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<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>そもそも マーケティングターゲットとは マーケティング戦略立案で、最初に決めるのがターゲット。すなわち、 「マーケティングする対象者は誰なのか」です。伝統的マーケティング でももちろんターゲットを規定しますが、本書で扱うデジタルを使った エンゲージメントマーケティングは、ターゲットのとらえ方が伝統的マ ーケティングとやや異なる点が2点あります。 ひとつは、マスマーケティングでは相当大雑把にしかできなかったタ ーゲットのセグメンテーション（細分化）が、デジタルによって本格的 に可能になったこと。もうひとつは、ターゲットとの長期間の関係継続 を想定し、その間にターゲットの心理や行動は変化し続けるとの前提に 立っていることです。 のちほど、この考え方のフレームとしてのターゲット戦略作成シート を紹介します。 伝統的なマーケティングとは どんな人に買ってもらうことを想定してマーケティングを組み立てる かがマーケティングターゲットです。伝統的マーケティングでは、これ は「〇〇を求めている〇〇な人」のように規定されます。 すなわち、ニーズ（〇〇を求めている）とプロフィール（〇〇な人）で 構成される形です。ニーズとは願望・欲求なので、「〇〇したい」「〇〇 を求めている」「〇〇を欲している」「〇〇を期待している」のように記 載されます。 具体的には、次に示すような規定になります。 ・洗浄力はもちろんだが手肌にやさしいことも求める育ち盛りの子供が いる30 代、40 代の主婦（台所洗剤） ・渋谷区界隈の5000 万円くらいの中古マンション購入を希望してい る共働きの若い夫婦（中古マンション） ・高品質な文房具を短い納期で購入したい社員数1000 人以上の関西 拠点の企業の総務部門管理職（法人向け文房具販売） ・社命により工場の省エネ推進の解決策を求めている中規模メーカーの 本社生産企画部門管理職（工場用コンプレッサー） この規定自体は、デジタルを使ったエンゲージメントマーケティング でも必要ですが、十分ではありません。「デジタルならでは」の、そし て「エンゲージメントならでは」のマーケティングターゲット規定があ るのです。 次の項以降で、それを紹介していきます。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>セグメンテーションを生む2つの制約 デジタルが生まれる前から市場、またはターゲットを「全体」ではな く「特定の市場・ターゲット」に限定する考えはありました。セグメン テーション（細分化）です。前述の例のように、対象者を属性・心理・ 行動・地域等によって特定化するものです。「オールターゲット」「ター ゲットを限定せず誰でも皆がターゲット」という考えが通用しなくなり、 特定の人たちだけを狙うという考え方です。背景には、人々の価値観・ 趣味嗜好・ニーズの多様化があり、十把一絡げに商品を売ろうとしても、 相手からは自分向けの商品だと思ってもらえず、結局誰にも買ってもら えないという事象が起こるようになったためです。 マーケティングは「（来る者拒まず）皆さん誰でもに買っていただきた い」ではなく、「〇〇を求めている〇〇なあなたにぴったりの商品で す！」でなければならなくなったのです。 しかし、このセグメンテーションには限界がありました。「①メディ アの制約」と「②売り場の制約」により、客の平均的大多数が求めている 商品・サービスしか売れない、すなわち、かなり大雑把な細分化しか実 行できない事態を生んでいたのです。 ①メディアの制約 「メディアの制約」とは、テレビ等のマスメディアが主力のマーケティ ングでは、性別・年代・趣味嗜好で多少のターゲティングはするものの、 「高い視聴率を取らなければならない」「大部数を販売しなければならな い」が大原則であることを示します。この制約のために、どうしても対 象者のボリュームゾーンを狙うしかないのです。 それに対してウェブメディアは、かなり精緻なターゲティングが可能 です。ディスプレイネットワーク広告のターゲティングもありますが、 何より検索という全く違った発想のターゲティングが可能になりまし た。自分が欲しい情報を欲しい時にスマホで検索すれば、ボリュームゾ ーンから外れた相当マイナーな情報でもすぐ入手可能になりました。 「私が『今』欲しい情報を、欲しいだけ、いつでも、どこでも得たい」が メディアの都合で大幅に制約されていた状態から、完全に解放されたの です。これはマーケティングにとって画期的なことです。 「〇〇を求めている〇〇なあなたにぴったりの商品です！」が特別な少 数の人に対しても、精緻に実行できるようになったのですから。 ②「売り場の制約」 従来のマーケティングのターゲット規定を一番制約していたのは、実 は限られた売り場スペースです。スーパーやコンビニ等での売り場の棚 を想像してみてください。とても狭い場所に、多くの商品が所狭しと並 んでいますよね。この限られたスペースの中に自社商品を置いてもらえ なければ、そもそも売れるという事態は発生しようがないわけです。 そのため商品を作ってから「さあ、どの売り場に置いてもらおうか」 では遅く、最初の商品開発段階から「どの売り場に置いてもらう商品を 開発するか」から考えます。 当然、スペースが限られている中で、多くの企業がここに自社商品を 置こうとするのですから、熾烈な場所の奪い合いになります。店側とし ては、限られたスペースで多くの売上を上げたいので、そこで実際に置 いてもらえる商品になるには、大前提として「たくさん売れる」ことが 必要になります。 すなわち、多くの人に買ってもらえる大量販売可能な商品しか開発・ 販売できないのです。結果として、これまではターゲットのセグメンテ ーションも大雑把なものとせざるを得ず、あくまで「ボリュームゾーン を取る」という選択肢しかなかったのです。 それをネット販売が変えました。 今日、「何でもネットですぐ買える」という状況になり、「限られた売 り場スペース」という概念が消滅しました。小さな売上規模しか期待で きないマイナーな商品でも売れるチャンスが生まれてきたのです。ロン グテール※です。これもまたマーケティングにとって画期的なことです。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>マイナーなニーズのマイナーなターゲットにも売れることが可能にな っても、買ってくれる客に存在と魅力が伝わらなければ売れません。ウ ェブサイトを作っても誰も気づきません。広告しても視聴者の圧倒的大 多数は買ってくれる可能性のない人で、そうした対象にばかり広告する ことになり、膨大なムダ金を使うことになります。 この難題を解決するのが検索です。今はグーグルの検索エンジンがと ても賢くなっていますから、検索者の意図を正しく理解し、検索者の意 図に沿ったサイトやコンテンツを教えてくれます。 グーグルアナリティクスで、自社ウェブサイトの訪問者はどこから流 入してきたか見てみると、グーグルとやYahoo!の検索（自然検索＋広 告）で7、8割を占めるのは珍しくないでしょう。Yahoo!もグーグルの 検索エンジンを使っているので、まさにグーグルの検索エンジンこそが 現代の「出会いの神様」だと言えます。 ターゲット規定も、この検索行動を使います。「どんな検索ワードを 入力する人をターゲットとするのか」と規定するのです。 ・「高級車　4 ドアセダン　輸入車　新車購入」 ・「レストラン　誕生日祝い　予約　フレンチ　女子2 人　新宿」 ・「工場の省エネ　解決方法　低コスト」 ・「コンテンツマーケティング　B to B　大阪在住」 この検索ワードを見れば、検索者が「何を求めているどんな人」なの か想像がつきます。すなわち、自社のターゲットは「検索ワード〇〇・ ××・□□・△△……を入力する人」と規定できます。 しかしターゲット規定は、マーケティングの最重要な要素ですから、 適当に決めるわけにはいきません。しっかりした判断材料に基づいて規 定します。 具体的には、2つの判断材料で規定します。「月間検索件数」と「検索 表示順位」です。 前者はグーグルのキーワードプランナー※で提示される数字であり、 後者は検索結果として表示される順位自体です。 ※ キーワードプランナー：グーグル広告に付随するキーワード調査・選定を支援する無 料運用ツール。これを使うとあるキーワードが月に何回検索されているかわかる。 理想的には「月間検索件数」が多いビッグワードで、トップかそれに 近い順位で表示されることですが、それは一握りの強者だけが享受でき るポジションです。圧倒的大多数の企業・商品にとっては高嶺の花でし ょう。仮に自社がこのポジションで成功しているなら、「ディフェンデ ィングチャンピオン」として下位企業・商品の挑戦をはねつけてポジシ ョン維持を図ることが目標となります。 逆に月間検索数が少なく、検索表示順位も低いものは、チャンスがな いでしょう。箸にも棒にもかからず、ターゲットとしては不適と言えま す。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>「多くの人がこの検索ワードで検索している＝ニーズが十分顕在化し ている」なので、ここをターゲットにすることはリスクが低いと言えま す。しかし、同時にたいていの場合は、「多くの人がこの検索ワードで 検索している＝強いライバルがたくさんいる」でもありますから、大勢 のライバルの中で埋没するリスクはあります。 このターゲットに対する課題は「検索順位を上げること」ですから、 検索ワードに対応したコンテンツを強化することです。 自社より上位にいるライバルの強み・弱みを研究し、上手くいってい て良いところは真似し、必ずしも検索者を満足させていないところ、ま たは弱みに見えるところは「私たちは違います」「私たちならできます」 というコンテンツを強く打ち出します。マーケティング戦略で言うとこ ろの「追随」と「差別化」です。 挑戦者としてライバルを出し抜ける強みやリソースがあると判断でき れば、この検索ワードの検索者をターゲットと規定し、5ページ目掲出 ⇒3ページ目掲出⇒2ページ目掲出⇒1ページ目掲出⇒順位3位掲出⇒順 位1位掲出、というように自社のポジションを高めていきます。 