まで走り込んできた俺は、次に向かうべき通路が無く立ち往生していた。
(…もう…終わりなのか…?)
ここがお化け屋敷のゴールなのだろうか。出口は見えないけど…。女子たちの破壊の手がここまで及んでいないことから、恐らく順路の一番最後の方であることは予想できた。
もう、一刻も早く元の大きさに戻りたい。それしか考えていなかった。
(早く出してくれ…!)
小さくなって、大きな女子たちの部位に興奮していた自分が愚かしい。興奮できていたのは自分が段ボールトンネルに守られていたから。女子に手加減してもらっていたから。いざ巨大な女子の無意識な行為に巻き込まれると、こんなにも危なくて恐ろしいのかと実感させられた。巨人たちに勝てる要素なんて何一つない。矮小な存在の俺は、女子たちの指一本にすら勝てない。クラスメートの気まぐれ一つで、上履きのシミになってしまう存在なのだから。
バタンッ!!
「っっ!!」
いきなり、後方で音がした。
「…え?」
後ろを振り返ると、元来た道が段ボールの板で塞がれていた。…俺は、一瞬にしてこの立方体の空間に閉じ込められたことを知った。
嫌な予感がむくむくと膨れ上がってくる。
「「こんにちは~」」
「ひっ…!!」
段ボール内に、かなり鮮明な女子の声が爆音で響いてくる。明らかにこの段ボールの近くまで口を近づけて、中にいる小人に向かって話しかけている。
「「あなたは、このお化け屋敷で最後のお客さんです」」
爆音は続けて響き渡る。
「「特別サービスとして、怖さ100倍サービスしちゃいまーす♪」」
「は……?」
プシュゥゥゥッッ……
響き渡った台詞の意味を考える間もなく、段ボールの隙間から何か白い空気が流れ込んでくる。
(え…うそ……)
その空気が何か、すぐに分かってしまう。お化け屋敷に入る前に吹きかけられたスプレーの色と全く同じ。
…しかし、抵抗する間もなく意識が遠くなる。
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「………う……」
すぐに、目が覚めた。たった今スプレーのようなものを吹きかけられたことを覚えている。だとすると、じゃあ…。
起き上がって周りを見渡すと。
「な……広すぎ…だろ……」
先程までは教室くらいの広さだった段ボール空間が、野球場くらいの広さまで拡大していた。その中央当たりに佇んでいる俺からは、もう段ボールの壁など遠すぎてたどり着ける気がしない。段ボールの床の波打つ高低差もかなりのもので、ちょうど平坦な所に立っていないとバランスを保てないほど。天井は、今まで見た建物のどの天井よりも高くて。普通なら雲がありそうな高度にやっと段ボールの天井が存在しているのだ。
明らかに身体を再度縮められた俺は、途方もない大きさの空間に取り残された。
「こん…なの……」
バンッ!!!!!!
「っっっっっ!!!!???あああああああああっ!!!!」
突然空間に加えられた衝撃と爆音。
ビリビリビリビリッ……!!!
続けて、余震が10秒ほど続く。片耳がおかしくなって音が聞こえづらくなった俺は、放心状態のままビリビリ震える段ボールの床に揺らされ続ける。
もはやどれだけ巨大になっているか想像もつかない女子たちが、ダンボールの天井に平手打ちをしたのだろう。…それはもう、文字通り災害ともいえる規模。粒のような俺の身体は、空間越しとは言え女子たちの何気ない手の動きに耐えられない。何か一つでも掛け違いがあれば、一瞬で命を奪われる。
そう、確信した。
バリバリバリッ!!!
ズウゥゥンッッ…!!!
「………あ…あ………!!」
再び途方もない爆音が響き、ついに天井が破られる。そこから降ってきたのは、天を埋め付くすサイズの肌色の手。人の手とは到底思えないサイズのそれは、一瞬のうちにこちらに降ってきて、肌色の巨大な柱の鉄槌を降らせて。
10メートルほど近くの場所に、ビルのようなサイズの肌色の指が突き立てられた。
(これが……女子の……指……?)
