AkiraChisaka
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从新宿的巴士总站出来,已经过去几个小时了。我把胳膊肘放在车窗上,传来引擎令人不快的震动。被窗帘挡住,连外面的风景都看不见。尽管如此,漏出来的青白色的光,还是使车内的影子时长时短,光是看着就令人晕车。
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「……」
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车内一片漆黑,尽是鼾声。只有信道上的应急灯忽明忽暗地闪烁着。还有稀稀落落的手机灯光。虽然想要压抑,但苍白的背光和耳机里传出的音乐,即使从远处也听得清清楚楚。
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「哈啊……」
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不知是第几次,少女轻轻地叹了口气。
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因为便宜而选择夜行巴士是错误的。来候机室的时候我就知道,坐这种东西的都是阴暗的男人。虽然说睡着了就能到达目的地,但在这种环境下怎么可能睡着呢?引擎的声音、光线,还有最重要的是旁边有人,这种无法平静的不快感……。她恨自己看到网上的广告就预约了,但现在已经是马后炮了。现在只是忍耐的时候。在到达目的地之前的几个小时,只能忍受在人多拥挤的密室里。
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旁边的人传来身体一震的声音。睡得很死。这家伙睡得很幸福……。少女在脑海中反刍着无处发泄的愤怒。
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虽然知道他在睡觉,但因为脸朝向这边,所以经常入眼。而且,全身也从刚才开始向自己倾斜。他戴着眼罩,应该不是故意的。不过至少你能不能朝对面,过道那边睡呢……。看着男人幸福的睡脸,少女独自咒骂。当然,这并不能传达什么。
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夜晚的高速,单调的驾驶继续着。这是一条车流量不大的路。就在这时,她透过窗帘的缝隙向外看,光线的轮廓变得模糊起来,眼皮终于要垂下来了。
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她感觉肩膀碰到了冰凉的东西。
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一瞬间睡意就醒了。恢复了意识。少女小心翼翼地望向右侧,同时注意不要让肩膀动起来。男人的脸靠近少女的肩膀。刚才那种恶心的感觉,一定是男人的鼻息吧。
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这家伙……!
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少女的脑袋一下子动了起来。在这种情况下,怎么做才是正确的呢?忍耐?叫醒男人?在某处下车?脑海中闪过各种选择。在这种情况下,一个邪恶的想法浮现了出来。如果是普通的女孩子,在这里只能忍痛忍受。但是,如果是她的话……如果是她的话,也许有不忍耐的方法。
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如果是在一般情况下,应该不会做出危险的行为。作为普通女孩思考,作为普通女孩行动。要么忍耐一下,要么至少起来换个姿势就可以了。但是,少女现在很烦躁。她无法忍受。不,准确地说,是不想忍受。她不像一般女孩子那样,能忍受不愉快的事情。
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她看了看后面的座位。两个人都睡着了。以前呢?之前肯定也在睡觉。醒着的人在远方。不过,她还是前倾着身子看着屏幕。司机呢……本来就是很久以前的事了,他也不知道醒了没有。就算后面发生了什么,他也不会发现吧。
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连这家伙都……只要没有这家伙,少女一定可以自由地张开双腿睡觉。不用担心被人碰触,到达目的地前的几个小时应该会特别轻松。
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不,等等,这家伙什么坏事也没做。某处的良心在责备。只是坐在她旁边的座位上,却遭到如此严厉的对待——
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她看着他的脸。
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男人的嘴角几乎要淌下口水。滴在少女的肩膀上。
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看到那个的时候,他的命运已经决定了。
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闭上眼睛。然后低声说了些什么。几秒钟后,再次睁开眼睛的时候,少女的旁边已经没有人坐了。
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也没有闪光。没有声音。只是闭上眼睛,然后再睁开而已。就这样,刚才还躺在旁边的男人已经不见了踪影。有人把视线从手机上抬了一下,然后又马上垂下了视线。没关系,不会被发现的。少女装作平静,眼睛一动也不动地看着天空。她知道,无论怎样努力抑制,嘴角还是会浮现出笑容。
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男人并没有消失。还留在车内。但是,在少女的右手里面。已经变得豆粒那么大了,因为发生的事而说不出话来。全身包裹着柔软而复杂的物体。直到那个物体通过复杂的动作打开,外面的阳光照射进来,他才意识到那是谁的手。
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少女慢慢地张开手。传来男人的叫声。虽然几乎要被引擎声淹没,但还是把手指凑过去让它闭嘴。
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「对不起。」
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小声嘟囔着,然后寻找隐藏男人的地方。没找到,就扔进内裤里。然后伸了个大大的懒腰。她体会到了久违的解放感。旁边没人了,竟然会这么轻松。引擎的震动也变成了舒适的摇晃,少女自己都没注意到,转眼间就睡着了。
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被广播的声音吵醒了。不知不觉中,她似乎睡得很沉。窗帘也射进来淡淡的光。
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她揉了揉睡眼,呆呆地望着灯光,感觉下腹部有些不舒服。
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「……!」
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对了,忘了。邻座的人。她一生气就把旁边无���的人缩小。而且,还把他塞进了内裤里。为了不让他逃出去,这也是没办法的事,但一定很窄很辛苦吧。如果把注意力集中在肚子上,甚至能感觉到有手脚在蠕动。
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好厉害。看起来还很有精神。我睡得舒舒服服的时候,他一定也这样动吧。被困在一个陌生女孩的内裤里,为了从那里逃脱。那里一定是公车里无法比拟的令人不快的空间。内裤上硬邦邦的布料,还有滚烫的皮肤。巴士细微的震动和她的呼吸配合在一起,被固定的他一直以比重力强好几倍的力量在她身上摩擦。而且在这个位置上,阴毛、皱褶、两腿之间一定都有……。
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少女发现自己的脸通红。解开安全带后,少女猛地站了起来。
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「对不起。」
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在行驶中的巴士狭窄的厕所里,少女抓着一个小小的男人。
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「感觉怎么样?被关在旁边一个不认识的女孩的内裤里。」
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男人在叫着什么。似乎在向少女诉说着什么,但被巴士的行驶声淹没,听不清。
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她坐在又白又细的陶瓷座便器上。她目不转睛地盯着藏在内裤里的自己的性器。长满栗色的毛和从中间露出的桃红色的纵褶。大概是被摩擦得太久的缘故吧,她的阴唇湿漉漉的,令人吃惊——。
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「呐?」
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少女小声说。那双巨大的眼睛紧紧抓住男人不放。
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「能帮我舒服一下吗?」
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没有回答。
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少女把男人凑到嘴边。男人的身体稍稍碰到了嘴唇。然后伸出湿漉漉的舌头,舔遍了男人的全身。就像被洪水袭击了一样。全身都被唾液的气味覆盖了。垂下了好几根细线。味蕾之间有明显的白色泡沫,很明显,少女故意蓄了口水。
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+
然后,少女把男人靠近自己的下腹部。男人一边咽着气,一边拼命地叫着,但被女孩的笑声淹没了。比全身都大的粉红色褶皱和围绕在其周围的阴毛。在那里被关了几个小时,那个气味和触感都变得清晰地回想起来。用尽全部的力量想要逃脱的地狱。我觉得可能是什么地方出了差错。从坐在她旁边开始,我就觉得她是个纯洁可爱的少女,和这种巴士一点都不般配。等我回过神来,才发现自己被关在了她的内裤里。简直不敢相信。而现在,好不容易获得了自由,转眼又要被放回同一个地方。而且,这次从少女的脸上可以看出明显的意图。为了满足自己的性欲,这种最低劣、最不适合她的恶意。
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在被插进去之前,少女先把他的脸靠近阴毛。因为是战斗了几个小时的对手,也许已经习惯了它的气味和粘性。尽管如此,她还是希望这个可爱的男人能品尝我的一切。因为那是他在人生最后体味的东西。少女用纤细的手指在自己的阴毛上蹭了蹭,轻而易举地压制住了狂暴的他。
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45 |
+
首先要慢慢来,一点一点地。就像使用工具一样,首先要从周围令人感到舒服的地方开始,仔细地刺激。他的小脑袋碰到了刚长出来的毛孔。每一次,男人就像挨了一拳,而少女则感到羞愧。
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渐渐地,手指的动作变得热烈起来。少女脑子里对他可能会崩溃的担心逐渐消失。很简单,脑子里只想着让自己舒服。全身被用力抓住,头猛烈地撞在少女身上,她不顾他的惨叫,用尽数倍的力气往自己身上蹭。没有考虑他的意思。单纯地,作为阴茎,作为刺激股间的工具,作为阴茎的代替物,用他的身体摩擦性器官。
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巴士撞到了一块类似石头的东西上,车内咣当地剧烈摇晃起来。少女的手指也随之大幅滑动。瞬间,近乎自由落体的冲击让男人的脚击中了她的阴部。
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「!!!!!」
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闪电般的快感扑面而来。视野一片白茫茫。因为太大的冲击,一瞬间她的腰都腾空了。她努力压住差点要高潮的快感,抓住了他快要掉进马桶里的身体。头发和衣服都被少女的汗水和爱液混在一起,湿透了。他全身剧烈地颤抖着,好像是强忍着用力吸气的样子。太惨了。
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「再见。」
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小声说着,少女把他塞进了自己的阴唇。毫不犹豫。她在寻求能够直达身体深处的刺激。湿漉漉的小身体一下子就进去了。在里面放开手指。在自己的体内,体会着挣扎的小人的感触。在狭窄得令人窒息的洞穴中,被粘膜摩擦拼命挣扎的触感。也许是因为身体还很好吧,有一种超乎想象的充实感。温暖的、会动的一个人。现在却被关在自己最羞耻的洞穴里。仅仅如此,就能感觉到内心深处比性欲更根本的欲望得到了满足。
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但是,这还不够。小人的力量太弱了。再次将手指伸进阴道,用指甲捏住身体的一端。就这样,开始了小幅度的活塞运动。他的身体慢慢地从拉得紧紧的两褶里伸出来,每次都碰到手指无法触及的绝妙位置。他的小臂、小脚都在拼命地移动,每一次都能感���到不同的触感。
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随着他的身体逐渐适应,进出的速度也慢慢加快了。男人手脚柔弱的刺激,逐渐被少女手指的强烈刺激所取代。已经感觉不到男人的动作了。一秒钟几次,小小的肉体无法承受的高速运动,可能连抵抗的手脚都已经折断了。或者是被溢出来的爱液窒息了?但是,少女的脑子里并没有这样的想法。她的意识里只有更多、更多的疼痛,以及为了满足疼痛的手的动作。拿出来,放进去,拿出来,放进去。单调的运动和上下左右的摇晃产生复杂的动作,刺激着男人脆弱的身体,刺激着她阴道里所有敏感的粘膜。
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整辆巴士又一次高高弹起。与此同时,男人的身体被暴力地摇动,推到她阴道的最深处。
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「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
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在安静的空间里,一个人进行完全不同的、无法预测的暴力摇晃。这直接转换成对性器的刺激,少女迎来了前所未有的高潮。心脏的跳动和急促的呼吸。随着快感的余韵渐渐淡去,周围的声音再次回归听觉。
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她抠着阴唇,从里面抓起一个男人。男人的脚朝上,身体耷拉着。似乎还在微微呼吸,但已经感觉不到任何像样的动作了。少女的体液散发出光泽。衣服被染红了。一定是流血了吧。
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嗯,她不想吃这种东西。
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正当烦恼该怎么用的时候,下腹部有一股冰凉的感觉。对了,她坐在马桶上。出发后一次都没上过厕所。
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露出得意的笑容,最后看向男人。焦点不定的表情中,似乎已经没有任何感情了。
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「谢谢你,陪我到最后。」
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下次能过上稍微好一点的人生就好了。
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少女在心里这么嘀咕着,带着笑容把男人扔进了马桶。男人小小的身体轻松地掉进了透明的水中。发出泄气的嘭的一声。
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+
然后闭上眼睛,一边慢慢深呼吸,一边放松腹部的力量。几秒钟后,随着涓涓的声响,少女的小便从两腿之间喷涌而出。放尿的时间很长。可能是因为积攒了一晚上的量吧,她闻到了连自己都知道的难为情的味道。浮在里面的他,想必也很痛苦吧。如果感觉还活着的话。
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65 |
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我把擦完的卫生纸丢到水里。已经看不到他的身影了。站起来,穿上裤子,洗干净手。几秒钟后,一阵巨大的爆炸声响起,厕所里的东西不知被吸到哪里去了。
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66 |
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打开门,一个年轻男子站在正前方。他呆呆地站在那里。隔着门,可能听到了漏出来的声音。在思考之前,她对他也施了咒。把那缩小的肉体同样握在手中,带回座位。她犹豫了一下该怎么办,然后把他放进嘴里,咕嘟一声吞了下去。因为发现早餐还没吃。然后,少女缓缓伸长双腿,望向窗外。
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67 |
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巴士穿过山间昏暗的隧道,终于进入了目的地所在的平原地区。拉开窗帘,日出的灿烂阳光照了进来。朝霞万里无云。今天一定会是美好的一天吧。少女再次伸了个懒腰,为即将开始的新旅程而激动不已。
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新宿のバスターミナルを出てから、もう何時間経ったんだろう。窓に肘を置くと、エンジンの不快な振動が伝わってくる。カーテンに邪魔されて、外の風景すら見ることができない。それでも漏れてくる青白い光が、車内の影を伸ばしたり縮めたり、見ているだけで酔いそうになる。
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2 |
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「……」
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3 |
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車内は真っ暗、寝息だらけ。通路の上の非常灯だけが、明滅しながら光っている。それと、ちらほらスマホの光。抑えているつもりだろうけど、青白いバックライトも、イヤホンから漏れる音楽も、遠くからでも筒抜けなくらいはっきり聞こえる。
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4 |
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「はあ……」
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5 |
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もう何度目かも分からない、小さな溜息を少女は吐き出した。
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6 |
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安いからって、夜行バスを選んだのは間違いだった。ターミナルに来た時点で分かっていたけど、こんなのを使うのは暗い男の人ばかり。寝てたら目的地に着くって言ってたけど、そもそもこんな環境で寝られる訳がない。エンジンの音、光、そして何よりもすぐ隣に人がいるという、この落ち着かない不快感……。ネットの広告を見て予約してしまった自分を恨んだが、今となっては後の祭りだった。今は、ただ我慢のとき。目的地に着くまでの数時間、人でいっぱいの密室に耐えつづけるしかない。
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7 |
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隣の人が、びくりと身体を動かす音がした。やけに崩れたかっこうで寝ていた。こいつ、幸せそうに寝やがって……。行き場のない怒りを、少女は頭の中で反芻する。
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8 |
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寝ているのは分かるけど、顔がこっちを向いているからやたら目に入る。それに、全身もさっきから自分のほうに傾いてきている。アイマスクをしてるし、わざとじゃないんだろうけど。でもせめて反対側、通路のほうを向いて寝てくれないかな……。男の幸せそうな寝顔を見ながら、少女は一人毒づく。当然、それで何かが伝わるわけじゃないんだろうけど。
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9 |
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夜の高速の、単調な運転が続いた。交通量の少ない道だった。カーテンの隙間から外を見ているうちに、光の輪郭が曖昧になり、ようやく瞼が下りかけてきた、まさにそのときだった。
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10 |
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肩に、冷たい何かが触れる感覚がした。
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11 |
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一瞬で眠気が覚めた。意識が戻っていた。肩を動かさないように注意しながら、少女は恐る恐る右側を見た。そこには、男の顔が、少女の肩へほぼ寄りかかるような位置に近づいていた。さっきの気持ち悪い感覚は、きっと男の鼻息だろう。
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こいつ……!