「検索順位が高い＝クリック率が高い」はすでに検証されている事実で すから、これによって、このターゲットの多くの人と出会うことができ るようになります。 リスティング広告でビッグワードを買って、高い入札価格を覚悟で上 位掲出を目指すのもひとつの方法でしょう。 SEOや運用型広告の一般セオリーから言えば、「月間検索数低い＆検 索順位高い」よりも、「月間検索数高い＆検索順位低い」をターゲットと するのが妥当となるでしょう。何と言っても、キーワードプランナーに よる月間検索数の多い検索ワード、もしくはサーチコンソール※での流 入数の多い検索ワードに対応するのが、間違いのない戦略、リスクの少 ない戦略なのですから。 ※ サーチコンソール：グーグルの検索結果上に、自分のウェブサイトがどんなキーワー ドで何回表示されたか、検索順位は何位か、何回クリックされたかなどを調査できる SEOのためのツール。グーグルアナリティクスで自然検索での検索ワードを調べよう としても、グーグルの検索エンジンを使った検索ワードは全てnot providedとなり表 示されない。Yahooもグーグルの検索エンジンを使っているため実質的には自然検索 での検索ワードは調べられない。それを解決するのがサーチコンソール。 この考え方は正しいのですが、ひとつの正しさに過ぎないと私は思っ ています。 また「ターゲットなんて小難しく考えないで、実際にリスティング広 告してコンバージョンが稼げて、CPAが抑えられるキーワードを選べば いいじゃないか」という話はよく耳にします。 これも正しくはあるのですが、やはりひとつの正しさに過ぎないと思 っています。 別の戦略もあるのです 次の項では「月間検索数少ない＆検索順位高い」の場合を考えてみま しょう。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>SEOで特定キーワードを指定し、検索順位トップ、最低でも1ページ 目掲出を目指すということをやりますが、検索順位ではトップなのに、 サーチコンソールで流入検索ワードを調べてみるとゼロだったことはあ りませんか？ 理由はもちろん、その目標としていた検索ワードを検索 する人自体が極端に少なかったためです。 ある意味、検索順位トップを目指すだけなら割と簡単です。きちんと コンテンツさえ準備できていれば、「そんな検索ワード入れる人なんか ほとんどいないだろうな」と思われる検索ワードで順位トップを目指せ ばよいからです。 当然キーワードプランナーの月間検索数が大事になります。ある程度 以上の検索数（できれば3桁、ニッチ戦略〔⇒次章参照〕なら2桁でも可） がないと順位トップでも集客効果は見込めません。 ただ私は「月間検索数少ない＆検索順位高い」検索ワードの検索者も マーケティングターゲットとして十分に成立すると考えています。 「0⇒1」のマーケティングと、 「1⇒10」のマーケティング マーケティングを乱暴に2つに分けると「0⇒1」のマーケティングと、 「1⇒10」のマーケティングがあります。 後者はすでに顕在化したニーズに対して最適化・改善改良のPDCAを 繰り返すことで徐々に成果を出していくマーケティングです。 それに対して前者は、まだ存在していないものを生み出すマーケティ ングです。客のニーズも未開花で、顕在化以前なので情報流通もほとん どありません。月間検索数も極端に少ないでしょう。 しかし敢えてここに挑戦するのです。失敗するリスクは「月間検索数 高い＆検索順位低い」より高いのですが、成功した時に得られる成果は かなり大きいからです。 市場の元祖、新リーダーのポジションを得ることになるため、追随し てきた競争相手に対して大きなアドバンテージとなり、最も優位な立ち 位置で顧客獲得ができるだけでなく、当該ジャンルで大きなレピュテー ションも獲得できるため、有利な人材獲得、有利なビジネスパートナー 獲得も可能となります。 ニーズの顕在化で解決する では、具体的にどうすればよいのでしょうか。 このターゲット戦略を取った場合、課題は「ニーズ顕在化」に尽きます。 「確かにユニークだし、今どこにもないけど、そんなもの一体誰が求め るの？」という認識を「今まで気づかなかったけれど、言われてみれば それって確かにありかも」へ変え、さらに「私が一番求めていたものは、 実はこれだったんだと今気づいた！」へと変えることです。 市場環境・社会環境・時代環境の追い風に上手く乗ることはもちろん 重要ですが、何より自身の確固たる意志と情熱で、降りかかる難題、紆 余曲折を乗り越え、信じるゴールに突き進み続けることが大事です。 これは、ABテストでいくつかの仮説の中で一番反応の良いものを選 ぶことではありません｡｢そんなのどれも100点満点中で40点と45点と 50点で､『50点が一番点数が高いから』といって選んでいるだけ｡私は 70点、80点、90点のものがあると信じて突き進む｣という姿勢が大事 です｡ 「ニーズは探すもの、対応するものでなく、自ら作るもの」という気 概が大事なのです。無謀でしょうか？ 私は以前に新商品開発の受容性調査をかなりやったことがあります。 新商品の特徴・魅力を1枚のシートに書いて、それを対象者にアンケー トして「買いたいか否か」を問うものです。 その経験から言えることは、「買いたいと答えた人が一番多いシート を選ぶ⇒一番売れる」ではないということ。「今までにない先駆的商品は、 アンケートでは低いスコアとなることが多い」のです。 客は「欲しいか欲しくないか」と問われると、いつも意識をしていて 価値をすぐ簡単に理解できるものを欲しいと答える習性があり、まだ意 識が薄く価値をすぐ簡単に理解できないものには否定的反応をするので す。すなわち、ニーズの顕在化が不十分な商品に「これどうですか？ 買 いたいですか？」と問うても、否定的反応をされるのは自然なので、こ の結果で諦めてはいけません。 実際、新しい商品カテゴリーを生んだ先駆的商品・元祖商品と呼ばれ るものは、たいてい事前のアンケートでは否定的結果となっています。 事前アンケートで評価が高いものを開発・販売するのが方針のマーケタ ーは、的外れな商品で大失敗することはありませんが、実際に世の中に 出してみると「確かに買ってもいいけど、似たような商品はたくさんあ るから別にその商品でなくても買うよ」となることが多いと言えます。 似たようなライバルの中で埋没し、消耗戦のような客の奪い合いに至る リスクが多いのです。 「0⇒1」のマーケティングで成功する秘訣は何か 「0⇒1」のマーケティングで成功した人に成功の秘訣を聞くと、多くは 判で押したように「何が起きてもやり通す強い意志、それと多少の運」 と言います。 マーケティングの基本的戦略・戦術を理解した上で、環境要因を注視 し、自らの本当の強みをよく認識して戦略を立てること、そして一度戦 略を立てたら、異論を唱える人が出ようが、想定外の課題に直面しよう が、強い意志を持ってそれを乗り越え、突き進む……当たり前のことで すが、これに尽きるのではないでしょうか。 「1⇒10」マーケティングと大きく違うのは、実行タイミングの見極め です。どんなニーズが将来顕在化しそうかは、ある程度、感度高く情報 収集していればわかります。問題はそれがいつ頃顕在化するかなのです。 実行が早すぎるとまだ顕在化せず失敗します。逆に様子見を続けている と他社が先駆けて実行し、あっという間に2番手、3番手、4番手となり これまた商機を逸します。「上手いタイミングでマーケティングを開始 したため思わぬ大成功だった！」もあれば「あと2年後に開始すれば大成 功だったはずだ｡2年早かったため失敗した」もあります。こればかり は正直わかりません。運としか言いようがないのです。 検索数が少なくても諦めない またデジタルマーケティングの世界でよく目にする「〇〇で困った時 には、××のような手順で□□すれば解決する」という解決方法がありま すが、そのような定型化された解決方法では難しいでしょう。 この本も、基本的なマーケティング戦略立案のセオリーを習得し、実 践するための手引きとなることを目指しています。辛抱強くマーケティ ング戦略立案を理解しましょう。 デジタルマーケティングの世界でコンテンツマーケティングという言 葉を知らない人はいないでしょう。しかし当初はの言葉を検索する人は いませんでした。コンテンツマーケティング支援を行うイノーバの宗像 淳社長に聞くと「月間検索数は3桁、下のほうの数百件」だったとのこ とですが、10年で最高で1万件を超える検索数になりました。自然にな ったのではなく、宗像社長などイノーバの方々がコンテンツマーケティ ングの価値を信じ辛抱強く啓蒙し続けたことが大きく寄与していると思 います。 「検索数1桁か2桁＆掲載順位トップ⇒検索数3桁＆掲載順位トップ⇒検 索数数千件か数万件＆検索順位トップを狙う」というもうひとつの戦略 もあるのです。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>「デジタルならではの」ターゲットの捉え方は以上で、次に「エンゲー ジメントならではの」ターゲットの捉え方を考えましょう。 最初にエンゲージメントマーケティングについて簡単に述べます。 エンゲージメントマーケティングという概念が脚光を浴び出したのは 日本では2009年頃 （アメリカではその5年前くらい）ではないでしょう か。まだまだ開花間もない「新米」のマーケティングです。 「顧客（見込顧客）を一人ひとりの個人として識別・理解し、長期的関 係を築くことにより上顧客、自社に長く高い収益をもたらすロイヤル顧 客へと育成するマーケティング」のように定義されます。 これは、概念としてはそれ以前から存在していました。日本の「ウチ と長い付き合いのある御用聞き」の商売の仕方もある意味でエンゲージ メントマーケティングです。 近年になって注目され、また実行されるようになったのは、顧客デー タベースやマーケティングオートメーションといったITツールの登場 が引き金となりました。「顧客（見込顧客）を一人ひとりの個人として識 別・理解し、長期的関係を築く」ということは、数十人程度の顧客であ れば何とか人間マーケターでも実行可能かもしれませんが、1万人、あ るいは10万人、100万人ともなると、人間では実行不可能です。それが これらのITツール、特にクラウドサービスにより、システムの専門家で ない普通のマーケターでも使える、そして利用料も比較的安価で実行可 能な手法となったのです。 