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ハル 「そ、そんなにマジマジ見られたら恥ずかしいんだけど…」
シュウ 「わ、悪い…」
顔を赤くしながら言うハルに俺も顔を赤くしながら答えていた。
とは言えこいつのほうを向く限りは確実に胸を見なければならないのだが。
この広大な湯船の海の果ては風呂の淵によって囲われている。絶壁のように垂直に、しかも掴みどころも無いそれらは決して登ることはできないだろう。
俺にとって湯船の中で唯一頼れるのがこいつだった。
ハル 「ふぅ……でもアスカさんってホントに凄いよね~。こんな凄い道具を簡単に作っちゃうんだから」
ハルが感嘆の吐息をもらしていた。
確かに凄いが、それがなんの役にも立たないのも凄い。現に俺はこうして縮められて、一人では何も出来ない体にされてしまった。
ハル 「あはは、でもいいこともあるよ?」
シュウ 「は? 何かあるか?」
ハル 「こうやって、ちっちゃいお兄ちゃんで遊べること♪」
そう言いながら右手の指で俺の頭をちょいと押すハル。
すると俺の体は簡単に湯船に沈められてしまう。
シュウ 「ゴボボ…! や、やめろ!」
ハル 「あはは♪」
クスクスと笑うハル。
『元気君』を使っていないとは言え、やはり根っこのところでドSだ。無自覚に俺をなぶりやがる。
シュウ 「まったく…」
俺はため息をつきながらプカプカ浮いていた。
*
そうして暫く湯に浸かっていた訳だが、
シュウ 「ふぅ…」
ちょっと疲れてきた。
何せ足など到底着かないような深い湯に延々と立ち泳ぎで浮いているようなものだ。
それだけならいいのだが、やはりお湯に長く浮くというのが日常で無いので、いつもより疲れやすい。
小さくなっている分、感じる波も高いし、結構なサバイバルだった。
ハル 「大丈夫?」
背後からハルが問うて来る。いたって普通で、疲れた様子など無い。
こいつにとってはただの入浴だし、もともと長湯もするからなんてことないのだろう。
シュウ 「ん? ああ、ちょっとな…」
ハル 「もう上がる?」
シュウ 「いやいや大丈夫だよ。気にすんな」
とは言ったもののこのままだとのぼせそうだ。
コイツの入浴に付き合うとふやけるんじゃないかってくらいに長引くだろうし。
かと言えここ出るというのもかっこ悪いような。
さてどうしたものか。
と、思っていると水中からハルの手が近づいてきた。
シュウ 「?」
俺が疑問符を浮かべていると、巨大なハルの指は俺の体をゆっくりと引き寄せていき、最後には胸の谷間に連れて行った。
ハル 「そこなら寄りかかれるし、大丈夫でしょ?」
俺を連れてきたハルの手が離れていくと俺はそこに取り残された。
背後にはハルの胸板。そして左右には、そんな胸板からどどんと飛び出る巨大な乳房。
水面の高さは、乳首の高さくらい。つまりは乳房の半分ほど。俺の左右には、まるっこい乳房の湾曲した壁面が、俺を挟む壁のようにして存在していた。
シュウ 「お、お前な…」
ハル 「いーの。でもあんまり触らないでよ?」
ハルがしゃべると俺の頭上にあるハルのあごが動いた。
巨大な妹の巨大な乳房の谷間にちょこんと置かれる俺。
そのあまりの存在の小ささと、気恥ずかしさと、気まずさに、俺は体をさらに縮こまらせた。
先ほども太ももに乗せられたりしてハルの体には触れていたわけだが、ここは胸の谷間だ。左右にある巨大な物体は乳房だ。太もも自体もレベルは高いが、ここは更に桁違いに高い。
色々な意味で緊張していた。まさしくのぼせあがりそうだ。
ハルの吐息が突風となって俺の正面、胸の谷間の前の湯気を散らしている。
湯も温かいが、背後に感じるハルの胸板もとても温かい。
湯で温まっているからだろう。
ただ、そのぬくもりこそが俺をドキドキさせる。
と、不意にハルが、湯船に入ったときにやったように腕を伸ばした。
両手の指を絡ませて腕を体の前のほうに向かって伸ばしたのだ。
すると前に伸ばしたその腕によって胸が寄せられ、谷間にいた俺はズンとぶつかりあった巨大な乳房の間に挟み込まれた。
シュウ 「ぶ……!」
ハル 「ん~♪」
ハルが気持ちよさそうに体を伸ばしているのがわかる。
しかしその胸の谷間では、俺は挟み込んでくる乳房の間でギュウギュウと圧迫されていた。
体は完全に乳房の肉の間に埋まっていた。柔らかくも弾力があり張りのある乳房は、挟み込んだ俺に指一本動かせないほどの圧力をかけてきた。
息も出来ないほどの窮屈さ。
シュウ 「ぐ……」
だが、同時に心が安らぐような心地よさを感じていた。
ハルの乳房に完全に挟み込まれ、全身をみっちりと包まれている。
この極限の窮屈さが、逆に、安心できた。
全身をぬくもりに包まれている。全身にときめくトクントクンという心臓の鼓動が、まるで母の中に舞い戻ったかのような安らぎを与えてくれた。
潰れそうなほどの圧迫感なのに、それが気持ちよかった。
…。
俺はドMかよ。
ハル 「ん? あっ、ゴメンお兄ちゃん!」
自分の胸で俺を挟み潰していることに気づいたハルが慌てて腕を広げ、寄せていた胸を開放した。
胸から開放された俺はその谷間の水面に浮いていた。
ハル 「だ、大丈夫?」
ハルが、谷間に浮かぶ俺を恐る恐る覗き込みながら訊いてくる。
シュウ 「……ああ…」
俺は答えていた。
別に、苦しくて動けなくなったわけじゃない。
ただ、あの心地よさの余韻に浸っていたかった。
心の底から安らげるあの場所を、気持ちが求めていた。
俺は浮いていた状態から体を起こした。
シュウ 「……なぁハル」
ハル 「な、なに?」
シュウ 「…た、頼みが、あるんだが…」
上から覗き込んでくるハルの視線から目を背けるように、赤くなった顔を逸らしながら、俺は言った。
*
ハル 「こ、こんな感じ…?」
シュウ 「あ、ああ…」
顔を赤くしながらハルは、自分の胸の谷間を見下ろしながら訊いていた。
胸を外側から手で押してくっつけている。
その間に、俺はいた。
再び、ハルの胸の谷間に体を挟み込まれていた。
しかし今度は偶然ではなく、俺が自分の意思でハルに頼んでの事である。
互いに、現状をしっかり理解しての事だった。
ハル 「あ、あはは、なんでわたしこんなことやってるんだろ…」
顔を赤くしたハルは、胸の間に俺を挟みこみながら苦笑していた。
シュウ 「すまん…」
ハル 「ま、まぁその、たまには、ね…」