text
stringlengths
0
1.51k
弾力と柔らかさの共存する、肉まんよりも大きな物体。
ハル 「すー…」
変わらず寝息を立てるハルは、胸をつつかれても起きる様子はない。
そうやってアスカがハルの乳房を弄んでいる様を見ていると性欲が駆け上がってくる。
理性が駆逐されていく。
自分の意思ではどうにもできない、生物としての本能が脳を侵略していった。
気づいたときには俺はハルに向かって飛び掛っていた。
小さな小さな羽根を全力で動かし、一直線にそのむき出しの乳房に向かっていた。
そしてハルの左の乳房の表面に飛びつき、口をプスッと突き刺した。
ちゅー。全力で吸血する。
食欲を満たす満足感と性欲を満たす快感が体を物理的に膨れ上がらせていった。
アスカ 「おー、シュウの体がどんどん膨らんでく。ハルちゃんの血はそんなにおいしいの?」
アスカがクスクス笑いながらハルの乳房にくっついて吸血する俺を見下ろしてくる。
実際にハルの血は極上だった。
アスカが不味かったというわけではない。
ただ、先ほどは感じられなかった濃厚な旨みが今吸っている血には感じられた。
ここが乳房だからなのだろうか。血の中に、ハルの乳が混じっているのだろうか。
だとしたら俺はハルのミルクを飲んでいるということになるのだろうか。
恐ろしく背徳的な考えが脳裏をよぎる。
しかしその旨みは、吸血することをやめられないほどに美味だった。
アスカ 「せっかく調整したのに、そんなに吸ったらまた苦しくなっちゃうよ。しょうがないなー」
スマホを取り出したアスカがポチポチと操作すると、俺の体はシュルシュルとしぼんで元の形に戻っていった。
そして以後、それ以上膨らむことは無かった。
アスカ 「ほい、どんなに吸血しても膨らまない、苦しくならないようにしたから好きなだけ吸いなはれ」
アスカが言う。
しかし俺はアスカの言葉に関係なく、ただひたすらにハルの血を吸っていた。
蚊となり、大きさおよそ8mm程度にまで縮んでしまっている俺にとって、ハルの乳房は標高数十mの小山か小高い丘のようなものだった。
その質量はおよそ5600t。俺の体重を60kgとした場合、その9万3千倍もの重量である。
とんでもない質量、そして体積だった。
俺がどれだけ血を吸い続けても無尽蔵にあふれ出てくるだけの量が詰まっていた。
その頂にツンとある乳首だけでも相当に巨大である。
約200分の1サイズに縮んでいる俺からは相対的に200倍の大きさに巨大化している乳首は、その乳頭の高さだけでも2mにもなる。
俺の身長よりも高い。そしてその直径も2mを超え俺が両手を回したところで届くはずも無い。表面に両手を広げて抱きついている程度のものだ。乳頭だけでも、俺よりもはるかに巨大だった。
乳輪も直径だけで8mほどにもなりピンク色の地面が広がっているようだった。
すやすやと眠るハルの乳房から血を吸うことの背徳感、罪悪感、そして、こうやってどれだけ吸血してもハルの体には何の影響も与えられない敗北感、貧弱さ、負の感情が次々にこみ上げてくる。
ただ眠っているだけのハルの、その乳房にすら勝てない俺の、非力を通り越して無力な存在に価値観が見出せなくなる。
しかしそれでも、吸血するほどに感じられる快感に、吸血をやめられなかった。
アスカ 「次はこっち行ってみよっか」
アスカは乳房に取り付いていた俺をつまみあげるとハルの足の裏のほうへと持って行った。
開放された俺の目の前には、ハルの足の裏の絶壁がドンと聳え立っている。
全長48mにもなる肌色の絶壁だ。
先ほどのアスカのときとは違いつま先でない分 足の匂いというのは強くないが、それでもあふれ出るハルのフェロモンは俺の性欲を刺激して止まない。
俺はハルの足の裏にピトッくっついて吸血を開始していた。
乳房のときとは味が違う。そして突き刺した皮膚の感触も、こちらのほうが強い印象であった。
常に、ハルのこの巨体を支えている足の裏だ。決して硬質化してしまっているわけではないのだが、その鍛え抜かれている足の裏の皮膚は、貧弱な一匹の蚊になった俺には強靭な壁だった。
巨大な足の裏のほんの一部にくっついていると、まるで踏み潰される寸前であるような気がしてくる。
今の俺は蚊だ。虫だ。まさに虫けらとしての最後を演出しているようだった。
この巨大な足の前には俺のすべてが無力だろう。ハルにとって今の俺は無意味な存在だった。
仮にハルが起きていて、テクテクと歩いていて、その一歩に今の俺を踏み潰したとしても、それを感じ取ることも出来ないのではないだろうか。
巨大な足の裏で踏み潰された俺は一瞬でミンチ以下にまで引き伸ばされ床とハルの足の裏にこびり付く汚れとなる。
俺という命ある存在は、ハルにとっては足の汚れ程度の存在にすぎない。