身近なエンゲージメントマーケティング 言葉としては聞き慣れなくても、皆さんは実はエンゲージメントマー ケティングを受けているのです。 ・アマゾンや楽天で買い物しポイントが貯まる。「あなたにおすすめ」 と推奨されることも多い ・財布の中はカードでいっぱい。「ゴールド会員になるとこんな特典が！」 ・ケータイは長く使うと割安に。いろいろ使うと結構な月額利用料に ・航空会社のマイレージクラブ、ポイント貯まるしいろいろ便利 ・コーヒー機器は格安で買えるが、専用カプセルの定期購入で毎月安く ない支出 ・保険料は毎月払っているが、時々「こんなサービスを付加しませんか」 と電話してくる ・会社の定年が近づくと、どこで聞きつけたか退職金の資産運用の案内 が多くなる ・ID とパスワードを付与されるコミュニティーサイトで仲間同士で語 り合うのが楽しい ・車を買った後も、車検だメンテだといつまでも販売店に頼ってしまう これらは全て企業が皆さんにエンゲージメントしている行為です。 そして近年これまた脚光を浴びているサブスクリプション・サービス。 IDとパスワードを付与され、毎月利用料を払ってサービスを受け続け ているサービスも全てエンゲージメントマーケティングを行っています。 エンゲージメントマーケティングのターゲットの説明に入る前に、従 来のマーケティングについてごく簡単に説明しておきましょう。 スーパーやコンビニやドラッグストアで、棚の商品のパッケージを見 て、深く考えずに「取りあえず1回使ってみるか」と買い物かごに入れる、 店頭で特売をしている商品を今安いからといって買うのは、エンゲージ メントマーケティングではありません。目の前の商品を過去の記憶や検 討をあまり考慮せずに買う行為は、言わば「単品売り」マーケティング、 短期キャンペーンマーケティングの結果です。 ブランドマーケティングは、顧客の記憶に良い思い出を継続的に醸成 し、他社の攻勢や目先の安売りにあまり左右されず忠実に買い続けてく れることを目指すという意味では、エンゲージメントマーケティングと 言えなくもありません。実際、エンゲージメントマーケティングは随所 にブランディングのための施策が入ります。 ただし、伝統的ブランドマーケティングの対象は基本的には匿名の顧 客です。顧客を実名の個人としては把握していないことが多いのです。 今日、エンゲージメントマーケティングと呼ばれるものは、顧客（見込 顧客）を一人ひとりID化し、データベースに実名ID（時にクッキーによ る匿名ID）として格納し、一人ひとりを識別して打ち手を実行すること を想定しています。従って伝統的ブランドマーケティングもエンゲージ メントマーケティングではありません。 エンゲージメントマーケティングのターゲット戦略の相手は、基本的 には顧客データベースに格納された実名個人（時に匿名クッキー）なの です。 これが伝統的マーケティングのターゲット戦略と決定的に異なる点で す。 そして、エンゲージメントマーケティングと伝統的マーケティングに おけるターゲット戦略には、もうひとつの決定的な違いがあります。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>エンゲージメントマーケティングは、顧客（見込顧客）との長い関係 構築を目指します。数カ月から数年、場合によっては数十年のお付き合 いになります。 ということは、相手となる顧客（見込顧客）は時と共に変化するのです。 「客は変化し続ける」を前提にターゲット戦略を考案する。これがエ ンゲージメントマーケティングならではのターゲット戦略の特徴です。 そして、このターゲット戦略は変化に合わせて打ち手も変えることを前 提としています。 例を挙げてみましょう。 とあるB to B企業P社の例 「社命により工場の省エネ推進の解決策を求めている中規模メーカーの 本社生産企画部門管理職」をターゲットとして、某商材（コンプレッサ ー）の初回契約獲得を目指すマーケティングです。 ターゲットの心理と行動の推移は、以下のようなものでしょう。 ①経営に指示され工場の省エネにどんな解決策があるのか検討開始 ②さまざまな解決策の中で、自社にとってはコンプレッサーによる解決 が妥当と判断し、企業・商品の選定を開始 ③たくさんのコンプレッサーの中でも、自社にはP 社のX、Q 社のY、 R 社のZ が妥当と判断と判断し、詳細に比較検討 ④本命P 社のX、次にQ 社のY と判断し、両者と連絡を取り商談開始 ⑤自身はP 社のX を選定し、経営決裁の準備開始 ⑥ P 社のX で経営決裁が下り、正式発注へ ここまで1年間かかったとしてみても、①～⑤それぞれの時点で欲し い情報、言い換えれば打ち手は変化するはずです。この対象者にマーケ ティング、もしくは営業を仕掛ける場合、相手が今、①～⑤のどこにい るかによって打ち手が異なるからです。 施策立案のためにターゲットを規定するには「社命により工場の省エ ネ推進の解決策を求めている中規模メーカーの本社生産企画部門管理 職」という静的規定だけでは不十分で、その人がいくつかの段階の中で、 今どのプロセスにいるのかも規定されなければならないのです。 「〇〇を求めている〇〇な人」に加え「今どのプロセスにあるのか」 も規定されなければ、別な言い方をすると動的に規定されなければ施策 を打つことはできません。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>前述①～⑤によって打ち手が異なると言っても、相手が今どのプロセ スにいるのかどう判断すればよいのでしょうか？ ④⑤あたりだったら 直接相手に聞くことも可能ですが、①～③ではそれは不可能です。 「〇〇の行動をする」⇒「①から②に移ったと見なす」「□□の行動をす る」⇒「②から③に移ったと見なす」のように何らかの顧客（見込顧客） 行動で判断するしかありません。私はこれを遷移指標と呼んでいますが、 たとえば以下のようなものです。 ・「自社ウェブサイトの『工場の省エネの解決方法』コンテンツを閲覧 している」⇒「①のプロセスにいる」 ・「自社ウェブサイトの『コンプレッサーの選び方』コンテンツを閲覧 している」⇒「①から②へ移った」 ・「自社ウェブサイトの『商品X 詳細』コンテンツを閲覧」「資料をダ ウンロードした」⇒「②から③へ移った」 ・「メールの開封・クリックが多くなった」「商品X の体験セミナーに 参加申込してきた」⇒「③から④に移る可能性が大きくなった」⇒「営 業アプローチ開始しよう」 このようにプロセスが次に進んだことを取得可能な行動データで判定 するのです。どんな遷移指標をどのプロセスで策定するかは第4章以降 の行程戦略で説明します。ターゲット戦略の完成には、このプロセスを 心理と行動で規定することが必要ですが、その前に、エンゲージメント マーケティングのターゲット戦略で計画全体を左右する大きな2つのポ イントについてお話しします。 1つは「ターゲットの変遷プロセスのどこからスタートすれば良いか」 であり、もう1つは「ターゲットの最終到達地点は何と考えればよいか」 です。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>前述のプロセスは①の「経営に指示され工場の省エネにどんな解決策 があるか検討開始」がスタートでしたが、どんな時もこの地点がスター トとなるとは限りません。 ②からスタートしても、③からスタートしてもよいのです。なぜなら ①からスタートすると、より多くの施策やコンテンツが必要となり、人 的にも費用的にも余裕がないとできないからです。③からスタートであ れば、必要な施策やコンテンツは限られます。 逆に、①よりもっと前の上流プロセスから対応するという考え方もあ ります。 「『工場の省エネ』は社の課題のひとつに過ぎない。本当の課題は『収益 率の向上』だ」と考えると、「工場の省エネ」はその解決のひとつの選択 肢に過ぎないのです。「原価を下げ粗利を上げる」「営業費・販促費の効 率的運営」「収益率の悪い商品の販売停止」、さらには「収益率の悪い工 場の廃止」「リストラの推進」といった選択肢も検討する必要が出てき ます。 社としてコンプレッサーを売るためには、これら他の選択肢でなく「工 場の省エネ」に投資しましょうという説得が必要になってきます。 ニーズをどこまで遡るのか……これはマーケティング戦略の一大争点 です。 たいていの場合、より上流に遡れば遡るほど大きなテーマとなるので、 この解決には大きな費用と人的リソースが必要となります。その分、上 流で顧客の気持ちをがっちり掴んでおくことに成功すれば、④や⑤のよ うな最終的な商品選択・契約獲得の場面でライバルに対して大きなアド バンテージを獲得できます。上手くすると、ライバルとの競争なしで受 注できる可能性すらあります。 逆に顧客が「P社のX、Q社のY、R社のZか」という選定プロセスから マーケティングをスタートすると、確かに最終選定戦に全リソースを投 入できるので、ムダの少ない効率的なマーケティングとなります。その 分、ライバルとのノーガードのガチンコ勝負となり、同じような商品で あれば消耗戦のような価格競争（または納期競争）となります。 さらにライバルがより上流プロセスからしっかり顧客の信頼を得てい る場合、かなりハンデを負った勝負を強いられます。最悪、すでにライ バルに内定している出来レースで、自社は単なる当て馬になっていると いう事態もありえます。 一般的セオリーから言えば、ブランド資産や人的リソース・金銭的リ ソースに余力のある市場リーダー企業（1番手、時に2番手）は遡り、余 力の少ない3番手以下の企業は最終選定戦に持てる全リソースを投入す るのが妥当となります。ただ、これは一般論なので、次世代リーダーへ の野心を抱く企業、「環境要因や自社の強みに千載一遇のチャンス到来」 と判断し一大勝負に出る企業は、市場リーダーでなくても上流プロセス に挑戦するのも妥当と言えます。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>これも、エンゲージメントマーケティングならではのターゲット戦略 です。 伝統的マーケティングでは、マーケティング目標は「上期〇〇万契約 獲得達成！」「新発売キャンペーンで××万台販売達成！」「今年度中に シェア30％達成！」といった目標となります。 エンゲージメントマーケティングも「新規契約〇〇万件獲得！」