text
stringlengths
0
1.51k
アスカがスマホの画面に触れる。
すると、ジュースとかを置いている低めのテーブルの上に、1000分の1サイズの10階建てのビルがひとつ現れた。
ハル 「え!? これって…」
アスカ 「ふっふっふ、これぞ今回あたくしが新しく発明いたしました『ミニチュア製造機~(ダミ声)』であります!」
ハル 「み、ミニチュア製造機?」
アスカ 「そうそう本物そっくりのミニチュアを作るの。形、素材、何から何まで本物と同じよ」
ハル 「へー…」
ハルはテーブルの上に現れた10階建てビルを見下ろして感嘆の息を漏らした。
1000分の1サイズということでそんなビルも高さ3cmほどと指の半分の大きさも無いが、その精巧さはまさに本物と呼べるものだった。
ハル 「凄いですねー」
アスカ 「しかもアプリで何度でも簡単に作れるから…」
言いながら手を伸ばしたアスカは、テーブルの上の10階建てビルを指先でクシャッと押し潰した。
ハル 「あっ!」
アスカ 「こんな風に壊しちゃっても大丈夫」
アスカが指をどけると、たった今までビルがあった場所には砂粒のように細かい瓦礫が広がっていた。
アスカの指先でビルが簡単に押し潰されてしまったその光景は、ハルの胸をキュンと高鳴らせた。
アスカ 「ふふふ、これを使って町を再現すれば、いつでも巨人になった気分で町を滅茶苦茶に破壊することもできるのだ。小さいものを嬲るのが好きなハルちゃんにはピッタリだと思うよ」
ハル 「そ、そうですか…?」
やや疑問系の形になったが、実際ハルの心はそのミニチュア製造機に惹かれていた。
アスカ 「まぁ、まずは試してみ」
ハル 「は、はい…」
手渡されたスマホを見るハル。
画面にはシンプルに『作成』と文字が表示されていた。
これなら前回のように操作ミスしてしまうことは無いだろう。
立ち上がったハルは、その『作成』の部分にポチッと触れた。
すると足元に、1000分の1サイズの町並みが広がった。
高さ1cmの小さな家が密集した住宅街。ちょっと高いビルが集まった町の中心部。
そして、駐車場に停められている米粒のような大きさの車たち。
それらが、自分の足元を埋め尽くして広がった。
まるで本物の町みたいである。
ハル 「す、凄い…!」
思わず口にしていた。
アスカ 「にひひ、でしょ~」
アスカがドヤ顔でハルを見ていた。
ハル 「ほ、本当に凄いですね。まるでまた巨人になったみたい…あれ? それに空も…?」
見上げれば、天井があるはずの上には青空が広がっていた。
アスカ 「ああ、雰囲気を出すために演出してるの。でも雰囲気を出すための工夫はそれだけじゃないよー」
ハル 「え…?」
アスカ 「んふふ、足元をよーく見てごらん」
ニヤニヤと笑うアスカに首をかしげるハル。
言われたとおり自分の足元をよーく見てみる。
すると、幅1cm無い細い道の上を、たくさんの点が動いているのが見えた。
ハル 「?」
何かと思いしゃがみこんで目を近づけてみれば、それらは、1000分の1サイズとゴマ粒のような大きさの人間達だった。
ハル 「ひ、人っ!?」
思わず立ち上がり一歩後ずさるハル。
するとそこにあった住宅たちが、黒い靴下を穿く足によってズシンと踏み潰された。
そこでハルは、そこにも逃げ惑う人々がいたであろうことに思い当たった。
ハル 「あっ!」
思わず足を持ち上げてみてみる。
足を持ち上げてみると、そこには自分の足跡がくっきりと残され、その周囲はまるで大地震にでも見舞われたかのように瓦礫に変わっていた。
足跡の中は完全に押し潰され、人どころか、建物すら原形をとどめていなかった。
ハル 「ど、どうしよう…」
人々を踏み潰してしまい、困惑するハル。
だが、
アスカ 「あは、心配しないで。それもアプリで作った演出だから」
ハル 「そ、そうなんですか!?」
アスカ 「うん。本物の人間じゃないから安心して」
ハル 「…よ、よかった~」
ふぅ~っと安堵の息を吐き出したハルは体の力が抜けたのかその場にへたり込んでしまった。
ズズゥゥウウウウウウウン!!!
そこにあった住宅街がハルの巨大なお尻によって押し潰された。
ハル 「あ…」
アスカ 「ニシシシ、ま、そういうわけよ。どう? わくわくしない?」
ハル 「そ、そうですね…。……わくわくっていうより、ゾクゾクしてきちゃいます」
住宅街にへたりこんだまま横の地面を見下ろしたハルは、そこに逃げる人々を見つけにやりと笑うと、右手をその上にそっと押し付けた。
クシャ
手のひらの下で、脆い家々が潰れる感触がした。
手を持ち上げてみれば、そこは手の形に家々が潰れていた。
その間の道を逃げていた人々の姿は、どこにもなかった。
アスカ 「流石ハルちゃん、もう順応したみたいね」
ハル 「ふふ、だってこんな小さな人々をいじめても誰にも文句言われないなんて最高じゃないですか」
言いながら足を伸ばしたハルは、そこにあった住宅街の上にズシンと踏み下ろすと、そのまま横にズズズ…と引っ張った。
何百の家々がハルの足によって瓦礫を伴った土砂へと変えられ、人々はその瓦礫の津波に呑み込まれた。
一瞬で、東京ドーム数個分の面積の住宅街が更地に変わった。
ハルが、少し足を動かしただけでである。
ハル 「ん…でも、なんかこの前のときよりはちょっと物足りないかも…」
アスカ 「なるほどー。つまりハルちゃんは、小さくなったシュウをいたぶるのが好き、と」
ハル 「え!? そ、そうなんでしょうか…」
アスカ 「んふふー、小さくなったお兄ちゃんを指先でこねくり回したり足の指に挟んで弄んだり、ぴーぴー泣き叫ぶお兄ちゃんをズンと踏みつけて屈服させるのが好き、と」
ハル 「…はぅ……っ」
アスカがにやにや笑いながら言う具体的な例に、ハルは股間がキュンときてしまった。
アスカ 「いやーハルちゃんは生粋のドSだねー。シュウも大変だこりゃ」
ハル 「うぅ…」
ハルは顔を真っ赤にした。
アスカ 「ま、シュウには及ばないけど、こんなミニチュアでも欲求不満の解消にはなるでしょ。しっかり楽しんで」
ハル 「あはは、そうですね。……たっぷり愉しませてもらいます」
ハルは自分の周囲の住宅街をにやりと笑いながら見渡した。
*
*
*
数分後、町は完全に壊滅していた。
すべての建物が瓦礫にかわるか、巨大な足跡の中に消えていた。
いたるところから黒煙が巻き上がり、まるで爆撃でも受けたかのような惨劇。
生存者は皆無だった。
ハルがただ歩き回るだけで町は壊滅した。
黒いソックスを履いたハルの足は全長240mもある。
それはおよそ東京ドームの直径とほぼ同じ大きさだった。
そんな巨大なものが体重を乗せて遠慮なくズシンと踏み下ろされれば、その一歩だけで住宅街は壊滅してしまう。
数十の家が足の下敷きになり踏み潰され、直撃を免れた家も、足の起こした振動によってガラガラと崩れ落ちてしまう。