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13 |
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少女の頭は一気に動き始める。こういう状況のとき、どうするのが正解なのか。我慢する。男を起こす。どこかで降りる。頭の中を、色々な選択肢がよぎる。そんな中、ある邪悪な考えが浮かんだ。普通の女の子なら、ここは嫌な思いをして我慢するしかない。でも、私なら、……私なら、我慢せずに済む方法があるかも。
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14 |
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普通のときだったら、リスキーな行動はしないはずだった。普通の女の子として考え、普通の女の子として振る舞う。我慢するか、それともせめて一度起きて姿勢を変えてもらうだけで済んだはずだ。でも、少女は今イライラしていた。耐えられなかった。いや、正確には耐えたくなかった。普通の女の子みたいに、嫌なことを我慢して受け入れるなんて性格じゃなかったのだ。
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15 |
+
後ろの席を見た。2人とも寝ていた。前は?前もきっと寝ている。起きている人は、遠くにはいる。でも、前かがみで画面に見入っている。運転手は……そもそもはるか前だし、彼も起きてるんだかよく分からない状態だ。後ろで何かあったところで、きっと気づくことはできないだろう。
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16 |
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こいつさえ……こいつさえいなければ、きっと少女は自由に足を広げて寝られるはずだ。誰かに触れられる心配もないし、目的地に着くまでの数時間は格段に楽になるはずだ。
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17 |
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いや待て、こいつは何の悪いこともしてないんだぞ。どこかにあった良心が咎める。隣の席にもたれかかってきたくらいで、酷い目に合わせるのは――
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18 |
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彼の顔を見た。
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19 |
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男の口元から、よだれが垂れ落ちそうになっていた。少女の、肩の上へ。
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20 |
+
それを見たとき、彼の運命はもう決まっていた。
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21 |
+
目を閉じた。それから、何かを呟いた。数秒後、再び目を開けたときには、少女の隣には誰も座っていなかった。
|
22 |
+
閃光もない。音もない。ただ目を閉じて、それからまた開い��だけ。たったそれだけで、さっきまで隣で寝ていたはずの男の姿は、もう誰からも見えなくなっていた。誰かがスマホから目線をわずかに上げ、それからすぐに目を落とした。大丈夫、バレてない。平静を装いながら、少女は目一つ動かさずに中空を見る。どれだけ抑えようとしても、口元に笑みが浮かんでしまうのが自分で分かった。
|
23 |
+
男は、消えてなくなったのではない。まだ、車内に残っていた。でも、いたのは少女の右手の中。豆粒くらいの大きさになって、あまりの出来事にただ言葉を失っていた。全身を、柔らかい複雑な物体が包んでいた。それが誰かの手だと気づくのは、その物体がこれまた複雑な動きで開き、外の光が差し込んでからのことだった。
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24 |
+
少女は、ゆっくりと手を開いていた。男の叫び声が聞こえた。ほぼエンジン音にかき消されそうなくらいだけど、一応指を近づけて黙らせる。
|
25 |
+
「ごめんね」
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26 |
+
小さくつぶやいて、それから男を隠す場所を探した。見当たらなかったから、下着の中に放り込んだ。それから大きく伸びをした。久々の解放感を味わった。隣に人がいなくなると、こんなにも楽だとは。エンジンの振動も心地よい揺れに変わり、少女は自分でも気づかないほどあっという間に眠りについていた。
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27 |
+
アナウンスの音で目が覚める。いつの間にかぐっすり眠ってしまっていたようだ。カーテンからも、淡い光が差し込んでいた。
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28 |
+
眠い目をこすり、ぼおっと光を眺めていると、下腹部に違和感があった。
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29 |
+
「……!」
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30 |
+
そうだ、忘れていた。隣の席の人。私、ムカついたからって、何の罪もない隣の人を縮めちゃうなんて。それに、あろうことかパンツの中に入れてしまった。逃げ出さないためにだから仕方ないけど、きっと狭くて大変だっただろう。お腹に神経を集中させると、もぞもぞと動く小さな手足を感じることすらできた。
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31 |
+
すごい。まだまだ、元気みたいだ。私が気持ちよく寝ているあいだも、きっとこうやって動いてくれていたのだろう。隣りに座っただけの、見知らぬ女の子の下着の中に閉じ込められて、そこからどうにか逃げ出すために。きっとそこは、バスの中とは比べ物にならないくらい不快な空間だろう。パンツのごわごわした布と、そして私の熱い肌。バスの細かな振動と、寝ている私の呼吸とが組み合わさり、磔になった彼はずっと重力より何倍も強い力で私の身体にこすりつけられ続けていたのだ。そしてこの位置だから、きっと陰毛や襞や、私の股の間の全てにも……。
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32 |
+
少女は自分の顔が、赤く火照っていることに気づいた。シートベルトを外すと、少女は勢いよく立ち上がった。
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33 |
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「ごめんね」
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34 |
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走行中のバスの狭いトイレの中で、少女は小さな男をつまみ上げていた。
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35 |
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「乗り心地はどうだった?隣に座った知らない女の子の、パンツの中に閉じ込められて」
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36 |
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男は何かを叫んでいる。何かを少女に向けて訴えているようだったが、バスの走行音にかき消されて聞き取ることはできなかった。
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37 |
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白くて細い、陶器製の便座の上に腰掛ける。ずっとパンツに隠されていた、自分の性器をまじまじと見る。生え揃った栗色の毛と、その合間から見える桃色の縦襞。散々おあずけを食らったからか、その唇は驚くくらいじっとりと濡れていて――。
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「ねえ」
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少女はささやく。その巨大な瞳は、男を捉えて離さなかった。
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「私が気持ちよくなるの、手伝ってくれる?」
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返事は聞かなかった。
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42 |
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少女は、男を口元に近づけた。わずかに、男の身体が唇に触れた。それから濡れた舌が出てきて、男の全身をべろりと舐めた。洪水に襲われたかのようだった。全身が、唾液の匂いに覆い尽くされた。いくつもの細い糸が垂れた。味蕾の間にははっきりと白い泡が見えて、少女がわざとよだれを貯めていたのは明らかだった。
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それから、少女は男を自分の下腹部に近づけていった。咽せながら、男は懸命に叫んだが、少女の笑い声にかき消された。全身よりも大きなピンク色の襞と、その周りを取り囲む陰毛。数時間そこに閉じ込められて、その匂いも感触も、ありありと思い出せるようになっていた。全ての力を振り絞って脱出しようとした地獄。何かの間違いかもしれないと思っていた。隣に座ったときから、こんなバスに���似つかわしくない、無垢で可愛らしい少女だと思っていた。それが、気づいたら彼女の下着の中に閉じ込められていた。信じられなかった。そして今、ようやく自由になれたと思ったら、あっという間にまた同じ場所に戻されようとしている。しかも、少女の顔からは今度は明らかな意図を読み取れた。自分の性欲を満たすという、もっとも下劣で、彼女に似つかわしくない悪意。
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中に挿れる前に、少女はまず彼の顔を陰毛に近づけた。この数時間戦ってきた相手だから、その匂いや粘り気には慣れてきているのかもしれない。それでも、この可愛そうな男には、私の全てを味わってほしい。それは、彼が人生の最後に味わうものだから。暴れる彼を簡単に抑え込んで、少女の細い指は男を自分の陰毛にこすりつける。
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45 |
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まずはゆっくり、ちょっとずつ。道具を使うときと同じように、まずは周囲の、気持ちいいと言うよりはくすぐったいところから入念に刺激していく。生えかけの毛穴に、彼の小さな頭がぶつかる。そのたびに、男には殴られるような衝撃が、少女にはこそばゆい感触が走る。
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46 |
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次第に、指の動きはヒートアップしていった。少女の頭の中から、彼が壊れてしまうかもしれないという心配が抜け落ちていく。単純に、頭の中にあるのは自分が気持ちよくなることだけ。全身を強くつままれ、激しく頭を少女の身体にぶつけられ、彼が悲鳴を上げるのも構わず、その何倍もの力をかけて自分の身体にこすりつけていく。彼の意思なんてない。単純に、ディルドとして、股間に刺激を与えるための道具として、ディルドの代替物として彼の身体を性器にこすりつけていく。
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バスが縁石のようなものに乗り上げ、ガタンと車内が大きく揺れた。それに合わせて、少女の指が大きく滑る。瞬間、自由落下に近い衝撃で男の足が彼女の陰核に当たった。
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「!!!!!」
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電撃のような快感が走る。視界が白くなる。あまりの衝撃で、一瞬腰が浮いてしまった。イキそうになったのをなんとか抑え込んで、便器の中に落ちかけた男の体を掴んだ。髪も服も、少女の汗と愛液の混ざったものでずぶ濡れになっていた。全身を大きく震えさせていて、力に耐えながらなんとか息を吸っているという風情だった。惨めだった。
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「じゃあね」
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そうつぶやいて、少女は彼を自分の陰唇に差し込んだ。躊躇いはなかった。身体の奥まで、ずぶりと届く刺激を求めていた。ずぶ濡れの小さな身体は、拍子抜けするほどあっさりと入った。中で指を離す。自分の中で、暴れている小人の感触を味わう。窒息しそうなほど狭い洞窟の中、粘膜に揉まれて懸命に暴れる感触。まだまだ元気だからか、思った以上の充実感があった。暖かい、動く1人の人間。それが、今自分の中の、一番恥ずかしい洞窟の中に閉じ込められている。これだけで、心の奥底の深い部分、性欲よりも根源的な欲求が満たされていくのを感じる。
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でも、これだけでは足りなかった。小人だけの力じゃ、弱すぎるのだ。もう一度指を膣の中に入れて、身体の端を爪の先でつまんだ。そのまま、小刻みなピストン運動を開始した。きつく閉められた両の襞から、彼の身体がゆっくり出し入れして、そのたびに指では届かない絶妙な位置に彼の全身が当たる。小さな腕が、足が、懸命に動いて、一回の往復ごとに違う感触が少女の触覚に届く。
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53 |
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彼の身体が馴染んでくると共に、徐々に出し入れのペースも早くなってきた。男の手足の弱い刺激を、少女の指の強い刺激が置き換わるようになっていった。もはや、男の動きすら感じられない。一秒に数回という、小さな肉体がとても耐えられない高速の動きで、もはや抵抗する手足も折れているのかもしれない。あるいは、溢れ出る愛液に窒息したか。でも、少女の頭の中にそんな考えはない。彼女の意識にあるのはもっと、もっとという疼きと、それを満たすための手の動きだけ。出して、入れて、出して、入れて。その単調な運動と、上下左右の揺れが複雑な動きを生み出し、男の弱い身体を彼女の膣の中のあらゆる敏感な粘膜を刺激する。
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もう一度、バス全体が大きく上に持ち上げられた。それと同時に、男の身体が暴力的に揺さぶられ、彼女の膣の一番奥の部分へと突き上��られた。
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55 |
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「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
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静かな空間で、一人でするのは全く違う、予測できない暴力的な揺れ。それがダイレクトに性器への刺激に変換され、少女はかつてないほどの絶頂を迎えた。心臓の鼓動と、荒い呼吸。快感の余韻が薄れていくと共に、聴覚に再び周囲の音が戻ってくる。
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57 |
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唇をほじくり、中から男をつまみ上げた。足を上にして、男の身体はだらりと垂れ下がっていた。微かに呼吸こそしているようだったが、ほとんど動きらしい動きはもう感じられなかった。てらてらと、少女の体液が光沢を放っていた。服は赤く染まっていた。きっと、流血しているのだろう。
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うーん、私こういうのは食べたくないんだよな。
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どう使おうか悩んでいると、下腹部に冷たい感触を覚えた。そういえば、便座の上に座っていた。出発してからトイレには一度も行っていなかった。
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にんまりと笑みを浮かべて、最後に男を見た。焦点の定まらないその表情には、もはや何の感情も浮かんでいないようだった。
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61 |
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「ありがとね。最後まで付き合ってもらって」
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62 |
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次はもうちょいマシな人生を送れるといいね。
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63 |
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心のなかでそうつぶやいて、少女は笑みを浮かべたまま、男を便器の中に放り込んだ。透明な水の中に、男の小さな体はあっさりと落ちた。ぽちゃりという、気の抜けるような音がした。
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64 |
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それから目を閉じて、ゆっくりと深呼吸しながら、お腹の力をゆるめていった。数秒後、ちょろちょろという音とともに、少女の小水が股の間から湧き出ていた。長い放水だった。一晩分溜め込んでいたからか、自分でも分かるくらいの恥ずかしい匂いがした。中に浮かんでいる彼は、さぞかし辛い思いをしていることだろう。もし感覚が生きていたら、だけど。
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65 |
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拭き終わったトイレットペーパーを、水の中に落とした。もはや、彼の姿は見えなかった。立ち上がり、ズボンを履いて、きれいに手を洗った。数秒後、爆発のように大きい轟音が鳴って、トイレの中身はどこかへと吸い込まれていった。
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66 |
+
扉を開けると、若い男が真ん前に立っていた。呆然と立ち尽くしていた。扉越しに、漏れた音が聞こえていたのかもしれない。考えるよりも先に、彼にも呪文をかけていた。縮んだその肉体を、同じように手の中に握って、座席に持ち帰った。少しどうするか悩んだあと、口の中に放り込んで、ごくりと飲み込んだ。朝食がまだなことに気づいたからだ。それから、少女はゆったりと足を伸ばして、窓の外を見た。
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67 |
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バスは、山合いの暗いトンネルを抜けて、ようやく目的地のある平野部に入っていた。カーテンを開けると、日の出の鮮やかな光が飛び込んできた。雲ひとつない朝焼けだった。きっと、今日は素晴らしい一日になるだろう。少女はもう一度伸びをして、これから始まる新たな旅に胸をときめかせていた。
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2 Done/[もやし] 幸せの味 [1730231594] CN.txt
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啪嗒、啪嗒。
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2 |
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坚硬的地板上传来什么东西滴落的声音。我猛地睁开眼睛,环视四周。立刻明白那只是单纯的漏雨。水滴从天花板的裂缝滴落到混凝土地板上。透明的,闪闪发光。喉咙干了。我想喝点什么。但是,绝对够不到那滴。即使开口,进来的也只有浑浊的空气。是地下的味道。
|
3 |
+
双手被锁链束缚着。每动一下身体,就会发出哗啦哗啦的声音。我一直被关在这个房间里。没有窗户,完全是混凝土的密室。能看到的只有墙壁、天花板和门。除此之外,什么都没有。那扇门也从来没有打开过。
|
4 |
+
啪嗒、啪嗒。
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5 |
+
水滴依然不停地往下滴。到底是从什么时候开始在这里的呢?水声在空荡荡的房间里回荡。很吵。好像要叫出来一样。
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6 |
+
咯吱咯吱。
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7 |
+
这时,远处传来下楼的声音。第一次听到自己以外的人的声音。那越过墙壁的脚步声,在空无一物的密室里回响。就像电影里的管弦乐一样,声音越来越高,越来越大——
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8 |
+
接着传来咔嚓一声。然后,门开了。
|
9 |
+
「起床了吗?」
|
10 |
+
啪嗒、啪嗒地从房间门口走过去。一个女孩向被绑着的我走来。差不多同龄。和这个空间一点也不像。所以,我很意外——虽然我想这么说,但多少也猜到了。