とい った目標になることもありますが、これは最終成果ではないでしょう。 潜在顧客⇒見込顧客⇒顧客⇒ロイヤル顧客と関係を継続・深化させるの がエンゲージメントマーケティングですから、最終成果は「ロイヤル顧 客を何人育成・獲得できたか」です。 もしくは、自社に収益をたくさんもたらすロイヤル顧客というだけで なく、自社の熱烈なファンになり知人・友人に、あるいはネットコミュ ニティーで自社商品の素晴らしさを推奨する人、いわゆるアンバサダー を育成・獲得することも最終成果と言えます。 エンゲージメントマーケティングは、長い時間、手間暇かけて相手と コミュニケーションすることになるので、その見返りは単なる商品販売、 単品契約獲得では不足なのです。その見返りは「人」を獲得することです。 自社に長い間収益をもたらす人、自社の社員のように自社の成功に自ら の意思で協力してくれる人を獲得することです。 前述のコンプレッサーを例に取りましょう。それぞれで異なる施策に ついては競争戦略・行程戦略で改めて説明します。 ⑥ P 社のX で経営決裁降り、正式発注へ ⑦ X 納品無事完了 ⑧ X をきちんと使えるようになる ⑨ X を使って「工場の省エネ」で成果を上げる ⑩ X の関連商品X2 やX3、上級版スーパーX も購入する ⑪ X（P 社）なしでは事業が成り立たないほど、X（P 社）と深い絆で 結ばれる ⑫ X（P 社）の熱烈なファンになり、その価値を周囲に熱く推奨する 初回契約獲得は言わば中間地点です。 ここでまた判断が必要なポイントが発生します。前半の新規顧客獲得 マーケティングで意識すべきターゲットは新規顧客になってくれそうな 客でよいのか、それとも最初の出会いの場面からロイヤル顧客、アンバ サダーになってくれそうな客なのかを考えるのかです。 学習塾におけるマーケティング ひとつ具体的事例で考えてみましょう。学習塾の生徒獲得マーケティ ングです。 この学習塾は非常にユニークな指導方法で、他の予備校・学習塾で成 果を出せず、万策尽きた生徒にも成果を出させる独自の力を持っている とします。ただそのユニークな指導方法は、ユニークであるあまり、誰 にでも相性が良いわけではなく、気に入らない生徒は不満になり辞めて しまいます。またそのユニークな指導方法は、言葉でわかりやすく伝え やすいものではなく、塾生の生々しい体験談こそが一番のセールストー クとなります。実際、卒塾した生徒は熱烈なファンになる可能性が高く、 その熱い推奨の言葉が新規生徒を呼び寄せる最強の力となっているとし ます。 マーケティングのミッションは新規生徒獲得ですが、実質的には説明 会参加者獲得です。説明会参加者は、面談をしますが面談で合否判定す るのでなく、自宅から遠すぎるなど特別な事情がない限り、本人が希望 するのであれば入塾させます。すなわち説明会申込が定員に達した段階 で募集は終了し、大多数はそのまま入塾します。マーケティングの目標、 コンバージョンは説明会申込者獲得です。 SEOと運用型広告を施策としましょう。 学習塾関係の検索キーワードをキーワードプランナーで探り、検索数 の多いキーワードでSEO対策をします。リスティングも関係ありそうな キーワードを取りあえず全て購入し、クリック数（率）、コンバージョ ン数（率）、そしてコンバージョン単価を見ながら、コンバージョンが 多く、かつコンバージョン単価が安くなるようなキーワードにシフトし ていきます。ディスプレイネットワーク広告も同様に、多くのコンバー ジョンを低いコンバージョン単価で獲得できる表現にシフトしていきま す。 これは正しいでしょうか？ 私は、ひとつの正解ではあるものの、別 の正解もあると思います。 目標である説明会申込者を安く早く獲得できるという意味では正しい のです。しかし、本当に来て欲しい生徒に来てもらうという意味ではど うでしょうか？ 本当に来てもらいたい生徒とは、卒塾後に熱烈なファンになり、新た な生徒を呼び寄せる最強のメディアとなる生徒であり、彼・彼女たちに たくさん来てもらうことが最重要だとしたらどうでしょう。 ユニークな指導方法なので向き不向きがあり、向いてない生徒をたく さん集めても不満になって退塾し、ネガティブな書き込みの発信者にな るリスクがあります。すなわち、塾希望者の平均的大多数をターゲット としてはダメなのです。検索数の多いキーワードに合わせるということ は、平均的大多数の情報ニーズに合わせるということです。 たとえ検索数が少なくとも、ユニークな指導方法に強く共感・支持し てくれる少数派が検索しそうなキーワードを狙うのもひとつの正解なの です。ウェブサイト訪問者数、コンバージョン数が減り、コンバージョ ン単価は高くなりますが、卒塾後も良い関係でいられる理想の生徒と出 会えるのだったら安いのではないでしょうか。 要するに今目の前の課題対応に終始するのか、最終ゴールを見据えて 入口を考えるのかの違いです。「部分最適重視」か「全体最適重視」かと も言い換えられます。どちらが常に正解ということはありません。ただ エンゲージメントマーケティングならば、後者の正解もあることをしっ かり理解しておく必要があるでしょう。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>同じ商品でも皆さんが同じ期待をして買うとは限りません。一つの商 品に対して複数のターゲットが発生することは十分あり得ます。まして や単品の商品ではなく、いくつかの商品で構成されている商品群の場合 はなおさらです。 ある高級ブランドの輸入車が欲しいと言っても、スポーティーな走り を求めている人もいれば、ステータスを求めている人も、あるいは外観 内装の洗練性を求めている人もいます。コンプレッサーと一言で言って も、一企業が揃える商品はタイプや大きさによっていくつもあります。 このように、ターゲットが複数となる場合、何によって異なるターゲッ トを規定すればよいのでしょうか？ ペルソナではなくニーズで分類する よく行われているのが、ペルソナを複数描いて、ペルソナごとにマー ケティングを考えるというもの。わかりやすいのですが、 「そもそもペルソナっていくつ作ればいいの？」 「ペルソナたくさん作ってみたけど、これをどう施策に反映してよいの かわからなくなった」 「複数ペルソナ描いてみたが、それぞれに施策を立案してみると皆さん ほとんど同じようだ」 ということがよく起こります。施策が同じなら、複数ターゲットにす る意味がありません。同じ施策・同じコンテンツだと、どうしても相手 によって価値が伝わらない、買ってもらえる商品にならない事態になる からターゲットを複数設定するのです。 私はペルソナではなく、ニーズで分けるのが良いと考えています。 ニーズが異なれば施策、特にコンテンツは間違いなく異なります。自 社商品に何を求めているのか、何を期待しているのかでターゲットを複 数設定するのです。 前述の高級ブランド輸入車のウェブサイトを例に取りましょう。 ・ターゲットA ＝スポーティーな走りを求めている人 ・ターゲットB ＝ステータスを求めている人 ・ターゲットC= 外観内装の洗練性を求めている人 と3つのターゲットに分けます。この3つのターゲットに沿ったコン テンツを考えると、明らかに違います。また同一人物が複数のニーズを 抱いているとしても、すなわち一人の人がターゲットAでありかつター ゲットBであっても構いません。両方のコンテンツをそれぞれ準備して おけば両方閲覧してくれるでしょう。 またコンプレッサー提供企業のメールマーケティングを例に取りまし ょう。 ・ターゲットP ＝工場の省エネを推進したいと思っている企業担当者 ・ターゲットQ ＝工場の騒音問題を解決したいと思っている企業担当 者 ・ターゲットR ＝工場の機械トラブルを低減したいと思っている企業 担当者と3つのターゲットに分けます。一口にコンプレッサーといっても期 待するものは明らかに違うので、それぞれに対応したコンテンツを準備 しておきます。資料ダウンロードやセミナー申込等でメルアド取得する 際のアンケートでどんな情報を求めているのか聞いておけば、求めるコ ンテンツのメールだけ送ればよいのです。複数求めているのであれば複 数のコンテンツのメールを送ればよいのです。 このように、基本はニーズの違いによってターゲットを分けるのがよ いのです。その上で、同じニーズでも人物像によってどうしても求める 情報内容やコンタクトポイント（例：ウェブサイト、ウェブ広告、 YouTube動画、展示会、店頭イベント、購読雑誌等）が異なってしまう 場合は必要最小限の複数人物像でターゲット化をします。 高級ブランド輸入車で「外観内装の洗練性を求めている人」でも、ファ ミリー使用が中心の子供のいる夫婦と、独身エクゼクティブビジネスマ ンでは違う世界観のビジュアル表現にして、それぞれに最適のコンタク トポイントに掲出する。 同じ工場の省エネ推進担当者といっても、本社経営企画室のマネジャ ーと工場現場管理マネジャーでは視点が微妙に違うので、獲得した名刺 情報によってメールで配信するコンテンツを変えよう、などです。 ニーズが複数の時は、ニーズごとにターゲットを規定するのが複数タ ーゲット戦略の基本。そして必要に応じて、同一ニーズでも人物像違い の施策打ち分けを行うというのが、複数ターゲット戦略として妥当でし ょう。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>ターゲット戦略を総括しましょう。 ポイントは以下6点です。 ・ポイント1 最初に決めるのはペルソナのような人物像ではなくニーズ ・ポイント2 ニーズが複数存在する時はターゲットもそれに合わせて複数 ・ポイント3 ターゲットは検索ワードも使って規定。検索数が少ない検索ワードを 選ぶ選択肢もある ・ポイント4 客は心理・行動共変化し続ける前提で、ターゲットは静的ではなく動 的に規定する ・ポイント5 心理・行動のスタート地点をどこまで遡るかは大きな判断が必要 ・ポイント6 心理・行動のゴール地点はリード獲得でも初回購入でもなく、ロイヤ ル顧客化・アンバサダー化 これを踏まえて、戦略シートという形にしてみましょう。 知見やデータが十分になくても、まずは仮説でよいので作成してみま しょう。実際に施策を実行し、PDCAを回すうちに知見とデータは貯まります。 図表1-6　戦略シート記入例：ユニークな指導が売り物の塾と高級輸入車 その段階で戦略シートの内容も再検討し、必要なら修正・バージョンア ップすればよいのです。