葵の世界 ずしん、ずしん。轟く足音に、沈み込むアスファルト。大通りの両脇に並び立つビルから、振動に耐えかねた窓ガラスが滝のように流れ落ちる。そんな惨状をもってして、葵は自分が"いつもの大きさ"に"戻った"ことを感じ、高揚する。 ここは"グリムグリッター"の世界。葵から見て50分の1の町が広がる、物語の中の現実。とはいえ、葵は別に現実と物語世界の現実を区別しない。ここにいる人々には現実の人々と同様意思があり、現実と同じように五感がある。その気になればこの巨大な体を持ったまま現実世界を侵略することだってできる。この世界の現実が、葵の生きる現実と地続きであることをよく知っているから。 だから最近、葵は"自分の体の本当の大きさ"を忘れつつあった。向こうの世界で家に帰り、眠り、学校に行く。その間、自分は小さくなっているのだと、錯覚するほどに。信号を待たねばならないことに不満を感じるし、鉄道やビルなどの障害物をまたぎ越せないことに不便する。校則を守らない悪い子がいても踏み潰せない。一度大きな体の自由を知ってしまうと、小人に戻って生きるのはあまりにも窮屈なのだ。 だから、学校に行っている半日も窮屈な体に閉じ込められていた葵は、今とても心地いい開放感を感じていた。 "みんなー。今日も遊びに来たよ!" 大股を開いて、大通りに仁王立ちで呼びかける葵。すると、ビルの中から人々がひょこひょこと現れ、葵の足元に集った。彼らは巨大な彼女を恐れない。この世界において、人間は踏み潰されても厚みがなくなるだけで、死んだりしない。壊れた建物も、しばらく待てば再生する。巨大な葵がもたらす被害は看過できる程度のものでしかなく、むしろ街の人々を愛してくれる可愛らしい少女としての一面が大きいのだ。 慌てて駆けつけたパトカー数台ですら、巨大少女に対する建前上の対応でしかなく、実質的に葵と遊ぶ時間を確保するために現れたようなものだった。 "よしよし。みんな元気だね。ほら、おいで?" 葵は早速、大通りを押しつぶして座り込んだ。以前の葵であればまだスカートを気にして女の子座りだったかもしれないけれど、今となっては足を前に投げ出して堂々と下着を見せつける。お尻が地面に触れるこの座り方の方が、彼らと触れ合いやすいから、という理由もあるのだけれど。 小人たちの間では葵のむっちりとしたお尻は特に人気で、早速人だかりだった。 "あっ……そんなに近づくと危ないよ……?" くすぐったい感触に葵が身悶えすると、そのうち何人かが尻肉の下敷きになってぺったんこに押しつぶされる。けれど、この程度で怯む彼らではなく、待ちきれないとばかりに葵の下着によってたかる。強引にこじ開けて中に入ろうとするものすらいたが、彼らの力などでは葵のパンツに隙間を開くことすら不可能だった。 "もー、慌てないの!" そんな非力な彼らを愛おしむように、葵が甘い声でなだめる。 "こういうのは、ぜんぎ? が大事なんだってガリヴァーが言ってたでしょ?" 葵はローファーを脱ぎ、紺のハイソックスに指をかけた。彼らの期待に満ちた眼差しの先で、白く、けれど健康的でハリに満ちたふくらはぎが、そして先ほどまでローファーを履いていたためしっとりと汗に濡れた足が露わになった。 "ね?" 葵は小さな彼らの前に足を差し出す。小さな家程度なら踏み潰してしまえるほどのそれは、けれど間違いなく可愛らしい女の子の足。汗と石鹸の入り混じる香りにあてられて、人々はふらふらとその指へと吸い寄せられていく。 "ひぁっ!" 葵から見て体長3センチ程度の小さな人間たちが、葵の足指に登り、指の股に入り込み、そして思い思いの奉仕をする。その細やかな感触に葵は思わずあえぎ声をもらした。いい大人が、こんな少女の、それも足裏に全力で奉仕している。その倒錯感が、葵を興奮させる。 "んっ……あ……" こんなの普通じゃない。そうわかっていながらも、葵は下着の上から自身の秘部に指を這わせる。巨大化して、小人さんを踏み潰したり、奉仕させたりして気持ちよくなるなんてどうかしている。けれど……。 (私……もう普通じゃ満足できない……っ!) 