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11 |
+
「放开我!」
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12 |
+
每动一下双手,就会听到锁链的咔嚓咔嚓声。耳边的那个声音很吵,仿佛那也是一个拷问。
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13 |
+
「不要!」
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14 |
+
眼前的少女愣住了,歪着头。她显然不是来救我的。看到这种状况,她似乎也没有产生任何同情心。也就是说,她果然是凶手吗……。
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15 |
+
「啊,等一下。」
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16 |
+
她开心地笑了。
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17 |
+
「先来,这个。」
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18 |
+
自由少女从正面俯视着我,递出了什么东西。没什么特别之处,那就是透明的塑料瓶。其中,闪闪发光的500ml矿泉水正是我现在最想要的——。
|
19 |
+
「别慌,好的。」
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20 |
+
还没来得及思考,身体就不由自主地动了起来。她递过来一个塑料瓶,我直接叼起壶嘴。不好意思,现在不是在意那种事的时候。双臂被束缚着,唯一可以自由活动的脸拼命地移动着,把里面的东西往嘴里倾斜着。舌头上好像碰到了什么东西。毫不夸张——那是我喝过的最甜的水。我感觉一滴滴的水都融入了自己的味蕾。
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21 |
+
就在这时。
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22 |
+
我觉得嘴里有些不对劲。在动。有什么。但是,在人类最根本的欲求——喝水——的支配下,我的喉咙不停地蠕动。
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+
咕嘟一声把什么吞了下去。
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24 |
+
「咳、咳、咳呕——」
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瞬间离开塑料瓶,摇晃着全身剧烈咳嗽起来。好不容易得到的、比什么都想要的水珠从嘴里飞了出来。张大了好几次嘴。即便如此,刚才确实感觉到的「什么」还是没有出现。
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26 |
+
「啊,你注意到了吗?」
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+
眼前的少女盯着我的脸。那一笑,带着明显的嗜虐心。
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「刚才那个是B班的田中同学。虽然他个子小让他很苦恼,但是大家都说他篮球打得很好呢——」
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「等一下。」
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久违的声音,奇妙地上升了。又咳嗽了几次。
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「你做了什么?」
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对着眼前的少女叫道。她——结衣,依旧在眼前浮现出笑容。
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「你知道吧?我都说了——刚才那个是田中。我本来想把塑料瓶给你的,但就这样多没意思,所以就放了个缩小的男生进去看看会不会被发现。」
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34 |
+
「——!」
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35 |
+
果然是这样。刚才吞下去的,吞下去的,是和自己同校的,长相和性格都很熟的同班男生。如果是这样的话,现在肚子里的这种感触,和刚才的空腹完全不同,略微感到舒服的重量——。
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36 |
+
「呜——」
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37 |
+
脑子里还没来得及思考,本能的呕吐感就来了,把身体全部撑了起来。锁链发出哗啦哗啦的声音。全身颤抖。尽管如此,我任性的身体却什么也没吐出来,喉咙不停地颤抖着,即便如此还是不行,就在我试图将被束缚的右手手指靠近喉咙的时候——
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38 |
+
「不行。」
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39 |
+
一个冰冷的声音传来,嘴里好像有什么柔软的东西。是体温的热度。我睁大了眼睛。我的视野被结衣的脸覆盖了。她长长的刘海碰到了我的额头。她的大舌头在我的嘴里肆意蹂躏,双手捂着脸,眼睛都不能移开。
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40 |
+
「……不行。」
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41 |
+
结衣不顾奄奄一息的米娜,一脸若无其事地说。
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+
「别吐出来,深呼吸。」
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43 |
+
看着她灰色的眼睛,米娜的呼吸也不可思议地平静下来。吸气几次,再呼出。
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「张嘴。」
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45 |
+
结衣满不在乎地往我嘴里滴唾液。空中飘荡着甜香。明明很不甘心,很生气。喝下这种透明的液体,我的心情渐渐平静下来。简直就像魔法一样。
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46 |
+
「可是……竟然把活人吞了下去。」
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47 |
+
「不是第一次吧?」
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48 |
+
结衣若无其事地说。对了,我已经知道了。结衣把人缩小,然后是这样……作为食物吞下去。或者说,在我这样昏厥并被监禁之前,记忆中最后的瞬间就是那个瞬间……。
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49 |
+
「向你表白,发展成恋人关系。」
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50 |
+
结衣那双深邃的眼睛俯视着我。
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51 |
+
「约会了几次,第一次去我家。在那里,我说我是魔法少女,而且不是漫画或动画里的那种,是非常黑暗残酷的那种……」
|
52 |
+
那双眼睛紧紧地锁住了我。它披着魔法般不可思议的深邃光芒。
|
53 |
+
那是1年多前的事了。不知道是第几次约会,我们一起唱卡拉ok,一起买东西,聊得很开心,聊累了,想找个地方休息,就去了独居的结衣家。
|
54 |
+
说不定会爬上大人的台阶。我不慌不忙地做着这样的妄想。但是,进了房间,锁上门。她想说更重要的事情。这就是魔法。
|
55 |
+
『在世界上的少女中,有非常稀少的,能够使用某种特殊能力=魔法的孩子们,她们被称为魔法少女。虽然没有魔法手杖,也没有不可思议的应该打倒的敌人,但是她们在能力消失之前的数年间,可以自由使用那个能力。』
|
56 |
+
最初听到的只是这一部分,因为结衣看起来不像是会开玩笑的孩子,所以我很惊讶她会突然说出什么话。不过,真正让我吃惊的是之后——她取出一块毫无痕迹的橡皮,唰地缩小了。剩下的橡皮已经缩小到米粒大小。既没有种子也没有机关。既没有咒语也没有手杖。确实比动画片里看到的要朴素得多,但那是我第一次看到的「魔法」。
|
57 |
+
要用这种魔法做什么?我试着问她,但她说下次再说吧。下次再问还是同样的答案,一直如此。但是,重复了几次之后,我难得地问了一下疲惫的她,她是这样说的。
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58 |
+
「你真的想知道吗?」
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59 |
+
「我想知道。」
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60 |
+
「为什么?」
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61 |
+
「为什么……」
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62 |
+
挠了挠头。
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63 |
+
「我们是恋人,不要保密。」
|
64 |
+
继续。
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65 |
+
「说魔法的时候,结衣看起来不开心。你一定在烦恼魔法的事吧?不用我说也知道。」
|
66 |
+
我倒吸了一口气。
|
67 |
+
「烦恼是可以的,我也觉得很辛苦。但是,不能保密。如果保密了,就会一个人痛苦。这样不行。把痛苦的事,烦恼的事,全部告诉我。」
|
68 |
+
「……」
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69 |
+
一阵沉默。彼此都沉默着。过了几秒钟,结衣开口了。
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70 |
+
「杀人」
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71 |
+
「杀人?」
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72 |
+
这个词出乎我的意料。她慌忙压低了声音。
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73 |
+
「对。杀人、暗杀……这就是我作为魔法少女的工作。」
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74 |
+
然后,结衣把一切都告诉了我。
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75 |
+
在日本,除了结衣还有很多魔法少女。能力因人而异。使物体爆炸、瞬间移动物体、随心所欲地操纵人……。每个人只有一个能力,无法选择。当她意识到的时候,她的能力已经表现出来了,一开始她甚至没有意识到这是魔法。
|
76 |
+
魔法少女们虽然存在,但是没有可以向她们发出指示的吉祥物和手杖,也没有应该打倒的敌人和应该回收的卡片。那么要做什么呢?一般来说,就是完成公司或有钱有势的大人物的委托。那是为了让她们忽略魔法的存在,而做的半义务的工作。而在所有委托中,暗杀任务占据了一大半,不,几乎是全部。
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77 |
+
杀掉某人。如果只是这样的话,世界上有各种各样的杀人方式,枪也好,刀也好,药物也好。不过,现代的杀人可不那么简单。在现代,最受欢迎的暗杀是谁也不知道是暗杀的暗杀。当然,这很难。随着科学的进步,各种痕迹会越来越明显。但是,科学对魔法少女们是行不通的。无论多么合乎逻辑的名推理,都无法抓住脱离逻辑束缚的少女们。未解决的事件,甚至都不被认识为事故——在这些事件的背后,少女们的魔法在暗中活动。
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78 |
+
「我的能力——缩小物体的力量,最适合执行这种任务了。」
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79 |
+
「为什么?」
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80 |
+
「因为不会留下尸体。如果缩小的话,谁都看不见。擅长杀人的魔法少女有很多。比如拥有爆炸能力的孩子。但是,我们绝对知道发生了什么事。这风险是非常大的。但是,我的能力……」
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81 |
+
缩小的物体,谁都不会注意到。
|
82 |
+
如果把人缩小,就会像蒸发了一样从这个世界消失。
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83 |
+
「可是,缩小了的对方怎么办?难道可以缩小到几乎看不见吗?」
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84 |
+
「不,那不可能。最小的也就5cm左右。」
|
85 |
+
「那么,缩小到5cm的目标会怎么样呢?」
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86 |
+
「然后……」
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87 |
+
结衣罕见地支支吾吾起来。
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88 |
+
「你答应我不对任何人说吗?」
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89 |
+
「我说过了,我保证。」
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90 |
+
「知道了。」
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91 |
+
少女闭上眼睛深深吸了一口气。然后下定决心似的说。
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92 |
+
「吃掉,吃完消化掉,这样尸体就不会留在任何地方了。」
|
93 |
+
那个时候,我怎么回答的来着?我记得当时吓了一跳。吃掉目标,吃人。就像点心或食物一样。一个活生生的人从结衣的——我的恋人那纤细的喉咙里走过。然后,在肚子里,名副其实地被从这个世界「抹去」。第二天,目标存在过的证据消失得无影无���,女孩得到了委托的报酬和新的名声。
|
94 |
+
和她见面约会的时候,这件事也一直在我的意识边缘。眼前的女孩,恋人,以工作为名杀害着无辜的目标。而且是用非常残酷的方法。生吞下去,吃下去。把身体重叠在一起,抚摸漂亮的肚子的时候。总觉得有人在里面,有时也会不知所措。作为恋人,有时也会有无法阻止她的罪恶感。
|
95 |
+
尽管如此,我还是原谅了她,因为我觉得这是我的责任。眼前的她,外表如此可爱娇弱,却是埋葬过几十个目标的厉害的暗杀者。但是,因为是绝对不能留下证据的类型,所以不能像普通人那样展现自己。我是唯一能了解她秘密的人,也是唯一能了解她的能力、烦恼和罪过的恋人。在她身边。我相信这是对她最好的事情。
|
96 |
+
但是,有一次。
|
97 |
+
像往常一样去结衣的房间,像往常一样喝茶,然后一起玩游戏。结束之际,结衣离开房间去厕所。这时,除了嘈杂的游戏背景音乐之外,我觉得好像有什么地方传来了响动。沙沙的声音。简直像虫子一样。不过,如果我没听错,还能听到尖锐的叫声。那声音听起来像人的声音,但总觉得比音质小而轻……。
|
98 |
+
我很在意,便朝声音传来的方向看去。那里放着一个漂亮的木制衣柜,和可爱的房间一点都不像。我吞了口唾沫,把手放在黑色的把手上。用尽了所有的力气,门终于开始嘎吱嘎吱地打开……。
|
99 |
+
我倒吸了一口气。
|
100 |
+
「看到了呢。」
|
101 |
+
不知道什么时候,结衣站在了我身后。
|
102 |
+
「我知道总有一天会变成这样……没想到就是今天。」
|
103 |
+
「这、这……这些人……」
|
104 |
+
「是吗?有印象吗?」
|
105 |
+
结衣看着拇指大小的小人,平静地说。就好像是很平常的东西一样。
|
106 |
+
「我们学校的篮球部,23个人,全部都在。吓到了吗?」
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107 |
+
「……!」
|
108 |
+
看了看衣柜里面。20多名男学生被关在比我的双臂还短的狭小空间里。他靠在木纹不到几厘米的墙壁上,高举双臂在叫喊着什么。
|
109 |
+
「……咦,20个人?少3个人?」
|
110 |
+
「啊,这样啊。」
|
111 |
+
她嘿嘿地笑了。
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112 |
+
「因为昨天吃掉了。」
|
113 |
+
「吃掉了……」
|
114 |
+
「我之前不是说过吗,我杀人不会留下证据。」
|
115 |
+
说着,结衣毫不费力地把手伸进衣柜里。又响起了新的悲鸣。小社员们开始跑着想要远离手中的手,但马上就被衣柜的隔墙挡住了。
|
116 |
+
几秒钟后,结衣一只手抓住了一名男子。
|
117 |
+
「所以说,要把目标全部吞下去。」
|
118 |
+
扑通一声。
|
119 |
+
就像把点心放进嘴里一样简单,其中一个同学被放进了结衣的嘴里。粉红色的嘴唇闭上,最后和小人对视了一眼。拼命向外面的世界发出的悲鸣被她的嘴唇吸了进去。
|
120 |
+
咕噜。
|
121 |
+
响起了生动的吞咽声。
|
122 |
+
沉默持续着。结衣也好,我也好,留在衣柜里的小人也好。
|
123 |
+
什么话也没说。
|
124 |
+
什么也没听见。
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125 |
+
几秒钟后,我发出了不成声的悲鸣。
|
126 |
+
然后,现在。
|
127 |
+
「喂,米娜……」
|
128 |
+
脚步声。
|
129 |
+
「你以前说过,不管我在做什么,你一定会站在我这边,对吧?」
|
130 |
+
在地牢般冰冷的空间里,结衣向被绑住的我呼唤。
|
131 |
+
「嗯。」
|
132 |
+
我回答。意识还在肚子里。那里应该有被缩小了的篮球部的1人。虽然有9成是我的臆想,但总觉得有什么在微微动着。
|
133 |
+
「……说了,可是,这样的……」
|
134 |
+
「我也不想接受这次的委托。」
|
135 |
+
结衣打断我,开始说话。
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136 |
+
「集体失踪实在是太大规模了,和我的关系也太近了。不过,他总是能给我很好的工作……所以,这次就稍微夸张了一下。」
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137 |
+
「……你总是那样把人缩小杀死吗?」
|
138 |
+
「我不是说过了吗?」
|
139 |
+
脚步声停了下来。
|
140 |
+
「难道,你不相信我?」
|
141 |
+
「不是这样的。」
|
142 |
+
反射性地说完,沉默了。我觉得我没有说谎。把人缩小,杀掉。我认为那是真的。
|
143 |
+
只是,令人吃惊的是……看到的景象、听到的悲鸣、感受到的恐惧——因为它们太过真实,触动了我的情感。将普通人缩小,带走,然后用不留证据的方法杀死——活活吞下。说实话,脱离了现实。但是,那个时候,我清楚地知道那不是空想,而是现实中正在发生的事情。
|
144 |
+
老实说。
|
145 |
+
我甚至觉得女朋友是暗杀者,有点帅。实际上,因为很帅我就喜欢。但是,他们的悲鸣。恐怖。想要活着回去的拼命的想法,和粉碎那个的残酷的力量。同学被结衣吞下的表情,粉红色的嘴唇轻松地吞下这一切……。
|
146 |
+
「呐?」
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147 |
+
嘴唇在动。
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148 |
+
「其实你是不是有点兴奋?……脸都红了。」
|
149 |
+
「没有,绝对没有。」
|
150 |
+
「绝对?」
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151 |
+
结衣用玩味的眼神看着我,慢慢地绕着我走。
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152 |
+
「我的立场是不能留下风险。所以,不能有知道秘密的人存在。我说的意思,明白吧?」
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153 |
+
我微微点头,结衣一步一步地绕着我。
|
154 |
+
「但是,���把一切都告诉了你,让你看了。那是因为我喜欢你,因为我不想对你说谎。但是同样,你——」
|
155 |
+
不知何时,她已经绕到我身后。耳边传来甜美的喘息声。
|
156 |
+
「因为我知道你喜欢那种东西。」
|
157 |
+
她从背后伸出纤细的手臂。
|
158 |
+
两只胳膊捂住了我冰冷的脖子。
|
159 |
+
那只长长的手,一直伸到我的脸附近——
|
160 |
+
「……!」
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161 |
+
手指间又有一个小人。
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162 |
+
「对吧?」
|
163 |
+
耳边的低语。
|
164 |
+
「其实是这样的。」
|
165 |
+
她瞪大眼睛,看着手指中的小人。小人在叫着什么。但是,结衣的叹息声比他的悲鸣声大得多。
|
166 |
+
「你不是喜欢残酷的游戏吗?」
|
167 |
+
否定。
|
168 |
+
我摇了摇头。
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169 |
+
每当这时,小人就会出现在视野的一角。
