恋夏とふしぎなアメ 「あーもう!なんで取れないのよ!!」 制服に身を包んだ少女が悔しがる。 彼女の目の前にあるのはクレーンゲーム。ここはゲームセンターの一角だ。 平日の夕方ということで、人は多くない。 学校帰りに寄った中高生や、授業を取っていない大学生がちらほらいる程度だ。 その中で、少女が悔しがる様子を見て近づいていく二人組がいた。 片方は明るく目立つ金髪で、もう片方は茶髪、アクセサリーをジャラジャラぶら下げている。 見た目や振る舞いからするに、いわゆるチャラ男というやつだろう。 2人の見た目から察するに、大学生くらいだろう。 「そこの小さくて可愛い彼女〜!なになに?取れないの?オレ達がとってあげようか〜?」 小さいという言葉を聞き、少女は眉間にシワを寄せる。 小さいというのは少女のコンプレックスだ。 少女の身長は150cm程しかなく、いつもクラスメイトからいじられていた。 少女はキッと体の向きを変え、頭ひとつほど身長差がある彼らを睨み上げる。 腰まであるサラサラとした綺麗な髪が揺れ、ミニスカートの裾がヒラヒラと舞う。 顔立ちは、怒っていても尚見惚れるくらい整っている。 しかし男達の目線は、そのどれにも向いていなかった。 彼らの目線は、小さな体に釣り合わない大きな胸に注がれていた。 張りのある大きな胸は大きく突き出し、カッターシャツを持ち上げている。 裾はスカートまで届いておらず、まるでカーテンのように、お腹に触れることなく胸の下でひらひら揺れている。 季節は夏だ。生地が薄い夏服は汗で湿っており、ブラがうっすらと透けている。 鼻の下を伸ばし切った彼らは飄々と言葉を続ける 「とってあげるからオレらと遊ばない?」 いつも胸ばかり見られている少女は、彼らの視線が自分の胸に向かってることにすぐ気づいた。 初対面の相手と目も合わせないのは失礼だ。こんな失礼な人達には付き合っていられない。 「いらないわよ!」 そう言い放ち、少女は身を翻してその場を去った。 後ろからヘラヘラと聞こえたのは、「ふられちゃった〜」だの「でもあのおっぱいやばかったな」だの、 下品なセリフだった。 ナンパがしつこく無かったのは幸いだが、それは少女の苛立ちを強くさせるものだった。 ほしい景品は取れないし、変な男には絡まれる。時間も良い具合だったので、そのまま帰ることにした。 最上階である5階からエレベーターを使って1階まで降り、外へ出る。 蒸し暑い外へと踏み出した時、少女は学校での出来事を思い出していた。 学校では節電を強く推奨していて、よほど暑くならないとクーラーを付けられないようになっていた。 これでは教室に居るより、外で風を浴びる方が涼しいだろう。 暑さに耐えられず、少しでも涼しくなろうと制服を着崩す生徒は多かった。 そんな中でも熱血な教師は、「たるんでいる!こんな暑い中でも制服はきちんと乱さず着なさい!」などと言っていたのだ。 その後も、「最近の若者は」だの、「私はスーツを着ているのに」だの、暑い中説教をくらっていたのだ。 「この暑い中、誰もまともに制服なんか着ないわよ」 眉間にシワを寄せながら、少女は人通りの少ない帰り道を歩く。 「あーあ…なんかスッキリするような事ないかしら」 そう呟いた時、急に声をかけられた。 ; 「お嬢さん、イライラしているようだねぇ」 声がした方を見ると、深くフードをかぶり、黒いローブを着ているお婆さんがいた。 夏の暑い夜にローブで身を隠し、見知らぬ人に急に語りかける老人。見るからに胡散臭そうだ。 宗教勧誘じゃないだろうか。何か怪しい物でも高値で買わされるんじゃないだろうか。 疑いの目を向けていると、お婆さんは話し始める。 「まぁ、警戒するのも無理ないねぇ。何かの勧誘かと思ったかい? 違うよ。イライラしているアンタに、飴をプレゼントしようっていうだけさ」 少女はキョトンとする。ツボやネックレスでも買わされると思ったら、まさかの飴だった。 そんなものを高額で売り付けようとしても無理がある。 「飴?そんなもの買わないわよ。冬にマッチでも持って出直してみれば?優しい誰かが同情して買ってくれるかもね」 お婆さんは笑う。 「別にお金には困ってないさ。買ってくれと言っているんじゃあないよ。プレゼントするって言ったじゃないか。 ほぅれ、イライラしている時には甘い物さ。」 差し出されたのは一粒の飴玉。何の変哲もなく、個包装されたものだ。 お金を取られるわけじゃないみたいだし、甘いものは確かに欲しい。貰えるならありがたく貰っておこう。 「そうね…それなら貰おうかしら」 もらった飴を舐める。甘い。 時間が経っておさまりつつあったものの、多少残っていたイライラがスッと消える。 甘い物は良い。幸せな気持ちになれる。少女の表情が少し和らいだ。 少女の口が綻ぶのを見て、お婆さんは言った。 「この飴は特別でねぇ。