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>競争戦略とは 「あなたが戦っている競争相手は誰ですか？ 誰と客の奪い合いをして いるのですか？」と問われ、即座に自信を持って返答できますか？ 返答 できなければ、それは競争戦略を考えてないということです。 競争戦略とは「どんな競争相手と戦ってどうやって勝つか」を考える こと。 デジタルマーケティングで、ウェブ解析ツールやマーケティングオー トメーションツール、またはCRMツールの数字を見ながらPDCAを行 う時、往々にして忘れてしまうのが競争相手の存在。自社と顧客の関係 だけでマーケティングしてしまうという過ちです。 ここでは一般的な競争戦略に加え、エンゲージメントマーケティング ならではの競争戦略の視点を説明します。また、次の章では競争戦略の 戦略シートを紹介します。 では、伝統的マスマーケティング、デジタルを駆使したエンゲージメ ントマーケティングのいずれにも共通な競争戦略をまず説明します。特 に競争戦略を考える上で最も基本となる、強者と弱者によるスタンスの 違いと、そこから発生する強者の競争戦略・弱者の競争戦略を詳しく説 明します。 「どんな競争相手と戦ってどうやって勝つか」が競争戦略です。 伝統的マスマーケティングでは否応なしに常に考えることになります が、デジタルマーケティングでは、ツールの数字ばかりを見ていると、どうしても自社と顧客の関係だけで物事を考えてしまう傾向がありま す。顧客の行動がリアルタイムで可視化されているので、ついつい数字 に表れる顧客の行動ばかりを追ってしまうのです。 しかしツールのデータで可視化されないのが競争相手の存在と動向で す。そしてマーケティングの成果は、この競争相手の存在や行動によっ て大きく左右されます。これは当然です。自社だけがマーケティングし ているのではなく、競争相手も必死でマーケティングしているのですか ら。皆が顧客を自社のほうに向かせようと競争しているのです。 当たり前のことながら、忘れがちなのが、「顧客から見れば自社は多 くの競争相手の中のひとつに過ぎない」ということ。マーケティングで 最も大事なことは「顧客の視線で考える」ことですから、競争相手の存 在や行動を視野に入れながらマーケティングしているか否かがとても大 事になります。 競争相手が可視化されている伝統的マーケティング 伝統的マーケティングの場合、自社商品が置かれている店頭を見れば 自社商品と競合商品の力関係が一目瞭然になります。 スーパーの店頭を思い浮かべてください。対象となる棚の目立つ所に たくさん置いてあれば、人気商品として売れていることの証で、隅のほ うにちょこっと置いてあれば、あまり売れてないことの証です。それで も置いてあるだけましです。全く置いてもらえない商品のほうが多いの ですから。 そのため、どの売り場（棚）でどう置いてもらいたいか、限られたス ペースで競争相手を押しのけ、目立つように置いてもらうにはどうした らよいかを考えざるを得ません。油断すると、先週まで置いてあったのに、今週行ってみると競争相手にその場所を奪われて消えていた、とい う事態が普通に起こります。すなわち、伝統的なマーケティングにおい ては、競争戦略を常に考えざるを得ないのです。 デジタルマーケティングの場合、店頭というリアルな場が存在しない ことも多いのに加え、商品自体が手に取って触れられるリアルな存在で ないことも多いため、肌感覚で競争相手の存在は意識されないことが多 いでしょう。 しかし、競争相手は常に存在しています。自社がどんなマーケティン グをしても、自社より強い競争相手が自社より強い施策を打てば、顧客 はそちらになびき、自社のマーケティングの成果は踏みにじられます。 マーケティングとは弱肉強食の客の奪い合いの戦いなのです。 この競争相手との厳しい戦いで、少しでも優位を獲得する知恵が競争 戦略です。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>強者と弱者 「この戦いにおいて、自社は強者として臨むべきか、弱者として臨む べきか」 まずはこの認識をしっかりした上で、それぞれに見合った競争戦略を 考えます。 というのも戦いである以上、全てのプレーヤーが同じ能力で臨むこと は滅多になく、たいていの場合、強者と弱者が存在します。大きなリソ ースと大きなアドバンテージを持って戦いに臨む強者と、小さなリソー スで何のアドバンテージも持たずに戦いに望む弱者は、必然的に戦い方 が異なります。 業界ナンバーワン、売上ナンバーワン、人気ナンバーワンの企業・商 品は強者です。ナンバーツーは下位の企業・商品に対しては強者ですが、 ナンバーワンに対しては弱者です。業界ナンバーワンであっても、違っ た業種・市場に参入する時はたいてい弱者となります。そして大多数の 企業・商品はそのいずれでもない弱者なので、必然的に「弱者のマーケ ティング」を強いられることになります。 つまり、自社はこれからやろうとしている戦いで、強者なのか弱者な のかを見極めることが極めて大切になります。なぜなら、それにより打 ち手が全く異なってくるからです。 代表的な強者の競争戦略として挙げられるのは、次の3 つです。・「□□と言えばやっぱり〇〇だよね」という存在感の大きさで競争相 手を圧倒し、客側に詳細な比較検討をさせることなく選ばせる戦略 　⇒①マインドシェア戦略 ・特に個性や際立った強みはないが、満遍なく高評価でかつコストが安 く、特別の趣味嗜好・用途でない限り「この商品を選ばない理由を探 すのが難しい」と客に思わせる戦略 　⇒②コストリーダーシップ戦略 ・強い資金力、強い技術力、強いブランド力、強い流通力、強い人材力 を使って、挑戦者の挑戦を勢いがつく前に片端から潰し、出鼻をくじ き続ける戦略 　⇒③モグラたたき戦略 逆に、代表的な弱者の競争戦略として挙げられるのは、次の4 つです。 ・今までにない新たな価値を提唱し、強者である上位企業・商品との違 いを鮮明化し、客にその価値を認めてもらうことで顧客獲得に挑戦す る戦略 　⇒④差別化戦略 ・大きな市場を諦めて、ニーズやターゲットを小さく限定した小さな市 場でナンバーワンまたはオンリーワンになることを目指す戦略 　⇒⑤特化（ニッチ）戦略 ・満遍なく高評価を得ることの逆、すなわち「この点だけで選べば最善 の選択」となるべくリソースを特定価値に集中投下し、そこを重視する人に買ってもらえれば良いとする戦略 　⇒⑥一点突破戦略 ・特筆すべき強みは何もないが、市場の平均的大多数のニーズを満たし、 かつ他社より安く提供することで何とか生存を目指す戦略 　⇒⑦追随戦略 どの戦略にも、成功した時の成果の大小、勝算（成功確率）、または 失敗リスクがあります。 それらについて、次項以降で説明していきます。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>強者の競争戦略の成果・勝算 誰でも勝者、特にナンバーワンの立場でマーケティングをしたいもの です。ナンバーワンはナンバーツー以下に対して大きなアドバンテージ、 そして見かけの実績差以上のリソース差（資金力・技術力・ブランド力・ 流通力・人材力等）があるのが普通です。最も大きな収益が期待できて、 無理な戦いが不要な分、勝算も高く、失敗リスクも低いのです。打ち手 の選択肢も多く、余裕を持って戦いに臨めます。 3つの代表的な強者の競争戦略を述べましたが、どんな時に有効か、 簡単に説明します。 ①マインドシェア戦略 「□□と言えばやっぱり〇〇だよね」というイメージがすでに成立して いる時に有効な戦略です。 それはすなわち売上ナンバーワン、シェアナンバーワン、人気ナンバ ーワンなど、市場ですでに最強のポジションを獲得している時です。デ ィフェンディング・チャンピオンの戦略とも言えます。 もしくは、他を圧倒する規模の広告を打って「□□と言えばやっぱり 〇〇だよね」という認識を広く創出させる時にも有効です。 客の側も「〇〇なら安心」「一番人気なので深く考えずつい買ってし まう」「皆が〇〇を使っているなら私も〇〇を選んでおけば無難」「〇〇 は周りの人に威張りが効いて（見栄が張れて）嬉しい」といった気持ちに なっているので、自然と優位な立場で競争できます。そもそも成功している企業・商品なので、間違いを犯さなければ成功 する可能性は高いと言えます。 マーケティングもリーダーとして市場全体の将来を見据え、競争相手 を含めて市場全体を幸せにすることを考えます。ナンバーツー以下の挑 戦に対しても泰然自若とした振る舞いをして、少なくとも客には懐の大 きさを見せつけます。 広告も万人受けの表現となり、先鋭なセールストークでなく「□□と 言えばやっぱり〇〇だよね」というイメージを改めて感じさせる存在感 の大きさで勝負するものになります。 ※ マインドシェアとは、第一再生知名度とも呼ばれ「〇〇（商品カテゴリー）と言えば何 が思い浮かびますか？」との問いに対して、最初に答えた商品名のこと。このスコア が高いと競争上で有利であることが立証されている。 ②コストリーダーシップ戦略 マインドシェア戦略と同じナンバーワン、もしくはそれに近い企業の 戦略ですが、今はナンバーワンでなくてもこれからナンバーワンを狙う 企業の戦略でもあります。企業としての規模や資金力・技術力・ブラン ド力・流通力・人材力が先行企業を大きく凌駕する企業が、実績のない 後発であってもいきなりナンバーワンを狙う戦略でもあります。 他の企業・商品と比較して特に魅力的な特徴があるわけではなくても、 どの視点で比較しても同等以上の競争力があること、特徴的な強みはな くても弱みもないこと、100 点満点で100 点の教科は1つもなくても全 教科で80点以上を取っていることが求められます。その上で他の企業 より安く提供できれば、客から見れば「〇〇でいいじゃないか」となり ます。特に特徴的な何かを求めている人でない限り、この企業・商品を 選ばない理由がなかなか見つからないことになります。スケールメリットがないと、なかなかコストリーダーシップは取れな いので、一般的には規模の大きな企業が取ることが多い戦略です。 また、これを自社で行わず、先行企業を買収して吸収することもあり ます。 特にIT業界は、ゲームの「パックマン」のようにより大きな企業が先 行企業を吸収し、吸収した企業がまたさらに大きな企業に吸収されるこ との連続です。