|
170 |
+
我的恋人那白皙纤细的漂亮手指。明明几乎没有使出什么力气,小人肌肉发达的身体却连动都动不了,拼命地挣扎,拼命地叫喊着什么。结衣的手像跳舞一样闪闪发光地动着,每动一次,又会传来新的悲鸣。
|
171 |
+
「……好可爱。」
|
172 |
+
不知何时。
|
173 |
+
我走到结衣身边。小人就在附近。盯着我的眼睛。很明显地感到恐惧。呼吸到了我的气息。小人转过脸去。不知何时,锁链从脖子上掉了下来。
|
174 |
+
「喂,这次呢?」
|
175 |
+
结衣的低语。
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176 |
+
「顺从自己的意愿吃掉?」
|
177 |
+
那个声音融化了我的理性。就在眼前,活生生的人。就在几天前,他们还在同一个校舍里学习。那个同学现在在我的眼前发出悲鸣。听到这句话,一股罪恶感涌上心头,明明应该是这样的。
|
178 |
+
慢慢地,慢慢地。我把舌头伸向结衣漂亮的手掌。简直就像舔冰淇淋一样。然后,舌尖上有一种温暖的、微小的触感。这就是小人的感触。活生生的人的感触。
|
179 |
+
下一个瞬间,我猛地捞起了小人。感觉不到味道。硬要说的话就是无味。但是,在嘴这一敏感的器官中,感受到活生生的人全力以赴、拼命活动的复杂动作时……不知为什么,变得有趣了。
|
180 |
+
咕噜。
|
181 |
+
随着吞咽的声音,脖子上的铁链掉了下来。解放感。这就是吃小人。违反禁忌。而且更重要的是,要和结衣共享同样的心情。
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182 |
+
下一个瞬间,结衣漂亮的脸来了,我们又长吻了一次。
|
183 |
+
「我正发愁呢。」
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184 |
+
喂了我好几个之后,结衣靠在我旁边跟我说话。恋人久违的温柔肌肤的温暖。我全身心地感受着那令人怀念的气味。
|
185 |
+
「一般来说,就算暗杀,顶多也就几个人而已。所以,连吃掉都是一瞬间。」
|
186 |
+
说着,又抓起一个。
|
187 |
+
手指间的小人拼命地求命。眼前这双巨大的眼睛,是去年还在同一所学校的老同学。对着结衣,拼命地诉说着什么。
|
188 |
+
「不过,这次的数量太多了。」
|
189 |
+
那个结衣对小人的求饶毫不关心。
|
190 |
+
「所以我担心会胖。」
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191 |
+
她把小人扔进嘴里,吞了下去。传来咕嘟一声。
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192 |
+
「所以特意放在衣柜里了?」
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193 |
+
「没错,希望你能注意到。」
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194 |
+
从塑料瓶里喝透明的水。然后,又把手伸向新的小人。
|
195 |
+
「但是,拒绝到这种程度,真是出乎我的意料。我只是不说而已,其实我是喜欢这种东西的……」
|
196 |
+
说着,结衣把小人夹在唇间。
|
197 |
+
「那么,你是打算在那里和我坦白吗?」
|
198 |
+
「是啊,我还偷偷准备了红酒和配菜。……我已经完全有开派对的心情了。」
|
199 |
+
结衣不停地咬着嘴里的同学。一副为难的表情。
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200 |
+
「可是,因为我反抗和挣扎,所以决定先让我晕过去监禁起来?」
|
201 |
+
米娜也跟着学,咬着小人。小小的肉体在嘴里轻易地炸开。用臼齿磨碎了。就像零食一样,口感很有趣。
|
202 |
+
「是吗?」
|
203 |
+
长时间的沉默后,结衣回答。
|
204 |
+
「一想到会被报警,就只能那样做了……不过,可能是受到了最大的打击吧。因为我没想到会被拒绝。」
|
205 |
+
「不会吧,你生气了?」
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206 |
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「那倒是。」
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207 |
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恋人突然把头扭向另一边。从她的侧脸可以看出她有些害羞,很可爱。也许是为了掩饰害羞,她把几个小人一起塞进嘴里,就那样用可爱的表情说。
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208 |
+
「你不是很喜欢我的工作吗?每次回来,我都会告诉你今天是个什么样的人……」
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209 |
+
「那是因为我担心。」
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210 |
+
「担心的人会边说工作边摸肚子吗?」
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211 |
+
那是一张漂亮的脸。那是只给恋人看的毫无防备的表情。
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212 |
+
「那是……」
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213 |
+
「真的看到了小人,突然觉得生命很可怜。说实话,有点受伤了。」
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214 |
+
「……对不起。」
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215 |
+
「我没生气,你看。」
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216 |
+
结衣不知何时蹲在米娜的正对面。一只手上握着一个穿着制服的小人。
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217 |
+
「嗯……」
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218 |
+
笑声。她闭着眼睛,虽然看不见表情,但还是看得出她有些不好意思。……真的很可爱。这就是我的恋人。只属于我的恋人。
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219 |
+
啪的一声,尝到了掉在舌头上的小人。这就是和结衣秘密的味道。到现在为止是一个人,今后是两个人,一起守护的东西。唾液溢出来,但��没有马上咽下去。感觉很舒服。我想永远享受这种幸福。
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220 |
+
还有。
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221 |
+
两人回到了结衣的房间。听说那间密室是从一位同行的熟人那里继承来的。好像曾经有过一段时间,两人一起杀人。那位同行一边合上空抽屉,一边问她怎么样了,结衣只是不好意思地笑了笑。
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222 |
+
「对了。」
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223 |
+
她露骨地转移话题。
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224 |
+
「这次委托暗杀的不只是学生,你看。」
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225 |
+
说着,从胸前的口袋里掏出了什么东西。那是一个穿着西装的男人。
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226 |
+
「有印象吗?」
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227 |
+
「……!」
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228 |
+
当然有。那修长的身材,一张似乎从没出过汗的端正脸——因为那是大家都很熟悉的篮球部的老师。
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229 |
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「我说我原来和别的女孩子搭档工作过,你露出了明显的厌恶表情,还记得吗?」
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230 |
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我摇了摇头。
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231 |
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「……无意识?」
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「也许吧。」
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「算了,就像你嫉妒我一样,我也嫉妒你的过去。」
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她露出了笑容。
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「听说你喜欢这个老师?」
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「……!」
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脑子里闪过一道闪电。
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「你说的杀人委托……」
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「巧合,非常非常巧的巧合。」
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她笑着脱下身上的开衫。然后把手放在我的胸前。
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+
「只是碰巧接到了杀害很多人的委托,又碰巧是同校恋人的初恋。」
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242 |
+
她抓住站着的我的双臂,慢慢把我放回床上。中间夹着初恋老师小小的身体。全身发热。
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+
到明天早上还有很多时间。我唯一重要的恋人。能为她做些什么,能给她做些什么。将来的事虽然不知道,但是,现在这个瞬间,在这个地方。
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我已经做好了把我的一切都给她的准备。
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ユイ==结衣
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2 Done/[もやし] 幸せの味 [1730231594] JP.txt
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1 |
+
ぽたり、ぽたり。
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2 |
+
硬い床に、何かが垂れる音がした。はっと目を開いて、周囲を見渡した。すぐに、それが単なる雨漏りだと分かった。天井のヒビから、コンクリの床にむかってしずくが垂れていた。透明で、きらきらしていた。喉が乾いた。何か飲みたかった。でも、あのしずくまでは決して届かなかった。口を開いても、入ってくるのはよどんだ空気だけだった。地下の匂いだった。
|
3 |
+
両手は、鎖に縛られていた。体を動かすたびに、じゃらじゃらという音がした。私は、この部屋にずっと閉じ込められていた。窓一つない、コンクリート張りの完全な密室。見えるのは、壁と、天井と、扉だけ。他には、何もない。その扉も、まだ一度も開いたところを見ていなかった。
|
4 |
+
ぽたり、ぽたり。
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5 |
+
しずくは、相変わらずしたたり続けていた。いったい、いつからここにいるのだろうか。水音は、がらんどうの部屋によく反響した。うるさかった。叫びだしそうだった。
|
6 |
+
コツリ、コツリ。
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7 |
+
そのとき、はるか遠くから、階段を下りるような音がした。初めて聞く、自分以外の誰かの音。壁越しのその足音は、物一つない密室の中によく響いた。まるで映画のオーケストラのように、その音は次第に高く、大きくなっていって——
|
8 |
+
それから、ガチャリ、という音がした。そして、扉が開いた。
|
9 |
+
「起きた?」
|
10 |
+
こつり、こつりと、部屋の入り口から。縛られたままの私へ、近づいてきたのは女の子だった。同年代くらいだ。この空間には、似ても似つかわしくない。だから、意外だった——と言いたいところだったけど、なんとなく予想はついていた。
|
11 |
+
「離して」
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12 |
+
両手を動かそうとするたびに、ガチャガチャと鎖の音がする。耳元のその音はすごくうるさくて、まるでそれも1つの拷問みたいだった。
|
13 |
+
「やだ」
|
14 |
+
きょとんと、目の前の少女は首を傾けた。彼女が、助けにきたわけではないのは明らかだった。この状況を見ても、何の同情心も湧いていないらしい。ということは、やっぱり彼女が犯人なのか……。
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15 |
+
「あ、待って」
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16 |
+
彼女は、楽しげに笑う。
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17 |
+
「まずははい、これ」
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18 |
+
私を正面から見下ろしながら、自由な少女は何かを差し出した。何の変哲もない、それは透明なペットボトル。その中に、きらりと光る500mlのミネラルウォーターは、まさに今一番欲しかったもので——。
|
19 |
+
「慌てないで。はい」
|
20 |
+
考えるよりも前に、勝手に身体が動いていた。彼女から差し出されたペットボトルの、その注ぎ口を直接くわえた。はしたないけど、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。両腕が縛られたまま、唯一自由に動く顔を懸命に動かして、その中身を口の中に傾けていく。舌の上に、何かが触れる感触があった。誇張じゃない——それは、これまで飲んだ中で一番甘い水だった。水のしずくの、1つ1つが自分の味蕾の中に溶け込んでいくのを感じた。
|
21 |
+
そのとき。
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22 |
+
口の中に、違和感を感じた。動いている。何かが。だが、水を欲するという、人間の中でも根源的な欲求に支配された私の喉は勝手に動き続け、
|
23 |
+
——ごくり、とその何かを飲み込んでしまう。
|
24 |
+
「ぐえ、げえ、ぐええっ——」
|
25 |
+
瞬間的にペットボトルから口を離して、全身を揺らして激しく咳き込んだ。ようやく手に入れた、何よりも欲しかった水のしずくが口から飛び出ていく。何度も口を大きく開く。それでも、さっき確かに感じ取った「何か」は出てくることはなかった。
|
26 |
+
「あ、気づいちゃった?」
|
27 |
+
目の前の少女が、私の顔を覗き込んでくる。そのにやにや笑いには、明らかな嗜虐心が浮かんでいた。
|
28 |
+
「今のはB組の田中くん。小柄なのが悩みだったみたいだけど、バスケは上手いって評判だったよね——」
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29 |
+
「待って」
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30 |
+
久々に出した声は、奇妙に上ずった。さらに何度か咳き込んだ。
|
31 |
+
「あなた、何をしたの?」
|
32 |
+
目の前の少女に叫ぶ。彼女——ユイは、変わらず目の前で笑みを浮かべていた。
|
33 |
+
「分かってるでしょ。全部言ったんだから——今のは田中くん。あなたにペットボトルを渡そうと思ったんだけど、買ったまんまじゃつまらないから。小さめの男の子を入れてバレないか試してみたってわけ」
|
34 |
+
「——!」
|
35 |
+
やっぱり、そうなんだ。さっき飲み込んだのは、飲み込んでしまったのは、��分と同じ学校の、顔も性格もよく知ってる同級生の男の子。だとすると今、お腹の中に感じるこの感触、さっきまでの空腹とは打って変わって、わずかに心地よく感じるこの重みは——。
|
36 |
+
「ぐえ——」
|
37 |
+
頭で考えるよりも早く、本能的な嘔吐感がやってきて、身体の全てを持ちあげる。鎖がじゃらじゃらと音を立てる。全身を震えさせる。それでも、私の勝手な身体は何も吐き出してくれず、何度も喉を震わせて、それでも駄目で、拘束された右手の指をなんとか喉元へ近づけようとしたそのとき——
|
38 |
+
「ダメ」
|
39 |
+
冷たい声がしたと思うと、口の中に柔らかい何かが入った。体温の熱さだった。大きく目を見開いた。視界は、ユイの顔に覆い尽くされていた。彼女の長い前髪が、私のおでこに触れた。両手で顔を抑えられ、目を逸らすことさえ許されずに、彼女の大きな舌は私の口の中を蹂躙していった。
|
40 |
+
「……ダメ」
|
41 |
+
息も絶え絶えのミナをよそに、涼しい表情を浮かべたユイは言う。
|
42 |
+
「吐き出しちゃダメ。深呼吸して」
|
43 |
+
彼女の目を、灰色の瞳を見ているうちに、不思議とミナの呼吸も落ち着いていく。数回息を吸って、吐き出す。
|
44 |
+
「口直し」
|
45 |
+
平気な顔で、ユイは私の口の中に唾液を垂らしていった。空中に甘い香りが漂った。悔しい、怒っているはずなのに。その透明な液体を飲むと、私の気持ちが穏やかになっていった。まるで魔法のようだった。
|
46 |
+
「でも、こんな……生きた人間を、飲み込むなんて」
|
47 |
+
「初めて見たわけじゃないでしょ?」
|
48 |
+
こともなげに、ユイは言う。そうだ、私はもう知っている。ユイが生きた人間を縮められること、そしてこんなふうに……生きたまま食べ物として飲み込んでしまうこと。というか、私がこうして気絶して監禁される前、最後の瞬間として記憶に残っているのがまさにその瞬間で……。
|
49 |
+
「告白して、恋人同士の関係になって」
|
50 |
+
ユイの深い瞳が、私を見下ろす。
|
51 |
+
「何度かデートして、はじめて家に行って。そこで、私、魔法少女なんだっていったよね。それも漫画やアニメのなんかじゃない、とびっきりダークで残酷なやつ……」
|
52 |
+
その瞳は、私を囚えて離さなかった。それは魔法のような、不思議な深い光をまとっていた。
|
53 |
+
あれは、今から1年以上前の話。何回目かのデートで、カラオケをして買い物をして、ひとしきりお喋りも楽しんだあとに、疲れたねって休める場所を探すことになって、それで一人暮らしをしているユイの家にあがることになった。
|
54 |
+
大人の階段上がっちゃうかも、なんて。のんきに、私はそんな妄想をしていた。でも、部屋に入って、扉の鍵を閉めて。彼女は、もっと大切な話をしようとしていた。それが、魔法のこと。
|
55 |
+
『世界中の少女たちの中でごく稀に、何らかの特殊な能力=魔法を使うことができるようになる子たちがいて、彼女たちは魔法少女と呼ばれる。魔法のステッキも、不思議な倒すべき敵もいないけど、彼女たちは能力が消えるまでの数年間、その能力を自由に使うことができる』
|
56 |
+
最初に聞いたのはその部分だけで、ユイは冗談を言うような性格の子に見えなかったから、急に何を言い出すんだろうと思ってびっくりした。でも、本当にびっくりしたのはその後——彼女は何の種もしかけもない消しゴムを取り出すと、それをするすると縮めていったのだ。後に残った消しゴムは、米粒大にまで縮んでいた。種も仕掛けもない。呪文もステッキもない。確かにアニメで見るものよりはずっと地味だったが、それは私が初めて見る「魔法」だった。
|
57 |
+
そんな魔法で何をするのか。私は彼女に聞いてみたが、また今度ね、とはぐらかされた。次に同じ質問をしても、また今度。でも、何度かそれを繰り返したのち、珍しく疲れた様子の彼女に聞いたら、こういうふうに言われた。
|
58 |
+
「本当に、知りたい?」
|
59 |
+
「知りたい」
|
60 |
+
「どうして?」
|
61 |
+
「どうしてって……」
|
62 |
+
頭を掻く。
|
63 |
+
「私たち、恋人同士でしょ。内緒はやめよ」
|
64 |
+
続ける。
|
65 |
+
「魔法の話をするとき、ユイ、楽しそうに見えない。何か、魔法のことで悩んでるんでしょ?言わなくても分かる」
|
66 |
+
はっと、息を呑む声がする。
|
67 |
+
「悩むのはいい。大変だと思う。でも、それを内緒にしちゃダメ。内緒にしたら、1人で苦しむことになる。そんなの、ダメ。苦しいことも、悩んでることも、全部私に話して」
|
68 |
+
「……」
|
69 |
+
沈黙があった。互いに黙っていた。数秒の間があって、ユイが口を開いた。
|
70 |
+
「人を、殺すの」
|
71 |
+
「人を、殺す?」
|
72 |
+
予想外の単語だった。上ずりそうな声を、あわてて抑える。
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73 |
+
「そう。人を殺す、暗殺する……それが私の、魔法少女としての仕事」
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74 |
+
それから、ユイは全てを説明してくれた。
|
75 |
+