想像を超えたサイズ差に、脳が正常な認識をしなくなる。この高層ビルのような巨大建造物が、ただの女子高生の、指?…しかしよく見れば、側面にはピンク色の固くて薄い爪のようなものがあって。その裏側は複雑な模様の指紋が、指の腹いっぱいに広がっていた。柔らかそうな指の腹、爪、それぞれが普通の人間の指であることを主張している。しかし、そのサイズは凶悪なほど大きくて。
「……っっ」ビクビクッ……
近くに指を突き立てられただけで、震えが止まらない。だって、こんなの。こんな大きなものを自由自在に動かせる上位存在がいるという事実が、恐ろしくてたまらない。俺の命は、この指の持ち主であるクラスメートに完全に握られているのだ。女神が指先を少しでもずらせば、なんの手ごたえもなく数ミリサイズの男子が擦り潰されて一巻の終わり。
メリッ……
「っっ!!!」
そんな神の指先が、音を立てて持ち上がる。指先の位置は少しだけ調整され、再び床に向かって降ろされていく。
降ろされる指の向きは、明らかに俺のいる場所に向いていた。
「ああああああああっっっ!!????」
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!!
……
「………?」
死んだ、と思った。女子の指先に潰され、人生が終わることを確信した。
ただ、生きている。
「………あ………な……」
伏せた状態から恐る恐る周りを見て、驚愕した。
(指の先の…した……?)
目の前に肌色の壁。真後ろには、白みがかった半透明の固そうな壁。左右は塞がれていない。…俺は、床に突き立てられた指先の肉と爪の間に囚われていた。
指先にこんな空間があることすら知らなかった。砂粒のように小さくさせられた俺は、女子たちと同じサイズだった時には想像もしなかったような部位の隙間に入れられてしまったのだ。
そして、自分の場所を把握したのも束の間。
メリッ……
もはや俺の世界同然の巨大指先が、また少しだけ空中に浮かせられる。
そして、
ズウゥゥゥゥンッッッ!!
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!!
「ぎゃああああっっっ!!???いやっっ!!???ああああああっっ!!??」
何度も、何度も、世界がひっくり返るような衝撃と爆音と光景を見せつけながら、指先が打ち付けられる。俺のすぐ目の前と後ろに、巨大指の肉と爪が何度も突き立てられる。指が着地する位置が少しでもズレれば、その瞬間に死ぬ。俺は指先が持ち上げられる度に自分の死を覚悟し、1秒後に激しく着地した女神の指先に命乞いをする。しかし再び持ち上げられる指先に絶望し、何度も何度も命を奪われる覚悟をさせられるのだ。
どんな恐怖体験よりも恐ろしい、自らの死を突き付けられる最凶体験。
ズウゥゥゥゥンッッッ!!
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!
「やめて下さいっ!!!お願いしますっ!!!お願いっ!!!」
涙と鼻水を垂らしながら、みっともなく泣き叫び続ける。誰に命乞いをしているのかも分からない。ただひたすら、俺に天罰を下し続ける女神様の指先に向かって、声を枯らしながら願いを乞うしかなかった。
ズウゥゥゥゥンッッッ!!!!
「あああ……ああ………」
トドメのように、ひと際激しい力で突き立てられた指先。力を入れたことで少し座標がずれたのか、俺の身体のギリギリ50cm後方に巨大な爪の壁がそびえ立っていた。
俺は、失禁していた。人生で初めて、恐怖で漏らしてしまったのだ。クラスメートの女子が、戯れに指先をつんつん突き立てているだけなのに。たったそれだけの動きが恐ろしく、泣き叫び、失禁させられた。もう、元のサイズだったころの自分が想像できなかった。目の前の指先の持ち主は、絶対に逆らえない上位の神様。住む場所も、見ている世界も違うのだ。…そう考えないと、プライドがズタボロになってねじれそうだった。
ズズズズッ……!!