ハルの巨大な足の裏の強靭な皮膚の前に、俺は踏み潰されシミに変えられたとしても、その感触は皮膚の奥にすら到達できないだろう。
結果、ハルはまったく気づけない。まったく気づかぬうちに俺を踏み潰し、足の裏にくっつく汚れに変え、そしてそのままテクテクと歩くうちにその汚れすらこすり落とされ、最後は消えてなくなる。
踏み潰すところから完全に消滅させるまでを、まったく気づかぬうちに終えるのだ。
今の俺とハルの関係はその程度だった。気づかぬうちに消される存在だった。
などと力の関係を思い知りながら吸血していると再びアスカの指が迫ってきて俺をつまみあげた。
アスカ 「足の裏は吸血しにくそうね。こっちにしてみる?」
再び移動させられた俺は、今度はそこにおろされる。
ハルの唇の上だった。
薔薇色に輝くぷるんとした唇。厚みは俺の体よりも大きく、上に立つのに何の問題も無い。
今は下唇の上に立ってその巨大な唇を見下ろしていた。わずかに開いた唇の間には広大な口腔が広がっていた。中は闇に包まれ、まるで地獄に繋がっているかのようだった。その隙間から轟々と呼吸の突風が出入りし、もしもその突風に巻かれその唇の間に落ちてしまったらもう出てくることができないかもしれない。
唇だけではない。正面に見える巨大な鼻のその穴からはこちらにむかって突風が吹きつけてきていて気を抜くと飛ばされてしまいそうだった。遠くにいたときは穏やかに見えた寝息も、この大きさでこの距離となると顔を覆いたくなるほどに強烈な風だった。
口の周囲は吐息のせいか暖かい。柔らかな唇はぷにぷにと心地よい弾力があり寝転がってしまえばこの風も心地よいそよ風に感じられるだろう。
俺はそんな赤い唇に針をプスっと刺していた。
ハルの唇に俺の口である針を刺す。これはキスになるのだろうか。
柔らかな皮膚に針は容易く刺さり、そこから唇同様に赤い血をちゅーと吸い上げる。
乳房や足の裏から吸血したときよりも熱い。体が火照ってしまいそうだ。
ハル 「ん…」
ハルがわずかに口を動かし小さく呟いた。
それは唇にくっつく俺にとっては地面が1m以上も動くと言うことだ。
たまらず振り落とされアゴのほうに転がり落ちる俺。
シュウ 「いたた…」
喉のほうにまで落ちはせず、丁度の唇の下、あごの上あたりで停止したのだが、それでも突然動いた地面にすっ飛ばされ転がれば体も打ち付ける。
蚊の体のおかげなのか痛みはさほど無かったが、それでも多少は目が回った。
アスカ 「くくくく、大丈夫?」
笑うのをこらえながらアスカが見下ろしてくる。
そりゃそうだ。ハルがほんの少し口を動かしただけで吹っ飛ばされ体を打ち付けているというなんとも滑稽な様を見下ろしているのだから。
アスカ 「まぁでもあんまりやるとハルちゃんも起きちゃうかもだし、次くらいでやめとけば?」
アスカがスマホを俺の上に翳して時間を表示して見せた。
それなりに時間も経っているし、そうでなくともハルがトイレなどに起きてしまうかもしれない。
俺はアゴの上から飛び上がると、ハルの右のほっぺの上に移動した。
飛び上がったとき、ハルの巨大な寝顔を見下ろせた。広大な面積があった。閉じられた目や鼻、そして口のひとつひとつが、小さな設備ほどの大きさだった。
ハルのほっぺに降り立った俺。広大な肌色の平面が緩やかな勾配とともに広がり、横には巨大な鼻の山などを見上げることが出来た。
今の俺から見てもきめ細かい肌だ。穢れの無い肌は、乳房や唇以上に針を刺すのをためらわれる。
しかし血を吸うなら、口付けをするなら頬だ。という俺の勝手な観念から最後をこの場所に選んだ。
静かに針を刺し、吸血を開始する。
体の中がハルの血で満たされてゆくのを感じる。
ハルのすやすやという寝息をBGMに俺は体を、心を、性欲を、ハルの血で満たして行った。
アスカがアプリを調整してくれたおかげもあってどれだけ吸っても苦しくない。
しかし体はどんどん満たされていくのを感じていた。
絶頂に上るような快感と、深い満足感の海に身を沈めるような安らぎ。
ハルの血を吸うほどに、俺の心はハル自身に抱擁されるかのような安心感に包まれていった。
そうやって血を吸いながら安らいでいる俺のいるほっぺが薄暗い部屋の中でも更に暗くなったかと思うと、ハルの巨大な右手が飛来してこの広大なほっぺ全体をペチッと叩いた。
アスカ 「あ」
目の前で見ていたアスカが小さく呟く。
未だに眠っているハルが、ほっぺに違和感を感じ取ったのか、それとも蚊の襲来に気づいたのかは定かではないが、ともかくハルは自身のほっぺを右手で叩いていた。
ハル 「ん…」
自身は小さく呟いたのみ。
そして手はぽっぺから離れていき、ハルはまたすーすーと寝息を立て始めた。
すやすやと穏やかな顔で眠るハルのほっぺには、小さな赤いシミが出来ていた。