魔法少女は、この日本にはユイの他にもたくさんいる。能力は人それぞれ。物体を爆発させる、ものを瞬間移動させる、人を思い通りに操る……。能力は1人につき1つで、選ぶことはできない。気づいたら能力が発露していて、最初はそれが魔法だということにも気づかないのだという。
|
76 |
+
魔法少女たちは存在しているものの、彼女たちに指示を出すマスコットやステッキがいるわけではなく、倒すべき敵や回収すべきカードもない。それなら何をするのかというと、普通に会社やお金持ちの偉い人からの依頼をこなすのだという。それは、魔法が存在するということを見逃してもらっている代わりの、半ば義務のような仕事だった。そしてその依頼の大半、いやほぼ全てを占めているのが、暗殺という任務だった。
|
77 |
+
誰かを殺す。それだけなら、銃でもナイフでも薬物でも、世界にはあらゆる種類の殺し方が存在する。でも、現代の殺しはそんなにシンプルじゃない。現代で、一番喜ばれる暗殺は誰にも決して暗殺と分からない暗殺だった。もちろん、そんなのすごく難しい。科学が進歩すれば進歩するほど、あらゆる痕跡は明らかになる。だけど、魔法少女たちに科学は通用しない。どんな論理的な名推理も、論理の箍から外れた少女たちを捉えることはできない。未解決の事件や、そもそも事件としてすら認識されない事故——その大半の裏で、少女たちの魔法が暗躍していた。
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78 |
+
「私の能力——物体を縮めるという力は、そういう任務には最適だったんだ」
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79 |
+
「どうして?」
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80 |
+
「死体が残らないから。小さくしちゃえば、誰にも見えない。殺しが得意な魔法少女はいっぱいいるよ。爆発の能力を持ってる子とか。でも、何かがあったってことは絶対分かる。それは、リスクとしてとても大きい。でも、私の能力は……」
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81 |
+
縮めた物体は、誰からも見ることはできない。
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82 |
+
人を縮めれば、文字通り、蒸発したかのようにこの世界から消してしまえる。
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83 |
+
「でも、縮めた相手はどうするの?もしかして、ほとんど見えないくらいまで縮めちゃえるの?」
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84 |
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「ううん、それは無理。私は、一番小さくできてせいぜい5cmくらい」
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85 |
+
「じゃあ、5cmになったターゲットは、どうなるの?」
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86 |
+
「それは……」
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87 |
+
ユイは珍しく口ごもった。
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88 |
+
「誰にも言わないって、約束する?」
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「言ったでしょ。約束する」
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90 |
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「分かった」
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91 |
+
少女は目を閉じて深く息を吸う。それから決心したかのように言った。
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92 |
+
「食べてるの。食べて、消化する。そうしたら、死体は、どこにも残らない」
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93 |
+
あのとき、私は何と返したっけ?びっくりしたのは覚えている。ターゲットを、人間を、食べる。まるで、お菓子か食べ物みたいに。ユイの——私の恋人の、その細い喉を、生きた人間が通っていく。そして、お腹の中で、文字通りこの世界から「消される」。次の日には、ターゲットが存在していた証拠はどこにもなくなり、少女は依頼の報酬と新たな名声を得る。
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94 |
+
彼女と会ってデートしていても、そのことはずっと意識の端にあった。目の前の女の子が、恋人が、仕事と称して罪のないターゲットを殺している。それもとびきり残酷な方法で。生きたまま、飲み込んで、食べる。身体を重ね、綺麗なお腹に触るときだって。誰かが中にいるような気がして、戸惑ってしまうことだってあった。恋人として、彼女を止められない罪悪感を感じるときだってあった。
|
95 |
+
それでも彼女を許してきたのは、それが、私の役目だと思ったから。目の前にいる彼女は、こんなに可憐で華奢な見かけなのに、何十以上のターゲットを葬ってきた凄腕の暗殺者。だけど、絶対に証拠を残してはいけないスタイルのせいで、普通の人のように自分をさらけ出すことなどできない。私はそんな彼女の秘密を知る唯一の理解者で、彼女の能力も悩みも罪も、全てを分かってあげられるただ一人の恋人なのだ。彼女によりそうこと。彼女のそばにいること。それが、何よりも彼女のためになることだと信じていた。
|
96 |
+
でも、あるとき。
|
97 |
+
いつもみたいにユイの部屋に行って、いつもみたいにお茶をして、それから一緒にゲームなんかもして。その終わり際、ユイがトイレに行くために部屋を離れた。そこで、ゲームの騒々しいBGMとは別に、どこからか物音がした気がした。ガサガサという音。まるで虫みたい。でも、聞き間違いじゃなければ、そこに甲高い叫び声も聞こえた。それは人間の声のように聞こえるけれど、なんだか声質のわりに小さくて軽くて……。
|
98 |
+
気になって、声のした方向を向いた。そこには、可愛らしい部屋には似つかない、木製の立派なタンスが置かれていた。唾を飲んで、黒い取っ手に手をかけた。できるだけの力をかけると、やっと扉はギギギと開き始めて……。
|
99 |
+
私は、息を呑んだ。
|
100 |
+
「見ちゃったんだ」
|
101 |
+
いつの間にか、後ろにユイが立っていた。
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102 |
+
「いつかは、こうなると思っていたけど……まさか今日に限ってね」
|
103 |
+
「こ、これ……!この人達……!」
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104 |
+
「そう。見覚えある?」
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105 |
+
親指サイズの小人たちをよそ目に、ユイは平然と話す。まるでそれがありふれたものかのように。
|
106 |
+
「うちの学校の、バスケ部。それも23人、全員。びっくりした?」
|
107 |
+
「……!」
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108 |
+
タンスの中を見る。私の両腕よりも短い、小さな狭い空間の中に、20人以上の男子生徒たちが閉じ込められている。木目の数cmもない壁によりかかって、両腕を上げて何かを叫んでいる。
|
109 |
+
「……あれ、20人?3人足りない?」
|
110 |
+
「あー、そっか」
|
111 |
+
てへ、と彼女は笑う。
|
112 |
+
「昨日食べちゃったからね」
|
113 |
+
「食べちゃっ……!」
|
114 |
+
「前に話したじゃない。私の殺しは証拠を残さない」
|
115 |
+
そう言って、ユイは無造作にタンスの中に手を突っ込んだ。新たな悲鳴が上がった。小さな部員たちは手から遠ざかろうと走り始めるが、すぐにタンスの仕切り壁に阻まれた。
|
116 |
+
そして数秒後、ユイは片手に1人の男子を掴んでいた。
|
117 |
+
「だから、ターゲットは全員飲み込んじゃうの」
|
118 |
+
ぽい、と。
|
119 |
+
まるでお菓子を口に入れるのと同じくらいの手軽さで、1人の同級生はユイの口の中に放り込まれていった。桃色の唇が閉じる、その最後に小人と目があった。外の世界へと、懸命に上げた悲鳴は彼女の唇に吸い込まれた。
|
120 |
+
ごくり。
|
121 |
+
生々しい嚥下音が響いた。
|
122 |
+
沈黙が続いた。ユイも、私も、タンスの中に残された小人たちも。
|
123 |
+
何も話さなかった。
|
124 |
+
何も聞こえなかった。
|
125 |
+
数秒後、私の声にならない悲鳴が続いた。
|
126 |
+
そして、現在。
|
127 |
+
「ねえ、ミナ……」
|
128 |
+
足音。
|
129 |
+
「前にさ、私が何をしていようと、絶対に味方でいてくれるって言ったよね?」
|
130 |
+
地下牢のような冷たい空間の中で、ユイは拘束された私に呼びかけてくる。
|
131 |
+
「うん」
|
132 |
+
私は返す。意識はまだお腹のほうにある。そこには縮められたバスケ部の1人がいるはずだ。9割思い込みだろうけど、微かに何かが動いている気がする。
|
133 |
+
「……言ったけど、でも、こんな、」
|
134 |
+
「私だって、今回の依頼は受けたくなかったの」
|
135 |
+
遮って、ユイが語り始める。
|
136 |
+
「集団失踪なんて大規模すぎるし、私との関係も近すぎるし。でも、いつも良い仕事をくれるお得意様で……だから、今回はちょっと派手にやっちゃった」
|
137 |
+
「……いつも、ああやって人を縮めて殺してたの?」
|
138 |
+
「言ったでしょ、そうだって」
|
139 |
+
足音が止まる。
|
140 |
+
「もしかして、信じてくれてなかったの?」
|
141 |
+
「そうじゃない」
|
142 |
+
反射的に言って、それから沈黙する。嘘は言っていないと思った。人を縮めて、殺している。それは、本当のことだと思っていた。
|
143 |
+
ただ、驚いているのは……見た光景、聞いた悲鳴、感じた恐怖——それらがあまりにもリアルで、私の感情に訴えかけてきたから。普通の人間を縮め、持ち去り、そして証拠を残さない方法で殺す——生きたまま飲み込む。正直、現実離れしていた。でも、あのとき、それが空想なんかじゃない、現実に起きていることなんだってはっきりと分かった。
|
144 |
+
正直に言えば。
|
145 |
+
ガールフレンドが暗殺者なんて、ちょっとかっこいいとさえ思っていた。実際、かっこいいから好きだったし。でも、彼らの悲鳴。恐怖。生きて帰りた���という必死の思いと、それを打ち砕く残酷な力。ユイに飲み込まれた同級生の表情、それを難なく飲み込む桃色の唇……。
|
146 |
+
「ねえ」
|
147 |
+
その唇が動く。
|
148 |
+
「実はちょっと、興奮してたりしない?……なんか、顔が赤くなってるけど」
|
149 |
+
「なってない。絶対」
|
150 |
+
「絶対?」
|
151 |
+
ユイは遊びたげな目をこちらに向けると、ゆっくりと私の周りを歩き始める。
|
152 |
+
「私ね、リスクは残せない立場なの。だから、秘密を知る人は存在しちゃいけない。言ってる意味、分かるでしょ?」
|
153 |
+
小さく頷く私の周りを、ユイは一歩ずつ周り続ける。
|
154 |
+
「でも、あなたには全てを話した。全てを見せた。それはあなたが、好きだったから。あなたに、嘘をつきたくなかったから。でもそれと同じくらい、あなたが——」
|
155 |
+
背後に、いつの間にか回り込まれていた。耳元に、甘い吐息を感じた。
|
156 |
+
「あなたが、そういうのが好きって分かってたから」
|
157 |
+
背後から、彼女の細い腕が伸びてくる。
|
158 |
+
両腕が、私の冷たい首元を覆う。
|
159 |
+
その長い手は、私の顔の近くまで伸びていき——
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160 |
+
「……!」
|
161 |
+
指の間に、また1人の小人がいる。
|
162 |
+
「ねえ」
|
163 |
+
耳元の囁き声。
|
164 |
+
「ほんとはこういう、」
|
165 |
+
目を見開いて、指の中の小人を見る。小人は何かを叫んでいる。でも、ユイの吐息のほうが、彼の悲鳴よりもずっと大きい。
|
166 |
+
「残酷な遊びが好きなんじゃないの?」
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167 |
+
否定する。
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168 |
+
首を横に振る。
|
169 |
+
そのたびに、小人が視界の隅に映る。
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170 |
+
私の恋人の、白くて細い、きれいな指。ほとんど力なんてかけていないはずなのに、筋肉質の身体はそこから動くことすらできなくて、懸命に暴れて、何かを必死に叫んで。ダンスのように、ユイの爪がきらきらと動いて、そのたびにまた新しい悲鳴が聞こえる。
|
171 |
+
「……かわいい」
|
172 |
+
いつの間にか。
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173 |
+
私は、ユイの手元に近づいていた。小人が近くに見えた。私の目を覗き込んでいた。はっきりと恐怖していた。私の息がかかった。小人は目を背けた。いつの間にか、鎖は首元から外れていた。
|
174 |
+
「ねえ、今度は」
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175 |
+
ユイの囁き声。
|
176 |
+
「自分の意思で食べて?」
|
177 |
+
その声が、私の理性を溶かした。目の前にいる、生きた人間。つい数日前までは、同じ校舎で学んでいた。その同級生が今、私の目の前で悲鳴を上げている。それを聞くと、罪悪感がこみ上げてくる、そのはずだったのに。
|
178 |
+
ゆっくり、ゆっくりと。ユイの綺麗な手のひらに向かって、舌を伸ばしていった。まるで、アイスクリームを舐めるときのようだった。そして、舌の先っぽに、暖かい、小さな感触を感じた。これが、小人の感触。生きた人間の感触。
|
179 |
+
次の瞬間、私はぺろりと小人をすくい上げていた。味はあまり感じない。強いていえば無味。でも、口という敏感な器官の中で、生きた人間が全力で暴れ、必死に動き回る複雑な動きを感じると……どうしてか、面白くなってしまう。
|
180 |
+
ごくり。
|
181 |
+
嚥下音と同時に、首元から鎖が落ちた。解放感。これが、小人を食べるということ。禁忌をおかすということ。そしてそれ以上に、ユイと同じ気持ちを共有するということ。
|
182 |
+
次の瞬間、ユイのきれいな顔がやってきて、もう一度私達は長いキスをした。
|
183 |
+
「ちょうど、困ってたところだったの」
|
184 |
+
もう何人かを私に食べさせた後、ユイは隣にもたれかかって私に話しかけた。恋人の、久々の優しい肌の暖かさ。その懐かしい匂いを、私は全身で感じ取っていた。
|
185 |
+
「普段は、暗殺って言ってもせいぜい数人なの。だから、食べるのも一瞬」
|
186 |
+
そう言って、また1人をつまみ上げる。
|
187 |
+
指の間の小人は、懸命に命乞いをしていた。目の前の巨大な瞳は、去年まで同じ学校にいた元同級生のもの。ユイに向かって、何かを懸命に訴えていた。
|
188 |
+
「でも、今回のは数が多くてね」
|
189 |
+
そのユイは、小人の命乞いには無関心だった。
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190 |
+
「だから、太っちゃわないか心配だったの」
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191 |
+
彼女は小人を口の中に放り込んで、飲み込んだ。ごくりという音がした。
|
192 |
+
「それで、わざわざタンスの中にしまっておいた?」
|
193 |
+
「そう。気づいてくれるようにね」
|
194 |
+
ペットボトルから透明な水をラッパ飲みする。それから、また新しい小人に手を伸ばす。
|
195 |
+
「でも、ここまで拒否されるなんて予想外だった。言わないだけで、ほんとはこういうのが好きなんだって思ってたから……��
|
196 |
+
そう言って、ユイは小人を唇の間で挟んだ。
|
197 |
+
「じゃあ、あそこで私とおっぱじめるつもりだったの?」
|
198 |
+
「そう。内緒でワインとか、つけ合わせのおやつとかも用意してたんだ。……すっかり、パーティーでもする気分になってた」
|
199 |
+
ユイは、口の中の同級生を何度も噛んでいた。難しげな顔だった。
|
200 |
+
「でも、私が抵抗して暴れたから、いったん気絶させて監禁することにした?」
|
201 |
+
見習って、ミナも小人を噛んで食べた。口の中で、小さな肉体は簡単に弾けた。奥歯ですりつぶした。スナック菓子みたいで、面白い食感だった。
|
202 |
+
「そう」
|
203 |
+
長い沈黙のあと、ユイは返した。
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204 |
+
「通報でもされたらと思うと、ああするしかなかった。……でも、一番はショックだったのかな。拒否されるなんて、思ってなかったから」
|
205 |
+
「まさか、怒ったの?」
|
206 |
+
「そりゃさ」
|
207 |
+
恋人は、ふっと顔を向こう側にそらした。横顔からも、照れているのが分かって、可愛らしい。照れ隠しなのか、まとめて何人かの小人を口の中に放り込んで、そのままいじらしい顔で話した。
|
208 |
+
「だって、私の仕事の話とか、けっこう好きじゃんか。帰ってくるたびに、今日はどんな人だったの、って、思い出させたりして……」
|
209 |
+
「それは、心配だったから、」
|
210 |
+
「心配の人が、仕事の話させながらお腹撫でたりする?」
|
211 |
+
見事なふくれっ面だった。恋人だけに見せてくれる、無防備な顔だった。
|
212 |
+
「それは……」
|
213 |
+
「実際に小人を見たら、急に命がかわいそうみたいな感じになっちゃって。正直、ちょっと傷ついちゃった」
|
214 |
+
「……ごめん」
|
215 |
+
「怒ってないよ。ほら」
|
216 |
+
ユイは、いつの間にかミナの正面にしゃがみこんでいた。片手に、制服姿の小人が握られていた。
|
217 |
+
「あーん」
|
218 |
+
笑い声。目を閉じて、表情は見えないけど、それでも照れくさそうにしているのが分かる。……ほんとに、かわいい。これが、私の恋人。私だけの恋人。
|
219 |
+
ぽとりと、舌の上に落とされた小人を味わった。これが、ユイとの秘密の味。これまでは1人で、これからは2人で、一緒に守っていくもの。唾液が溢れてきたが、すぐには飲み込まなかった。心地よい感触だった。いつまでもこの幸せを、味わっていたかった。
|
220 |
+
それから。
|
221 |
+
ふたりは、ユイの部屋に戻ってきていた。あの密室は、聞けば同業者の知り合いから譲り受けたものなのだという。かつて、ペアで殺しをやっていた時期があるらしい。空になった引き出しを閉じながら、その同業者はどうなったか尋ねたが、ユイはバツが悪そうに笑うだけだった。
|
222 |
+
「そういえばさ」
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223 |
+
露骨に、彼女は話を逸らした。
|
224 |
+
「今回、暗殺の依頼があったのって、生徒だけじゃないんだ。ほら」
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225 |
+
そう言って、胸ポケットから何かを取り出す。それは、スーツに身を包んだ1人の男性だった。
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226 |
+
「見覚えない?」
|
227 |
+
「……!」
|
228 |
+
もちろん、あった。そのすらっとした身体と、汗一つかいたことないみたいな整った顔——それは、ミナがよく知っているバスケ部の先生だったからだ。
|
229 |
+
「私が元々別の女の子と組んで仕事してたっていう話をしたら、あんた露骨に嫌そうな顔をしたよね。覚えてる?」
|
230 |
+
首を横に振る。
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231 |
+
「……無意識?」
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232 |
+
「そうかも」
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233 |
+
「……まあいいや。で、あんたが私に妬くのと同じくらい、私もあなたの過去に嫉妬してたの」
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234 |
+
彼女は笑みを浮かべていた。
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235 |
+
「あんた、この先生のこと、好きだったんだって?」
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236 |
+
「……!」
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頭に、電撃が走る。
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+
「ねえ、もしかして殺しの依頼って……」
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+
「偶然よ。すごい、すごーい偶然」
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240 |
+
笑いながら、彼女は羽織っていたカーディガンを脱いだ。そして、私の胸元に手をかけた。
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241 |
+
「たまたま、大人数の殺しの依頼が来て、たまたま、それが同じ学校の恋人の初恋の相手だったっていうだけ」
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242 |
+