一粒舐めれば、しばらくはイライラしてもすぐ沈めてくれるさ」 少女は冗談だろうと思いつつ、気を紛らわすお婆さんの優しさなのだと感じ、お礼を告げてその場を去った。 これがとある少女、梔子 恋夏(くちなし れんか)のとある1日だった。 この飴がとんでもない効果を持つことを、恋夏は知る由もなかった。 次の日、恋夏は高校へと向かう。彼女の高校は駅から離れたへんぴな場所にある。 辺りは山に隠れていて、出入口は正門ひとつだけ。 生徒が面白半分で山へと入り込まぬよう、他の場所はフェンスで囲っており、上に鉄柵を張っている。 3階建て校舎の中央は少し飛び出していて、そこには正面玄関や階段がある。そして外には、正門からまっすぐ見える時計がある。 授業が始まったが今日も暑く、とてもじゃないが集中できる状態ではなかった。 しかも担当の教師は、昨日説教をかましていた熱血教師だ。真面目に授業を受ける気はない。 早く終わってくれと願いながらうだる恋夏は、いつの間にか机に突っ伏して寝ていた。 「恋夏…起きなって恋夏」 隣から薄らと声が聞こえる。なんだろうと思いながらもぼーっとしていると、 パコン!と頭を叩かれた。寝ぼけ眼で顔を上げると、教科書を手に持った教師が目の前に立っていた。教師は説教を始める。 たるんでるだの、スカートが短いから生活態度が悪いだの、言いたい放題だ。 眠気もある中、また同じ事でグダグダ言われてイライラする。 目を閉じてため息を吐くと、尚のこと教師は口煩くなる。 既に暑いのだが、頭に血が上ったのか体が熱く感じる。暑い、五月蝿い、熱い。 恋夏の苛立ちは募り、爆発した。 「はいはい分かりました!」 恋夏は勢いよく立ち上がる。 するとその時、コツン、と後頭部に何か硬いものが当たった。首を曲げた状態になり、頭が上がらない。 教師か、もしくは持ってた日誌に当たった? いいや、教師は当たるような位置にはいなかったはず。なら一体何が当たったんだろう。 不思議に思い目を開けると、そこには自分を見上げる教師の姿があった。 「へ?」 気の抜けた声を出し辺りを見渡してみると、周りが小さくなっていた。 首を回し上を見てみると、すぐそこに天井がある。 座っているクラスメイトは脚より小さく、威圧感のあった担任は少女の腰辺りほどの大きさしかない。 突然のことに驚き、恋夏はバランスを崩してしまう。 後ろの席にいる少年に、スカートに覆われた大きなお尻が迫る。 座っていたまま呆然としていたので避けられるはずもなく、視界をお尻で埋め尽くされ、そのまま椅子ごと倒れてしまった。 一方で横にいた生徒達は、机の奥行きほどもある足に椅子や机ごと押されていた。 【1人の少女が尻餅をついた】 たったそれだけの事で、教室にいる数人が被害にあってしまった。 被害がなかったのは離れていた生徒達と、前方に居る生徒、そして教師だ。 恋夏は今、体操座りから足を開いたような状態で股を開いている。 前から見ると、健康的でむっちりとした太ももと、紫色のパンツがバッチリと見えてしまう。 とはいえ、人が急に大きくなって周りを荒らしているというこの状況で、下着に集中出来る人間はいなかった。 しかし恋歌にとっては意識が向いてるかは関係がない。見られているのは間違い無いのだ。 悲鳴を上げ、思わず教師を蹴り飛ばす。 体格の良い教師が、前に座っている生徒を巻き込みながら2,3mほど飛んでしまった。 蹴りの反動で、お尻に敷かれている生徒の顔に圧力がかかる。 ただでさえ息が出来ない状態だったのに、更に押し付けられた生徒は恋夏のお尻を必死で叩いた。 鼻も口も覆われている状態で声にならない声をあげる。 「ひゃうっ!」 敏感な部分でモゾモゾ動かれた恋夏は、たまらず腰を浮かせる。 少年はぜいぜいと息を荒らげながらも、倒れたまま恋夏を怒鳴りつける。 「こ……!この……!ゼェ…ハァ…殺す気か……!!!」 息を整えた少年は、苦しさで忘れていた五感を取り戻す。 押さえつけられていた顔と叩いていた手に感じた柔らかな弾力。 肺を満たすいつも前の席からほんのり漂っている甘い香り。 叫ぼうと踠いた口に感じる塩気。 目の前に広がるのは、黒いラインが水平に入っている緑のカーテン。そのカーテンは丸みを帯びて少年の方へと突き出している。 カーテンの横を見ると、奥から大きな少女が覗き込んでいるのが見える。 目の前に広がるのは少女のお尻で、自分は先ほどまでこの大きなお尻に顔を埋めていたのだ。 その事を理解した少年は顔が真っ赤になる。脳がオーバーヒートしそうになり固まっていると、上から声が聞こえてきた。 「あの…ごめん……!!」 クラスでもトップクラスで可愛い少女から真っ直ぐ見つめられている。 思春期の少年は、周りに見られている事や、少女に倒され心配されていることが恥ずかしくなり、声を荒げる。 「チ……チビのくせに、無駄にデカいケツしてんじゃねえよ!」 少年はすぐに後悔した。こんな事を言うつもりでは無かった。少女を傷つけてしまったかもしれない。 