企業規模がモノを言う戦略と言えるでしょう。 ③モグラたたき戦略 すでにナンバーワン等の強者となっている企業が、挑戦者たちの挑戦 を潰し続ける戦略です。資金力・技術力・ブランド力・流通力・人材力 ですでに優位に立っているのですから、たいてい勝てます。 ・「今度□□（下位企業）が特定の客向けの新商品を出すとの情報を得た。 すぐ同じような商品を開発・販売してその新商品の成功を阻止せよ」 ・「□□（下位企業）が四国地方でユニークなプロモーションをしてきた。 3 倍のプロモーションコストを使って、ただちにそのプロモーション を潰せ」 ・「□□（下位企業）が販売店を集めて新しいチャネル政策を提唱して きた。販売店に圧力をかけて同調しないように働きかけよ（恫喝せよ）」 といった具合です。 これは、力で優位に立っているからこそ可能な戦略です。 そんなリーダーの風格を感じさせない戦略なんて取らないで欲しいと 思うのが弱者の願いですが、現実には普通に行われているでしょう。テレビ広告やプライベートセミナーのような大きなイベントなど、客 が目にする場ではマインドシェア戦略を取り、実際の営業現場ではモグ ラたたき戦略を取るといったケースもあります。 客には余裕の笑顔を見せながら、裏に回ってはライバルをえげつない くらい容赦なく叩くのです。「強者が弱者を虐める」のは見ていて不快 なので、表の顔と裏の顔を使い分けるということです。強者といえど、 いつまでも地位が安泰ではないので必死なのです。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>強者の競争戦略のリスク 強者は強く有利な立場でマーケティングできるため、勝算は高いので すが、落とし穴もいくつかあります。実際、落とし穴に落ちて弱者に転 落することはよくあります。 まず前述のように「強者が弱者を虐めている」という構図を露骨に客 や世間に見せつけるのは得策ではありません。それは見る者にとって不 快だからです。弱い者いじめの強者を懲らしめ、健気に戦っている弱者 を応援したいのが人情です。それだけではなく、最悪、公正取引委員会 に追及されたり、不都合な法制化が行われたりするリスクもあります。 弱者を叩く時は、世間からはそう見えないように細心の配慮をする必 要があります。 勝者にとっての2つのリスク さて、勝者にとって最大のリスクは環境の変化です。時代・社会・市 場が変化し、今までの強みが希薄化し、新たな価値が生まれることです。 変化を追い風に新しい価値を提唱してきた挑戦者に顧客を奪われ続け、 遂には挑戦者に敗北し弱者に転落することもままあります。 たとえ強者といえども、奢らず常に「危機感」を抱くこと、時代・社会・ 市場の変化に謙虚に耳を傾け、初心を持って変化に対応することが大事 です。さらに言えば、今までの強みを棄てて自ら新しい価値に挑戦する、 自己否定も厭わない前向きな姿勢が求められます。次のリスクは技術の変化です。 「アナログ⇒デジタル」が最たるものですが、デジタルの中でも毎年の ように進化するテクノロジーによって競争環境が劇的に変化することが よくあります。 「今までできなかったことができるようになる」のは、マーケティング にとっても大きな変化です。それにより競争のルールが変わり、今まで の強者が突然その強みを失い、新しい競争ルールで有利な強みを持った 挑戦者に強者の座を奪われるのです。 伝統的マスマーケティングが、テクノロジーの進化によってさまざま な側面でデジタルを駆使したマーケティングに主役の座を譲っているの は、まさにこの最たる例と言えるでしょう。 テクノロジーの進化にずーっとついていくのは大変ですが、「諦めた らそこで試合終了」です。 客の心理に潜む2つのリスク さらに客の心理の中にもリスクはあります。 「客は自分が使っている商品に100％満足することはない」というリ スクです。 「定期的に顧客満足度や競争相手の満足度を調査してチェックしてい る」。それは良いことです。「満足度が上がっている、競争相手の満足度 より高い」のはもちろん嬉しいことです。しかしそれはあくまで相対的 なものです。 5 段階評価で「大変満足している」と答えた人でも100％満足している ことはないものです。ある時は100％満足しても使っているうちに小さ な不満が芽生えたり、他社の情報や世の中のさまざまな情報を見て期待 値が変化すると満足度は変化します。 「客は自社商品に100％満足することはない」と肝に銘ずるのがよいでしょう。小さな不満も見逃さず、「隙」を作らないことが大切です。「隙」 は競争相手にとってはチャンスとなりますから。 もうひとつの客の心理の中のリスク、それは「客の飽き」です。 人は飽きっぽい生き物です。どんなに理性的には最適の選択であって も、同じことを選び続けていると飽きてしまうのです。新しいモノに目 移りしてしまうのです。 だから手を変え品を変え小さな変化を演出し、「客を飽きさせない努 力」が必要なのです。 実は、何十年も続くロングセラー商品のパッケージデザインは、何度 もデザインを変えているのを知っていますか？ 並べて見ると「こんなに 変わってきたのだ！」と驚くはずです。 しかし、日常的に目にしていると変わったことに気づかないはずです。 「変わってないように見えて変わっている」「なぜかずーっと新鮮な印象 を受ける」、すなわち新鮮さの上手な演出です。弱者と違って強者の場 合は、大きく変えるのはリスクがあります。「客の飽き」と戦うには、 巧みに新鮮さを演出し続けることが大事なのです。 インフラのようなサービスであればあまり大きな影響はありません が、趣味嗜好が関わる商品はもちろん、話題が数年おきに変わるような トレンドに左右される商品・サービスは要注意です。これはB to Cだけ でなく、B to Bでも言えること。注目のキーワードが数年で陳腐化し、 新しいキーワードが栄枯盛衰のように生まれては消えるデジタルマーケ ティングの世界でもよく起こっている現象のように思われます。 ロングセラーになりたければ、あの手この手で新鮮さの演出に腐心し なければなりません。勘違い勝者のリスク 最後のリスクは一番いけない「勘違い勝者」のリスク。 自分を勝者だと思っているが、実は自分が思っているほどの勝者では なかった時は、とても危険です。 具体的には、自社または自社商品の力を過大評価してマーケティング を行い、大失敗をするというもの。 「マーケティングの失敗の80％は自社や自社商品の過大評価に由来す る」と言われています。 人間はどうしても「自分に対する自分の評価」が、「自分に対する他者 の評価」を上回る傾向があります。 どんなに頭の良い優秀なマーケターでも、自分や多くのスタッフたち の必死の努力と知恵で生み出した自社商品を冷静に客観視するのは難し いことです。自分の子供に対して、愛情と思い入れにより現実以上の夢 を抱いてしまうのが親の常なように。 特に勝者の立場が長く続くと、自身への評価が甘くなりがちです。「今 まで上手くいってきたのだから、これからも上手くいくだろう」となる のです。 自らの力を冷静に客観視することができるか否か……それは、マーケ ターに求められる最も大事なスキルとも言えるでしょう。 「勘違い勝者」を避けるために一番良いのは、「客の肉声」に常に耳を傾 けていることです。 直接話を聞いたり、きちんと調査することが一番ですが、今はネット でも自身についての話を簡単に聞くことができます。自社についての感 想やコメントは検索すればたちまち出てきます。Yahooリアルタイム検索を見れば、自身について今、何が書かれているか一目でわかります。 リスニングツールもたくさん販売されていますので、ソーシャルリスニ ングは今日のマーケターの基本動作とも言えるでしょう。 SNSでの書き込みは信頼性が低いとも言われますが、それでも自社に ついて耳の痛い話にもきちんと謙虚に耳を傾ける姿勢はとても重要です。 マーケティングにとって、妄想を膨らませることは（実行のエネルギ ー源となるため）大事ですが、妄想と現実の乖離が大きくなり過ぎた時、 客の厳しい声を耳にして妄想に冷水を浴びせられることもまた大事です。 強者の6つのリスク対応策 強者のリスクと対応策を整理すると、以下のようになります。 ・リスク1：時代・社会・市場環境の変化で競争ルールが変わる ⇒ 常に「危機感」を持って変化を早く察知し、時には自己否定をして でも競争相手に新しい競争ルールの主導権を渡さない。 ・リスク2：テクノロジーの進化で競争ルールが変わる ⇒ 苦しくてもテクノロジーの進化にはついていく。諦めたらそこで試 合終了。 ・リスク3：客は100％満足することはない ⇒ 自社への小さな不満も見逃さず少なくとも知っておく。小さな不満 は「隙」となって競争相手にチャンスを与える。 ・リスク4：逃れられない客の「飽き」 ⇒ 客は目新しいモノに飛びつく「飽きっぽい」生き物と最初から想定し、上手に、巧みに新鮮さを演出し続ける。 ・リスク5：弱い者いじめは嫌われる ⇒ 強者が強い立場を利用して弱者をいじめる姿は、見る者に不快感を 与えるため、弱者を叩く時は気づかれないようにやる。 ・リスク6：自社を強者と勘違いする ⇒ マーケティングの失敗の80％は、自社の競争力の過大評価に起因 するので、自分をどれだけ客観視できるかが勝負。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>弱者の競争戦略の 成果・勝算・リスク 弱者のマーケティングは強者のマーケティングと比べて成果が小さ く、勝算が低く、リスクも高いのが普通です。しかし、世の中には弱者 のほうが圧倒的に多いため、こちらのほうがむしろ基本の競争戦略と言 えます。取る戦略によってリスクも異なるため、前述の戦略一つひとつ を見ていきましょう。 ④差別化戦略 弱者の中でも比較的強者に近い弱者、たとえばナンバーツーとかナン バースリーが仕掛けることが多い戦略です。 提唱する新しい価値が、勝者の提供している今までの価値と「違い」 が鮮明で、かつ客に支持・共感されれば、強者に互して戦う、あるいは 強者を叩き落とし、自らが次の強者になる可能性を秘めています。実際、 差別化戦略が成功し、首位交代に至った事例も多々あります。 一方、価値の「違い」が客から見てわかりにくかったり、「違い」自体 を客が評価してくれなかった場合は空振りとなり失敗します。特に技術 志向の強い会社が技術の視点を偏重して「違い」を過大視すると、客に こう言われることがあるでしょう。 