彼女は、立ったままの私の両腕を掴んで、ゆっくりとベッドに下ろしていった。間には、初恋の先生の小さな身体が挟まっていた。全身が、熱くなっていた。
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243 |
+
明日の朝までには、まだたっぷりと時間があった。私の、たった1人の、大切な恋人。彼女のために何ができるか、何をしてあげられるか。将来のことはわからないけど、でも、今この瞬間、この場所では。
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244 |
+
私の全てを、彼女に与える準備ができていた。
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2 Done/[もやし] 月の障りに [1730231594] CN.txt
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1 |
+
11点15分。
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2 |
+
课间休息时间只有10分钟。在这段时间里,学生们一起行动起来。人、人、全是人。木造的旧校舍,狭窄的走廊里挤满了人影,匆忙赶往下一个教室的所有人都超过了自己。有的人表现得很慎重,有的人则表现得很狂放。希抓住窄小的栏杆,轻轻叹了口气。
|
3 |
+
哈啊。
|
4 |
+
头疼。
|
5 |
+
这种时候,爬楼梯就像登山一样。每上一级台阶,肺里的空气就会耗尽,失去视野,头晕目眩。抓住扶手的左手用力,好不容易爬上了另一个台阶。肺里的东西又没有了,头晕目眩。然后深呼吸。
|
6 |
+
走到下一个平台,我握着扶手,发愣。人潮再次超越了自己。大多是小跑。因为自己在楼梯平台的内侧,前面注意到的学生们都避而远之。虽然无法直视,但侧耳倾听,似乎能听到他的咂舌声。忍着疼痛,想要迈出另一步的时候。
|
7 |
+
嘭。
|
8 |
+
全身都受到了冲击。有什么又硬又暖和的东西——从楼梯上跑下来的大个子男子正面撞上了希。受到了巨大的冲击,希的身体被推到了地板上。头磕到了地板上。
|
9 |
+
「不好意思!」
|
10 |
+
传来男生道歉的声音。好像一点也不觉得不好意思。他拿着工作箱,单手只做了一个「对不起」的姿势,就跑下了楼梯。我眨了几下眼睛,他的身影已经消失了。脚步声渐渐远去。他一定已经不记得撞的人了吧。
|
11 |
+
发出了呻吟。蹲在地板上。除了头痛之外,两条腿还擦伤了。轻微出血。而且,下腹部也不舒服。黏糊糊的,恶心的触感。这一定是……。
|
12 |
+
在没有任何人帮助的情况下,少女勉强站了起来。视野一瞬间翻转过来,这也是贫血的症状,和预想的一样。一秒比一秒强的疼痛感在全身袭来,希又开始一步一步地爬上楼梯。
|
13 |
+
* * *
|
14 |
+
12点40分。
|
15 |
+
「希,呐呐?」
|
16 |
+
头顶上传来熟悉又可爱的声音。是柚子的声音。
|
17 |
+
「没事吧?」
|
18 |
+
「对不起……」
|
19 |
+
趴在桌子上,装睡。抬起头,周围的噪音一齐传了进来。忍着疼痛,勉强挤出笑容。张了张嘴。
|
20 |
+
「今天身体不舒服吗?」
|
21 |
+
柚子盯着自己的眼睛。虽然没有用语言表达出来,但通过眼神的交换,我还是听到了真正的问题。她在听。今天,来那个了?。
|
22 |
+
「嗯。」
|
23 |
+
我无力地点了点头。
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24 |
+
「啊……」
|
25 |
+
一只手按住脸颊。温柔可爱。她很少见地受到男生女生所有人的欢迎,被称为班上第一天使。
|
26 |
+
「我去买点什么吧?肚子饿了吧?」
|
27 |
+
「谢谢。」
|
28 |
+
微微一笑。
|
29 |
+
「不过,没关系,其实我胃口也不大。」
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30 |
+
「是啊,明天怎么办?」
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31 |
+
「能去的话就去。……今天是第三天了,平时应该会轻松很多。」
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32 |
+
「真的?」
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33 |
+
忽然,柚子的笑容飞了过来。作为朋友,有这么好的女孩子存在真的好吗?
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34 |
+
「明天的时尚大战,我很期待。不过别勉强,等情况好了今晚再打电话。」
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35 |
+
「知道了。」
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+
「打扰了,对不起。」
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37 |
+
「嗯,再见。」
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38 |
+
看着柚子远去的背影。在自己痛苦的时候会来帮助自己,简直就是天使一样的女孩。我觉得有温柔的她做朋友真好。
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39 |
+
嗯,不过。
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40 |
+
光靠温柔是无法治愈一切的。
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41 |
+
希再次趴在桌子上装睡,想着回家后的小人。
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42 |
+
* * *
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43 |
+
17点10分。
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44 |
+
希打开房门,回到自己的房间。头还是那么痛。因为强迫自己骑自行车。忍住了想马上跳到床上的冲动,放下了包。走向镜子前。解开制服上勒脖子的领带,拿起叠好的灰色家居服。一边解开衬衫的纽扣,一边看着镜子里的书桌。桌子上放着一个小塑料盒子。照片上的自己露出了一丝笑容。
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45 |
+
衬衫和裙子都脱了,换上家居服的毛衣。然后离开镜子,走到桌前。什么也没说,拿起塑料盒子。里面传来尖锐的叫声。装着缩小到拇指大小的小人。
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46 |
+
希一言不发地抓起其中一人,直接放进嘴里。一口大的小人就像人的皮肤一样温暖。用门牙咬紧小小的身体。尖叫声戛然而止。然后稍微用力,小人的身体就轻而易举地变成了两半。苦涩的、富含铁的液体在口中扩散开来。把它和唾液一起吞了下去,也许是心理作用,希觉得视野变得更清晰了。感觉就像吃了中药一样。
|
47 |
+
就那样,她动着嘴,嚼个不停。两次、三次、四次。每咬一口,就会发出咯吱咯吱的声音。就像在吃炸鸡块一样。最后,希把它咕嘟一声吞了下去,口感变得糯糯的。
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48 |
+
心情舒畅了。来例假的时候,小人果然是最好的。含铁量高,对贫血有效,吃的时候的挣扎也很舒服。
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49 |
+
她立刻伸手拿起另一个小人,放进嘴里。又咬了一次就安静了。虽然外表和声音都不一样,但味道一样是铁的味道,同样嚼了几下才咽下喉咙。
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50 |
+
* * *
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51 |
+
17点14分。
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52 |
+
健一和朋友道别后,在站台上等车。他很郁闷。之后打算去补习班上���学课。
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53 |
+
足球部在上个月末退役了。如果赢了比赛,现在应该还在练习。但是,他输了。然后赛季结束了。因此,决定像高三一样专心备考。虽然心里很不甘心,但也只能慢慢改变。
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54 |
+
他感到一阵寒意,不由自主地按住了衣袖。刮着不合季节的北风。颤抖着看向前方,A大学的招牌立在那里。那是健一的理想大学。照片上是透明的校舍,我想,为什么刚才没注意到呢?
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55 |
+
必须加油。
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56 |
+
挺直腰板的健一的视野中,一列红色的列车呼啸而过。
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57 |
+
* * *
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58 |
+
安静的时间持续着。希和箱子里的小人都没有说话。只有手指伸到箱子里的时候发出了悲鸣。不过,这也是常有的事,对于希来说,就像听不见一样。悲鸣被无视,诅咒被嘲笑。同样的嘴唇张开,同样的垂死挣扎。就像吃零食时一样,一粒一粒的小人。女人和胖子的味道有点不一样。不过除此之外,大家都一样,只是肉块。
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59 |
+
希一边抓着小人,一边查看手机。白天和她说过话的柚子发来了LINE。
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60 |
+
『对不起,我在社团活动。』
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61 |
+
『本来想一起回去的。』
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62 |
+
『身体还好吧?』
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63 |
+
上面印着可爱的小熊图章。一只手抓着下一个小人,另一只手回答。
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64 |
+
『谢谢,没关系。』
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65 |
+
『好一点了。』
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66 |
+
希一边回答,一边用臼齿磨碎嘴里挣扎的身体。身体状况真的好了一些。因为无法确认已读,关掉了手机屏幕。
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67 |
+
「咦?」
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68 |
+
想要伸手去摸下一个小人,手指却感觉不到什么。箱子里只剩下四个人。这样是撑不到明天的。有必要再把谁缩小吧。可是,找谁?希看着蹲在箱子里、穿着西装的上班族。已经想不起是在哪里抓来的人了。
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69 |
+
选谁好呢……。
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70 |
+
要想缩小人,就必须亲眼看到那个人的脸和样子,或者像这样清楚地记得。平时都是在休息日,在地铁或暗处逮个合适的人。但是,现在身体不舒服,说实话,一步也不想离开家。回顾今天一天,脑海中浮现出那天遇到的人的面孔。
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71 |
+
微微一笑。
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72 |
+
是的,回顾今天,有比这更合适的人。适合被缩小,成为食物的人。闭上眼睛,一边想象那个人的脸一边念咒。
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73 |
+
* * *
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74 |
+
突然像被什么东西打了一样的冲击。头很痛。视野一片空白,一时间什么也看不见。耳边不断传来轰鸣声。感觉就像没能调整好音量,被扩音器震聋了。
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75 |
+
眨了几下眼睛,五感开始恢复秩序。令人惊讶的是,眼前的景色与刚才站在车站的站台完全不同。正面是灰色的弯曲墙壁。脚下的地板是平的。有着异常放大的木纹。我无法想象自己身在何处。
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76 |
+
「发现了吗?」
|
77 |
+
头顶上传来巨大的声音。我捂着耳朵蹲下,传来一阵笑声。用手捂着头。女孩的声音,而且是一个相当年轻的女孩。到底是怎么回事……?我跪在平坦的地面上,战战兢兢地抬起头。
|
78 |
+
从灰色弯曲的墙壁的顶端,可以看到女孩巨大的脸。嘴角浮现出一丝微笑。
|
79 |
+
「是、是谁?」
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80 |
+
「呵呵」
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81 |
+
我战战兢兢地问道,她故意用手捂住嘴,做出惊讶的动作。随着她全身的动作,我感到房间里的空气也在动摇。
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82 |
+
「你不记得了吗?我们今天见过面。」
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83 |
+
今天?我用混乱的头脑回想起早上发生的事情。因为晨练时的习惯,一大早就起床了,想自习,早早就到了学校,结果朋友在那里聊得很起劲……。之后上完课,因为要上补习班,正走到车站等电车。没什么,真的是一如既往的平凡的一天。我从来没有遇到过这样的女孩子。
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84 |
+
「……不记得了。」
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85 |
+
「真的?」
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86 |
+
她猛地探出身子。灰色的墙壁靠近了,我反射性地往后退。所有的行动都很有震撼力。在这里,无论怎么往上看,胸部的弯曲都阻碍了我,几乎看不见她的脸。
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87 |
+
「对、对不起……在哪里见过面?是去学校的电车吗?」
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88 |
+
我鼓起勇气说道。
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89 |
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没有回答。
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「嗯。」
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几秒钟的工夫。
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「我想不起来。」
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93 |
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脊背发凉。发生了什么?
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94 |
+
她诡异地咧嘴一笑,女孩把手张得很大。影子倏地落了下来。她的动作太快了,以为会朝自己冲过来,但她的手却伸到了自己身后。
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95 |
+
回头一看,是一个塑料盒子。比自己还高。半透明的可以看到里面的东西,在那里的人和自己一样……是个活生生的人。
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96 |
+
「我啊。」
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97 |
+
一张巨大的脸俯视着自己。
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98 |
+
「我的兴趣是吃小人。」
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99 |
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脸上浮现出残酷的笑容。
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100 |
+
「小人,你知道吗?就是像你这样,比女生手指还小的人。」
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101 |
+
仔细一看,少女巨大的笑容,门牙上渗着红色液体的痕迹。
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102 |
+
我小声地尖叫了一声。
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103 |
+
不知什么时候抓住的,她的一只手上已经有了小人。他穿着和健一一样的校服,喊着健一听得到的求命语。
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104 |
+
「我开动了。」
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105 |
+
那声音被少女可爱的声音轻易地淹没了。
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106 |
+
少女开口了。不顾抵���,巨大的手轻而易举地就把小人塞进了嘴里。小小的身体落在舌头上。与此同时,她闭上嘴唇,悲鸣略微含混不清。
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107 |
+
在此期间,那双巨大的眼睛一直俯视着自己。那张脸微微地笑着。
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108 |
+
然后,少女开始咀嚼。嘴巴不停地蠕动着。下巴动了动,上下牙齿合在一起,小人的骨头、肉、身体的一切都被暴力地切断了……。虽然看不见里面的内容,但鲜明的声音和动作,在少女的嘴唇里,清楚地传达出现在发生了什么。
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109 |
+
少女哼了一声。好像是说好吃。然后,
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110 |
+
咕噜。
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111 |
+
喉咙里发出了清晰的声音。
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112 |
+
从下面可以看到喉咙的复杂动作。按照这个比例尺,一切看起来都很复杂,但对少女来说,这是和平时一样的吞咽动作。
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113 |
+
「呵呵。」
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114 |
+
女孩的笑声响起。
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115 |
+
「很好吃。」
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116 |
+
哧哧地笑着。
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117 |
+
我什么都没想。不想考虑。自己所处的状况,以及现在看到的东西。一切都像谎言一样脱离现实,却又有现实的真实感。
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118 |
+
「呐,我们玩游戏吧。」
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119 |
+
听到了少女的声音。
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120 |
+
「规则很简单,猜猜我是今天碰到的谁。从现在开始,我要一个一个地吃掉箱子里剩下的小人。小人一共还剩3个。如果在全部吃掉之前都猜中了,今天就放过你。」
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121 |
+
抬头仰望。两只巨大的眼睛俯视着自己。从她的眼睛里,可以清楚地看到她的快乐。
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122 |
+
「猜不到的话……」
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123 |
+
「那还用说吗?我会吃掉你。我因为例假有点贫血,所以想要铁。你的身体肯定会有帮助的。」
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124 |
+
脊背发凉。一开始,我听不懂她在说什么。吃我吗?自己是人。高中三年级的。是社会的一员。能吃吗?自己?我无法理解。自己是人,不是食物。而且,眼前的少女也是人,不是什么怪兽。她现在在这里,想要吃和她一样的人?