しかし少年は気付かない。傷つけただけなら、少年にとってまだマシなのだ。 怒らせてしまったらどうなるだろうか。 顔の上にはまだ、彼を苦しめていたお尻があるというのに。 恐る恐る彼女の顔を見る。その顔からは不安や心配の色が消え、徐々に怒りの色へと変わる。 少女だって、なぜこんな事になっているのか分からないのだ。 のしかかってしまったことは確かに申し訳ないが、不可抗力だろう。 おまけに、男子の顔にお尻を押し付けるという恥ずかしい思いをしているのだ。 それなのにここまで言われるのは理不尽ではないだろうか。 恋夏の頭に血が上る。頭だけでなく、またもや全身が熱くなる。ドクンドクンと鼓動する。 このイライラを少年にぶつけてやろうと決めた。 上半身を逸らして手を少年の両脇に置き、お尻が頭の上に来るようにしっかり狙いを定め、勢いをつけて腰を下ろす。 「チビなのはそっちの方で…しょ!!!」 その瞬間、さらに恋夏の体が更に大きくなる。 少年の上に再びお尻が襲いかかる。 先程まではお尻が顔の上にのしかかっていたが、今度はその比ではない。 お尻の割れ目に顔が食い込み、覆うどころか包み込んでいる。大きくなった事で重量は増し、更に勢いもついている。 ズン!という衝撃と共に、少年は意識を失った。 自分がさらに大きくなったこと、そして少年の抵抗がないことを感じ、 恋夏はこんなつもりでは無かったと呆然とする。ただムキになって、懲らしめるだけのつもりだった。 そんな少女の気持ちも知らず、生徒達が震えながらも口々に彼女を責める。 「や…止めなさいよ!」「先に乗ったのは自分だろ…!?」「そ、そこまで…しなくて…良いじゃないか!!」 集団心理だろう。一人が言い出すと、周りもつられて恋夏に物言い始めた。 始めこそ恐る恐るいう彼らだったが、人が増えるにつれ口調が強くなる。 先程まともに蹴られた教師やそれに巻き込まれた生徒は、先程の蹴りの強さを知っているため、止めさせようとする。 しかし教師を含め、怯えた生徒がか細い声で止めようとしても、皆は責めるのをやめない。 むしろ少女が何も言い返さないのを良いことに、人数を増やして更に責め立てる。 大きな少女とはいえ、何もしてこないなら怖くない。人数が多い事をいい事に、恋夏の手の届かないところから好き勝手に言い続けている。 何も抵抗しない恋夏だったが、そのはらわたは煮えくり返りそうだった。 反撃しないのではない。怖くて出来ないのだ。少年を気絶させてしまった事や教師を蹴り飛ばすほどの力に恐怖を感じているのだ。 先ほどよりも大きくなったこの状態で手を出せばどうなるか、不安だった。 反撃してしまえば相手が大怪我を負うだろう。下手すると死んでしまうだろう。でも手を出したい。止めさせたい。 理不尽さを感じる。鼓動が早くなる。また、全身が震える。体が熱くなる。もしかしてまた大きくなるのか。そうなると更に周りもうるさくなるのか。 うるさい。 鼓動がうるさい。罵声がうるさい。「やっちゃえば?」なんていう、自分の黒い心がうるさい。 少女は堪らず叫んだ。 「ああああああぁぁもう!!!!うるさい!!!!!」 叫びと共に少女が更に大きくなる。遂に教室の幅より大きくなり、頭と足で前後の黒板にヒビを加え凹ませてしまった。 その衝撃と声は隣の教室にもはっきりと伝わった。それなりに古い校舎なので、今までの多少の振動もよくある事だと気にしていなかった教師だが、 これは流石に異常だと気付き、生徒に待機しておくように指示をして様子を見にきた。 しかし、扉の窓から中の様子を知る事はできなかった。 前の扉は恋夏の履いている靴で、後ろの扉は少女の腕で覆われているからだ。 廊下の窓は磨りガラスとなっており、制服や腕の色がぼんやりと見えるだけだ。 衝撃で扉は歪み、中に入ることもできない。 教室の中では、巨人が出入口を塞ぐように寝そべっている。 全身を見渡せばバランスの良い体型をしているが、顔だけでもこのクラスで一番背が高い人間よりも大きい。 それほど大きな顔が、部屋を見渡している。 元から大きかったお尻と胸は天井と床に挟まれ、寝返りが打てないくらい窮屈そうにしている。 窓から逃げようにもここは4階だ。飛び降りれる筈もなく、生徒たちは巨人の手の届かないであろう窓際に集まるしか無かった。 今もなお下敷きにされている少年はもう助からないだろう。 今まで大人しかった少女が叫び、更に大きくなった。何をしてくるか分からない。 集団心理も消え、彼女を責めるものはもういない。 黒板ごと壁を凹ませるような力を持っているのだ。 あの少年と同じように、自分たちも潰されるかもしれない。その恐怖が生徒達の心を支配している。 「もう……なんなのよ……」 責める者が居なくなった事で、恋夏の怒りは行き場を失った。 思わず叫んでしまうほどの怒りは、大きくなった瞬間に消えていた。 自分を見て怯えるクラスメイトの目。繰り返す巨大化。人を殺したかもという不安。 