高層ビルのような指先が、天に向かって上昇していく。そのまま、天井に開けられた穴を通って外の世界に帰っていく。…天井の大穴からは、外の世界の明かりが差し込んでいた。
「「「ちょっとやりすぎたかな?」」」
「「「いいんじゃない?最後のサービスだし」」」
遠くの方から、神々の声が響いている。先ほどまで爆音のように感じていたそれは、今や天から全世界に向けて鳴り響く福音のようで。音の発生源が遠いのか近いのか分からないが、とにかく脳に直接なり響いて止まないのだ。
「「「息かけてあげよー♪」」」
鳴り響く声と共に、何か巨大な物体が段ボールの外でズンッ!!ズンッ!!と動いているのが分かる。…一瞬上空に見えていた顔の雰囲気と、この声。明らかに冬野のものだった。1週間前、小さくなった俺の前に巨大な太ももを無意識に見せつけた冬野。彼女の一挙手一投足は全て段ボールの世界を震わせ、その中にいる小人を際限なく転ばせ続けた。
そして、
ズボッ……!!!!!
「ぎゃあっっ!!??」
段ボールの側面が、またも巨大な手によって容易に穴を開けられる。女子高生の手の一撃で、直径何十メートルにも及ぶ大穴がやすやすと開けられてしまう。
そこに、
「「「………♪」」」
「あ…………」
現れたのは、巨大な巨大な桃色の唇。そのシワですら俺の身体より大きいくらいの、途方もないサイズ。もう少し俺が大きかった時に目の当たりにした唇は、まだ俺の全身のサイズと対等で、キスしてほしいという倒錯的な欲求を感じさせるほどだった。
…しかし、今目の当たりにしている唇は、もう別の世界の存在で。あの唇にキスされようものなら、その重量感に耐えきれず一瞬で唇のシミにされてしまうだろう。そのまま、ぶっとい巨大な舌で舐め取られて終わりかもしれない。
にちゃぁっっ…♡♡
そんな女神の唇が、卑猥なリップ音を世界に響かせながら開け放たれる。
むわあぁっっ…♡
それだけで、巨大な口内に閉じ込められていた蒸れ蒸れの吐息が、段ボールの世界に大量に流れ込んでくる。まだ意図的に息を吐いてもいないのに、そこら中が蒸れた女子高生の吐息の熱と匂いでいっぱいになっていく。
冬野の唇の匂い。吐息の匂い。唾液の匂い。全て埋め尽くされ、塗り替えられていく。完全に冬野の支配下に置かれた段ボールの世界は、ねっとりとした濃い匂いの唾液で床中が濡らされ、湿度がまだ高まっていく。
そして、
「「「……はあぁぁぁー…♡♡」」」
むわあぁぁっっっっ……♡♡
冬野の唇の奥から暴風のような吐息の風が放出され、世界の空気をめちゃくちゃに塗り替えていく。このサイズ差で吐きかけられる吐息の湿度は、容易にこちらの覚悟を超えていた。一瞬にして俺の身体に数十センチサイズの唾液が付着し、足先から髪までねっとり唾液でびしょびしょになる。髪からは常時唾液が流れ続け、口を少し開ければ冬野の唾液が大量に入ってくる。
「げほっ!!げほっ!!げほっ!!!」
思わずむせた俺は、それでもかなりの量の唾液を飲み込んでしまう。ずっしりとした液体が胃の中に入っていくのを感じる。身体の中から冬野の体液で犯されていく感覚に、鳥肌が止まらない。
辺りを見渡せば、唾液の水たまりどころではない、完全に洪水状態。段ボールの床が直接見えている部分は存在せず、冬野の唾液が数十センチ溜まった状態となっていた。
ばしゃっ…びしょっ……
一歩踏み出すたび、べとべとの液体が纏わりつく。まさに、女神の唾液の災害だった。あの冬野の可愛らしい唇の中から、こんなにも恐ろしい量の唾液が放たれるなんて。…冬野の顔と、目の前の異常な光景を対比するほど、脳がおかしくなりそうだった。
「「「すぅ……」」」
巨大な唇がおもむろにすぼめられる。柔らかなリップの細かな動きまで全て見せつけられ、その度に目を奪われてしまう。
「「「すうぅぅぅー…♡♡」」」
ばしゃばしゃばしゃっっ!!!
「うわあっっ!??ああっ!!??」
また強烈な吐息を吐きかけられたのかと思った。ものすごい量の空気が移動し、俺は耐えきれずその方向に走らされ、しまいにはもんどりうってバシャッッ!!と唾液のプールにダイブしてしまう。
「「「すうぅぅぅー…♡♡」」」
「げほっ!!!がぼっ!!!」
冬野のよだれをしこたま飲み込みながら、非常事態に気づく。俺は今、あの巨大な唇に向かって吸い寄せられていた。あの巨人の唇が、とてつもない力で空気を吸引しているのだ。…いや、本人は軽々と吸っているだけかもしれないが、今や砂粒レベルの大きさの俺にとっては破壊的な吸引で。
「ひぃっ…!!」
ばしゃばしゃばしゃっっ!!!