|
125 |
+
简直不敢相信。摇了摇头。但是,实感逐渐袭来。少女的话不是谎话。实际上,刚才这个女孩子不是吃了和自己一样的学生吗?这孩子吃人。而且很简单,没有任何罪恶感。刚才轮到别人了。下次也是,下次也是。但是,接下来就轮到自己了。自己,被女孩子,被别人吃掉。如果不能猜出她说的那个谜题「她是今天遇见的谁」的话。
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126 |
+
「第一个~」
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127 |
+
第一个小人已经被抓起来了。少女对吃人似乎没有任何犹豫。小小的身体和刚才一样,被轻松地放进嘴里,被轻松地咬碎。尖叫声安静了下来。
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128 |
+
咕嘟咕嘟。如果没有咬断骨头的干巴巴的声音,大概只会以为是在吃饼干或薯片吧。但是,身处其中的却是活生生的小人。准确地说,是刚才还活着的人。少女的舌头和牙齿准确地碾碎了被咬碎后毙命、再也无法动弹的身体。手、脚、内脏,所有部位都被平等地咬碎,血与少女的唾液混合。几秒钟前还在运作的小人的身体变成了黏稠的糊状。原来的生命绝不会存活,而是变成被暴力咀嚼的养分的集合体。不过,即便是如此残忍的肉块,只要少女咕嘟一声动一下喉咙,就会从口中消失,剩下的营养就只剩下胃里等待消化了。
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129 |
+
健一一动不动地抬头看着少女的嘴。无法思考。不可能想到。有人在眼前被咬死,被吞噬。下一个可能就轮到自己了。被吃掉的原始恐惧支配着自己的身体。
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130 |
+
「第二个人~」
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131 |
+
对第二个人,准备的结局也完全一样。嘎嘎。咕嘟。动作太简单了。少女不时发出的叹息声,简直就像吃薯片当零食的女孩。但是,在她嘴里进行的,却是残酷无比的血淋淋的处刑。下巴一动,湿润的声音就会传到桌子上。男生用手捂住耳朵,但还是睁大了眼睛,继续回顾那天发生的事。
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132 |
+
「第三个人~」
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133 |
+
少女正抓起最后一个小人。送到嘴边时,小人第一次发出了悲鸣。年轻。小男孩穿着和自己以前一样的足球部队服。好像是放学路上的中学生。在空中拼命挣扎,沾满泥土的运动鞋从两腿掉了出来,掉在桌子上。
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134 |
+
「等一下,等一下!」
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135 |
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健一鼓起勇气喊道。
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136 |
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「想起来了,想起来了……你是谁?所以,把那个孩子放下来。」
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137 |
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「啊?」
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138 |
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少女歪着头。这是故意的动作。
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139 |
+
「你终于想起来了吗?我是谁?」
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140 |
+
「啊,想起来了。所以,你等一下再吃那个孩子吧。」
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141 |
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「不要。」
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142 |
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摇了摇头。
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143 |
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「我觉得看起来很好吃,就把他缩小了。」
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144 |
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残酷的语言。
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145 |
+
「不过,既然你想起来了,今天的饭就到此为止吧。」
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146 |
+
慢慢地,少女放下手里的少年。手从塑料箱里下来后,听到的悲鸣变成了抽泣。
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147 |
+
「谢谢你。」
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148 |
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「那你说说我是谁?」
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149 |
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「……」
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150 |
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一阵沉默。
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151 |
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「不说吗?」
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152 |
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我知道少女的脸上浮现出了愤怒。
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153 |
+
「是吗?你说谎了。」
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154 |
+
一只巨大的手以暴力的速度向我伸出来。健一的身体终于被她的两根手指拉向空中。剧烈的运动让我��视野一片空白。眼前出现了一张少女的脸。这是第一次在同等的高度上观看。刚才还那么想不起来的今天发生的事,突然又复苏了——
|
155 |
+
「我知道了!你在学校的课间楼梯上,不小心撞到了——」
|
156 |
+
声音变成了悲鸣。周围弥漫着血腥味,潮热从全身传来。摸到了什么又红又软的东西。被血和唾液弄得通红。
|
157 |
+
「等等,我知道了,原谅我——」
|
158 |
+
嘴唇闭上,一片漆黑。我听到了心跳声。突然,整个身体被撑了起来,刚踩在什么坚硬的东西上,就有什么东西掉了下来,两腿感到一阵尖锐的疼痛。伴随着疼痛,还有失落感。很冷。舌头又动了一下,黏糊糊的唾液沾到身上,有什么柔软的东西碰到了身体。细长的是自己支离破碎的双腿。是膝盖以上的部分。我发出一声惨叫,拼命从舌头上逃开,那里再次出现在坚硬的牙齿上。沉默了几秒钟后,我听到了少女呻吟般的笑声,这时,我又感到有尖锐的珐琅质物体从腹部挥了过来——。
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159 |
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* * *
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160 |
+
希咬着嘴里的小人,喉咙发出嗯的一声。最后的最后,她听见这个高年级生在说些什么。从开头来看,应该是正确的。但是,肚子饿了。结果还是吃了。不管怎样,就算答对了也不打算放过。不过,吃有仇恨的小人比吃附近的大叔舒服多了。就像做爱一样的快感。
|
161 |
+
然后咕嘟一声吞了下去。没有使用门牙,只咬了几次,说不定还活着。如果是这样的话,胃里的他在想什么呢?周围一定只有乱糟糟的肉块和为了消化开始活跃分泌的胃液。忍受着痛苦,品味人生的最后几分钟是怎样的心情呢?她一边想着这些,一边抚摸着肚子,很开心。
|
162 |
+
然后,她对箱子里的少年说。
|
163 |
+
「没事吧?害怕吗?」
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164 |
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没有回答。他蹲在箱子里哭。希轻轻抓起,发现身上的每一节都淤青了。明明是觉得可爱才抓来的,却因为莫名的罪恶感将近一个星期都没吃。这本来是出于体谅,但一看情况,似乎让他非常痛苦。
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165 |
+
把少年放进嘴里,吞了下去。有眼泪的咸味。
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166 |
+
她轻轻地揉着肚子,走到桌前。还有必须要做的作业。疼痛已经完全消失,少女开始着手做语文的课题。
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167 |
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* * *
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168 |
+
23点40分。
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169 |
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曾经有过的头痛和倦怠感已经完全消失了。希站在洗脸台前,想早点睡。穿着兔子拖鞋。
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170 |
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我站在镜子前,拿起粉色牙刷。从牙膏管里取出薄荷味的牙膏,抹在牙刷的细毛上。把手放到嘴边,开始温柔地摩擦门牙。有什么东西卡在了牙龈上。
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171 |
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用双手捧起水,抽抽搭搭地吐了出来。出来的是一块小小的黑布。她呆呆地看着,但马上就知道那是傍晚吃过的男生的校服。吸了水变得非常小。
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172 |
+
她呵呵地笑着,稍微漱口,吐出来的水红红的,也很有趣。然后用嘴唇夹住牙刷,再次仔细地刷起来。哼着小曲。
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173 |
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『身体还好吧?』
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174 |
+
手机屏幕突然亮了起来,是朋友发来的LINE。
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175 |
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『嗯,没问题。明天可以去。』
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176 |
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我发了个竖起大拇指的图章,放下牙刷。嘴里已经一尘不染了,觉得自己的气色稍微好了一些。健康的牙齿反射出白色的灯光。少女微微一笑,然后走向床。一边睡着,少女一边想着明天的事情。明天和柚子约好了一起玩。第二天是星期天,不如去个新的地方看看吧。那之后,还有再下一天——。
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177 |
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想着想着,她已经睡着了。从生理期的烦恼中解放出来,少女的心变得明朗起来。在这之后,一定还有无限的未来。
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2 Done/[もやし] 月の障りに [1730231594] JP.txt
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1 |
+
11時15分。
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2 |
+
10分しかない、授業の間の休み時間。その合間に、いっせいに生徒たちが動き始める。人、人、人。木造の古い校舎の、狭い廊下は人影で埋め尽くされ、次の教室へと急ぐ全員が自分のことを追い越していく。ある人は慎重に、ある人は露骨に邪魔そうに。狭い踊り際の、そのさらに狭い端の手すりにつかまりながら、ノゾミは小さくため息をついた。
|
3 |
+
はあ。
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4 |
+
頭が痛い。
|
5 |
+
こういうとき、上りの階段は登山のように感じる。1つ段を上がるたびに、肺の空気を全て使い切り、視界を失ってくらくらする。手すりを握る左手に力をこめ、どうにかまた別の段を上がる。また肺の中身がなくなり、くらくらする。それから深呼吸。
|
6 |
+
次の踊り場までたどりついて、手すりを握ったままぼおっとした。人の波が、再び自分を追い越していく。多くは小走りだ。踊り場の内側に自分がいるせいで、直前で気付いた生徒たちが、避けるように外側へと避けていく。目は合わせられないけど、耳をすませば舌打ちが聞こえてきそうだ。痛みをこらえながら、また別の一歩を踏み出そうとした、そのとき。
|
7 |
+
ばん。
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8 |
+
全身に衝撃があった。硬く暖かい何か——階段を走って下りてきた、大柄な男子が正面からノゾミとぶつかっていた。衝撃をもろに受けて、ノゾミの身体は床へと突き飛ばされた。頭から床へ落ちた。
|
9 |
+
「悪い!」
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10 |
+
男子の謝る声がした。ちっとも悪いとは思ってなさそうだった。技術の工作箱を持ったまま、片手で一瞬だけ「ごめん」のポーズをして、そのまま駆け足で階段を駆け下りていった。数回まばたきすると、もう彼の姿は消えていた。足音が遠ざかっていった。きっともう、ぶつかった誰かのことも覚えていないだろう。
|
11 |
+
うめき声を上げた。床にうずくまっていた。頭痛の他に、両足にすり傷が出来ていた。わずかな出血。それに、下腹部にまで違和感があった。どろどろとした、気色悪い感触。これは間違いなく……。
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12 |
+
誰からの助けもないまま、少女はどうにか立ち上がった。視界が一瞬ひっくり返ったが、これも貧血の症状で予想通りだった。一秒ごとに強くなる、痛みを全身で感じながら、ノゾミはまた一歩ずつ階段を上がり始めた。
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13 |
+
* * *
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14 |
+
12時40分。
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15 |
+
「ノゾミ。ねえ」
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16 |
+
頭上から、聞き覚えのある可愛い声がした。ユウコの声だ。
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17 |
+
「大丈夫?」
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18 |
+
「ごめん……」
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19 |
+
机に突っ伏して、寝たふりをしていた。顔を上にあげると、周りの騒音がいっせいに入ってきた。痛みをこらえながら、どうにか笑顔を作る。口のはしっこで。
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20 |
+
「今日、体調悪い?」
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21 |
+
ユウコが、自分の瞳を見つめていた。言葉には出さないが、目と目のやり取りで、本当の質問が伝わってきた。彼女は聞いていた。今日、アレの日?と。
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22 |
+
「うん」
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23 |
+
弱々しく頷いた。
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24 |
+
「あちゃー……」
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25 |
+
片手で頬のあたりを抑える。優しくてかわいい。珍しく男の子からも女の子からも人気がある、クラス一の天使と言われているだけのことはある。
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26 |
+
「購買で何か買ってこようか?お腹空いたでしょ」
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27 |
+
「ありがとう」
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28 |
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小さく微笑む。
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29 |
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「でも、大丈夫。実は、食欲もあんまり」
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30 |
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「そうなんだ。明日、どうする?」
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31 |
+
「行けたら行く。……今日で3日目だから、普段だったらだいぶ楽になるはず」
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32 |
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「ほんと?」
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33 |
+
ぱあっと、ユウコの笑顔が飛び込んでくる。友達ながら、こんなにいい女の子が存在していいのだろうかと思う。
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34 |
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「明日のファッションバトル、期待しとくね。でも無理しないで、よくなってたら今夜通話しよ」
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35 |
+
「わかった」
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36 |
+
「じゃ、邪魔してごめん。じゃね」
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37 |
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「うん。じゃ」
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38 |
+
遠ざかっていく、ユウコの後ろ姿を見ていた。自分が苦しいときに助けに来てくれる、まさに天使みたいな女の子だ。優しい彼女が友達で、本当によかったと思う。
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39 |
+
まあ、でも。
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40 |
+
優しさだけでは、全てを治すことはできない。
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41 |
+
もう一度机に突っ伏して寝たふりをしながら、ノゾミは帰宅を待っている小人たちのことを思った。
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42 |
+
* * *
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43 |
+
17時10分。
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44 |
+
部屋のドアを開け、ノゾミは自室に戻ってきていた。相変わらず頭が痛い。無理やり自転車に乗ったからだ。今すぐベッドに飛び込みたいのを我慢して、バッグを置く。鏡の前に向かう。制服の、首を締め付けるみたいなネク��イを外し、たたんであった灰色の部屋着を手に取る。ワイシャツのボタンを1つずつ外しながら、鏡に写った学習机を見た。机の上には、小さなプラスチック製の箱が乗っていた。ちょっとだけ、笑顔になった自分の顔が写っていた。
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45 |
+
ワイシャツもスカートも脱いで、部屋着のセーターに着替え終わった。それから鏡を離れ、机の前へと近づいた。何も言わずに、プラスチック製の箱を手に取った。甲高い叫び声がした。中に入っているのは、親指ほどの大きさに縮められた小人たちだった。
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46 |
+
無言のまま、ノゾミは一人をつまみ上げ、そのまま口の中へと放り込んだ。一口大の小人は、まさに人肌の温度で暖かった。小さな身体を、前歯で挟み込み、ぎゅっと噛み締める。悲鳴がぴたりと途絶えた。それから少しだけ力を入れると、小人の身体は簡単に2つになっていた。苦味のような、鉄分を多く含んだ液体が口中に広がった。それを唾液と一緒に飲み込むと、気のせいかもしれないけど、視界が少し鮮やかになる気がした。漢方の薬を飲んだときみたいな感覚だった。
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47 |
+
そのまま、口を動かしてもぐもぐと噛んでいった。二回、三回、四回。噛むたびに、ポキポキという音が鳴る気がした。かき揚げを食べている感覚に近かった。最後には、食感はもちもちとしたものに代わり、ノゾミはそれをごくりと飲み込んだ。
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48 |
+
すっきりした。やっぱり、生理のときには小人が一番だ。鉄分が多くて貧血に効くし、食べるときの抵抗だって心地よくて気持ちいい。
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49 |
+
すぐに、別の小人に手を伸ばし、口の中に放り込んだ。またしても一回噛んだだけで静かになった。見た目も声も違ったけれど、味は同じように鉄っぽくて、同じように何回か噛んでから喉の奥へと飲み込んだ。
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50 |
+
* * *
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51 |
+
17時14分。
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52 |
+
ケンイチは友達と別れ、駅のホームで電車を待っていた。憂鬱だった。このあと、塾で数学の授業を受ける予定だった。
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53 |
+
サッカー部は、先月の末で引退していた。試合に勝っていれば、今頃もまだ練習していたはずだ。でも、負けてしまった。そしてシーズンが終わった。だから、高3らしく受験に専念することになった。悔しい気持ちはあったが、切り替えていくしかない。そういう話を学習指導の先生からもされていた。
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54 |
+
寒気がして、思わず学ランの袖を抑えた。季節外れの北風が吹いていた。ぶるると震えながら、前を見るとA大学の看板が立っていた。それはケンイチの志望大学だった。ガラス張りのきれいな校舎が写っていて、どうしてさっきまで気づかなかったのだろうと思った。
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55 |
+
頑張らなくちゃ。
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56 |
+
背筋を伸ばしたケンイチの視界を、赤い通過列車が轟音を立てて切り裂いていった。
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57 |
+
* * *
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58 |
+
静かな時間が続いた。ノゾミも、箱の中の小人も無言だった。唯一、指が箱の中に伸びたときだけ悲鳴が上がる。でも、それもありきたりで、ノゾミにとっては聞こえないも同然だった。悲鳴は無視され、呪詛の言葉は笑い返された。同じように唇が開き、同じような断末魔が上がった。スナック菓子を食べるときのように、一粒一粒の小人に違いはなかった。女の人と、太ってる人はちょっとだけ味が違う。でも、それ以外はみんな同じ、ただの肉と鉄分の塊だった。
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59 |
+
小人をつまみながら、ノゾミはスマホのチェックをしていた。昼間話したユウコからLINEが来ていた。
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60 |
+
『ごめん部活だった』
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61 |
+
『一緒に帰ろうと思ったんだけど』
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62 |
+
『からだ大丈夫?』
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63 |
+
かわいいクマのスタンプが並んでいた。片手で次の小人をつかみながら、もう片方の手で返事をした。
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64 |
+
『ありがと。大丈夫』
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65 |
+
『ちょっとよくなった』
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66 |
+
返事をしながら、口の中の暴れる身体を奥歯ですり潰した。本当にちょっと体調は良くなっていた。既読がつかないので、スマホの画面を消した。
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67 |
+
「あれ」
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68 |
+
次の小人に手を伸ばそうとしても、指に何かが触れる感覚がなかった。箱の中を見ると、残りは四人だけだった。これでは明日まで持たない。また誰かを縮めてくる必要があるだろう。でも、誰を?箱の中でうずくまる、スーツ姿のサラリーマンを見る。もう、どこで捕まえてきた人かも思い出せなくなっていた。
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69 |
+
誰にしようかな……。
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70 |
+
小人を縮めてくるためには、その人の顔と姿を直接見るか、それに近いくら��はっきりと覚えている必要がある。いつもは休みの日に、地下鉄や物陰で適当な人を捕まえていた。でも、今は体調が悪くて、正直もう一歩も家から出たくはない。今日一日を振り返って、その日出会った人たちの顔を思い浮かべていった。
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71 |
+
にやりと笑った。
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72 |
+
そうだ、今日を振り返って、これ以上ないくらい適任な人がいる。縮められて、私の食べ物になるのにふさわしい人が。目を閉じて、その人の顔を思い浮かべながら呪文を唱えた。
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73 |
+
* * *
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74 |
+
突然何かに殴られるような衝撃があった。頭が痛かった。視界が真っ白になって、しばらく何も見えない。耳は轟音を拾い続ける。音量の調整に失敗した、スピーカーで殴られているような感覚だった。
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75 |
+
数回まばたきをすると、五感に秩序が戻り始めた。驚いたのは、そこに広がっていた景色が、さっきまで立っていたはずの駅のホームとは全く違うことだった。正面には、灰色の湾曲した壁が見えていた。足元の床はまっ平らだった。異様に拡大された木目が写っていた。自分がどこにいるのかの想像もつかなかった。
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76 |
+
「気づいた?」
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77 |
+
頭上から、割れんばかりに大きな声がした。耳を抑えてうずくまると、追い打ちのように笑い声が響いた。手で頭を抑える。女の、それもかなり若い女の子の声だ。一体、何がどうなってるんだ……?まっ平らな地面に膝をついたまま、恐る恐る顔をあげる。
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78 |
+
灰色に湾曲した壁の、そのはるか上から、女の子の巨大な顔が見下ろしていた。口元には微かな笑みが浮かんでいた。
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79 |
+
「だ、誰だ……?」
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80 |
+
「ええっ」
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81 |
+
恐る恐る声をかけると、わざとらしく手で口元を抑えて、彼女は驚く仕草をした。彼女の全身の動きにあわせて、部屋の中の空気が揺れ動くのを感じた。
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82 |
+
「覚えてないの?私たち、今日会ったのよ」
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83 |
+
今日?朝からの出来事を、混乱した頭で振り返ってみる。朝練のときの癖で早朝に起きて、自習しようと思って早めに学校について、そしたら友達がいて話し込んじゃって……。あとは授業を受けて、塾があるから帰宅しようとして、駅まで歩いて電車を待っているところだった。なんてことはない、本当にいつもどおりの平凡な一日。こんな女の子と出会った記憶なんてなかった。
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84 |
+
「……覚えてない」
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85 |
+
「本当に?」
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86 |
+
ぐっと彼女が身を乗り出す。灰色の壁が近づいてきて、反射的に後ずさった。全ての行動に迫力があった。ここまで近づくと、どれだけ上を見ようが胸部の湾曲が邪魔して、彼女の顔はほとんど見えなかった。
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87 |
+
「ご、ごめん……。どこかで会ったのか?どこの学校?行きの電車が一緒だったとか?」
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88 |
+
勇気を振り絞って、声をかけた。
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89 |
+
返事はなかった。
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90 |
+
「ふーん」
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91 |
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数秒の間。
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92 |
+
「思い出せないんだ」
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93 |
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背筋が凍った。何が起きているんだ?