分からない事だらけだ。これが夢なら覚めて欲しい…… 夢…そうか、これは夢なんだ。 恋夏は思い返す。 黒板を凹ませたり、扉を歪ませたりするほどの衝撃があったにもかかわらず、痛みを感じていない。 始めに大きくなった時も、天井に頭を勢いよくぶつけたのに痛みを感じなかったのだ。 痛くないなら夢に違いない。そう信じた恋夏は気付いていない。 大きくなった少女の体は、その自重を支えるためにも頑丈になっていたということに。 「夢なら、もうどうでもいいわ……」 夢なら、現実に全く影響はない。教師を蹴り飛ばしたことも、少年をお尻で敷き潰している事も罪には問われない。 『今から何をしようとも、誰も私を止められない。』 そう考えた恋夏の口元は緩んでいた。 その表情を見たクラスメイトの恐怖の色が濃くなる。 そんな中、ボソリと誰かが呟いた。 「だ……大丈夫だよ……きっと、ここまで手は届かないよ……」 その声を聞いた全員が、きっとそうだと納得した。 いや、正確には「納得するしか無かった」。 確かに今の少女は胸や腰がつっかえて動くことが出来ない。腕を伸ばしたとしても、窓際までは届かないだろう。 しかしそれは、「少女がこれ以上大きくならなければ」の話である。 「ここまで手は届かない。」「もうこれ以上は大きくならない。」 そう各々言い聞かせることで、この恐怖を和らげようとしているだけだった。 少女が笑った意味を考えてしまうとどうにかなってしまいそうで、はっきりと気付く事のないよう、必死に大丈夫だと言い聞かせるしか無かった。 「ねぇ、みんな酷いんじゃない? 女の子一人を寄ってたかって責め立てるなんて」 目の前の巨人が喋り出し、その場の誰もに緊張が走る。 大丈夫、大丈夫だとひたすらに自分に言い聞かせる。 「私だって、好きで大きくなった訳じゃないのよ? 最初だって、ただ転んだだけ。ただの事故よ。 男子にお尻を触られて、顔を埋めれられてるのよ? 可哀想だと思わない?」 はじめは笑っていたものの、徐々にその顔から笑みが消えていく。 少女の問いかけに答えられるものはいない。恐怖で言葉が出てこない。 震えるだけで精一杯だ。 「ねぇ、答えてよ」 冷たい声が響く。 返事をしないと。何か喋らないと。誰もがそう思うが、言葉を発することが出来ない。 口から漏れるのは小さく短い、声にならない声ばかりだった。 少女を散々責め立てていた人間達が、今度は怯えている。まるで被害者は自分たちのようだと言わんばかりに巨人を見つめている。 その事が恋夏の苛立ちを募らせる。 この小人達に仕返しをしてやりたいが、左手は届かない。 右腕は胸がつっかえて伸ばせず、足を出そうにもお尻がつっかえて横を向くことが出来ない。 この小さな教室に鬱憤がたまる。 その時、教室がミシミシと音を立てて揺れ出した。 教室の小人達には、巨人が教室の揺れに共鳴して鼓動する様子がはっきりと見えていた。 4度目の鼓動ともなると、少女も次に起こることがはっきりと分かる。 少女は小人達に向けて手を伸ばし、感情のない目で見つめ、ニヤリと口角を上げながら小人達に言った。 「バイバイ」 次の瞬間、届かなかったはずの腕が伸び、小人達よりも大きくなった掌が彼らを押しつぶす。 運良く手で潰されなかった者も居たが、窓から外に押し出され、落下死してしまった。 ヒビの入った壁は突き破られ、床は体重を支えきれず抜け落ちてしまう。 急に床が抜け、受け身が取れなかった恋夏は体を大きく広げ、ズシンという音と共に倒れ込む。 お尻に潰された犠牲者の数は、今度は一人二人などという生易しいものではない。 お尻だけではなく、腕や足、背中や頭など、体の至る所で小人を潰し、校舎を破壊している。 直接潰されなかったものも居たが、大半は瓦礫に埋もれたり、校舎から押し出されて下に落とされていた。 体に乗っている瓦礫を落としながら立ち上がった少女は、校舎の倍ほどの大きさになっていた。 校舎の半分はまるで隕石でも落ちたかのように見事に崩れてしまった。 運良く崩れなかった校舎には、音が響いた方へ向かい崩れた校舎を目の前で見る者、突然の揺れに驚き机の下へ隠れる者等、様々な者が居た。 外を見ると、先ほどまで無かった大きな2本の柱が建っている。それは肌色で、滑らかな曲線を描いている。 窓から顔を出し全体を見ることでようやく、それが人の脚なのだと分かった。 崩れた場所へ向かった一人の少年が2本の柱を見上げる。 見上げた先ではヒラヒラした緑のカーテンが2本を纏めるように囲っており、柱の間では巨大な薄い桃色の布が丸みを帯びてナニかを覆っている。 その布の正体に気づいた少年は、そこから目が離せなくなってしまった。 視線に気づいた恋夏は一瞬恥ずかしくなったが、すぐにあることを思い付き、笑みを浮かべながら片足をゆっくりと上げていく。 片足を上げたことでスカートがめくれ、今まで影となっていてよく見えなかった部分が見えやすくなる。 