「いろいろ小難しいこと言っているけど、何が違うのかよくわからない」 「違う違うって言うけど、その違いが一体何だっていうのか。私にはど うでもいいことだ」と。 「違いの過大視」は一番のリスク要因と言えるでしょう。ただし、致命的な失敗でない限り、強者に挑戦する姿は、客から見て も業界関係者から見ても好意的に受け止められることが多いので、多少 の失敗は恐れず挑戦するのがよいでしょう。ナンバーツー、ナンバース リーのポジションを挑戦により維持・強化できるのであれば、それも立 派な成果です。 しかし、時には致命的な失敗になることもあるので要注意です。 それは強者、特に強いナンバーワンを本気で怒らせた時です。 差別化戦略以外の弱者の戦略は強者にとってさほど影響はありませ ん。「勝手にやっていれば」といったところでしょう。それに対して、 差別化戦略は強者にとって脅威となります。なぜなら、自社のポジショ ンが危うくなる可能性があるためです。従って、時に本気で逆襲します。 力のあるナンバーワンが自ら返り血を浴びる覚悟で本気でナンバーツー を潰しに掛かると、ナンバーツーにとって深刻な事態となります。 以前、日本の二輪業界でも似たようなことがありました。 ナンバーツーの挑戦が成功し続け、遂にシェア逆転直前まで来て、「来 年は自社がナンバーワンになる」とまで社長が宣言しましたが、これが ナンバーワンの逆鱗に触れ、本気の逆襲に遭いました。結果として、シ ェア逆転が叶わなかっただけでなく、惨敗に次ぐ惨敗、さらに泥沼のよ うなダンピング競争で一気に経営危機に陥り、社長自ら敗北宣言して退 任する事態に至りました。 弱者は「強者の虎の尾を踏むと大変なことになる」というリスクを常 に忘れてはならないのです。 特に人間、逆風の中で必死に戦っている時は大きな過ちは犯しません が、順風満帆の中で勢いづいている時にこそ大きな過ちを犯します。勇気をもって挑戦すべきですが、相手は自分より力がある強者なのでその 一挙一動に常に注意を配り、場合によっては撤退する勇気も持たなけれ ばなりません。 今日のアメリカ対中国の関係が私には彷彿されますが、どのような結 果になるのでしょうか。 ⑤特化（ニッチ）戦略 大きな市場で勝負しようとしても、強者が1 社、または複数存在して いるため到底勝ち目はなく、自社のポジションの築き方が描けないとい う場合、小さな市場に特化してそこでナンバーワン、またはオンリーワ ンになることを目指す戦略。たとえば以下のようなものです。 ・本当は全ての大人の女性に売りたいんだけど、20 ～ 60 代までは強 い競争相手がひしめき合っているため、70 代以上の健康意識が特に 強い女性に的を絞って売ろう。 ・全ての若い女性に使って欲しいけど、魅力的なブランドが多数あるの で、自社は女子高校生に思い切ってターゲットを限定しよう。 ・そもそも一般の人に振り向いてもらえる商品でないため、鉄道オタク 向けの商品として彼らの好みに徹底的に合わせた商品としよう。 ・大多数の人はパステルカラーのような無難な色のパッケージデザイン を好むが、かなりの少数派だとは思うものの、当社は特に目立ちたが りで派手好きな人のためのショッキングピンクのデザインにしよう。 ・価格は普通の台所用洗剤より高いが、手の皮膚が超過敏体質な人でも 安心して使える台所洗剤を開発しよう。 客となる対象者から見て、他の皆が使うメジャーな商品とはっきり違う価値を提示し、「他の人には価値がないが私にだけは他では得難い価 値がある」と認識してもらうこと。そうすれば強い競争相手がいない、 もしくは競争相手が全くいなくなるため、成功の可能性は高いと言えま す。この戦略では、前提として、少数の人ではあっても、他では得られ ない価値をはっきり感じてもらう必要があります。 一方、対象者をかなり限定しているので、成功しても大きな成果とは なりません。リアルの店頭販売の場合、そもそも棚に並べてもらえない リスクもあります。対象者が少なすぎると、さすがにその売上規模だと 赤字になるとか、価格が高くなりすぎて相手の許容範囲を超えるといっ たリスクもあります。 しかし大局的に見れば、昨今のデジタルマーケティングの一般化によ って、特化（ニッチ）戦略の有効性は高まっていると考えられます。 ネット販売なので、売り場の限定がなくロングテールが可能なこと、 どんなに小さなニーズであろうと検索エンジンが客を探し出してくれる こと、限りなく1 to 1 対応が可能なITの仕組みができてきていることな どが要因です。そして、その背後には客の価値観・趣味嗜好・利用方法 の多様化、十把一絡げでなく私にぴったりの商品・サービス・情報が欲 しいという客のニーズの高まりがあります。 自らの価値、特に他にはないユニークな価値を見据え（またはつくり）、 検索キーワード化して相応のウェブコンテンツを充実させれば、たとえ 少数とはいえ気づいてくれる人、買ってくれる人がいるでしょう。これ もまた、弱者の立派な生きる道です。<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>⑥一点突破戦略 いろいろな選択基準がある中、1つの選択基準に狙いを定め、その選 択基準だけについてはナンバーワンを目指す戦略。全科目満遍なく80 点取るのとは真逆で、1 科目でよいので100 点を目指す。その分、60 点、 70 点の科目が出ても構わないという考え方です。 ・「自動車でパワーだけは同クラス他車を上回る車を目指す（燃費や居 住性等は他車並み）」 ・「コクの良さだけは絶対他社に負けないビールだ（キレは良くないが）」 ・「思い切り爽快感を重視したシャンプーにしよう（洗浄効果は標準的）」 ・「（他の商品はともかく）化粧品を安く買えることだけはどの通販サイ トにも負けない」 ・「美観を上げる点だけ見れば一番の塗装器具だ（大きさ・機能・操作 性は普通）」 しかし、機能・性能・効用は多くの場合、何かを高めれば何かが低く なる、いわゆる二律背反になることが多いのです。 ・自動車でパワーを高める⇒燃費が悪くなる ・ビールでコクの良さを追求する⇒キレがなくなる ・シャンプーで爽快感を高める⇒洗浄力が下がる ・化粧品を安く買えることだけは負けない⇒他の商品の品揃えが弱くな る、化粧品の通販サイトという偏ったイメージができてしまう ・塗装器具で美観を上げることだけを重視する⇒器具が大きくなる・省 エネでなくなる・操作性が悪くなるなど または「□□機能を高めることはできるが、価格が1.5 倍になる」といった事態もあり得ます。 一点突破は、二律背反により競争力を失うリスクが常にあるのです。 一点突破戦略を成功させるには、二律背反を完全には克服できなくて も、負の側面を最小限に抑えて強者に勝つ一点を作ることを目指します。 たとえ一点とは言え、それは簡単なことではありません。それができれ ばどの会社もとっくに皆やっているはずですから。 この戦略を成功させるには技術力が要ります。技術力がなければ二律 背反の負の側面が致命的になり成功はおぼつきません。 もしくは新たに技術開発をする資金、そしてそれを判断する経営の意 志が必要になります。 二律背反を度外視して、負の側面の改善を諦めるという選択肢もあり ますが、それでは相当マニアックな客に限られます。特化（ニッチ）戦 略と割り切ればそれはひとつの選択肢かもしれませんが、ここではより メジャーな市場にこだわります。不得意な科目でも、最低合格ラインの 60 点、70 点は取っておきたいのです。 そのためには技術力や経営判断が必要になり、マーケターの戦略だけ では戦略実行に至らないのが一点突破戦略です。 差別化戦略のように新たな価値、新たな選択基準を創るのではなく、 すでに顕在化している既存の価値、多くの人が望んでいる既存の選択基 準を売り物するため失敗のリスクは少なく、また特化（ニッチ）戦略の ように最初から小さな市場を狙うのではなく平均的大多数の人も期待す るニーズに対応するため成功の成果は大きいと言えます。 ただしそれを実行するだけの技術力、人材や資金を技術開発に投入する経営判断力があってこその話です。 ⑦追随戦略 特にこれといった強みや個性もなく、積極的に選ばれる理由はないが、 安く提供することで生存を狙う戦略。戦略と言えるかどうかも怪しいが、 実際には多くの企業・商品がこの戦略を取っています。たいてい本人に この戦略を取っている自覚はありません。 今まで述べた全ての戦略は、マーケティングを学んだ者が意識して考 え判断するものです。しかし多くの企業・組織は、まだマーケティング の専門家によるマーケティングの実践を行っていません。その場合の行 動原理は「周りの皆と同じようなことをする」です。 「周りがやっているからウチもやる」「周りにやっている人がいないか らウチも怖いからやらない」、さらに言えば「マーケティング戦略なん てよくわからないものを信じる気になれない。現実を見て、現実的に判 断するのが一番良い」という考え方です。 「良いものを安く提供する……これに勝る商売方法なんてない」 確かに正しいでしょう。ただし一度、客の目線で考えてみてください。 「良いものと言っているけど、良いものを提供しているのはあなただけ ではありませんよ」 「あなたの会社が突然なくなっても誰も困りません。だって同じような ものを提供している会社はたくさんあるのですから」 「良い商品であることはもう当たり前。周りと比べて突出して安いのであればあなたの会社を選びますが、そうでなければあなたの会社を選ぶ 理由が見当たりません」 となりませんか？ 成熟化した日本社会、過当競争が多い日本の市場において、自分たち だけの特徴や個性と自分では思っていても、客から見れば「皆同じ」「ど れも似たり寄ったり」と映ることが多いのです。 それでも多くの企業・組織が商売を続けていられるのは、「商品・サ ービスの提供者と比較して客が多いため」です。客が多い、または客が 増えていると、特に強みや個性がなくても来てくれる客はいます。需要 に対して供給が追い付かなければ客はつきます。 そして、当然のことながら商品・サービスの提供者が増え、需要に供 給が追い付く、あるいは供給が上回ると事態は一変します。客の奪い合 いになり、競争に勝たないと客が来なくなるのです。環境に変化が起こ り、需要が減っても同じです。 要するに「周りの皆と同じようなことをする」方法は、目先のリスク は低いのですが、需要と供給のバランスが変わって競争環境が変化した り、社会環境が変化したりすると、強い立脚点が何もないため一挙に生 存が危うくなります。