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94 |
+
不気味ににっと笑うと、女の子は手を大きく伸ばした。影がさっと落ちた。あまりに早い動きで、自分に向かってくるのではないかと身構えたが、手が伸びた先は自分の後ろだった。
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95 |
+
振り返ると、そこにあったのはプラスチック製の箱だった。自分の背丈よりも大きい。半透明で中身が見えたが、そこにいたのは自分と同じような……生きた人間だった。
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96 |
+
「私ね」
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97 |
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巨大な顔が、自分を見下ろしていた。
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98 |
+
「小人さんを食べるのが趣味なんだ」
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99 |
+
残酷な笑みを浮かべていた。
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100 |
+
「こびと。分かる?あなたみたいな、女の子の指よりも小さく縮められちゃった人のことだよ」
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101 |
+
少女の巨大な笑みをよく見ると、前歯に赤い液体の痕がにじんでいた。
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102 |
+
小さく悲鳴を上げた。
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103 |
+
いつの間に掴んだのか、彼女の片手にはもう小人がいた。ケンイチと同じような学ランを着て、ケンイチには聞こえる命乞いの言葉を叫んでいた。
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104 |
+
「いただきます」
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105 |
+
その声は、少女の可憐な声によって簡単にかき消された。
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106 |
+
少女の口が開いた。抵抗をものともせず、巨大な手はいとも簡単に小人を口の中へ放り込んだ。舌の上に、小さな体が着地する。それと同時に唇が閉じ、悲鳴がわずかにくぐもった。
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107 |
+
その間も、巨大な瞳は自分を見下ろしていた。その顔は、わずかににやりと笑っていた。
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108 |
+
それから、少女は噛み始めた。もぐもぐと口が動いた。あごが動き、上下の歯が合わさり、小人の骨が、肉が、身体の全てが暴力的に断ち切られて行く……。中身を見ることはできなかったが、鮮烈な音と動きが、少女の唇の中で、今何が起きているのかをはっきりと克明に伝えていた。
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109 |
+
んー、と少女が鼻を鳴らした。おいしい、ということらしかった。それから、
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110 |
+
ごくり。
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111 |
+
はっきりと喉が鳴った。
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112 |
+
下から、喉元の動く複雑な動きが見て取れた。この縮尺だと、全てが大きく複雑に見えたが、なんてことはない、少女にとっては普段と同じ嚥下の動きだった。
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113 |
+
「ふふ」
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114 |
+
少女の笑い声が響いた。
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115 |
+
「おいしかった」
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116 |
+
くすくすと笑っていた。
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117 |
+
何も考えられなかった。考えたくなかった。自分の置かれた状況、そして今見たもの。全てが嘘のように現実離れしていて、それでいて現実のリアルさを持っていた。
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118 |
+
「ねえ、ゲームしましょ」
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119 |
+
少女の声が聞こえる。
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120 |
+
「ルールは簡単。私が今日会ったうちの誰だったか、当ててみて。今から、箱の中の残りの小人を1人ずつ食べていくわ。小人は全部であと3人。全員食べる前に当てられたら、今日食べるのはやめてあげる」
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121 |
+
上を見上げる。自分を見下ろす、2つの巨大な瞳。その目からは、彼女の楽しみがはっきりと見て取れた。
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122 |
+
「当てられなかったら……?」
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123 |
+
「決まってるじゃない。あなたを食べるわ。生理で貧血気味なの、だから鉄分が欲しくて。あなたの身体も、きっと少しは役に立つわ」
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124 |
+
背筋が凍った。最初は、何を言っているのか理解できなかった。あなたを食べる?自分は人間だ。高校3年生の。社会の一員だ。それが、食べられる?自分が?理解できなかった。自分は人間で、食べ物じゃない。しかも、目の前の少女も人間で、怪獣なんかじゃない。それが今ここで、自分と同じ、人間を食べようとしている?
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125 |
+
信じられなかった。首を横に振った。でも、次第に実感が襲ってきた。少女の言葉は嘘じゃない。現に、さっきこの女の子は自分と同じような学生を食べてたじゃないか。この子は人を食べる。それも簡単に、何の罪悪感もなく。さっきは、別の人の番だ。次も、その次も。でも、その次には自分の番が待っている。自分が、女の子に、別の人間に食べられる。彼女が言っていたクイズ、「彼女が今日あった誰なのか」を当てることが出来なければ。
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126 |
+
「1人目〜」
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127 |
+
もうすでに、1人目の小人がつまみ上げられていた。少女には、人を食べることに対して何の躊躇いもないようだった。小さな身体はさっきと同じように、あっさりと口の中に放り込まれ、あっさりと噛み砕かれる。悲鳴が静かになった。
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128 |
+
もぐもぐ。骨が折れる乾いた音がなければ、ビスケットかポテトチップスを食べているくらいのことしか思わないだろう。しかし、その中にいるのは生きた小さな人間だった。正確には、さっきまで生きていた人間。噛み砕かれて絶命し、二度と動くことはなくなったその身体を、少女の舌と歯が正確にすり潰していった。手、足、内臓、全ての部位が平等に噛み砕かれ、血は少女の唾液と混ぜ合わせられる。数秒前まで機能していた、小人の身体はどろどろのペーストになっていく。元の命は決して宿らない、暴力的に咀嚼された養分のかたまり。しかしそんな残酷な肉塊も、少女がごくりと喉を動かすと口の中から消え去り、あとは胃で消化を待つだけの栄養となる。
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129 |
+
ケンイチは、固まったまま下から少女の口の動きを見上げていた。考えることは出来ない。考えられるはずがない。誰かが目の前で噛み殺され、飲み込まれていく。次は自分の番かもしれない。食べられるという、原始的な恐怖が自分の身体を支配するのを感じた。
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130 |
+
「2人目〜」
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131 |
+
2人目にも、用意された結末は全く同じだった。ぽい。がぶり。もぐもぐ。もぐもぐ。あまりに単純な動きだった。時々漏れる少女の吐息もふくめて、まるでおやつにポテトチップスを食べる女の子そのものだった。でも、その口の中で行われているのは、残酷極まりない血まみれの処刑だ。あごが動くたびに、湿った音が机の上にまで響いてくる。手で耳をふさぎながら、それでも見開いた目で、男子はその日の出来事を振り返り続けた。
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132 |
+
「3人目〜」
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133 |
+
最後の小人を、少女がつまみ上げていた。口の前へと近づけると、小人が初めて悲鳴を上げた。若い。小さな男の子は、自分がかつて着ていたようなサッカー部のユニフォームを着ていた。下校途中の中学生のようだった。空中で懸命に暴れると、土にまみれたスニーカーが足の間から放り出されて机の上に落ちていった。
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134 |
+
「待て、待ってくれ!」
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135 |
+
ケンイチは勇気を振り絞って叫んだ。
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136 |
+
「思い出した。思い出した……君が誰か!だから、その子を下ろして」
|
137 |
+
「あら?」
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138 |
+
少女は首をかしげた。わざとらしい動きだった。
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139 |
+
「やっと、思い出せたの?私が誰か」
|
140 |
+
「ああ。思い出した。だから、その子を食べるのは待って、」
|
141 |
+
「嫌よ」
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142 |
+
首を横に振った。
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143 |
+
「おいしそうだなと思って縮めたんだもの」
|
144 |
+
残酷な言葉。
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145 |
+
「でも、あなたが思い出したっていうのなら、今日のご飯はこれで終わりにしてあげる」
|
146 |
+
ゆっくりと、少女が手に持っていた少年を下ろしていった。プラスチック製のケースまで手が下りると、聞こえていた悲鳴はすすり泣きに変わった。
|
147 |
+
「ありがとう、」
|
148 |
+
「じゃあ、私が誰なのか言ってみて?」
|
149 |
+
「……」
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150 |
+
沈黙があった。
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151 |
+
「言えないの?」
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152 |
+
少女の顔に、怒りが浮かんでくるのが分かった。
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153 |
+
「そう。嘘をついたって訳ね」
|
154 |
+
暴力的な速さで、巨大な手がこちらに伸びてきた。二本の指で、ついにケンイチの身体が空中へとつまみ上げられた。急激な動きに視界が一瞬白飛びした。目の前に少女の顔があった。対等な高さで見るのはこれが初めてだった。と、さっきまであれほど浮かばなかった今日の出来事が急に蘇ってきて——
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155 |
+
「分かった!君は学校の、休み時間の階段で、うっかりぶつかっちゃった——」
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156 |
+
声は悲鳴に変わった。周囲に血の匂いがして、湿気と熱が全身から伝わってきた。赤く柔らかい何かに触れていた。血と唾液で赤く濡れていた。
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157 |
+
「待て、分かったんだ、許してくれ——」
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158 |
+
唇が閉じて、真っ暗になった。心臓の音が聞こえた。突然、身体が空間ごと持ち上げられ、何か硬いごつごつしたものの上に乗ったと思うと、何かが下りてきて、両脚に鋭い痛みを感じた。痛みと一緒に、喪失感があった。寒かった。もう一度舌が動き、べちゃべちゃとした唾液がかかると、一緒に何か柔らかいものが身体に触れた。細長いそれは、バラバラになった自分の脚だった。膝から先の部分だった。悲鳴を上げ、舌から懸命に逃れると、そこは再び硬い歯の上だった。数秒間、沈黙があって、少女のうねるような笑い声が聞こえたと思うと、今度は腹部に、上から鋭いエナメル質の物体が振ってくるのを感じた——。
|
159 |
+
* * *
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160 |
+
口の中の小人を噛みながら、んーとノゾミは喉を鳴らした。最後の最後、この上級生が何かを言っているのが聞こえた。先頭を聞く限りは、正解だったような気がする。でも、お腹が空いていた。結局食べてしまった。どっちにしろ、正解できたところで生かすつもりもなかったのだ。ただ、恨みのある小人を食べるのは、その辺のおじさんとかを食べるよりもはるかに気持ちよかった。セックスにも似た快感だった。
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161 |
+
それから、ごくりと飲み込んだ。前歯は使わなかったし、ほんの数回しか噛まなかったから、もしかしたらまだ生きているかもしれない。だとしたら、胃の中で彼は何を思うのだろうか?周りには、きっとぐちゃぐちゃになった肉塊と、消化のために活発に分泌され始めた胃液しかないはずだ。痛みと苦痛に耐えながら、人生の最後の数分を味わうのはどんな気持ちなんだろう。そんなことを考えながら、お腹をさすっていると楽しかった。
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162 |
+
それから、小箱の中に入った小さな少年に声をかけた。
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163 |
+
「大丈夫?怖かった?」
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164 |
+
返事はなかった。箱の中でうずくまって泣いていた。そっとつまみ上げると、身体の節々に青い痣が出来きていた。可愛いと思って捕まえてきたのに、なんとなく罪悪感があって1週間近く食べずに置いてあった子だ。それが思いやりのつもりだったが、様子を見るにひどく苦しませてしまっていたようだ。
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165 |
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少年を口の中に放り込んで、飲み込んだ。涙の塩味がした。
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166 |
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お腹を優しくさすりながら、机の前に向かった。やらなければいけない宿題があった。すっかり痛みの晴れた頭で、少女は国語の課題に取り掛かり始めた。
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167 |
+
* * *
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168 |
+
23時40分。
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169 |
+
あれほど感じていた頭痛と倦怠感は、すっかりなくなっていた。早めに寝ようと、��ゾミは洗面台の前に立った。ウサギのスリッパを履いていた。
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170 |
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鏡の前に立って、ピンクの歯ブラシを手に取った。チューブからミント味の歯磨き粉を出し、それを歯ブラシの細かい毛先につける。手を口に近づけ、まずは優しく前歯をこすり始める。と、何かが歯茎に挟まっていた。
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171 |
+
両手で水をすくって、くちゅくちゅしてから吐いた。出てきたのは、小さな黒い布切れだった。ぼおっと見ていたが、すぐにそれが夕方に食べた男子の学ランだと分かった。水を吸ってずいぶん小さくなっていた。
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172 |
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ふふ、と笑いながらもうちょっと口をゆすぐと、吐き出した水が赤くてそれも面白かった。それから歯ブラシを唇で挟んで、もう一度丁寧に磨き始めた。鼻歌が漏れていた。
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173 |
+
『体調大丈夫かな?』
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174 |
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スマホの画面がパッとついて、友達からのLINEが飛び込んできた。
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175 |
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『うん、大丈夫。明日、行けそう』
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176 |
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親指を立てたスタンプを送って、歯ブラシを置いた。もう口の中には染み1つなかったが、代わりに自分の血色が少し良くなっている気がした。健康な歯が、照明の光を白く反射した。にっと小さく笑って、それから少女はベッドへと向かった。眠りに落ちながら、少女は明日のことを考えた。明日には、ユウコと遊ぶ約束がある。その次の日は、日曜だから、まあどこか新しい場所にでも出かけてみようか。その次は、そしてまたその次の日は——。
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177 |
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考えるうちに、彼女は眠りについていた。生理の悩みから解放されて、少女の心はすっきりと明るくなっていた。この先には、きっとまだまだ無限の未来が広がっているはずだ。
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