「そんなに見たいならじっくり見れば?この変態」 少年の視線は釘付けとなり、さらによく見ようと身を乗り出す。 それを見てさらに口角をあげた恋夏は言葉を続ける。 「最期まで……ね♡」 次の瞬間、少年は自分の倍以上はある革靴に押しつぶされた。 それに巻き込まれ、付近の壁や床は瓦礫と化していく。 一部始終を見た人々は、潰される恐怖を感じパニックに陥った。 恋夏は、たった一歩踏み出しただけで慌てふためく小人達の姿を見て昂った。 このおもちゃを逃す訳にはいかない。そう考えた恋夏は靴を脱ぎ、校門を塞ぐように2つを重ねて置いた。 脱いだばかりの靴には恋夏の汗や汚れがたっぷり染み付いており、近付き難い濃厚な匂いを放っている。 人が越えられない高さではないが、足止めをするには十分だろう。 ふと校舎のまだ崩れていない時計塔の反対側を見ると、屋上には生徒が一人座っていた。 授業をサボってここで眠っていたが、校舎が崩れた衝撃で起きてしまった。その後校舎を壊す一部始終を見てしまい、腰を抜かして逃げられないでいた。 そんな生徒を見下ろし、恋夏はニヤニヤしながら話しかける。 「駄目じゃない、こんなところでサボってたら」 その言い方はまるで、小さい子に優しく語りかけるようだった。 話している彼女の口元は生徒には見えていない。ボタンが飛びそうなほどシャツを引っ張る、はち切れんばかりの巨大な胸で隠されているからだ。 彼の目には、巨大な胸が話しているように見えるだろう。 「そんな悪い子は、閉じ込めちゃおうかしら♪」 その言葉が聞こえた時、少年は我に帰った。 こんな巨人に捕まっては、何をされるか分からない。標的にされた今、本能がようやく彼を動かした。 少年は屋上の出入口に向かって走り出す。 走り出した少年の目の前にいきなり布の壁が現れ、あたりが少し暗くなる。 「ふふふ、逃げられるわけないでしょ」 壁をよく見るといくつか隙間が空いており、隙間の上下には少年の頭ほどの大きさの丸い影がある。 やけに蒸し暑いこの空間から何とか出られないかと考える少年の頭に、大きな滴が垂れる。 見上げると、巨大な肌色の球が頭上を覆っている。布の壁はこの球から垂れているようで、いくつもシワを作りながら横に引っ張られている。 彼は気付いた。このシワには見覚えがある。逃げる前に見ていた物だ。このシワを作る上の球はあの巨大な胸だ! 少年は、恋夏のシャツの中に囚われていた。 「一名様ご案な〜い♪」 恋夏がそういうと、胸が少年に向かって勢いよく降ってきた。 どたぷん、と重量感と柔らかさの詰まった音とともに、少年は胸の谷間に挟まってしまった。 押し潰されたと思っていた少年だったが、自分がまだ生きていることを確認し、安堵した。 しかし、安心は出来ない。 潰れてこそいないもののその乳圧はとても高く、むにゅぅっと全身を隈なく包み込む。 滴るほど汗が溜まっていた空間は、体と胸のわずかな隙間も汗で埋め尽くしてしまう。 日の光を浴び続けている彼女の体はとても熱く、じわじわと新しい汗が流れ出る。 汗で窒息しそうになる彼は、必死に暴れ出す。 胸の中で暴れるのを感じた恋夏は、顔を火照らせながら満足げに微笑む。 「ねぇ暑い?苦しい?それなら楽にしてあげるわ」 そういうと恋夏は自分を抱くように腕を交差させ、放漫な胸をこれでもかと抱きしめた。 表面が大きくたわんで、腕から溢れそうになる。溢れる場所のない谷間はさらに押し付けられる。 汗で顔を覆われている少年は叫ぶこともできず、その乳圧に潰されてしまった。 恋夏が胸の谷間に下から指を差し込み、くぱぁと広げながら立ち上がると、無残に潰された少年が汗とともに流れ出てきた。 屋上の方で何かが落ちるような衝撃があった事、そして脚が校舎に近づいた事で、校舎の崩れていない方も大混乱に陥っていた。 潰された友達、崩れた校舎、追い討ちをかける巨人。誰もが我先にと必死になり、狭い廊下から思うように動けないでいる。 押されて倒れる生徒、それを踏んででも逃げようとする生徒、誘導する教師、生徒を押し除けてでも逃げようとする教師。 少ない出入口を目指して行われる醜い争い。それに終わりを告げる衝撃が大きく響いた。 恋夏が屋上に手を置き、膝で校舎を思い切り蹴ったのだ。 太ももが教室を占領し、膝は廊下に突き刺さる。 今の惨劇を目の前で見て、より恐怖に支配される者が居れば、退路を絶たれ、絶望して座り込む者も居る。 崩れた廊下が集団を分断する。しかし、分断された事に大きな意味はなかった。 どちらに居ようが、結果は変わらなかった。 校舎を崩す蹴りは一度で終わらず、時には足の裏もつかって何度も繰り返された。等しく平等に、校舎をただの瓦礫へと変え尽くすまで、何度も何度も繰り返された。 やがて校舎はただの瓦礫の山と化した。 満足した恋夏は校門の方へ、ズシンズシンと足音を立てながら歩き出す。 そこには早いうちに逃げ出した生徒達が数十人いた。 