葵はすっかり、巨大な身体の魅力に取り憑かれてしまっていた。もう、巨大な身体じゃないと興奮できない。小人さんをたくさん消費しながらじゃないと絶頂できない。人間として、致命的な不具合を抱えてしまった。小人には戻れない、戻りたくない。一生、巨人のままで生きていきたい。 そんなことを考えながら、葵は興奮にのぼせていく。その興奮に連動して、葵の体は先ほどの数倍にまで巨大化していた。 "あ……" 気がつけば、お尻の近くにいた人々は巨大化に巻き込まれてだいぶ数を減らしていた。さっきまでは大通りに収まっていたお尻も、足も、通りの両脇の低層ビルを押しつぶして置き換えてしまっている。これが全て、自分が気持ちよくなっただけで引き起こされた惨状だと思うと、それもまた葵の興奮を大きく高める材料になってしまう。 "もう、だめ……!" 先程は小人をなだめておきながら、自分が我慢できなくなってしまったようだ。葵は乱暴に下着を下ろすと、恥部を露出させた。右足だけはどうにか引き抜いたけれど、左足にくしゃくしゃになったパンツがまだ通っている。そんなだらしない状態で、彼女は早々に自身の秘所をくちゅりと撫でた。 "みんな、来て……!" ヒクヒクと蠢くワレメを見せつけて、葵がうっとりと呟く。まるで恋人にそうするかのように。けれど、200倍程度まで巨大化した葵にとって、人々は1センチにも満たない小さな存在。やることはほとんど葵の自慰だ。 自身の秘所に指をあてがい、とろーりとした粘液を指に纏わせると、その指で彼らを優しく撫でる。愛液に絡め取られた彼らのついた指を、膣内に飲み込んでジュプジュプとかき回す。 "あは……いいよ、みんな……もっと、私の中で暴れて……っ" 次から次へと、まるでお菓子でもつまむかのようにひょいひょいと、葵の指は小人を捕まえては淫らな口の中に運び込む。その中で彼らはもみくちゃにされ、膣壁に咀嚼されてぺたんこになって果てる。あまりにも異常な愛の形。でも、確かにそこには愛があった。 "みんなっ、大好き……だよ……" 近くにいた小人を大方膣内に仕舞い込んだ葵は、自分の秘所を愛おしそうに撫でる。何人かはまだ葵の体の外で、少しでも葵を気持ちよくしようと奉仕してくれていた。体の中と外、両方からの奉仕を受けて、幸せそうにとろける葵。興奮で赤く染まったクリトリスに触れると、いつも以上に鋭敏な刺激が電気のように彼女の体を駆け巡る。 "あっ!! んっ……!" 葵の身体は、しばしの間忘れていた巨大化を思い出したようだ。左右に並び立つビル群をなぎ倒し、あっという間に視点は摩天楼を見下ろす。こうなるともう止まらない。 "んっ、あ、あっ、あ、あぁっ!!" 街全体を震わせる喘ぎ声を轟かせ、体をくねらせて葵が悶える。さっきまで自分がいたビル街が、完全に股の間に収まってしまっているのを見て、感嘆と快楽の混じった声にならない声を上げる葵。巨大化が快感を産み、快感が巨大化を産む無限ループ。このままではいずれこの世界が持たなくなってしまう。そうなる前に。 "っ、いく、イクううぅっ!" 葵の秘所は、溜まりに溜まった興奮を全て吐き出した。だらしなく開かれた股の間、先ほどまで葵のいた都市が粘液に押しつぶされて消える様を見て、葵の頭は真っ白な快感に溺れていく。 "…………ぁ" 掠れた声を上げて硬直し、そして脱力して倒れこむ葵。投げ出した体がいくつもの山脈と平野を押し潰したが、そんなことすら気にしていられないほどに、力を使い果たしたようだった。 (自分のアレで街が潰されるところ見て興奮するなんて……) 山脈ほどもある胸を大きく上下させて荒く息をつく中、ほんの少し冷静になった葵は自分を省みてその異常性を改めて認識する。 (でも……最高に気持ちいい……) 普通とはあまりにもかけ離れてしまった感性。それでも、世界を押しつぶして身を横たえる彼女は幸せそうだった。きっと、これが彼女の見つけた彼女なりの愛のあり方。巨大な身体を持ってして、万人を平等に愛する巨大少女にだけ許された愛し方なのだ。 "私、疲れちゃった。ちょっと休むね……" 甘く囁き、まだ無事な都市にそっと手を添えると、彼女はスヤスヤと寝息を立て始めた。