市場からの撤退や倒産・廃業にすら至ります。 環境変化を乗り越え、存続の柱となる強い立脚点とは「安い・近い」 ではなく「客の積極的支持」です。 「あなたの会社でなければならない理由がある」 「私の生活にとってこの商品はなくてはならないもの」「他では得られない価値があるため、他より多少高くてもこれを買う」 「苦しくなった時、他のサービスは諦めるが、このサービスだけは手放 さない」 となることです。 すなわち、今まで述べてきた競争戦略のどれかを行うことです。 追随戦略はローリスク・ローリターンの競争戦略のひとつとも言えま すが、価格競争に陥りやすく、また変化に弱く、一度逆風が吹けば一気 に生存が危なくなる戦略だと考えるべきです。 強者でなく、弱者でも特に基盤となるリソースがないのであれば、私 は特化（ニッチ）戦略を取ることをおすすめします。デジタルマーケテ ィングがその成功を後押ししてくれます。その場合、たとえ客が少数で あっても自分たちにしか提供できない価値、他では得難いユニークな価 値の発見、または創造が大前提だということも忘れないでください。 弱者のチャンス 最後に「強者のリスクは弱者のチャンス」についてお話しします。 「強者の競争戦略のリスクと対応策」については前述した通りですが、 それを逆手にとって、弱者のチャンスとして使う方法です。 強者のリスク1：時代・社会・市場環境の変化で競争ルールが変わる ⇒変化を早く察知し、新しい競争ルールを提唱し、主導権を握る 強者のリスク2：テクノロジーの進化で競争ルールが変わる ⇒ 新しいテクノロジーを使って、新しい競争ルールを立ち上げ、主導 権を握る強者のリスク3：客は100％満足することはない ⇒強者の小さな不満を「隙」と見なし、そこに集中攻撃を仕掛ける 強者のリスク4：逃れられない客の「飽き」 ⇒ 客の「飽き」に乗じて「強者＝古い、退屈」「自社＝新しい、新鮮」 というイメージを創出する 強者のリスク5：弱い者いじめは嫌われる ⇒ 強者よりさらに強い強者（行政や世論※等）を味方につけ、自身に 代わって叩いてもらう ※ 世論を味方につけ行政やマスコミに自身に代わって叩いてもらうの意。 強者のリスク6：自社を強者と勘違いする ⇒まさに敵失。正しく攻めれば勝てる<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>作成に当たって大事な点は、以下の7 つです。 ①客の視線で作成 これが最も重要なこと。自社が相手を評価するのではなく、客の身に なったつもりで、客が商品を選ぶ時の心境で作成する。 ターゲット戦略で規定したターゲット像、またはペルソナに成り代わ ったつもりで作成します。② 縦軸の価値は客のベネフィット、効用または客の選択基 準でなければならない ワークショップで時々見かけるのですが、商品の機能・性能やセール ストークを書くのではありません。あくまで客にとっての価値（ユーザ ーベネフィット）、客が感じる効用であり、それが客が商品選定する時 の選択基準となるものです。 ③ 横軸の競争相手は客に実際に比較検討される相手、実際 に戦っている相手 これもワークショップをやってみると、こちらが競争相手だと勝手に 思い込んでいるだけに過ぎないことがよくあります。改めて客にヒアリ ングをすると、全然違う競争相手と比較されていたと後で気づくことが よくあるのです。 「受注競争で負ける時は□□（選択基準）で〇〇社に負けることが多い」 「長年、〇〇社と△△社とコンペで勝ったり負けたりしている」 「今まで〇〇社に負け続けてきたが、今回は□□（選択基準）で勝負し て勝った」 のように、あくまで「客から見て」自社と実際に比較検討されている 相手です。 「客が自社とどんな競争相手とを比較して選んでいるのか」を正しく把 握するのは非常に大切ですが、意外ときちんとやってないことが多いの ではないでしょうか。ニーズをキーワードにして検索し、自社と同じレ ベルで出現する相手を競争相手として意識する、日頃から客ときちんと 向き合って話をする、時にはお金をかけて調査することも必要です。④評価は客観的で公正に これも客の視点で作成。手前みそはNG。 ワークショップ等で作成してもらうと、勢いで自社商品に◎◎と現実 以上に自社商品が勝っているかのごとき評価をするケースがあります が、こんな評価なら競合比較表を作成しないほうがましです。これは何 の役にも立ちません。 ウェブサイトやダウンロード資料に実際に掲載する可能性もあると考 えてください。その時、競争相手からクレームがつけられないほど客観 的な事実になっていることが必要です。 ⑤縦軸の価値選びは戦略的に 評価は客観的で公正であることが必須ですが、選択基準となる価値は 自社の競争戦略に則って意図をもって選びます。 自社の強みが浮き彫りになるように選ぶのです。 この選択基準で選べば自社が勝つというのであれば、平均的大多数の 客の選択重視点でなくてもしっかり明記して際立たせます。 ⑥売れた実績があるのなら必ず勝てる価値があると考える ワークショップをやってこの競合比較表作成をお願いすると、「自社 が勝てるポイントがありません。勝てません」と回答されることがあり ます。 しかし、すでに販売実績があるのであれば、必ずあるはずです。自社 から見てなくても、客から見ると勝っているところがあります。だから こそ発注しているのです。ひとつもなければ自社に発注することはない はずです。 技術志向の強い人たちだけで競合比較表を作成させると、価値の軸が どうしても物性的で、モノ自体に関する価値に偏りがちですが、客は必ずしも物性的価値だけで選ぶわけではありません。 「当社の仕事の進め方に合わせて柔軟に対応してくれる⇒対応の柔軟性」 「直接発注に結び付かない相談にも乗ってくれる⇒パートナーシップの 深さ」 「長年の付き合いのため当社の意図を言わなくても深く理解してくれる ⇒意思疎通のしやすさ」 といったことも十分価値軸に設定可能な内容です。常日頃から客の真 意を探る努力をしていれば、自然と想起できるはずです。 ⑦まずは現状をそのままに、次に戦略意図を反映して作成 前述のように、競合比較表の評価は、あくまで客観的で公正でなけれ ばなりません。 しかしその結果、どうしても勝機が見いだせないこともあります。 その場合は、前述の競争戦略によって「今の現状ではこうだが、それ をこう変える」という戦略意図を反映させることになります。 ・差別化戦略で現状の価値軸にはない新しい価値を提唱しよう ⇒競合比較表に今はない新しい価値軸を挿入する ・特化（ニッチ）戦略でマイナーだが自社独自の価値をアピールしよう ⇒競合比較表で自社だけが◎がつく価値軸を挿入する ・一点突破戦略で特定の1 つの価値だけは一番になろう ⇒現状では他社と同じ〇だが、これを技術開発で◎にしよう（〇⇒◎）<|eot_id|>

<|begin_of_text|><|start_header_id|>system<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>user<|end_header_id|><|eot_id|><|start_header_id|>assistant<|end_header_id|>競争戦略を競合比較表に 反映させてみる 競争戦略は、競合比較表でその意図を可視化することができます。 一つひとつ競合比較表にしてみましょう。 ①マインドシェア戦略 マインドシェア戦略だけは競合比較表は不要です。 そもそも比較検討をさせずに、存在感の大きさで選ばせる戦略なので すから。 もしこの戦略を取っている企業なら、むしろ自社の競争相手の気持ち になってみて、競争相手が自社の牙城を崩す戦略、特に差別化戦略を立 ててみることをおすすめします。 競争相手のマーケティング責任者として自社への差別化戦略を構築し てみて、次にその戦略の成功を阻止する自社の防衛戦略を考えるのです。 上手く戦略を立て、万全の備えができれば、むしろ競争相手が差別化戦 略を実行するように仕掛け、それを利用して、さらに自社が強力になる ように仕組むこともできます。 ②コストリーダーシップ戦略 では、②コストリーダーシップ戦略の競合比較表から作成してみまし ょう。 価値は機能や構造と峻別するために、ここでは効用で表現します。 効用とはユーザーベネフィットのことです。加速性が良い、燃費が良い、洗浄力が高い、手肌にやさしい、肌が潤う、整腸作用に優れる、コ クのある味わい、気分が爽快になる、見栄が張れる、操作性が良い、作 業スピードが速い、省エネ効果が高い、騒音が少ないなど、客が享受す るメリット（ベネフィット）です。 納期の早さ、顧客サポートの親切さや専門能力の高さ、価格の安さ（導 入時のコストや維持・運用のコスト等）も効用ですし、対応の柔軟さや 意思疎通のしやすさも効用です。 ワークショップをやっていると、機能や構造、または企業のセールス トークをここに書いてしまいがちですが、それは企業目線であり顧客目 線ではありません。繰り返しになりますが、客にとっての価値でなけれ ばならないのです。③モグラたたき戦略自社商品を上回る価値が生まれそうな時、それを潰す。購入条件の良 さで攻めてきた競合Cには同等以上の条件を提示して潰す（⇒方法は前 述）。 脅威にならない劣勢ポイントは放置。 価値でなく市場やターゲットに置き換えてもよい。④差別化戦略 今までにない新しい価値Zを挿入。 ⑤特化（ニッチ）戦略 評価してくれる客が少数しかいなくても、自社独自のユニークな価値 を挿入しており、他の価値では負けていてもやむを得ない。 そこを犠牲にしても自社独自のユニークな価値を評価し選んでくれる 客だけを見つめる。価値でなく市場・ターゲット・エリアでもよい。評価してくれる客が少数しかいなくても、自社独自のユニークな価値 を挿入しており、他の価値では負けていてもやむを得ない。 そこを犠牲にしても自社独自のユニークな価値を評価し選んでくれる 客だけを見つめる。価値でなく市場・ターゲット・エリアでもよい。 ⑦追随戦略 負けこそすれ勝つ価値のない平板な評価だが、価格だけは競争力があ る。「価格の安さ」でなく「近くで買える」といった地理的な優位性であ ってもよい。 繰り返しになりますが、これらは「客の視線で作成する」ことが一番 重要です。その上で、自社が客の目にどう映れば自社を選んでもらえそ うか考えるのです。<|eot_id|>