その内数人は、必死で靴をどかそうとしている。 しかし酷い匂いでむせて力が入らないようで、初めに置いた位置からほぼ動いていない。 靴の前で咳き込む大勢の小人達を、恋夏はムッとした表情で容赦無く蹴り飛ばした。 「女の子の持ち物の匂いでむせるなんて酷いんじゃない?」 悲鳴が上がる。生き残っているのは十数人。ある者はもうダメだと諦めその場に座り込む。 ある者は仁王立ちする恋夏の視界から隠れようと、股をくぐって走り抜ける。 「逃げちゃダ〜メっ」 恋夏は脚を曲げ、ズドンと勢いよく座り込む。走り抜けようとしていた数人が、お尻に潰されてしまった。 足が早くなんとか潰されずに済んだ者は、後ろで友人が潰されるのを見て、更に息を荒げながら駆け抜けようとする。 反対に足が遅い者は、目の前が股間で覆われる。しかしそこで興奮している場合ではない。 慌てて左右を見渡し、太ももとふくらはぎの間を駆け抜けようとする。 (逃げられるわけないのに…♡) 恋夏は脚を伸ばし、大の字となってその場に寝転がった。 お尻に潰されなかった者達も、背中や太もも、ふくらはぎに押し潰されてしまった。 残っている人々は恋夏の脚と下着、そして革靴に挟まれている。 足首を乗り越えようとするも、恋夏が脚を上げるだけで簡単に振り落とされてしまう。 太腿の間から見上げると迫力のある下乳の谷間から、血が混じって赤色になった汗が垂れている。 視線から外れるために、スカートの下に潜り込む者も居る。 少女1人が作り出す空間に数人が閉じ込められ、絶望で満ちている。 恋夏の目に映るのは、教室でも見た恐怖の表情。 あの時は悲しみや怒りを感じたが、今は違う。 あるのは優越感だった。この小人達は自分が何をしても何も言えない。 もし口を出す者がいれば、潰してしまえば良いだけの話だ。 しばらく無言で眺めていた恋夏だったが、そろそろ終わりにすることにした。 広げていた足を徐々に閉じる。人々のいる空間が狭くなる。必死に押し返そうとする人々を嘲笑うかのように、壁は無慈悲に迫ってくる。 やがて動く空間も無くなり、満員電車のようにぎゅうぎゅうになってしまった。 ソックスに挟まれる者、ふくらはぎに挟まれる者、太腿に挟まれる者、様々なものが居たが、潰された者はまだいなかった。 しかし中には、いっそ早く潰してくれと願う者も居た。 汗が染み込んだソックス、汗の滴るふくらはぎ、密着する太もも。どこも暑く、熱く、そして苦しい。 スカートの下にいる者は日差しこそ浴びていないものの、太ももに埋もれたまま少女の下着から発せられる空気に包まれ、脳が溶けそうになっていた。 圧迫され呼吸もままならない状態が続いたが、突然足が開き、解放された。 風が体を撫で、新鮮な空気が肺に入ってくる。息を吐き、呼吸を整えようとしたその瞬間、人々の意識は途絶えた。 最後に見えたのは、離れたはずのそれが物凄い速さで再び視界を埋め尽くしていく景色だった。 脚を開き、動いてるものがそこに無いことを確認した恋夏は、持っていた汗拭きシートで綺麗さっぱり拭き取る。 体は火照り、大量の汗をかいている。脚だけではなく、腕や脇、胸まで綺麗に拭き取った。 それだけで、人を殺めた痕跡は簡単に消えてしまった。 もう学校に用はない。恋夏は学校から離れ、街に出ることにした。 向かう先は決めている。昨日のゲームセンターだ。破壊するものは何でも良かったのだが、どうせなら昨日の鬱憤をはらしてやろうと考えていた。 車が往来する道路を歩く。 人を蹴飛ばせるほど大きくなった彼女だが、車となると話は別だ。 1つ1つ手で持ち上げる事はできるだろうが、小型車程の大きさの足では、足下を走り回るバスやトラック、救急車など、大型の車は邪魔でしょうがない。 足がつっかえるたび、恋歌のイライラが募っていく。 無理して歩き回っていると、足に電線が引っかかった。もたつく足でトラックを踏んでしまった恋夏は、小さなビルに挟まれたこじんまりとした店へとお尻から突っ込んでしまった。 「もう!邪魔なのよアンタ達!!」 恋歌が叫ぶと、また体が大きくなった。恋夏自身、大きくなる方法を理解してきていた。 腕を広げて大きくなった恋夏は、その勢いで隣のビルをなぎ倒す。 立ち上がった姿は、15階建てのビルとほぼ同じ大きさになっていた。 電線をちぎり、車を蹴飛ばし、地響きを起こしながら歩いていく。 街は停電を起こし、エスカレーターやエレベーター、電車も使えなくなる。 しかし地響きはさほど大きなものでもなく、恋歌の姿を見ていない者は、軽めの地震が起きた程度だろうと気にしなかった。 すぐに復旧するだろうと、街は呑気なものだった。 SNSで巨人の姿が流れようと、どうせコラだろうと流すものが多かった。 やがて恋夏は、目的のゲームセンターへと辿り着いた。 「さて、クレーンゲームでもしようかしら」 恋夏はまるでUFOキャッチャーのクレーンのように腕を動かし、指をゲームセンターの最上階に差し込んで天井を看板ごとベリベリと剥いでしまう。 