そこらじゅうの唾液も、空気も、俺の身体も、強引に唇の方へ吸い寄せられていく。思い切り吐息を浴びせられるよりもずっと怖く、何か巨大な化け物に沼に引きずり込まれるような、得体のしれない恐怖。
このまま行きつく先は、冬野の口の中しかない。
「「「すうぅー…ちゅっ…♡♡」」」
空気を吸いながら、時々えっちなリップ音を響かせながら、悪戯のように吸い続ける悪魔の唇。
そして、
「え………」
気づけば、俺の身体は空中に浮いていた。
ごおぉぉぉぉっ!!!
周囲の空気が轟音を立てている。視界がぐるぐる回り、自分がどこにいるかも分からなくなる。時間の感覚も、何もかも。
そんな訳の分からない感覚が終わったのは、全身に柔らかい衝撃が訪れた時だった。
ぺちっ………
ピンク色の巨大な壁に激突した俺は、その壁のぬめぬめした成分によってそのまま磔状態になった。この壁が何かも分からない。ただ、先ほどまで嗅いでいた濃厚な唾液の匂いがより強くなり、さらに爽やかな甘い香りも強烈に漂っていた。柔らかな壁はあったかくて、むっちりしていて、どこか安心するような。
俺はぼーっとする頭で、ここが冬野の下唇の表面であることを自覚した。
「「「んえー……♡♡」」」
にゅるっ…♡にゅるにゅるっ……♡♡
上空の景色を、真っ赤な肉の塊が埋め尽くしている。うねうねと蠢くそれは、身じろぎする度にぬちょっ…♡ねちょっ…♡と細かい唾液が弾ける音を響かせる。これがJKの舌だなんて。冬野の小ぶりな唇に隠されているベロが、こんなにも卑猥で凶悪で恐ろしい。この舌の上に乗せられても、味すら感じ取ってもらえないだろう。
「「「んっ……♡」」」
にゅるにゅるっ……♡♡!!
もう、抵抗する気力は失っていた。巨大なベロが上唇と下唇にはむっ…♡と咥えられ、そのままにゅるにゅるにゅるっ…♡♡と唇の表面を丹念に舐め取っていく。唇の向こう側からこちらに向かって、あっという間に化け物じみたベロが襲い掛かってくる。唾液の音で鼓膜が破けそうなほどで、俺は終わりを悟って目を瞑り、頭を抱えた。
「「「んん…♡」」」
にゅるにゅるにゅるっ…♡♡
……
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「「「んえー……♡」」」
「「「あ、出てきた出てきた!」」」
「「「動いてる??」」」
「「「おーい、だいじょうぶー?」」」
気が付けば、俺は超巨大女神たちの顔に囲まれていた。…自分の身に何が起こったのか、正確に把握できない。でも…恐らく、俺は冬野の巨大な口内に舐め取られてしまったはずだ。
最後には冬野が気づいて、俺を吐き出してくれたのか。
「「「あ、反応してるよ」」」
「「「よかった~」」」
「「「元に戻るまでもうちょっとかかるからね」」」
冬野の手のひらの上に乗せられた砂粒のような俺に、その俺を唇一つで簡単に舐め潰せる超巨大な女子たちが、無遠慮に顔を近づけて声をかける。…上位存在に見下ろされて爆音を浴びせられ、俺はもう、女子たちと対等にコミュニケーションを取る意欲を失っていた。
「「「元気無さそうだね」」」
「「「虐めすぎたんじゃない?笑」」」
「「「ごめんねー♪」」」
そんな俺をからかう巨大女神たち。その顔のパーツの一つ一つが神々しいほどに大きくて、圧倒的で。
例え身体が戻っても、この女子たちを元の目で一生見られない気がした。
…俺の精神は、上位存在である女子たちの奴隷にまで成り下がったのだった。
---終わり---