そのまま無造作に投げ捨てた天井が、逃げ惑う人や車を押し潰した。 最上階には昨日お世話になったクレーンゲームや、取り残された小人達が居る。 その中に、明るく光る金色の頭とその隣に茶色の頭が見えた。 恋夏は前かがみになり顔を近づける。 よく見ると、それは昨日ナンパしてきた男達だと分かった。 「そこの小さくて可愛いお兄さん達、良かったら私と遊ばない?」 ニンマリと笑いながら昨日の言葉をお返ししてやった。 その瞳は男達をバッチリ捉えていた。 男達からすれば、それはまるで姿見のように自分たちの姿を映し出す、巨大な水晶だった。 男達はその水晶から離れようと後ずさる。 広がった視界から、持ち主が昨日ナンパした子だと理解した。 理解出来たのは顔が見えたからではない。綺麗な顔だった事は覚えていたが、うろ覚えだった。 理解できたのは、制服を大きく引っ張り上げ、動く度に揺れる大きな胸を見たからだった。 昨日は自分たちより小さかったはずの少女。そんな少女が今、片手で人を握り潰せる程の巨人となって目の前にいる。 その巨大な右手が2人を目掛けて迫ってくる。逃げる間も無く、2人は首から下を握り込まれてしまった。 「お兄さん達、また私の胸を見てたわよね?そんなに私の胸が好きなのね」 恋夏は左手で胸を鷲掴みにしてタプタプと揺らす。下から眺める小人達の目には、自分たちよりも大きな指がシャツ越しにむにゅう…と沈み込む様子が見える。 掴まれているナンパ男達から見れば、はだけた胸元とシャツが揺れる様子は、まるで大地が波打っているようだ。 迫力のある光景と共に、恋夏の行動はそよ風を起こす。そよ風と共に華の女子高生の甘い香りが漂ってくる。その香りはナンパ男達に、この巨大な物は少女の胸だということをハッキリと刻み付ける。あの肌色の柔らかな大地に身を預ければ、どれだけ幸せだろうかと考えてしまう。2人の目は釘付けになっていた。 手に掴んでいる男達の興奮を、恋夏は感じとる。 (やだ…そんなにマジマジと見ちゃって…♡) 恋夏はおもむろに、左手でシャツのボタンを外し始める。ボタンを外す度、ぎゅうぎゅうに詰まっていた胸が少しずつ解放され、その柔らかさと重量感を主張する。 紫色のブラがハッキリ見えたところで、恋夏はボタンを外すのをやめた。 「こ〜んな大きな巨人に捕まってるのに、大きな胸に夢中になっちゃうのね 死んじゃうかもしれないのに、エッチなこと考えるなんて恥ずかしくないの?」 恋歌はクスクスと笑う。男達は恥ずかしくなり、顔を赤くする。しかし体は正直で、依然その胸から目を離す事はできない。 シャツに隠れていた部分は大きく広げられ、今では白い肌とそれを支える美しいブラが丸見えとなっているからだ。 「そんなに気になるなら、好きなだけ触らせてあげるわ」 その言葉に思わず顔をあげる。悲しき男の性だろう。期待や不安が大きくなり、心臓が鼓動する。 その反応を見た恋夏は、男達のプライドの無さや情けなさを嘲笑う。 予想した通りの反応を楽しみつつ、彼女の左手はブラへと伸びていく。 指を引っ掛け、ブラと乳房の隙間を広げていくと、そこには鮮やかなピンク色の突起がぷくりと存在していた。 右手を器用に使い、金髪の男だけをその隙間へと落とす。 落とされた男が上を向くと、自分の頭より大きな突起が、この狭い隙間で存在感を主張していた。 見上げていると、突起の両脇から2本の柱が降りてくる。その柱は男を摘み上げ、顔の前に突起が来るように調節した。 その瞬間背後の紫の壁が迫ってきた。空間は閉じられ、男の顔は突起に押しつけられる。 もがこうとも顔を離すことは出来ず、手足は肌色の壁に沈むだけだった。 「んっ…//」 男を閉じ込めた時、恋夏の口から小さく声が漏れた。 小さくと言ってもそれは恋夏にとっての事であって、未だ右手に握っている茶髪の男にはハッキリと聞こえていた。 艶かしい声を聞き、胸に閉じ込められる様子を見た男は、羨ましいと感じてしまった。 閉じ込められている方からすればそこは地獄だ。 サウナのように蒸し暑く、身動きも取れない。恋夏がモゾモゾと動くたびに圧迫され、いつ潰されるかも分からない状況なのだ。 その事が想像出来ないのは、彼が苦しさからの現実逃避をしているからなのかもしれない。 そんな現実逃避が続いたのは、金髪の男と同じように反対のブラの中に仕舞われるまでだった。 閉じ込められた男達はもがき、悲鳴を上げる。しかしその抵抗は、恋夏を愉しませるだけだった。 恋夏が胸を反らすと、その悲鳴も抵抗も無くなってしまう。 軽く動いただけで、声を出すことも動くことも出来なくなる。 このまま胸を揉みしだいても良いが、そうするならもっと小さい方が楽しめるだろうと恋夏は思った。 代わりに何か楽しめる物がないかと見渡した視線は、自分よりも大きなビルで止まる。 すっかり蕩けた顔をしている恋夏は、ビルに向かって歩き出す。 歩くたびにたゆんたゆんと揺れる胸は、閉じ込められた囚人達を一層苦しめる。 一歩、また一歩と地面に足がつく度に衝撃で押し潰されそうになる。 その衝撃は数回続いた後、急にピタリと止んだ。 いつ次の衝撃が来るかと怯えていると、クンッと前に引っ張られる感覚に襲われる。 その直後、今までに感じなかった圧力が囚人達を襲った。 むぎゅぅと体が前に沈み込んでいく。背中に感じるブラの感触が硬い。 声も出せず、身動き一つ出来ない2人は、あっという間に気絶してしまった…… 恋夏は、ビルに胸を押し付けていた。 ビルの中から見えるのは、しっとりと汗の張り付く白い肌と、中に人が閉じ込められていることで少し盛り上がっているブラだった。 胸の先端が窓にたどり着き、窓に当たる面積を増やしていく。むぎゅぅと押しつけられた窓にヒビが入る。 ミシミシと音をたてていても尚圧迫されるその乳圧に耐えきれず、ビルは遂に胸の侵入を許してしまった。 1フロアに収まりきらなかったその胸は、天井も壊し2フロアを埋め尽くしてしまった。 中にいた小人は数人、逃げきれずに押し潰されていた。ブラの中にいる2人は幸いにも、潰れるより先にガラスが割れたので無事だった。 クーラーの効いたフロアは、僅かながらも少女の肌を冷やす。 「あ〜涼しい… 悪いけど使わせてもらうわね♪」 恋夏はケラケラと笑う。 その口元と目元が見える階層は別々になっていた。 下の階では口が目の前にあるため、喋るだけで窓がビリビリと震える。 よく見える口の中には、唾液が上から下へと糸を引く様子まで見えた。 恍惚の吐息まではっきりと聞こえてきて艶めかしい。 上の階では、ビルの中をまじまじと見渡す目がはっきりと見える。 どこへ逃げようとも、サドスティックな笑みを浮かべた瞳から逃れることが出来ない。 エレベーターも使えない今、人々は震える事しか出来なかった。 (こんなに怯えちゃって…可愛いわね) 恋夏の目には怯えている小人達がはっきりと見えていた。 「安心しなさい。酷いことなんてしないから」 小人達はそんなはずはないと思いつつ、心のどこかで希望を抱く。 もしかしたらこのまま見逃してくれるのではないかと。 この大きな女子高生は、何処かへ行ってくれるのではないかと。 ほんのわずかな希望を抱きながら少女の行動を待っていると、甘い声が聞こえてきた。 「ほら、抱きしめてあげる」 そういうと、恋夏はビルを抱きしめた。 伸ばした腕はビルの後ろまで届き、腕の高さにあるフロアは恋夏の影で暗くなる。 ガラスは割れ、壁や柱は内側へと崩れていく。 顔を押し付けると、ビルは胸の上でくの字に折れ曲がり、崩れて落ちてしまった。 こうなることは分かっていた筈なのに、まるで想像もできなかったかのように恋夏は言う。 「あら?崩れちゃったわね。 抱きしめてあげたのに崩れるなんて、脆いビルね。 このまま残しててもしょうがないし、ちゃんと最後まで壊してあげるわ」 そういうと恋夏は、体を右に向けた。 かと思うと、勢いをつけてその胸部をバルンッと揺らし、ビルの上部へ横から叩きつけた。 ビル解体用の鉄球よりも遥かに大きなその球体は、当たった部分を瓦礫へと変えた。 そこにいた人々からは、天井が急に消し飛んでしまった様子がよく見えた。 「ん〜…まだ高いわね…」 そういうと、恋夏は胸をビルの上に乗せる。生き残っていた人々に、ビルをも壊す球体がのしかかる。 膝を軽く曲げると、柔らかな胸が少し広がる。その動作が人々をさらに圧迫する。 今度は腰の高さでビルに腕を回す。そのまま腰を突き出し、腕を引き寄せてビルをへし折ってしまった。 へし折れたビルは下乳に押し付けられ、とうとうそこにあったものを潰してしまった。 抱えたビルを力強く抱きしめて潰し、脇に捨てる。腰より低くなったビルのてっぺんには、次の犠牲者達が見えている。 「この高さなら十分かしらね」 恋夏は綺麗な黒髪をなびかせながら振り返る。スカートの裾を持ち上げれば、ビルからはお尻と下着が丸見えだ。 人々は少女が何をするかを理解する。必死に逃げようとするも、逃げ場はない。仮にあったとしても、間に合う筈がない。 頭では理解しているが、体は必死に逃げようとする。 動かないエレベーターのボタンを連打する者、開かない非常階段への扉を必死に開こうとする者、神に祈りを捧げる者。 その全ての者に、平等に影が落ちてくる。そして平等に、最期の時が訪れた。 恋夏は軽く飛び跳ね、ビルへと座り込んだ。 ビルは少女を受け止める事が出来ず、全て崩れてしまった。 「よかったわね、小人さん♪ 女子高生のお尻を全身で味わえたんだから」 その声が潰された人々へ届くはずはなかった。きっと、味わう間も無かっただろう。 「は〜楽しい♪次は何をして遊ぼうかな〜」 このまま歩き回って小人と戯れるのも良い。 もっと大きくなって、蹂躙しても良い。 愉しみを覚えた恋夏は、これからどうするかを考えるのだった。